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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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47話 繋ぐ者と転換者

※超展開です。注意!!
 オプスの歓迎会から一夜明けて。 歓迎会にはサイレンも含まれていた筈が、本人は「自分は主の付属品(オプション)ですから」と言い張って遠慮していた。 彼女に対しては村の若い衆が内密で祝っていたという噂もある。

 朝食が終わった後ですぐ、ケーナの部屋に二人で閉じ篭る。 内密の話なのでルカも部屋には立ち入り禁止だ。 取次ぎはサイレンのみにして、オプスと一対一で向き合うケーナ。 さし当たっては何処から話してもらうかである。

「そもそも何だってダンジョンに閉じ篭っていたのよ?」
「色々と訳有りでな。 裏から世界を弄るのに我が表立って動くわけにも行かず、部下に任せておったのよ」
「部下ぁ?」

 オプスの部下ってサイレン以外にいたのかなと、胡乱な表情で聞き返すケーナ。 オプスはしばし顎に手を当てて考えてから「最初から話すか」と結論付けた。

「先ずは前提条件の一つとして……。 お主は【称号者】と言うのを知っとるか?」
「【称号者】って【聖女】とか【占星術師】とか【魔王】とか?」
「世界級しか出てこんのか……」

 【称号】と言うのは地球側の世界に組み込まれたシステムで、それまでの人のあり方を丸ごと変えてしまった異能力だ。 【科学者】が既存の研究員や教授などとは段階の違う発明品を世に発表し、技術史の経緯ごと歴史を塗り替えた。 例えば、ある者はたったひとりで産業革命を起こしてしまった。 【魔術師】を名乗る者が架空の世界や物語の中でしか起こり得ない超常現象を引き起こし、物理学を信奉する者達の常識を根底からひっくり返した。 【騎士】や【剣士】に武器を持たせれば歩兵が戦車のような働きをする。 【錬金術師】の手により何の変哲も無いクズ鉄の塊が、見た事も聞いた事も無い金属へ姿を変えた。 クラスによって『人外級』『国級』『世界級』と分けられ、人外級は数が多くて世界級は公式には三人しか存在しない。

 入院当時に聞いた、誰でも知っている世界級称号者三巨頭を述べたケーナに呆れるオプス。 無理も無い、【称号者】の呼称は社会に蔓延しているが、【称号者】自体は社会に出てこないからだ。

 社会に対して混乱を引き起こした者達は、自分達の在り方を危険と考えて独自のコミュニティを形成して数箇所に引き篭もった。 日本であればその保護区、秋津宮(あきつのみや)か出雲、海外であればWDAワールド・デグリュー・エージェンシー浮上島に固まっている。 日本に居るのは【魔王】のみで残りの二人は海外だ。 時折こっそりと【聖女】が日本を訪れて【魔王】が苦労するのはこの場ではどうでもいいことである。

「あ、でも隣の癌病棟に【名医】がいるって看護婦さんに聞いた事があるよ。 ……あと、叔父さんがリアデイルの説明時に連れて来た秘書の人もそうだったような……?」
「ほう? その者は自分で【称号者】だと名乗ったのか?」
「え? ちょっと待ってね。 …………あれ? 聞いた覚えが無いなー。 あれ、記憶違い?」

 腕を組んで当時の事を脳内からひねり出すケーナ。 当時桂菜は名乗られた覚えも無いのにその人を【称号者】だと特定していた。 なんでそういった結論を出したのか、今にして思えば自分の思い込みが腑に落ちない。 うーうー、唸るケーナを見て吹き出したオプスは話を続ける。

「【称号者】の特殊能力にな、視界に入った【称号者】を特定すると言うものがある。 その者がどういった呼称を持つのかと言うのはまだ別じゃが」
「ああ、それで【称号者】、を……見分け……る……?」

