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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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45話 引き篭もる者に物申す

 ───── 二十二階。

 無言で俯くクロフィアの手を引っ張りながらクロフは進む。 目の前には先導するケーナがいた。 二十一階は時折注意を飛ばすケーナの忠告に従い、壁際を歩いたり、なんでもない道を飛び越えたりして誰も罠に掛からないで済んだ。 先頭を歩いてるケーナは後ろからの強気な発言が途絶えたことに眉をひそめていたが、クロフからサハラシェードとの関係をバラしたと聞いて納得した。 
 まあ、その件は後でどうにかするとして、問題はこの階である。 階段を下りた三人の前に広がるのは真っ暗な空間と、ず───っと先の方にぼんやりと光るこの階の終点。 ためしに【ライト】の魔法を放ってみたのだが、ケーナの手を離れた瞬間に光球は消えてしまった。

魔法無効化領域(アンチマジックエリア)か!?」

 何故か投光機のマジックアイテムもこの階に降りた直後から光量が激減している。 そこから思い当たった現象の心当たりにケーナはやや焦った心境になる。 後ろ二人のサポートに取れる手段が激減するからだ。

「どうせオプスの事だし、真っ暗な空間で一本道を走破しろってんだろーけど」

 如意棒をにょっきり伸ばして暗闇の中の床部分をカコカコ突いてみる。 思った通り真っ直ぐに伸びる一本道らしき部分以外は空洞になっていた。 後ろにいる二人にそこらへんを忠告し、とっとと進んでしまおうとケーナは一歩を踏み出した。 と同時に【直感】で感じた危機感に頭を下げる。 間髪入れずに右側の暗闇から微かな射出音、ケーナの頭があった場所を銀光が通り過ぎ、左側の暗闇に消えて行った。

「って殺す気っ……」

 ドッカアアアアアアアアンン!!!!

 飛んできた銀光、───後ろから見ていたクロフ達にはやたらとぶっとい矢に見えた─── ソレが消えて行った左側の暗闇を煌々と照らす大爆発、飛来した熱波と衝撃波が三人を襲う。 いくらか削られた壁の石材の破片なんかも飛んで来た。 流石のケーナも唖然としてこの爆発を見つめ、クロフとクロフィアの顔もあまりの殺傷力に引きつった。



「ちょっ……」
「な、なんですか、これ……」
「ああああんのぉぉぉぉ、クソオプスゥゥゥ、爆裂弾(ミサイル)なんか仕込んじゃって何してんのっ!」

 その名の通り爆裂弾(ミサイル)。 円筒形の矢状態を爆裂弾(ミサイル)、丸型の投擲して扱う物を爆裂玉(パイナップル)と呼称する。 技能(スキル)自体は中堅レベルくらいでないと手に入れられないクエストだが、威力が作成者のレベル十分の一ダメージな所が脅威だ。 利点は使用制限レベルが低いことで、初心者でも安易に敵を倒せるアイテムのひとつである事。 勿論、限界突破者が作る爆裂玉(パイナップル)は高額で取引されていた。

 ソレが横から飛んできたのである。 作成者がアレなので、一撃でクロフ達が重症患者になりそうな威力なのは間違いない。 くるりと兄妹に振り返ったケーナは視線にビクつく妹を軽くスルー、ニッコリとイイ笑顔を浮かべてこの場の最善策を提示した。

「死ぬ気で走れっ!!」
「「は、はいいぃっ!」」






 ───── 二十三階。

 どっかんどっかんと爆発が追いかけてくる致死エリアを無事に潜り抜けた三人。 走る端から射出される爆裂弾(ミサイル)を、真っ暗闇の中頭を下げつつ全速力で対岸の出口に辿り着いた。 そこから下った二十三階は魔法無効化領域(アンチマジックエリア)では無かったので、階段の下の通路の一角にケーナが【遮断結界】を張り、一時的に休息所を作ったのである。 当人は先行偵察で進んでしまい、ここに居るのはクロフ兄妹しかいない。 二人とも壁に背を預け、完全装備の全力疾走をしたおかげで辛くなった呼吸を整えている最中である。 いい加減落ち着いてきたところで、沈んだままのクロフィアが口を開いた。

「……ど、どうしたら、良いと思いますか、お兄様……」
「ケーナ様の事か?」
「……はい」

 誰が見ても萎れているクロフィアである。 真実を語ってしまったのはクロフだが、実際の所ソレほど気に病む必要も無いのではないかと思っている。 クロフがケーナに持っている印象は、権力には係わりたくない所とやたらと気さくな所と強者な所だ。 普通、「他国の隠者です」なんて告白を聞いてしまえば、警戒するか遠ざけるかはするものである。 それを真っ向から嫌味しか言っていない妹も含めて「友達になれないかなあ?」とか言う変わっている人物に、クロフも未だに戸惑っている。
 今なら女王が言っていた『機嫌を損ねるな』等の言い分も理解できる。 何の代償も無くあれ程の召喚獣を喚び出し、使役する事などクロフの知る限り誰も出来ないからだ。 それでも「ちょっとやりすぎた」発言から察するに、あの二階層を蒸発させたのが全力で無いと見た。 しかも召喚Lv7、即ち未だ上があると思われる。 そんな強者が明らかにケーナより劣るクロフ達の同行を許可して、しかも現状を見る限り守って貰っている。 任務とは言えあの時「付いて行きたい」と言った自分をぶん殴ってやりたい後悔でいっぱいなクロフがいた。

