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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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63話 イベント開幕

「あっちゃー……」
「やはり待ち伏せではアチラに主導権があるのう」

 廃都一帯の敵味方判別レーダー図に表示される、青と赤に分けられた無数の点。 青がプレイヤーを示し、赤がモンスターを示す。 現在、廃都中央広場に固まった青い点、その周囲をぐるりと取り囲む輪となる多数の赤い点。 前衛を務めるプレイヤー一同が敵に囲まれた状態となっていた。

「建物の中と外ではまた表示が違うんだっけ……、フィールドソロ勝負しかしてなかったから忘れてた」
「前衛職しかおらぬ訳でもなしに、アチラはアチラでうまくやるであろう。 マズイ状況に陥れば、打てる手は幾らでもある。 放っておけ」
「サハナもいれば、エクシズやイェーガーもいるもんね。 緊急メール来てから考えるか」

 特に熟考するでもなく前衛陣の窮地を捨て置き、自分達に割り当てられた仕事へ集中するケーナとオプスだった。









 ──── 一時間ほど前。


 イェーガーが号令を掛け、殲滅戦(クエスト)の準備に取り掛かる。 直ぐに突入組と全体援護組に全プレイヤーが振り分けられた。 内訳としては、突入組に二十数名、全体援護組が二名である。

「ちょっとこれは私等ハブられてやしませんか~?」
「何をいまさら、ここにいる全員とお前等二人、秤に掛けりゃー一緒だろうーが」
「八百レベルが四人も混じっててそれは酷いよ~」

 詰問しているような感じだが、その場にいる者の顔は皆笑顔だ。 予定調和というやつであり、ケーナ達にとってこういったやり取りは何時ものことだった。 ただちょっと昔を懐かしんで口に出してみたら、当然の如く御馴染みの答えが返って来ただけという。 限界突破を除く高位レベル四人、サハナとイェーガーとシュピラール、あとついでに遅刻してきた隠れ鬼である。

 「お爺ちゃ~ん!」「おお、孫よ~」ひしぃっ!

 といった茶番劇がケーナとの間で繰り広げられたのを全員がスルー。 彼は四十四人の(さとご)を連れている理由から緊急イベント用アイテムが使えなかった(里子はこの手のアイテムの効果範囲に含まれない)。 仕方なく竜四頭にぶら下げられた船と共に空からやってきたのである。 ちなみに妹の軍勢は【遮断結界】外周で、竜十一頭とバリケード要員となっている。 これは彼女達のレベルが上は三百から下は五十までバラバラ過ぎたからだ。

「むう、少しは『第十二騎兵隊参上!』とか格好つけて登場してみたかったんじゃがのう」
「妹さんが死ぬから止めなさい!」

 何故第十二なのかは、隠れ鬼がNo.12のスキルマスターだからである。 愚痴を言う隠れ鬼に突っ込むサハナ。 ケーナ経由の仲ではなく、それ以前に別のイベントからの付き合いだったらしい。 それをケーナが知ったのは過去、狩りに誘った二人を引き合わせた時だ。 その掛け合いに乾いた笑いを零すケーナはローブ姿の魔人族の女性に引っ付かれていた。 隠れ鬼の五十四番目の妹、魔人族のユーニオである。 何故か里子として作成した裏設定に『ケーナに懐いている』とかいうのがあったらしい。 「裏設定まで拾うんかい……」「摩訶不思議じゃのう」といった感想を今更漏らす二人。 自分の里子に裏設定などつけなくて良かったと安堵しているケーナだった。 裏など無くともオカシイのは仕様なのか? と心の声は気にしないことにする。

「とりあえず地表部分の掃討が性急だな」
「遮断結界を通して見る限り、まだ建物は健在。 随分ボロくなってるみたいだし、蹴り入れりゃー倒れるんじゃねーの?」

 スキルマスターが混じっているため、そこに先行組の指揮権を集中しようという意見も出た。 それは隠れ鬼自身が「ワシは指揮官などの器ではないの」と辞退したので、最初の予定通りイェーガーとシュピラールが務める。 出入り口の警戒に当たっていたエクシズ達も一度戻り、パーティーを再編成して全員で内部に突入することに。 結界内部から外へ散発的に出てきていたモンスターが途絶えた様子らしいが、フェルスケイロ王都襲撃の事例もあるので油断は出来ない。 作戦会議中の出入り口にはサイレンとわんこーズが詰めている。

