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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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53話 誰かが暴挙に出てみよう

「よお、ここは闘技祭の登r……、いやいや、ダンナ!? あっしは何も悪いことなどしておりやせんぜ。 しょっぴかないでくだせ……え? 違う? ……なんでぇ驚かすない、使用人なんてぇ連れてるからてっきり御貴族様かと思っちまったじゃねえか。 あ、ああ、ここは闘技祭の登録所窓口だ。 しょぼくれたなりだが、俺はれっきとしたこの国の兵士をやってるぜ。 ここに来たってことは旦那も闘技祭に出るんだろ? ほれ、登録用紙だ。 ここに名前を書いてくれればいい、後は出場する資格を得るためのテスト……、は? 個人で出るんじゃない? いやいや旦那ダンナ、たった一人で団体戦は無理だぜ。 ほれ、そこの看板にも書いてあんだろ? 『団体戦は二人以上から』と。 は? え? そっちの姐さんも一緒に出るゥ? オイオイ使用人が荒くれドモの相手をするってぇ正気かよ、もう一度考え直してみたほうがよくないか? それに相手は少なくても四人以上いるぜ、怪我で済まねえ前に止めといた方が……。 はあ、考えは変わらない? やれやれ、世の中には奇特な奴もいるもんだなあ。 俺は止めたからな、後で後悔すんじゃねえぜ。 ほいっと、こっちが団体戦用の登録用紙だ。 こっちには名前と人数と、出来ればパーティ名も入れといてくれや。 ああ、その方がやりやすいってこったな。 ああ、それとこのカードをやるから冒険者ギルドへ持って行ってくれや。 あ? さっき言ったろ、予選的なテストがあるって。 それで冒険者ギルドから出る専用依頼を闘技祭開始二日前までにこなして、ギルドから出場権となるエンブレムを貰ってきてくれ。 それをまたここに出してくれれば旦那の予選は終わりだ。 団体戦は初日の午後からだな。 まあ、それもまずはギルドから出る仕事が終わってからだが。 健闘を祈るぜ、旦那。 あとそっちの別嬪さんもな」








「こんにちは、ようこそ冒険者ギルドへ。 本日は何の御用でしょうか? ああ、はい、分かりました、闘技祭の団体戦予選用の依頼ですね? それでしたらこちらになります。 はい、そちらはバーディウムと呼ばれる甲虫の殻を取って来て頂くという仕事です。 でもこの甲虫、オウタロクエス方面の森林にしか生息しないという話ですので、行き帰りだけで期日ギリギリになりますけれど大丈夫ですか? はい? 今までに受けに来られた数でしたら、あなたで丁度十組目ですね。 はい、では頑張って下さいね」



「……ねえ、今の魔人族の人、とてもパーティ組んでるようには見えなかったけど、もしかして一人だけ?」
「そんな訳ないでしょう。 団体戦は二人以上からだって、闘技祭の受付でも確認してるはずよ」
「そ、そうだよね。 代表で来ただけだよね、なんか外で待ってたの女性一人だったのは気のせいだよね!」
「冒険者の方達を詮索しても私達に出来ることはないですから。 せいぜいその方の身に合った、生還率の高い仕事を紹介して差し上げるだけですし……。 たまにいる例外を除けば」
「ああ、ケーナさんとかね。 最近あんまり見ないけどどうしたんだろうね?」
「なんでも子供を拾って、どこかの村に腰を落ち着けたそうだけど」
「素敵な旦那さんでも見つけたのかなあ?」
「さあね、ほらお仕事お仕事」
「あ、すみません。 こんにちは、冒険者ギルドへようこそ。 本日は何の――――――」














「やれやれ、ちょっと遅くなっちゃったなー」

 オプスの指定した日より一日遅れてフェルスケイロに着いたケーナは、街門をくぐって辺りを見渡してから呟いた。 つい八日前に来た時は守護者の塔にしか行かなかったので、街の様子をあまり気にしていない。 勿論、『対の瞳』からの映像は逐一確認していたが、それは街の様子よりきちんと映像が見えているか否かだったので、賑わいまでは完全に予想の範疇外であった。 まだ本試合まで十日以上あるというのに道は人々で溢れている。