 オプスはニヤニヤ顔で言葉を途切れさせたケーナを見守る。

「ってかまさか私【称号者】っ!?」
「そうじゃ、お主は【転換者】。 存在自体は公表されておらず、【聖女】達の胸の内に秘められておったがの。 ちなみに我も同様じゃて、呼称は【繋ぐ者】と言う」
「ええええーって…………あれ? でも今は見ても分からないよね?」
「この世界では【称号】がその者の存在に重要、といった所ではないからの」

 「へー」と軽く頷いたケーナ。
 本当に理解しているのか不安になるオプス。 

「んでオプスが篭っていた話にこの称号って関係あるの?」
「だから前提条件の一つだと言ったじゃろうが」

 ここでタイミングよく扉をノックする音が聞こえた。 顔を見合わせた二人だが、ケーナが「いいよ」と呼びかけると扉が開き、サイレンが入室した。 二人の視線が集中するが何も言わずに一礼すると、持って来た物をテーブルの上に並べていく。 質素な木のコップが二つ、大き目のポットから果実酒を注ぎ、手元で魔法生成した氷を投入。 そして再び一礼して部屋を出て行く。 大き目のポットはまだ中身が残っているのでそのまま置き去りになっている。 始終無言なメイドエルフが消えた扉を見ていたケーナはオプスに目をやり、額に手を当てた。

「どういう意味じゃ?」
「メイドが有能だなあって、会話の最中喉を潤せって持ってきたんでしょー」
「お主にも二人おるじゃろう」
「空気読まない所で乱入して来そうで、怖いわ」
「……そうか」



 折角の差し入れなのでちびちびと飲みながら話合う二人、話すのはおもにオプスだけど。

「まあ、根本的にぶっちゃけて言ってしまおう。 兎に角端的な真実を」

 言い方に嫌な気配を感じて訝しげな表情に変わるケーナに、タイミングを計るオプス。

「元々VRMMOリアデイルとは、各務桂菜の為だけに作り出された物ぞ」

 ぶ──────っ!

 丁度コップを傾けた所だったので、ぶっちゃけた発言にケーナからオレンジ色の霧が噴き出された。
 悪戯が成功してうむうむと頷いたオプスの喉へひやりとした冷たい物が当たる。 目の前には据わっている目のケーナ、その手にあるルーンブレイドの切っ先は彼の喉元へ。 慌てず騒がずニッコリとサムズアップをするオプス。 ケーナの額に怒りのマークが浮かび上がった。



 ─── 同時刻、ロクシリウスと共に共同風呂の掃除に行こうとした子供達は、ケーナ宅から何か物凄い音が轟いてびっくりした、と証言した。




「さて話を続けるかの」
「次やったら両断するからね」

 何事も無かったかのように話を続けるオプス。 部屋の中は一騒動あったと思えないほど綺麗に片付いていた。 些細な違いといえば、小さな木の丸いテーブルが金属製の物に変わっているくらいだろうか。 一旦爆発しかけたケーナは深呼吸して、自分を落ち着かせる。 この感情の波の幅が大きくなったのは、オプスがいる安心感から自分を出せているのだと気付いていた。 何故か彼と一緒にいると自然体でいられるからだ。

「つか素性バレてたのね」
「特定したときにはもう、お主は入院しとったがの。 そもそも【転換者】と言う称号はあの世界での便宜上な呼称でしかない。 それ自体はお主の魂レベルで定着している重要オプションのような物での、実態は死ぬと世界を越えて転生するというモノよ。 人間の短い生に固定しておくのもどうかと思ったので、ここいらでそろそろ自覚してもらう意味も込めて、此方の世界に誘導した。 ……と言うのが本音じゃ。 お主の余命も少なかったんで、色々骨が折れたわ」
「ちょい待ち。 って事は何か、オプスはもしかして『私』とは長い付き合いな訳?」
「我の【繋ぐ者】は【繋がれる者】でもある。 お主の運命共同体みたいなもんじゃ。 お主が世界を超えて転生すればそれに追従するように我も後を追う、とな。 ああ、そんなしょぼくれた顔をするな。 コレ自体は我もキチンと納得しているし、後悔もない。 只、ここ何周期かは短い生であちこち飛び回る事が続いたのでな、我がその世界で目覚めた時にはお主はもう鬼籍に入っていたのが多くての。 それもあって偶には二人揃って同じ世界でのんびりしようと思って、今回の企画(たくらみ)に踏み入ったわけじゃ」