「二人揃って頭を下げる以外、選択肢は無いだろう」
「ど、どうしてお兄様まで頭を下げる必要があるのです? 悪いのは私だけではありませんか!」
「俺が未熟なせいでケーナ様に多大な迷惑を掛けている。 理由はそれだけだ」
 「あのー?」
「お兄様がそんな未熟だなんて事がある訳が無いではありませんか!」
 「ええと?」
「ならお前はケーナ様の力量と我等の力を比較してどう思う? 足手纏いだとは思わないか」
「ええ、まあ、それは……」

「ちょっとよろしいですかあっ!!」

「「なんなんだ(ですか)さっきかr……!?」」

 背後から掛けられた涼やかな、それでいてはっきりとした声に二人は振り向いて絶句した。

「道の真ん中を塞がれると通れないんですよ」

 「おいたしたら駄目ですよ?」と悪戯っぽく微笑んだエルフ族の美女が居た。 美しい透き通るような黒髪に藍い瞳、同姓から見て嫉妬してしまうほど細くグラマラスなプロポーションが、メイド服を纏ってダンジョンの真ん中に存在していた。 正直に言ってボタンを掛け間違えるくらいに違和感ありまくりな光景である。 それがケーナが張った、悪意ある物は通さない【結界】内部に居るのだ。 彼女がクロフ達を害する存在でない事は確かで、居る事が証拠である。 なにやら紙袋を手に持ったそのエルフメイドは呆然としている二人に一礼して、「主が待っていますので」とダンジョンの奥深くへ消えて行った。 硬直したまま見送った二人は、メイドが消えた道とは違う道から戻ってきたケーナを見るなり脱力して突っ伏した。

「ちょっ、何その反応! 傷付くなあ……」
「…………いえ、今ちょっとなにやら幻覚を見たような……」
「お兄様、二人揃って同じ物を見たのですよ。 ……これは白昼夢ですわ!」
「そうかもしれないな!」

「……わけわからん」

 ケーナは二人揃って錯乱しているのだと理解した。







 ───── 二十四階。


「黒髪エルフメイド?」
「……はあ、そうですね」

 テクテクと三人が固まって話しながら歩く。 ケーナの隣にクロフ、その後ろにクロフィアが続いている。 内容は先程二人が遭遇したという不審人物についてである。 しかしクロフィアだけは一切口を挟まない、おどおどと小動物のように後を着いて来るだけだ。 ケーナから見ればコッチの方が不審人物である。 それはそれとしてこの場所で黒髪エルフメイド等と聞けば、ケーナには当て嵌まる該当者が一人いた。 

「サイレンだなぁ、それはやっぱり……」
「お知り合いで?」
「あ、うん。 ここに閉じ篭っていると言った友人専属のメイドだよ。 サイレンがいるって事はやっぱり奥底にいるんだなあオプス」

 どうやら定期的に外へ買い物をしに出ているらしい。 メイドに三十階を往復させるくらいなら自分が動けと文句をつけたいが、その当人はそれなりに他人をうまく使いたがる人物であるから、言っても無駄かとその場で諦めた。 サイレンはケーナと同じ時間並にプレイしているオプスが、ひとつしか稼動させていない召喚メイドである。 「世の男性共が幻想を描いている彼女に相応しいであろう?」とキャラ設計をしただけに、その容姿はギルドの男性陣に好評であった。 コッチの世界ではどれだけ人格破綻しているのか、ちょっと考えたくない所だが。

「ところで、サイレンはまあどうでもいいんだけど」
「どうでもいいんですか。 明らかに普通じゃありませんでしたが」
「あんなんでも召喚メイドだしねー、前衛職だから私とガチンコ勝負できる猛者だよ」
「……分かりました。 どうでもいいです」

 五百五十レベルとは言え前衛職なので、後衛職特化のケーナとしては接近戦に持ち込まれるといい勝負になってしまう。 そうとは知らないクロフは、ケーナ並みに実力のある人物として係わらないことにした。
 足を止めたケーナはくるりと振り返ってクロフィアを睨み付けた。 ビクリと身じろぎしたクロフィアは、まるで死刑を宣告されてからそれを当然のように受け入れる死刑囚みたいに観念しているようにも見えた。