 ケーナが見た感じで言うならば、テレビで見た朝のオフィス街に放たれる人々の群れといったような。 行商人やら冒険者やら吟遊詩人やら、徒歩や馬車がひっきりなしに街門を通る。 中には待ちきれないのか馬車の上で玉乗りに興じる道化師やら、数人単位で固まって即興弾き語りオーケストラと化している吟遊詩人の集団やら。 酷いのは血の気の荒い武装した連中が人混みの中で喧嘩になり、速攻で騒ぎを聞きつけて集まってきた騎士に取り押さえられてブタ箱行きになっていたり。 あちこちで門をくぐって来た連中の喜怒哀楽にちなんだ騒ぎが起きている。 逆に街を出て行く者は入って来る者より少なく、そのうち街が人で溢れかえるのではないかと、つい心配になってくるケーナだった。

 道端に寄って雑多な人種をぼーっと眺めていたケーナは【直感】で視線を感じ、我に返った。 悪意のなさそうなこの視線は、おそらく『隠者』だろうとあたりを付け、【姿隠し】を使う。 近くで足を休めていた旅人が、いきなり姿を消したケーナに驚いていた。 それには構わず【跳躍】で大通りに面した宿屋の屋根へ跳び上がったケーナは、姿勢を低くしたままきょろきょろしていた見覚えのある男を見つける。 そして魔力刃を作らないようにしたルーンブレイドの刀身を彼の喉元へ。 ビクッと小さく体を跳ねた彼は、伏せた状態で両手をおそるおそる上げた。 そしてかすれた声で背後の不審者(ケーナ)へ問い掛ける。

「おいおい、俺はなんもしちゃあいねぇぜ……」
「私の故郷にはストーカー禁止法という法律があってねー」
「……あんたかよ……」

 背後に居るのがケーナだと分かった彼はがくーっと肩を落とし、安堵と呆れが混じった溜め息を吐く。

「知らんうちに捕獲されるわ、いきなり背後を取られるわ、隠者として自信無くすぜ俺ァ……」
「安心して、たぶん私等が規格外なだけだと思うから」
「そう願いたいね」

 ルーンブレイドを仕舞うケーナに伏していた身を起こす彼は呟く。

「そっちから近付いて来るからには何かあるんだろ?」
「ええ、ちょっと注意して貰いたい事があって。 こっちで私と合流する予定の者がいるんだけど、隠者のアナタにいい感情を持っていないのよ。 そいつ、アナタを問答無用で撃墜する可能性があるから、監視は止めておく事ね」
「怖っ?! なんだよ、その殺人鬼みたいな奴は!」
「殺人鬼じゃないけど、私と違って物理攻撃で城くらい吹っ飛ばす人だから気をつけて」
「どーやって対処しろっつーんだ……」

 ひょいひょいと屋根を降りて行くケーナの後ろ姿に彼は呆然と声を投げた。
 人混みが凄いので大通りにそのまま戻る訳にもいかず、ひとつ隔てた細い裏通りに降り立ったケーナは、事前にオプスからフレンド通信で連絡された宿屋まで移動する。 以前に泊まったことのある人族お断りの宿屋だ。 薄暗い上にゴミやら廃品やらが散らばる裏通りを、ボロを被ってうずくまる浮浪者らしき者に胡乱な視線を投げかけられながら移動して、冒険者ギルドが見えた辺りで大通りに戻る。 宿屋の入り口をくぐると、女将さんや見覚えのある客やらが驚いた表情でケーナを迎えた。

「こんにちは、私に何か?」
「ああ、いや。 ケーナの部屋は二階に取ってあるよ」

 女将さんに挨拶をすると返って来た言葉はよく分からないものだった。

「はぁ? いや、確かに部屋が空いてないか聞こうとしましたけど、取ってあるっていうのは何ですか?」
「アンタの連れっていう魔人族のお方がね、部屋を取っていったんだよ。 オプス、とかいう方に心当たりあるかい?」
「はい、友人ですけど……、『お方』?」