「全員を三隊に分けて突入、しらみつぶしに駆逐して城へ向かう。 城の地下から王都ダンジョンに入り、あとはルーチンワークといくか?」
「ケーナ達はバックアップとー、あとは臨機応変にやってくれ」
「酷い指示頂きました……」
「ならこちらは地表部分諸共地下を粉砕していこうかの」

 ケーナが空中に投じた映像(【薔薇は美しく散る(オスカル)】のまともな使用例)で街の構造を表す。 街の奥、西側に王城。 城の北側と南側にはギルドやら図書館等、武器屋や道具屋の専門館が立ち並ぶ。 中央に噴水を設えた広場があり、東側の大部分は住民街だ。 プレイヤーが突入するのは東側の正門からになる。 そこから中央を突破する隊、それぞれ北と南を迂回する隊に別けて突っ込むとのことだ。 ケーナ達は皆が背後から強襲を受けないように、取りこぼしを潰していく役目を持つ。 ついでにとばかり呟いたオプスの発言に皆がギョッとなる。

「おいおいおい、何をするつもりだ!?」
「崩落させてしまえば逃げ場所を求めて出口に殺到するであろう? そこをお主達が叩けばよいだけじゃ。 追い込み漁じゃな」

 一部のプレイヤーが「ああなるほど」と頷いた。 入り組んだダンジョンに突っ込み、どこから敵が出てくるのか分からない危険性を考えれば妥当な手段である。 それには挟撃を防ぐため、地表の敵を殲滅するのが先決だろう。 都市部を粉砕するだけならばケーナかオプスが上位魔法を使えば済むが、一部の例外を除けば基本的に範囲魔法は『術者を中心とした』仕様だ。 ゲームとは違い、魔法は自動でプレイヤーを見分けてくれない。 魔法で都市を破壊するのならば、たった一人で中へ赴かねばならないだろう。 それをやってしまうと、緊急クエストでプレイヤーを集めた意味もなくなってしまう。




「あー、そういやーこのクエって報酬とか出るのか?」

 コーラルがそう呟くと、何人かが思い当たったように手をポンと打つ。 ゲーム中の緊急クエストの報酬はボーナス経験値か、些細なボーナス効果を持つコスプレ系衣装アイテムか、金銭かを参加プレイヤーが選択していた。 それは主催者であるところのオプスも、額にシワを寄せ「むむむ」と考え込む。 どうやらそこまで考えていなかったらしい。 ここに至って今更ではあるがプレイヤー達もざわめきだす。

「そういやー、あーゆー告知天使が出たってことはGMがいるんだよな?」
「『魔女』達はGM権限持ちじゃなかったか?」
「それは権限持ちってだけじゃろう。 運営に携わっていた者が紛れ込んでいるんじゃろうな」
「あーいたいたGMな。 俺も見たことがある全身紅い騎士だったなー」
「そうかー? 俺が見たことがあるのはゴーストみたいな奴だったがー」

『はいはい、静かにー!』

 ケーナは隠れ鬼とオプスに意味ありげな視線を向けるとニッコリ微笑んだ。 音声拡大魔法を使って手を叩く音を響かせ、皆を黙らせる。 そしてプレイヤーの訝しげな視線が集まったのを見計らい、ニヤリと嗤う。 彼女をよく知る何人かが危険を感じでズザーっと引いた。 流石にそんな光景を見せられれば、他のプレイヤーも危機感を感じて身構える。 が、その反応を我関せずと受け流し、提案をする。

『今回のクエストの報酬は……、スキルマスター(わたしたち)からスキルを一個プレゼントしまーす!』

「────……」

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」」」

 一瞬の静寂の後、怒涛のような雄叫びが街道に響き渡った。 「よっ! スキルマスター太っ腹!」「念願のアレを手に入れたぞ」「やった、結局最終日にアレ取れなかったのが心残りだったんだよなー」「自爆は漢のロマン!」「気をしっかり持て、それは死亡フラグだ」「うーん、今の生活だと特に必要性も無いなあ」「とりあえず日常で使えそうなの貰っておけばいいんじゃね?」────と、一気に騒がしくなる。