「あー、ところで妹ちゃんも何か言ってよ。 キミなら普段『何だってそんな物騒な知り合いを野放しにしておくんですの!?』とか噛み付いてくるでしょう?」
「いえ、……ええと……」
「申し訳ありませんケーナ様! これは全て自分の不心得の致すところであります!」
「なんで横からクロフさんが謝るの? つか賄賂を受け取った政治家の秘書かっ!?」
「いいえ、お兄様は決して悪くなどありませんわ! ケーナ様! 私の命で済むのなら喜んで差し出しますから、お兄様だけはお助けください!!」
「だから話が見えないと言うより私は生贄を弄ぶ悪の大魔王かいっ!? っていきなり敬語!?」
「いえ、妹だけはどうか! 今生残りの命をケーナ様の為に使う所存であります!」
「今度は奴隷宣言ってどんだけ鬼畜扱いされてんのよ私!?」
「それでしたら私が売り飛ばされてもかまいませんからっ!」
「クロフィアは口を挟むな! これは自分の問題だ」
「お兄様こそ、私の罪を被らないでくれますか!」

 ぎゃいぎゃいとケーナを置いてけぼりにして口喧嘩、主に責任の擦り付け合いをする二人を見て溜息を吐く。 両手を拳に変えて、二人の頭へ振り下ろした。 クロフはいいとしてもクロフィアにとってはこのダンジョンで三回目の衝撃である。 瞳に涙を浮かべ、しゃがみ込んだまま悶絶していた。

「け、……ケーナ様……」
「誰が生贄要求して頭からバリバリ齧る人喰いドラゴンだって?」

 明らかに憤慨しているケーナは腕を組んで、痛みに耐えている二人を睨みつける。 ビビッて身を竦ませるクロフともう半泣きに近いクロフィア。 どうしたものかと苦い顔で溜息しか出ないケーナ。

「まあ、確かにサハラシェードは妹(分)の娘だから私の姪っ子に当たりますが、だからと言って私に逆らう=女王に刃向かう、とはぜんぜん違うから。 私はただの冒険者(だと思う)で国を治めている地位ある立場とはまた別物なのです。 とどのつまりは今までのように憎まれ口を叩いていても全く問題ないんだよ。 だいたい私が姪っ子の権力を笠に着て私利私欲を通す愚かな人物に見えましたか、貴方達は? 何か欲しい物があればちゃんと自分で稼いだお金を使いますし、ウチの家族に手を出す者がいれば、追い詰めて拘束してそんな考えに至ったことを後悔するまでイジメてやります。 妹ちゃんの発言に気に入らないトコロがあったならその場で報復をしていますよ、具体的にはカエルに変えたりゴキブリに変えたりしてね。 結構妹ちゃんの態度は気に入ってたりするんだけど、今のところ私にそんなずけずけモノを言う人はほとんど居ないし。 まあ、そんなんでも怒る時は怒るけどね、殴ったり治したり吹っ飛ばしたり治したりする可能性もあるけれど。 何が言いたいかと言うと、妹ちゃんは今までと同じように私に批判的な態度を取っても、不敬罪で首をすっ飛ばしたりしないよ、ってことだね。 それはサハラシェードも承知しているだろうと思うし、私もさせないから安心するといいよ。 解ったぁ?」

 ケーナにしてみればなるべく害する事も無いと言いたかったのだが、二人とも聞いているうちに顔色が白から土気色に変わっていた。 本人は平穏な言葉を選んだつもりが、半分は脅迫である。 更に説得に半日費やす羽目になり、ケーナは再び精神的に以前の黒歴史と匹敵する誤解を味わうことになったので以下は割愛する。






 ───── 二十五階。

 更に(誤解を解くのに時間が掛かり)ダンジョン内で一泊する、これで内部に滞在するのは四日目だ。 

「もういい加減床ぶち抜くかなあ?」

 ケーナが調理技能で作り出した朝食の果物のパイにかぶりついていたクロフ達は、ボソッと呟いたケーナにギョッとする。 床をぶち抜くイコール、あの炎の巨獣が再びダンジョンを蹂躙するのかと思ったからだ。

「あ、あのう、け、ケーナ……様? またあのアレを?」
「…………直ってない、直ってないよ、妹ちゃん」

 おずおずと切り出したクロフィアの態度にげんなりする。 散々以前の態度のままで良いと言ったのだが、一度此方の立場を明確にしてしまった為にクロフィアは改める気はないらしい。 「女王を敬愛する態度はもはや崇拝の域ですから」とは兄の談である。 逆にバラしたクロフを張っ倒そうかと思ったくらいだ。 他にも頭の痛い事に直面している最中だ。 背後に続く通路の途中に床から看板が生えていて、そこには『二十八階直通通路』と書いてあったからだ。 近付くと脳内に警報が響いているので、通路そのものが罠なのか、看板に触れたりするのがスイッチなのか判別がつかない。 辿り着く先に待っている危険性を考えるに、ケーナが先行したほうが確実なのであろう。 ……が、この階に二人残していくとモンスターにおいしく食べられてしまう未来が垣間見える。  
 この場合最適なのは召喚獣を喚び出して罠に掛かって貰う方が効率的かという結論を出す。 しかし、喚び出す者によってはある程度召喚主から離れると制御を失って野生に戻ったりするので、選出には注意が必要だ。 高レベルモンスターが突発的中ボスになるのは願い下げである。