 言い切ったところで杯を傾けるオプス。 ケーナは自分のせいでオプスがーとか、考えた所で対面から伸びた手によって渾身のデコピンを喰らい、椅子ごと後ろにひっくり返った。 考え事を一気に吹き飛ばされ、額を押さえて起き上がったケーナは、またもやニヤニヤしているオプスを見てむくれる。

「ええい、ちょっとアンタにも迷惑かけたと思って人がしおらしくしていれば、なによ、この仕打ちは!」
「だから申し訳なく思うなと、言っておろうが」
「労わりの心を持っていちゃいけないってゆーの?」
「その配慮ごといらん。 お主はどっしりとあるがままに構えていれば良い」
「ぶーぶー」

 口を尖らせて抗議を訴えるケーナに苦笑する。 蓋を開けてみれば理由は簡単だ、オプスはケーナにより良い生を過ごして貰えればいいのだから。 それは自分に与えられた義務でもないし、強迫観念でもない。
 そこには自分の意思で彼女の幸せを願う、只それだけだ。





 しかし、ややこしい事情が絡むのはこの先である。

 初期には自律行動不能となったケーナの為に仮想空間(リアデイル)での自由を体験させるだけの仕様であったこのゲーム。 その企画書兼仕様書を持って桂菜の叔父である鏡優次(かがみゆうじ)氏にコンタクトを取った所、一時保留との答えを貰った。 期間を置いて呼び出されたオプスが目にしたものは、鏡財閥を母体とした子会社による『VRMMORPGリアデイル』の企画書であった。 あろう事か鏡氏は姪にコレを使用させる条件として、全国展開を念頭に置いたオンラインゲーム企画会社を発足させる事を強要してきたのである。

「って叔父さあああああああああ~ん」
「最初は相当恨んだがな、後になって企画書を見た鏡氏の部下が手を回したことが判明しての。 もうその時にはβ版から正式稼動に漕ぎつけていた頃だったんで、ブレーキも利かんわ」
「人の病室来て愚痴ってないで部下の管理ぐらいしてよー……」

 頭を抱えてさめざめと涙を流すケーナは面白いのでそのままにしておく。

 結局企画と原案を担う人材としてその子会社に組み込まれ、働く事になる。 あちらもオプスを利用する気だったので、此方も潤沢な資金源として機能の拡大に利用させて貰っていたと言う訳だ。 初期の時点で大体の構想は終わっていたので、正式稼動後のシステムやバージョンアップは殆どオプスの手を離れていた。 

「もしかしてβ版の時と正式稼動の時も出現地点が一緒になったのって……、仕組んだ?」
「誰がそんないちいちめんどくさいことをするかっ! たまたま偶然……、と言うか、称号に引っ張られた気もしないでもないのう。 今にして思えば」
「仮想空間にも影響するんだ、その称号……」

 顎に手を当てて考え込むケーナは、自身の「叔父さん」発言で思い出した事があった。 コーラル達が噂で聞いたという『ゲーム中に死人が出た』の件である。 本家直系の子女が財閥子会社のゲームで死亡した、なんて事実が出回れば、色々と痛くない腹を探られる原因になりかねない。 死因の真相は総裁の鏡優次が全力で隠そうとするはずだ。 それで出回る噂とは何なのか? そっくりそのまま言葉に代えてオプスに問う。

「それの噂は桂菜の死ではないのう。 お主の死後、少し間をおいてゲーム中に昏睡状態となり目覚めなくなった者が出たのじゃよ。 間接的に言えばお主の死が原因でもあるのじゃが」
「はあ? 噂の真相は昏睡した人で、その原因は私? …………さっぱり分からん」