「そんな訳だから、お爺ちゃんとオプスもよろしくね?」
「うむ、わかっておるぞ」
「むう、まあよいか……」



 目的と報酬が確立されたので行動に移る。 イェーガーの隊が中央突破、シュピラールの隊が北側を回り、南側を暫定隊長にサハナを据えたプレイヤーが行く。 隠れ鬼は一番近接戦闘に弱そうな南側突破隊に混じる。 ケーナとオプスは皆が【遮断結界】の出入り口付近から離れたのを確認し、外の指揮を白竜とサイレンに一任して入り口を塞ぐ。 もののついでに【物理防御上昇】と【魔法防御上昇】をパーティー単位で行使しておく。

「じゃ、ハクちゃんとサイレン、後よろしく」
「お任せを」
「リョウカイシタ」

 恭しく頭を下げるサイレンと、その背後からこちらを見下ろす図体の白竜。 大きさは十階建ての集合住宅にも匹敵する。 滑舌の悪い人語で返答して、ふてぶてしく目を細めた彼。 最大召喚レベルで喚んだところ、どの竜も言葉を解していたので召喚した側がびっくりしていた。 ゲーム内設定では七竜を纏めるのは白竜となっていて、ここでもそれは適用されるようだ。 王が白、宰相が蒼と緑、武官が赤と黒と茶、紫が巫女となっているらしい。 これも竜達の自己申告なので、ケーナは「種族的なものなんだろうなあ」という感覚で捉えていた。 一応ココからプレイヤーのフォローをするため、都市の全体俯瞰図をウィンドウに表示させてある。 事態が冒頭のように急変したのは、中央突破隊が噴水跡の残る広場に到達した時であった。














 パーティーリンクされている各自には、全体がバラバラになっていても会話できる常時会話モードと、個別会話モードが選択できる。 三隊に別れている中で常時会話モードを作動させていると、強襲された時に飛び交う会話が何処の隊の状況判断だか分からなくなる。 そのため各隊の隊長、副隊長だけは個別会話モードで繋がっていた。 南側を迂回する隊は後衛役のサハナが暫定隊長、オールラウンダーだが前衛役の隠れ鬼が副隊長に納まっている。 下は四百レベルからなる八人の隊は、索敵技能を各種使いながら慎重に廃墟の中を進んでいた。

 過去、ゲームの中で見たことのある活気に満ち溢れていた都市は見る影も無く。 石畳は放置された遺跡のようにヒビが入ってボロボロだ。 雑草の生えていた形跡はあるが、それも栄養が行き渡らず枯れてカサカサになっている。 所々剥がれていてその下の地面がむき出しになり、あちこち抉られたように大穴だらけだ。 建物も似たようなもので、扉や窓の無事なものは皆無である。 悲壮感漂うホラーゲームの舞台にも似ている。 時折、生暖かい風に乗って、何かの刺激臭も流れてくる。  

「まあ、それでもお姉様がぶっ壊した時よりはまだ見れたものかも……」
「同感じゃのう」
『悪かったわねっ!』

 全員が同意してこくこくと頷く中、反省はしているが後悔はしていない口調で後方のケーナより声が飛んできた。 失言だったかと首をすくめるサハナ。 他二隊からも『同感だ』とか苦笑する気配が伝わってくる。 『あれは廃墟を超えた……』と言いかけたオプスの言葉が物騒な音と共に途切れたので、皆が慌てて話題を方向転換させた。

「どっちかなんか出ました?」
『いや、何か居るような感じはあるが、静かなものだ』
『こっちもだ。 【直感】に引っかかっている気はするんだがよ……』

 シュピラールとイェーガーも、静まり返った敵地に不気味さを感じているらしい。 どの隊も半分を過ぎた辺りで突然の奇襲を受けるが、プレイヤーの半分が【直感】持ちだったため、慌てず騒がず対処できた。

 まさにそれは奇襲そのものだった。 先ず進行方向にあった一軒家の建物が内側から爆発した。 同時に構造物の石の破片やら、内装にあったと思われるへし折れた家具などが飛んでくる。 たとえ【物理防御魔法】が掛かっていると分かっていても、飛来物があれば避けるのが普通に人間の反応だろう。 全員が慌てて後退したところで、今度は南側、隊の進行方向から見て左手側にあった家が爆発した。 敵性反応は感知できるので、必然的に背後を取られないような位置へ、サハナの判断で移動する。 もうもうとした粉塵が治まりかかったところで、内部から現れたものが視認出来た。 四トントラック程はあろうかという魔獣である。 赤と黒のまだら状にぬめぬめとした皮膚を持つカエル、半開きになった口からは巨大な大蛇の首が鎌首をもたげていた。 背中には不釣合いではあるが、ヘラジカのような立派な角が翼みたいに生えている。