召喚魔法(サモンマジック):水精:Lv4】

 床に展開した碧い魔方陣からずむーっとせり上がるのは、十本足で体をしっかり支えた直立する烏賊(スキッド)。 大きさは天井ギリギリの高さ三メートル、体躯は青水晶のように透き通ってキラキラ輝いている。 生きているモノでなければ、精巧な芸術品のようだ。 色々と特殊能力を所持している特殊戦専用召喚獣で、その行動範囲は水中だけとは限らない。 感嘆して目を奪われている同行者二人を尻目に、烏賊(スキッド)へ指示を飛ばす。

「そこの罠に突っ込んで下層に下りなさい、下りた先で待機して敵対する物がいたら排除で……」
「それでしたら今までの無礼のお詫びで私が参りますわっ!」

「「…………え?」」

 ケーナの指示を断ち切るかのように、いきなり立候補したクロフィアがその看板がある通路に飛び込んだ。 唐突過ぎてクロフは兎も角、召喚獣に目を向けていたのでケーナすらも反応できない。 クロフィアの手が看板に軽く触れる、「カチッ」と音がして看板の生えた通路が輪切りにされた。 まるで切られたバームクーヘンの真ん中あたりのように通路そのものが横にスライドし、新しい看板無しの通路がソコに嵌る。 リボルバーの弾装が回って新たな弾が装填されるようなものだと思えば良い。 
 通路ごと横にスライドされクロフィアは壁を隔てた隣の通路を見て仰天した。 背後には先の見えない下り坂、そして正面には、投光機に照らされたそれは自身の三倍は在ろうかと言う直径を持つ鋼の玉。 横にスライドされた通路自体はその場で解体されて壁に埋め込まれる。 残った看板は辛うじて転がり落ちる寸前の鋼の玉を支えている。 この先に待つ自身に訪れる解りきった未来にドッと冷や汗が出る。 一歩、二歩と後退するクロフィアの目前で、最後の砦になっていた看板がパタリと倒れた。 重力に従い、見た目からも伺える超重量の轢殺死体製造機が「ゴロ……ゴロ……」と回転を始めたのを見たクロフィアが取る手は一つだった。 プライドも何もかもかなぐり捨てて生存本能を優先させる、これに尽きる。

「いいいぃいぃやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?!!」

 急な下り坂を爆走していく。 自分から望んだので自業自得である。
 壁の向こう側にいた二人には、左斜め下へ向ってドップラー効果で小さく消えていくクロフィアの悲痛な悲鳴と、その後を追うように何か巨大な物が転がっていく音が。 これも悲鳴を追いかけるように小さくなっていった。 

「……そこまで思いつめるほどの事ぉ?」
「そんな冷静に分析している場合ではありませんケーナ様! クロフィアが妹がっ!?」

 半狂乱になって手持ちの剣を壁に打ち付けるクロフ。 流石に見捨てるのはケーナの主義に反するので、待機状態のまま傍に控えていた烏賊(スキッド)に命令を下す。

「直下掘りよ、遠慮無しで溶かし尽くしなさい!」

 ─── シュルルルゥゥ

 息吹ににも似た返答の鳴き声と共に十本の足が器用にとぐろを巻き、広げて組み直す。 足の碧い輝きが色はそのままに性質が変化した。 途端、烏賊(スキッド)が接地している部分から物凄い煙と、目の痛くなるような刺激臭が立ち昇る。 同時に召喚獣が徐々にその場に埋没していく。 自身を濃硫酸溶液に変え、床を溶かして行っているのだ。 みるみるうちに直径二メートルくらいの穴が開き、その底からは更に下の二十六階の床を溶かしに掛かっている烏賊(スキッド)が見える。 ケーナは慌てて飛び込もうとしたクロフの襟首を掴んで止めた。 

「ちょっと貫通するまで待ちなさいって、あの子に触れたらクロフさんまで溶かされますよ?」
「えっ!?」








 ───── 二十八階。

 クロフィアの駆け下りる坂は途中からプールにあるようなウォータースライダーのような形に変化し、直下型螺旋の管状の中を転がり落ちて行った。 鋼の玉はと言うと、通路が管状になった所で停止し、元来た道を上って行った。転がっていったクロフィアはポイッと二十八階のだだっ広い空中に放り出され、数メートル落下して水の中へ。 但し、深さが十数センチも無い浅い所だったので、しこたま体を打ちつけた。 痛みに耐えて体を起こしたクロフィアが周囲を見渡す。 無機質な作られたダンジョンとは違う、天然の鍾乳洞がそこに広がっていた。 天井は今までの三倍以上、沢山の鍾乳石がツララのように下がり、周囲の光を乱反射して第三の光源を作り出している。 ここの光源は仄かに光る水面と、空中に瞬く燐光。 実のところこのエリアも人工に作られたものだが、二百年の間に侵食されてきていた。

