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学校1のゲーマーと学校1の天才が迷い混んだ生き残るためには勉強が必要な世界 作者:サブローム狼

第2章 この世界よりも戦いが多い学校

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第15話 アンペア ボルト ワット

誰か仲間を見つけなければならない。 そうわかってはいるが、誰かを仲間にする方法など思い付かない。そもそも明らかにこっちの都合で手伝ってくれる人などいるのだろうか。
気がつくと体育館の前にたどり着いていた。体育館では依然として生徒たちが引きこもっている。無理だ。こんな人たちを巻き込むわけにはいかない。そう思って立ち去ろうとしたとき、後ろから声が聞こえた。

「私たちは手伝うよ」

その声の主はアンペアだった。そしてその後ろにはボルト、ワットもいた。
彼女らは僕たちを手伝ってくれるそうだ。これはとても助かる。

「ほ、ほんとにいいのか? 命を失うかもしれないんだぞ」

僕は流れる嫌な汗を感じながら聞き返した。

「死にたくはないけど、モルは大切な仲間だもの。絶対に失いたくない!」

凄い。これほどの意思を持っているとは。
そしてさらに後ろから声が聞こえる。

「私も手伝いましょう」

それは唯一残っていた先生だ。その先生はパスカルに生徒たちの指示を任せると、僕たちの方に近づいた。

「さあ。 行きましょうか」

これでメンバーは5人。あの強さをもつあいつらには不十分かもしれないが、しっかりと抵抗できるだけの人数は揃ったはずだ。

校庭に戻ると二人は静かに立っていた。その姿はまるで何も考えていない石像のようだった。

「来たね」

イゼンが振り返りながら言う。

「ああ」

イゼンとミゼンの姿をみて、先生が声をあげる。

「……まさか……いや、そんな馬鹿な」

先生は動揺して、一歩後ろに下がった。
先生の目が泳いでいる。既に心はここにあらずといった感じだ。

「いったいどうしたんですか?」

僕が訊ねると、先生は口を震わせながら答えた。

「いや、別に姿に驚いた訳じゃないんだ……。ただ、あのステータス。多分彼らは…『属性類』! 人間よりも遥かに高い知能を持っていて自由気ままにいきる種族」

なっ! こいつらが属性類か! 確かに極端に偏った高いステータス。そう考えると全く不思議でもない。

「あーあ。気づいちゃったか。まあいいや、どうせきみたちはここで死ぬんだから。あっ! モルは別だよ。大切な人だからね」

そう言うとイゼンは消えた。消えたといって間違いないほどだろう。しかし、先生が叫ぶ。

「ワット! 上です!」

その声を聞くと、ワットは瞬時に体に電気をまとい、上に向かって放った。
すると、その雷撃は空中で何かを捉えたようだった。その物体はゆっくり落ちてくると、ボルトの目の前に落ちてきた。

「これは……。人?」

黒焦げで、さらに原型をとどめていないようであって、何かは確認できなかったが、人間のような、タンパク質が焦げるような匂いがした。
そして見ると、イゼンが先生の前に立っていた。

「きみ、目がいいね。ちょっと邪魔かな?」

そう言うとイゼンは手を振った。しかし、先生は片手でその攻撃を受け止めると、後ろへ投げ飛ばした。

「何か、用があるのか」

先生はそう吐き捨てると、イゼンの方を向き、攻撃に備えて構えた。

「……へぇ。なかなかやるじゃん」

次の瞬間イゼンが消えた。あの高い国語のステータスから考えると、加速系のスキルを使った高速移動といったところだろうか。
しかし、先生は動揺しなかった。周りを見渡すと、手のひらを天に向け、右手の方向に突きを1発放った。
見ると、イゼンがうずくまっている。なんということだ。あの速さの中でイゼンを見分けられるとは……。

「くそ……こうなったら……。 ミゼン! やれ!」

そうイゼンが叫ぶと気配を消して近づいていたミゼンは急に先生に抱きついた。

「どうも。とりあえず君はここで観戦ね」

そう言うとミゼンは動かなくなった。先生が引きはがそうとしてもびくともしない。

「ミゼンのスキル、硬質化。体を固くすることができる。まあ、その時動けないから攻撃には使えないかな」

イゼンが続ける

「さてと、残りのみんなは気づいているかとは思っているけど……『已に』君たちの勝てる見込みは0になっていることに気づいたかな」

次の瞬間、アンペアの体が弾け飛ぶ。真っ赤な花火は、僕たちの視界を遮って。赤い世界の中でもうひとつ、何かが貫かれるような鈍い音がした。
視界が明けると、前の方に立っていたはずのワットがいない。いや、正確には立っていなかった。

「こんなものかな?」

イゼンが言う。しかし、その声は誰の耳にも届いてなかった。
ボルトがワットに近づく。するとワットは口を開いた。

「……まさか……こんな形で終わるとは……。思えばこの学校に入学してからずっと、才能のなさに嘆いてきたような気がする……。いや、そんな後悔をしている時じゃないな……。学校ではじめて友達になったのは、君と……アンペアだった。3人でやれば何でもできると思った……。……多分……これからも……」

そう言うとワットはポケットから何かを取り出した。それは小さいチップのようなものだった。

「……。これは体に流れる電気を強化するもの……。アンペアと一緒に作った……。……悔しいけど一番才能があったのはボルト……。努力をしないでその成績は羨ましいよ……」

目が霞む。ワットにはもう何も見えていなかった。しかし、伝えなければならない。その一心で言葉を紡ぐ。

「……けど、努力をすれば……この高電圧にも耐えられる……。どうか、役に……」

そう言うとワットは動かなくなった。ボルトは何も言わず、ただそのチップを受け取りポケットにいれると、そっとイゼンの方を向いた。
目にはただ憎しみと復讐の闇しか写っていなかった。
ボルトは指を向けると、『雷閃』を放った。しかしその攻撃は当たらない。イゼンが動いていないにも関わらず。それでもなお打ち続ける。全く当たる気配を見せずに。

「くそっ! 当たれ! 当たれ! なんっで! なんで当たらねぇんだよ!」

その時ボルトはパスカルの言葉を思い出した。

『練習不足ね』

「練習不足……」

ボルトはその言葉を思い出した。

「そうだ。練習。練習をしていなかったらからこんなことに……。もっと練習していれば……」

ボルトはそういいながら雷閃を打ち続けた結果。貯まっていた電気を使い果たしたのか倒れてしまった。

「ふっ! ふははは! 君たちが見つけてきた仲間はもう『已に』使えなくなっちゃったね! でも大丈夫だよすぐに君も送ってあげるからね」

モルの方をみると、モルは動かなかった。こころがここにはなかった。それは先生も同じだった。それもそうだ、目の前で生徒たちが殺されたんだ。ショックを受けないはずがない。

「はぁ。 もっと楽しめると思ったんだけどなぁ。仕方ないか」

そう言うとイゼンは僕の方に向かってきた。歩いて。しかしもう僕にはどうすることも出来なかった。諦めるしかなかった。
その時、僕に手をかけようとしているイゼンの手を一本の剣が貫いた。

その飛んでいった方向をみると、鎧を着た一人の青年が立っていた。

「これ以上、町に被害は与えさせん!」

まだあの中で唯一萎縮しなかった男、この町の兵士長が立っていたのだ。






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