 腫れ物にでも触るような言い方に首を傾げるケーナへ、昼間っから飲んだくれる席に座っていた者達が教えてくれた。 曰く、使用人をつれていてその従者がとてつもない美人な上、物腰も柔らかかった。 ……と。 大方、当人が横柄な態度の上にメイドが完璧っぽいから、貴族かなんかのお偉いさんと間違えられているのだろう。 あと、関係性とかも。 一応その辺りの誤解は解いておかなければ、この手の誤りは後々まで糸を引きそうだからだ。

「何を誤解してるのか知りませんがオプスとは昔からの友人で、アイツは貴族とかじゃないですよ?」
「そ、そうなのかい?」

 安堵する女将さん、所在なさげに揺れていた猫人族の尻尾が安心したように垂れていく。 普通に貴族なんかがこんな所で一夜の宿を求めるなんてなさそうだが、ロンティやデン助を見ているケーナには前例があったのかもしれないなという感想だ。 女将さんに教えて貰ったのは、二人ないし三人が泊まれるこの宿屋で一番広い部屋だった。 行ってみた所、ぴかぴかに掃除され、それをやったと思われる者は二つしかないベッドの片方に腰掛けて窓の外をぼんやりと眺めていた。

「サイレン?」
「……! これはケーナ様。 すみません、気付きませんでした」

 部屋の扉を開けても気付かないので呼んでみると、サイレンは慌てた様子で立ち上がり恭しく頭を下げる。 部屋の中は彼女以外に人はおらず、その主であるオプスの姿がないことに眉をひそめるケーナ。

「一人だけ? オプスはどうしたの?」
「ご主人様でしたら依頼を片付けに遠出しました。 数日掛かるかもしれませんので、私だけがケーナ様を待つために残りました」
「あっちゃ~、じゃあ一日待たせちゃったんだ。 ごめんね、村の仕事頼まれてたら延びちゃってさ」

 仕事と言うのは村長に頼まれて村を拡張する為に、柵に設置した守護像(ガーディアン)を移動させる事であった。 村長の話によると移住希望者がいるらしく、これを機会に村をもう少し広げようと村民の寄り合いで決まった。 樹木の切り倒し作業をゴーレムとロクシリウスに任せ、ケーナがやったのは木を柵に変える作業(さすがにそんな技能は無いので村人に教わりながら手作業)と守護像の移動くらいだ。 今回分かったのは、ゴーレムが作成者以外の命令にもそれなりに従うという事だろうか。 実験してみたら、ケーナとロクシリウスとロクシーヌには従うが、ルカやロットルの命令には耳を傾けもしなかった。 レベルの有無も関係しているのかもしれない。

 それはそれとして、ケーナがサイレンから得たオプス情報は、冒険者ギルドからの依頼で出掛けたこと、ケーナへの伝言にメイドを残して行ったこと、の二点である。

 サイレンからしてみれば、主に口止めされていてケーナに伝えたことなど真実の半分にも満たない。 この王都に着いてからあるイベントへ申し込んだとか、その参加権を賭けての依頼をこなしに行っただとか。 むしろケーナが最初の部分だけ聞き、「ふーん、オプスも真面目に冒険者をする気になったんだね~」と感慨深く呟いて、それ以上追求してこないのも主の予想範囲内というところだ。 サイレンも仕える主はオプスだとは言え、ケーナも同じように敬愛すべき人物なのは変わりない。 根掘り葉掘り聞かれれば全部喋るつもりでいたが、当人に聞く気がないのではメイドがでしゃばる訳にもいかず、罪悪感に心が痛む。

 サイレンが所持するティーセットを持ち出してお茶の用意をしようとするのを制したケーナは、彼女の手を取った。

「日がな一日、宿屋に籠もってるのも退屈だったでしょう? 遊びに行こ」
「は? いえ、しかし、私は留守を守るのが御役目ですし、苦痛と感じたことなどありません」
「じゃあ、オプスの代わりと言ったら悪いけど、ぼっちで回るのも寂しいんでこっちに付き合ってよ。 私がここに来たことでお留守番の役目も果たしたでしょ?」
「あ、あの、ケーナ様?」