 光景に溜息を吐いたクロフィアの周囲の水面が、唐突にざわめく。 前触れも何もなしに十数センチの深さしかない遠浅の湖底から、がっしりとした体躯を持つ異形が幾つも起き上がった。

「……え?」

 苔むした岩のような表皮を持つ、身長二メートル程の二足歩行トカゲ、俗に言うリザードマンである。 つたない槍や錆びた片手剣などを手に持った者達が、ギョロリとした瞳をクロフィアに向けた。 一難去ってまた一難、赤く長い舌をチロチロ出しながらザバザバと水を掻き分けて巣に紛れ込んだ哀れな猫人族(エモノ)に迫る。 慌てて逃走しようとするも既に周囲を十重二十重に囲まれていて、地の利は向こうにある。 数歩も動かぬうちにあっさり捕らえられてしまい、片腕を掴まれてぶら下げられた。 

 シャー
 シェシェシェッ

 獲物についての相談が交わされ、数匹の凶刃がクロフィアに迫った時。

 天井をぶち抜いた碧い輝石がクロフィアを捕まえていたリザードマンの直ぐ脇に着水した。 言わずと知れた烏賊(スキッド)である。 圧し掛かられたリザードマン等は当然の事ながら、唸りを上げて四方に伸びた触腕が固まっていたリザードマン達に巻きつく。 首や腕に巻きついた触腕は異臭を上げながら表皮のみならず肉まで焼く。 奇襲に慌てたリザードマン達は、敵わない相手と見て悲鳴を上げながら逃げ惑う。 その頭上から今度は人をも呑み込む直径の火炎球が幾つも降り注いだ。 逃げるリザードマン達の鼻先に飛来した火炎球は、進路を絶ち退路を断ち、一塊になって戸惑うモンスターを纏めて焼き払う。 浮遊の魔法で烏賊(スキッド)が開けた穴から降り立ったクロフは、へたりこんでいた妹を助け起こす。 彼女の腕を掴んでいたリザードマンは、召喚獣の濃硫酸触腕によって四肢をバラバラにされていた。 ケーナは仲間に当たらないように八方へ光系攻撃魔法や炎系攻撃魔法を放ち、集まっていたモンスターを駆逐していく。 場所が場所だけに盛大な水柱を吹き上げながらだったので、粗方片付け終わる頃には全員が水を被ってびしょ濡れである。 

 召喚獣を還した後に二十九階への階段を見つけ、やっと水より離れた所で全員に乾燥魔法を掛けて乾かす。 この魔法は『干物で有名な漁村が長雨に見舞われて干物が作れない』と言う依頼を受け『魔法を探してから干物を乾燥させる』と言う珍妙なクエストから得て、その後使う機会もなかった。 クエストに使った後はゲーム上用無しになる無用魔法(いみなし)のひとつである。 コッチの世界になってからおそらくは一番使っている魔法だろう。 今みたいに濡れた服を着たまま乾かしたり、洗濯物を雨の中室内で乾かしたり、ドライフルーツを作ったり。 

「何が役に立つか人生ホント分からないよね~」
『ソウデスネ』

 苦笑して呟く。 クロフィアはクロフに引っ叩かれた後、正座させられてお説教中だ。






 ───── 二十九階。

 ちょっとだけ休憩を取るケーナと、延々とクロフィアを叱るクロフ。 先が気になったケーナは二人を置いて先行する。 二十八階は当分モンスターが湧く事も無いので安全だ。 
 やたらと長い下り階段が続き、辿り着いた所には両開きの扉があり、その脇に一人のエルフメイドが静かに立っていた。 ケーナと視線を合わせると、下腹部の前に手を添え恭しく一礼する。

「お久しぶりでございます、ケーナ様」
「やっぱりサイレンね。 元気そうじゃない」

 お決まりの挨拶を交わし、とりあず一番尋ねたい要件を口にする。

「貴女の主はこの先?」
「はい、いらっしゃいます。 その前にひとつ、イベントを受けて頂ければ、と」
「ボスに会うには中ボス戦を経過しろって? オプスが立てたんだから厄介な企画(せんとう)なんでしょーね……」
「はい、申し訳ありませんが、お願い致します」

 困った表情を浮かべて再び一礼するサイレン。 それと同時に彼女の背後にあった両開きの扉が音も立てずにスーッと開く。 中は屋内競技場という位の広さを持つ、楕円形の闘技場になっていた。 拳大の光があちこちに浮遊して足元に何重にも分かれる影を作り出す光源を作り出している。 最初に作った時にはこの中央に女神像のような物が鎮座してあった筈だが、それは影も形も無く、入り口から見える対面上の端に黒い人影が佇んでいた。