合体魔獣(キメラ)かっ!?」
「「「「うへえ……」」」」

 全員の胸中を一人のプレイヤーが代弁した。 左側の家から現れたのはでっぷり太った甲冑。 ヘルムのカバーを跳ね上げて、中から出ているのは無数のタコの足だ。 関節は巨大な目玉にすり替わり、アンバランスな球体関節人形のようにも見える。 

 合体魔獣(キメラ)はゲーム中では割とポピュラーなモンスターで、廃墟やダンジョンに多く配置されていた。 二体から三体の既存の動物を合体させた容姿をしており、特別な地域(エリア)でも無い限り、物理攻撃と場所に応じたレベルさえあれば苦も無く倒せる。 これのバランスが崩れ去ったのが、運営がデザインに困って特殊アイテムと引き換えに、一般公募を出したのが原因である。 ゲームに熱中していた絵師の卵からプロまでが遠慮無しにこれに飛びついた。 ただデザインを提出するだけならばまだ良かったが、中にはデザイン画に付随して攻撃方法までを事細かに書き出して来る者も。 しかも良く考えもせずに運営はそれをそのまま採用し、かくして凶悪なモンスターが一時期初心者エリアにまで蔓延ったのである。 後日、有力ギルドが手を結び、大規模な掃討作戦を決行。 時を同じくして大半のプレイヤーからの苦情もあり、合体魔獣(キメラ)の大繁殖騒動は幕を下ろしたのだ。

 そんな経緯を経た記憶のあるプレイヤーもおり、忌避の視線が甲冑とカエルに突き刺さる。どちらもレベルは三百前後、プレイヤーの敵ではない。 しかし、状況は反撃するどころではなくなっていた。 続け様に周囲の建物が爆発したのである。 幾ら格下と言えども、何の特殊能力を持っているのか分からない相手に囲まれては身動きもままならない。 背後に壁を添えられる位置まで移動しようとすると、進行方向が爆発。 遮蔽を取ろうとすると背後で爆発。 爆発に追い立てられるように街の中を走りぬけ、サハナの隊はいつの間にか中央広場へ誘導されていた。 戦闘体勢をとったまま困惑したイェーガーと視線が絡み合う。

「どうした! 何があった!?」
「待ち伏せですっ! 敵は家の中に潜んでました!」

 その広場を挟んだ反対側、北側に並ぶ建造物が次々に爆砕し、粉塵の中からシュピラールの隊が駆け出る。 驚いた表情をしたシュピラール同様、プレイヤーの視線はサハナたちの背後に向けられていた。 同じことが反対側でも起こっている状況に、誰もが「やられた!?」と舌打ちした。 燻る粉塵の向こうに覗く影、影、影。 プレイヤー達の周囲は大量の合体魔獣(キメラ)に囲まれている。

「ええい、魔獣にこんな待ち伏せする知能とかあんのかよ」
「グダグダ言ってねーで反撃だ! 固まっちまったがこれなら外側に向かって幾らでもブチ込み放題だぜ」
「よぉーし大根使いドモ、俺等の真価を見せるときだぜ!」

 イェーガーが紅い鎧をガチャリと鳴らし、身の丈を越える大剣を肩に担ぐ。 シャイニングセイバーやコーラルも獰猛な笑みを浮かべてそれに習う。 さらに幾人かの大剣装備者が自らの得物を肩に担ぎ、全身を沈める構えを取った。

「何で『大根』?」
「それはの、大剣の初心者用が刀身白くて柄が緑だったからじゃ」

 何気なく疑問を口にしたクオルケに、ハルバードを二本構えた隠れ鬼が答えを返す。 「ああなるほど」と頷いたクオルケも両手の武装を鞭に替え、風を切って回転させ始めた。 各自が武技を用意する中、数少ない後衛役のサハナやシュピラールは【物理攻撃上昇】魔法や、【器用度(DEX)上昇】魔法を使用する。 全員にその効果が行き渡ったと同時にモンスターの波が押し寄せ、「ブチかませえええええっ!!!」の号令と共に黒い波に向かってその威力を解き放つプレイヤー達。