 桂菜の死後、その魂を【転換】させる為もあって、VRMMOリアデイルの基礎舞台は境界線にあった。 地球側の仮想世界と此方側の夢想世界と言った中間地点に。 円を触れたギリギリで重ね合わせるように描いて出来る薄いレンズ状の断面図といった部分がそうだ。 元々この世界は幾多の転生中に目をつけていたオプスが候補地としていた世界で、【繋ぐ者】の能力で繋ぎ合わせていた。 プレイヤーとしてしょっちゅう中に居たのも綻びを直す目的があったからだ。

 その最中にメイン目的である桂菜の【転換】が終了し、地球側のリアデイルと此方側の境界線を切り離そうとした矢先の事故である。 生憎と調査をするまでも無く原因が特定された。 余りにも強力すぎる桂菜の【転換】能力が、リアデイルの根幹プログラムに焼き付いていたからだ。 これにより、放って置くと第二第三の事故が多発すると判明したので、ゲームサービスが終了されることになる。 最初の頃はゲーム内部から昏睡者の”繋がり”を無理やり切り離していたが、目覚めた者が記憶混乱を訴えた為、現実(リアル)側の意識とプレイヤーとしての非現実を求める無意識をコピーして、此方側へ切り離す方向で混乱は収まった。 本人の死後、半年も経てば【転換】の力がだいぶ弱まった事もあって、終了間際まで遊んでいた者達の大半が半身(アバター)も残さず綺麗に切り離せた。 それでも根強く残ってしまったのが現在、此方側に存在しているプレイヤーであった者達だ。 その際に二百年も経ってやっと動き出しているのは、心と体のズレを埋めるのにそれだけの時間が掛かったと言う事だ。

 プレイヤーにとって夢と(うつつ)の境界線が曖昧になった原因には、此方側に設置した夢想世界にある。 最初この地は、何者も住んでいない未開の地であった。 夢想世界はこの地にリアデイルを夢として映し出す、ホログラムのような(フィールド)である。 それを鋭敏なアンテナで感じ取った此方側の住民が少数、夢に釣られてここに住み着いた。 そのせいもあって夢の現実の境界線があやふやになり、仮想世界が【繋ぐ者】と【転換】の能力で此方側に定着し始めた。 最も顕著な形で現れたのは能力を持つ二人に縁が深い、守護者の塔やギルド所有の建造物、里子システムなどである。 実は里子システムを発案したのはオプスだったりする。 その影響で先に世界を越え降り立ったNPC達(低レベルとは言え)、此方側よりオーバースペックな連中が今の世界の基礎を作ったと言っても過言ではない。





「うーん……、大体の事情は分かったような分からないような……」
「これ以上噛み砕くともっと複雑になるが、それでよいなら」
「いやいいっ! 遠慮します!」

 胸の前で腕をクロスさせてバツを作るケーナ。 
 プッと吹き出したオプスは腕を組み、感慨深そうに昔の桂菜と今のケーナを記憶の中で見比べた。

「うっ……、なんか悪巧みをしたそうな顔してる」
「なに、最初に会った時の無気力全開なお主と今のお主を比べておっただけじゃ。 他意は無い」
「……は? え? 私ってば現実(リアル)でオプスに会った事あったっけ?」
「一度だけな、リアデイルの説明をしてやっただろう」

「ああ、あの時、叔父さんが連れて来たスーツ着た……秘書みたい、……な、ひと……。 え? ちょっと待って、叔父さんの秘書は亜子姉さんだからあの時一緒にいた人は違ってて【称号者】だと判ったからオプスは【繋ぐ者】だから該当する筈でリアデイルの説明してくれて時々オプスみたいな言葉遣いが混じったからちょっと引っ掛かっててぇ……。 あ、だから何か親近感が湧いたのかあの……女の、ひと?」
「くっくっくっく、やっと気付いたか」




「ってえええええええええええええええええええええええええっ!!!!?!」

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