「連れの二人は……」
「はい、此方で事情を話し、お引止め致します。 ご安心下さい」
「そう? じゃあ、よろしく~」

 後ろ手にひらひらと手を振って、扉の内側に足を踏み入れる。 背後で音も立てずに扉が閉まったが、それはもうケーナの知ったことではない。 人影が見えた時から【サーチ】で確認したところ、相手が八百レベル強の前衛職だと判明しているからだ。 三百レベル差があるといっても極後衛専門職のケーナにとって、前衛職はかなり脅威になる。 遠距離から魔法で何とかしてしまえば済む話ではなく、これはオプスがチョイスした相手なので苦戦するのは目論見の内だろう。





 各種戦闘用の戦闘パックⅠ(アクティブスキル)を起動させ、ルーンブレイドを二本抜く。 ゆっくりと間合いを測るように近付くと相手の姿形が視認できた。 事前に【鷹目】は切ってある、戦闘中にこれを発動させていると遠近距離感がおかしくなるからだ。 

「ガハハハハ、ヌシが俺様の相手か? 我が名はドレクドゥヴァイ、オヌシに怨みは無いが我が主の命令は絶対。 悪いが倒させてもらう」
「……悪魔か」

 相手は黒い竜人族だった。 只の竜人族でない証拠に腕は四本有り、背中からは赤い突起が無数に生えていた。 上腕二本の腕にハルバードを持ち、下腕左右に一本ずつ片刃の曲刀(シミター)を構えている。 相手が悪魔なので通常の竜人族よりは耐久力(VIT)筋力(STR)が遥かに高い、パワーと打たれ強さはケーナの対極に位置するだろう。

「タチ悪いったらないわー」
「魔法使いといえど容赦はせぬぞ」

 ニヤリと赤い牙をチラつかせて嗤ったドレクドゥヴァイは間髪入れず突っ込んできた。 大上段から叩き付けられたハルバードをギリギリでかわし、同時に突き出された左の曲刀をルーンブレイドで受け流す。 右の曲刀だけは膂力に負けて受け流すまでにはいかず、左肩を浅く掠めていった。 

「いきなりかぁ」
「フフン」

 痛みに眉をひそめるケーナはバックステップして距離を取る。 ゆっくりと振り返ったドレクドゥヴァイはケーナの肩口の傷に満足して頷くも、怪我が白光に包まれ完治するのを見ると怪訝な表情になる。

「【常時回復(リジェード)】か。 ならばそれ以上の斬撃で倒れるが良い」
「出来れば遠慮したいな」

 再び真っ向から突っ込んでくる敵に回避しようとしたケーナは、下腕左右の曲刀が外側を大きく迂回、抱擁のような軌跡を描いて迫るのを見て、回避から防御に切り替えた。 結果、重戦車の直撃を受けた軽車両のように大きく跳ね飛ばされてしまう。 対して突っ込んだ重戦車(ドレクドゥヴァイ)は胸の内側に生まれた爆発により、直線の進行から左に弾かれた。 ケーナはハルバードと左曲刀に対して受け流しを行い、右曲刀には【爆炎弾(イア・ボム)】で応対したからである。 数メートル地面と平行に吹っ飛んだケーナは、体を器用に回転させてルーンブレイドを床に差して急制動、軽やかに着地した。 相手の方は爆発に対し少々たたらを踏んだくらいだ。 敵を見据えたケーナは続けざまに魔法行使。

魔法技能(マジックスキル):load:雷光よ薙ぎ払え(ライトニング)

「ヌオオオッ!?」

 ケーナから迸った数条の雷光は四方八方からドレクドゥヴァイに迫るも、半数は持っていた武器に払われて影響を及ぼしたのは二条くらいだった。 それですら大したダメージには見えない。 やれやれと溜息を付いたケーナはルーンブレイドを一本仕舞い、如意棒に切り替えると突撃準備をしていたドレクドゥヴァイに向って肉薄した。 
 まさか魔法使い側から突っ込んで来るとは予想してなかったドレクドゥヴァイは目を剥く。 交差して突き出された曲刀は「伸びろ」と呟かれた如意棒と火花を散らせ止められる、伸びた先端はドレクドゥヴァイの顔面を強打してその身体をよろめかせる。 その無防備になった腹部に【魔法技能(マジックスキル):load:招雷激射(ザン・ラガ)】を叩き込んだ。 ケーナの周囲に集まった雷光が槍となって射出、無数の突撃を受けたようになったドレクドゥヴァイは後ろに滑るように離されていく。 

「ゴオオオオオオオオオッ!」

 が、途中で石畳に根でも張ったように動かなくなり、咆哮と共に背中と瞳と口から赤い光が噴射された。 突き刺さっていた雷光槍がかき消され、理性を失った赤い眼光がケーナを睨みつける。