戦闘技能(ウエポンスキル)巻き込まれる砂竜ブレイクダウン・ストーム

 真っ先に飛び出したのは大剣使い達。 ハンマー投げの要領で大剣をぶん回し、たちまち視認出来ない速度(トップスピード)で回転する。 それが周囲に風を纏い、暴風域に達すると一塊の竜巻と化した。 黒い波となって押し寄せる魔獣の群れに突き刺さった端から切り刻む。 竜巻に触れた魔獣は何重にも横に断たれ、肉片は暴風と共に上空に舞い上げられる。 二つの竜巻に挟まれた魔獣などはシュレッダーに掛けられた紙のようにズタズタにされている。 魔獣の上げていた歓喜の咆哮は、たちまち絶叫に変わっていった。


戦闘技能(ウエポンスキル)峡谷招爆砕(キャニオングラインド)

 隠れ鬼は両腕の巨大なハルバードを自身の前方、扇形に広げて地面に叩き付ける。 石畳が放射状に陥没して行き、足を取られた魔獣達が次々に姿勢を崩していく。 慌てて飛び上がって逃れようとしたモノもいるが、遅い。 足元から石の槍が怒涛のように出現し、捉えた魔獣に風穴を開けていく。 無防備な下方から襲い掛かる無骨な石槍に、百舌の早贄の如く串刺しにされあっけなく絶命していく魔獣達。 なんとかそれを避けられたモノもいたが、別のプレイヤーが放った衝撃波の刃に両断され、爆炎に骨まで焼かれていった。 


戦闘技能(ウエポンスキル)旋輪斬(スライサー)・連射】

 クオルケ等の鞭持ちが数人、高速回転させた鞭より風の丸ノコを作り出し、プレイヤーの武技の隙間をムリヤリ通り抜けようとした魔獣を片っ端から裁断していく。 一匹に付き四~五枚飛んでいくので原形を留めぬまでバラバラにされる魔獣。 破壊力優先の武技よりはコストが低く、一度に大量射出することも可能でコントロールもしやすい。 前に突出した大剣使い等の竜巻にビットのように纏わりつき、その威力を倍化させていたり、【突進】していったプレイヤーのフォローに回っていたりしている。


魔法技能(マジックスキル)轟炎槍(ギガ・レアランス)連弾(ヴィジョン):ready set】

 サハナとシュピラールの頭上には長さ二メートルもあろうかという炎の槍が無数に出現する。 「行けっ!」「GO」と言う号令で次々に射出され、竜巻や突出したプレイヤーの頭上を越えて最後尾にいた魔獣に突き刺さっていった。 燃えるよりは触れた端から一瞬で炭化、悲鳴を上げる暇も無く、その身をボロッと崩れさせて即絶命する魔獣。 豊富なMPを持つサハナによって周囲を塞ぐ魔獣の群れ全域に亘って炎槍の雨が降り注ぎ、本能に任せて逃げようとしたモノを一匹残らず炭に変える。


 最初の号令から十五分も経った頃には、周辺を埋め尽くしていた魔獣は全滅していた。


「お、ちょ、って……おわっ!?」
「ううおおお……」

 怪我人等は皆無であったが、一番別の意味でダメージが酷かったのは大剣使い達である。 やはりゲーム時と勝手が違い、高速回転によって目を回し「気持ち悪い」と青い顔をして呟くだけの者。 存分に魔獣を切り刻んだまでは良かったが、武技を解いた途端に上から降って来た肉片や血煙を浴びて赤や紫色に染まってしまう者。 【浄化】を使えるプレイヤーが片っ端からそれを綺麗にしていく。

「お?」
「あれ?」

 その作業の最中に、正門の方角から空に届こうかという火柱が立ち昇ったと思ったら全員を赤いエフェクトが包む。 【火炎耐性】の全体魔法である。 使用したのは残してきたどちらかなのは明白で、ついでに何かの咆哮がこちらまで轟くことに幾人かが眉をひそめた。

「はてさて、何と戦っていることやら……」
「お姉様なら平気だと思うんだけど」
「まあ、俺等が行っても援軍にもならねえ。 あっちは任せようぜ」

 シャイニングセイバーとサハナとコーラルがそう言うと、全員が同意するように頷く。 わざわざ足を運んで『魔女』と『策士』の戦いに巻き込まれたくは無い。 限界突破には限界突破なりの戦い方に任せ、さっさとこの騒動(クエスト)を収束させるべく歩みを進める。

「よおーし、平穏な生活の為にー!」
「「「「「おおおおおおおおおおおお────!!!!」」」」」

 イェーガーの号令に雄叫びを上げ、駆け出していくプレイヤー達であった。

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