 何か取り繕うとするメイドに構わず、主導権にモノを言わせて宿屋の外へと引っ張り出したケーナ。 

 サイレンを宿屋から連れ出したケーナは市場へ直行。 人出が多かったので辿り着くには普段の二倍時間を必要とした。 その場で食べられるものに目が行くケーナと違い、サイレンは業務用慧眼にシフトチェンジ。 あちこちの食材を手に取るなり、店主に鮮度や調理法などを質問する。 その姿はスーパーのタイムセールに群がる熟練の主婦の如し。 露店でそこまでこだわる者も珍しいのか、あっさりと割引交渉に応じてさっさとサイレンを店から追い出す若い男性。 対抗するように畑の苦労話まで持ち出して舌戦の応酬を開始するおばちゃん。 諭すような口調でサイレンですらも煙に巻く白髪のお婆さん。 普段購入して来る品物に無駄が多いと苦情を言われ、打ちのめされるケーナ。

「いい機会ですので、ケーナ様には食べ物の選び方というのをきっちりと熟知して頂きましょう」
「うわぁん、サイレンもスパルタだったよぅ!」






 ケーナがくどい説明講師と化したサイレンから解放される頃には市場を四周もしてしまっていた。 未だに市場で余念のない買い物をするケーナ家のメイド長。 いつぞやに末息子と肩を並べて串焼きを食べた木箱の山に腰掛け、精も根も尽き果ててぐったりしているケーナ。 全身鎧とマントで着飾った人物がその肩を叩く。

「なーにぃ……?」
「なにしてんだお前、そんなとこで?」
「あ、……しゃいにんぐせいばぁかぁ……」

 うつろな瞳を向けられてビビるのは銀色の竜人族(ドラゴイド)、フェルスケイロ騎士団長のシャイニングセイバーである。 この世の全てに諦めがついた、とも取れるケーナの様子に不審なものを感じて、一歩近付くシャイニングセイバー。 しかし、瞬時にケーナとの間に立ちふさがったメイド服の黒髪エルフからただならぬ威圧感を向けられ、背中の大剣(えもの)に手を伸ばした状態で固まる。 身動きできない理由はいつの間にか喉元に当てられていた湾曲刀(シミター)のせいだ。 

「我が主の盟友に手を出そうとする不届きな輩は、その首叩き落しますよ?」
「どっから出てきやがったテメェ。 俺はそいつの……、あー、ええと、友人だ」
「この人「友人」って単語に躊躇したよっ!?」

 心配した対象から瞬時の突っ込みを受けて「なんだ、元気じゃねえか」と苦笑するシャイニングセイバー。 そのやり取りを見ていたサイレンは二人の関係が分かったらしく、武器を収め「失礼致しました」とシャイニングセイバーに非礼を詫びる。 その後は一歩下がってケーナの斜め後ろについた。

「ふう。 おっかねえメイドだな……。 そいつもプレイヤーか?」
「サイレンは召喚メイドだよ。 もっとも私のじゃなくてオプスのだけど」

 知らないだろうからゲーム在住一万時間越えの商品、鈴のアイテムについて説明するケーナ。 改めて眼前の少女が筋金入りの廃人だったことを再認識するシャイニングセイバー。 今更驚くことでもないのでもうひとつの疑問点を尋ねる。

「そのオプスってのはなんだ? そっちはプレイヤーか?」
「オプスはオペケッテンシュルトハイマー・クロステットボンバーの略で、魔人族でスキルマスターNO.13でおんなじギルドの仲間で──────」
「いやいやいやちょっと待てっ! スキルマスターの魔人族って年がら年中コート着たアレか? 前に言ってたアレなのかっ!?」
「はっはっはー、せいかーい」
「おおおおおおおおお……」

 頭を抱えて身悶えるシャイニングセイバー、なにかトラウマでも刺激したらしい。 銀環でも装備しないと例の称号持ちだとは判別しにくいケーナに比べ、魔人族専用特殊服である黒いコート『分刻みの悪夢デッドリンク・カウント』が標準装備なオプス。 彼の場合は他の魔人族プレイヤーより個人の特定がしやすい。 それとセットで扱われたりするために、ケーナの正体もバレやすい。 つまり逆に考えれば、『銀環の魔女』とセットになる魔人族、しかもスキルマスターとくれば『リアデイルの孔明』であるオプスしかいないのだ。 確か前に説明を受けていたはずのシャイニングセイバーであったが、日々の激務のせいで忘れていたらしい。 当事者からすると綺麗さっぱり忘れていたい悪夢である。