「うえっ【狂人化(バーサーク)】か。 やたらと不味い事に……」

 肉体特化の権化、前衛悪魔が使うと洒落にならない技能【狂人化(バーサーク)】。 筋力と耐久力が倍以上まで上がり精神や敏捷度が弱体化する、肉体的ガチンコ勝負を必須とするプレイヤーの最終手段だ。 魔法には極端には弱くなり、効果が切れるまで戦闘状態が解除できないデメリットがあるものの、物理的ダメージが倍以上にまで跳ね上がるので最終ボス戦のもうちょっとで倒せる、とかいう場面には有効である。

 唸りどころか音速を突破したんじゃないかという風切り音を立てたハルバードをスレスレで回避して【短縮キー(ショートカット)】に登録してある魔法を開放、【爆炎弾(イア・ボム)】をいっぺんに数十発放ったような爆発で敵諸共自身をふっ飛ばし、距離を取る。 ……筈だった、その爆発さえ物ともしない狂竜人が爆炎の中から姿を現し、ハルバードと曲刀を同時に薙ぎ払う。 

「ゴオオオアアアアアッ!!」
「ぐっ、あっ!?」

 爆風と共に後ろに飛びのく用意をしていたので致命傷になる傷は避けられたが、それでも莫大な膂力で薙ぎ払われたケーナは胸の部分と腹から足にかけての斬撃で宙を舞った。 壊れた人形のように吹き飛び、赤い血飛沫が転がった軌跡を示すように床を染める。 傷付いた敵の姿に目を細めると、ドレクドヴァイはグツグツと重い声で嗤う。

「痛イダロウ、苦シイダロウ、生ヲ諦メレバ楽ニナルゾ」




「……………………痛い? 苦しい? この程度で(・・・・・)?」




 ほんのりと白い光に包まれていたケーナの様子が一変したのはそこからだった。 痛みなど我関せずと言った顔でゆらりと立ち上がる。 その顔からは表情は消え、瞳には冷徹を超え冷酷とも言うべき冷たい光が宿っていた。 彼女の脳裏に一瞬浮かび上がるのは、あの飛行機事故が起きた直後の惨劇の一幕。

「本当にオプスは人を怒らせるのがうまいと言うか……」

能動技能(アクティブスキル)全ステータス上昇(フルブースト)】 

「ヌ?」

 血をポタポタ垂らしながら立つケーナを蒼い燐光が包む。 ある一定時間全能力値を倍にするが、時間切れになると一日は能力値が半分以下になる最終決戦用技能(おくのて)である。 何か悪寒を感じたのかハルバードを振りかざして大上段に突撃してくるドレクドゥヴァイを一瞥、ルーンブレイドを後ろに投げ捨てて如意棒を頭上で回転させ、待ちハメに掛かる。

戦闘技能(ウエポンスキル)超回転衝撃(フルスイング)

 カッキ───ン!!
「ハベッ!?」

 間合いに入る一歩手前で伸びた如意棒に超高速の打撃を食らったドレクドゥヴァイは、甲高い音を立てて逆方向に打ち上げられた。 錐揉みをしながら闘技場の壁に叩き付けられ、床にボテッと落ちる。 致命傷にも届かないダメージなので薄く嗤って立ち上がる。 しかし、相手は新たな魔法を行使して纏う。

特殊技能(エクストラスキル):load:三重詠唱(トリプルスペル):count start】

 ワイヤーフレームの球体に包まれたケーナの左右にそれぞれ『30』の文字が表示され、徐々に減っていく。 動こうとしたドレクドゥヴァイは身体が引っ張られる感覚に目を見張った。 手を伸ばしたケーナは矢継ぎ早に【魔法技能(マジックスキル):引き寄せ】を実行。 自らの意に反して地面と平行に高速でカッ飛んだドレクドゥヴァイは【戦闘技能(ウエポンスキル)超回転衝撃(フルスイング)】によって、二度目の空中へ旅立った。 

 放物線を描いて飛んだ(ドレクドゥヴァイ)は障害物にぶつかる寸前に別ベクトル(ひきよせ)によって強引に軌道を変えられ、ケーナの元へ。 そして三度目の【超回転衝撃(フルスイング)】によって打ち上げられ、天井へと轟音を立てて突き刺さった。

「グガ……」

 後は落下する途中で【引き寄せ】られて【超回転衝撃(フルスイング)】で天井に激突、の繰り返しである。 時々高位の火炎魔法や雷撃魔法まで飛んできて、【三重詠唱(トリプルスペル)】の効果時間が過ぎる頃にはボロ雑巾のような有様に。 それでもまだ【狂人化(バーサーク)】は解けていても命に支障は無い。 ハルバードや曲刀は散々の打撃の末に折れたりして無くなってはいるが、素手でも小娘一人なら何とかなるだろうと踏んでいた。 その慢心も離れた所に悠然と立っていたケーナが次に行使した技能に脆くも崩れ去った。

特殊技能(エクストラスキル):星の導きⅠ】

 【三重詠唱(トリプルスペル)】のような一日一回しか使えない限定技を再度使用可能にする技能(スキル)だ。 無論ⅠがあるのでⅡも存在する。 愕然としたドレクドゥヴァイとは逆に、悪魔でさえも薄ら寒くなるような笑みを浮かべたケーナはワイヤーフレームの球体を再び纏うと、彼に向って腕を伸ばした。 再開される打撃の惨劇、それが彼の最後の記憶となった。





「お疲れ様でしたケーナ様、お怪我の方は大丈夫ですか?」

 ふしゅるーふしゅるー、と興奮して息も荒いケーナへこともなげに声を掛けるのは、歩み寄ってきたサイレン。 その後ろにはクロフとクロフィアが居た。 しかも途中から戦闘を見ていたのでケーナに対する緊張感が半端無い。 【常時回復(リジェード)】のおかげで戦闘中には傷も塞がったが、装備しているローブや銀の鎧(スキン)にはベットリと血が付いている。

 深呼吸して息を整えて、オプスへの怒りを抑えきれないままコワイ笑顔で振り返る。 サイレンの背後の二人が「ヒイッ!?」と悲鳴を上げて硬直するが、目もくれずにエルフメイドへアイコンタクト。 その凶眼に彩られた瞳は『さっさとオプスに会わせないとコロス』と物語っていた。 流石のサイレンも一歩下がって冷や汗を垂らす。 闘技場の対面に開かれた扉を指し、「あちらへお進み下さい」と一礼した。

 憤慨したままのケーナは大股でそっちへ進み、ゆるくカーブする階段を下って闘技場の真下に位置すると思われる部屋へ到達した。 ダンジョンに潜る前は久しぶりの再会の挨拶をどうしようかと考えていたが、アレだけ激怒した後だとどんな理由もすっ飛ばして、一発殴らないと気が済まない。 鼻息荒く扉を蹴り開けた。 【全ステータス上昇(フルブースト)】効果が未だに継続しているので、ドッバアアアアン! とか凄い音を立てて壊し開けた。

「……んお?」


 そこにいた。 懐かしい容姿の魔人族が。
 相変わらず黒系の装備を好んで着ているらしく、頭から足まで真っ黒だ。 

「ん? ……おお、ケーナではないか。 久しぶりじゃのう、息災であったか?」
「…………お、……プ、……スゥゥゥ」

 彼の現在の姿勢がケーナと言う起爆剤に更なる火種を突っ込んだ。 地獄の底から響くような恨みの募った声色で、歯をギリッと噛み締めたケーナ。 再会の感動で言葉も出ないと勘違いしたオプスは首を傾げる。

「良く見たらお主、ボロボロではないか? 何かあったのか?」

 なにやら平たい菓子を口に咥え、喰いカスを零しながらその部屋にあったベッドに寝っ転がったままのオプスを見て、ケーナは堪忍袋の緒が切れた。


「ぬっ殺す!」
「ゑ?」

魔法技能(マジックスキル):load:古代神の遺産(エンシェントブレード)

 ケーナの眼前に光の棒が顕現する。 それを両手で握り締めた途端、刃に相当する部分が柄から離れた位置に形成される。 白く輝くその刃の部分は直刀の根元部分しか見えなく(・・・・)て、その先は壁にめり込んでいた。 そこの部分だけで幅三メートルもある。 全長だけで言うのならばこの十倍はなければおかしいであろう。 その刃をゆっくりと振りかぶる悪鬼羅刹と化したケーナ。 斬撃対象となったオプスは顔を引きつらせてベッドの上から転げ落ちた。 見えない部分の刃は壁を、豆腐に刺し込んだナイフのように易々と斬り裂いていた。 この時点で上の闘技場に待機していたサイレンとクロフ兄妹は、床を切り裂いて姿を現した光の化け物剣の先端部を見て、一層顔色が悪くなった。 サイレンが二人の手を取り「危険です! 逃げて!」と連れ出してくれなかったら、バラバラに切り裂かれていただろう。

「ちょっ、おまっ、何考えてっ!?」
「やかましいっ! 人が苦労して苦労して苦労して苦労して苦労して苦労して苦労して、コ コ ま で 来 た の に ィ ア ン タ と き た ら ぁ……」

 問答無用とばかりに、情け容赦なく、一片の慈悲も交えず、力任せに振り下ろした。 壁と天井を斬り裂いて部屋諸共ベッドを真っ二つにし、上階の闘技場も寸断する。
 必死で逃げ惑うオプスを追って、三十メートル級の剣をめちゃくちゃに振り回すケーナ(バーサーカー)。 一分と経たず二十九階と三十階は瓦礫の山と化した。












 その日ダンジョン村に住む人々は、滅多に遭うことの無い地震を感じたという。



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