 国の騎士団長と言うシャイニングセイバーの立場からすると、この都市を単独で滅ぼせる戦力が二人も揃っているという前代未聞の事態である。 ケーナの性格を知らずに二つ名だけで判断するプレイヤーならとっくに都市を離れていてもおかしくない。 まあ、ケーナはそんな暴挙をしないとシャイニングセイバーは分かっている。

「……で、そのオプスとやらは何処だ?」
「んー、今はギルドの仕事で出かけてるよ。 そうだよね、サイレン?」
「はい、戻るのはまだしばらくかかるようです」

 事前に主より連絡を受けたのか、きっぱりと答えるサイレン。 今ここに居ないのに安心すべきか、知らないうちに王都に入り込まれるのを危惧すべきか。 腕組みに難しい表情をしてうーんと唸るシャイニングセイバー。 この手のプレイヤー相手には事欠かなかったので、彼が何を考えているのが分かるケーナは説得力がなさそうな気もしたが、一応擁護しておく。

「なんだかオプスを勝手に物騒な方面の者とか決めつけてそうだけど、理由もなしに都市落しとかしないよ?」
「イマイチ安心できねえ。 戦争の時に都市戦があって街中に仕掛けられたトラップでエライ目にあったぞ。 どんだけ金つぎ込んでたんだよ、アレ……」

 トラップ系統の簡易仕掛け(ギミック)は使い捨て課金アイテムだ。 それでも数を揃えれば簡単にゼロ四桁は飛んでいく。 今になって思うとオプスは課金アイテムと開発者権限を生かして、強引に捻じ込む方法を取っていたかもしれない。 ちなみにこのエピソードには防戦のため都市に篭っていた味方が、トラップのせいで出歩けなくなったという間抜けな裏話がある。


「それで、シャイニングセイバーは何してたの? 騎士の仕事はサボリ中?」
「おいおい騎士団長が率先してサボリとかありえんだろう、見回りだよ。 この時期はあちこちから人が集まって来るモンでな、色々揉め事に事欠かん」
「デン助探しに来てるのかと思った」
「殿下なら、以前に一度だけ誘拐事件に発展した騒ぎに巻き込まれたことがあってな。 それ以来この時期には充分な監視付きで城の中から出してもらえないようになってるぜ」
「冒険者にペラペラ喋る内容じゃないよね……」

 口の軽い騎士団長に呆れるケーナ。 それに対して「大司祭の母親が何言ってるんだ」と皮肉で返すシャイニングセイバー。 コーラルから堺屋との関係を聞いているので、ケーナの行動が流通事情を変動させそうで恐ろしい。 フェルスケイロの王家にも繋がりがあるし、オウタロクエスの女王から届けられた親書にもケーナの名前が記されていたらしい。 それを王から聞いたシャイニングセイバーは一介の冒険者の保有権力じゃねーなと背筋が寒くなった。

「今日は暇だし、一緒に行動してもいい?」
「別に構わんが、手を借りるかもしれないぞ」
「いいよ~、個人的な友人の依頼と言うことでロハにしておくわ。 サイレンもいいよね?」
「ケーナ様はなさりたいことを勝手にやれば宜しいのです。 私はそれに付いて行くだけですわ」

 気にした様子もなく微笑むサイレン。 彼女がオプスから命令されたのは主不在の折にケーナの役に立つことだ。 本来なら一般の冒険者に対してシャイニングセイバーがいるだけでも過剰戦力気味なのだ。 三人も揃うと只の越えられない壁である。

 その日は夕方までシャイニングセイバーと街中をパトロールし、酔っ払いの喧嘩やモメ事を仲裁していたケーナ達であった。 以前の王都襲撃の際にケーナの強さを目の当たりにした冒険者諸氏は呆気なく引いてくれたが、聞き訳が悪い者達には遠慮無くメイドが鉄拳制裁を下す。 手加減も絶妙なメイドのお陰で、殆どケーナやシャイニングセイバーが手を出すことなく終わった。 




 余談ではあるが、この一団は見回り業務をしていた他の騎士達にも目撃されており、その日のうちに騎士団長二股疑惑がまことしやかに噂されるようになる。 

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