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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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40話 王都襲撃事件(中編)

 今回のフェルスケイロ王都襲撃は『廃都』から流出したイベントモンスターによるものだ。 本来ならばオウタロクエス国で結界の監視をしているため、なにか異常状態が起きた時には周辺国にそれとなく配慮、連絡などが行われる。 例えば騎士団が出て一時的に街道を封鎖したり、国境を閉じたりして対処する筈だった。

 しかし前回漏れ出した六匹のゴブリンとの戦闘で騎士団の半分が行動不能になってしまい、再編成をしている最中だった。 それと今現在オウタロクエス王都の方も人手不足がたたって、それどころではない状態にあった。


 原因は今、目に見える脅威が刻一刻と王都に接近していた。
 大きさが東京ドーム程もある甲羅を背負った巨大な亀である。 腹ばいでノタノタ歩く奴ではなくガラパゴスゾウガメみたいにきちんと胴体を浮かせ四脚歩行する形で、見上げたとしても全貌が捉えられない。

 広大なオウタロクエス領土の国境の縁を二百日ぐらいかけてゆっくり一周する、誰もその存在理由を知らない生物であった。 それがどうにも年々軌道がズレてきているようで、今回に関しては王都直撃コースを取っていたようなのだ。
 もちろん国も色々対策を試していたのではあるが、なんにしろ相手は“山”である。 ちっぽけな人の手でどうしろというのだろうか。 ついでに廃都の結界にも軽く触れてしまったようで、その歪みから出たモンスターが、今現在フェルスケイロに影響を及ぼしていた。

 落とし穴も対象をどうにかするほどの大きさが確保できなくて失敗。 バリケードなどは問題外、魔法も車に対してハムスターが米粒をぶつける様な物である。

 現場が右往左往しているところで物理的な対策を立てている部署とは別に、解析や書物を調べている所からとんでもない報告があがってきた。
 どうやら甲羅の上に建物が建っているらしいのである。 なので『そちらに赴いてから住んでいる者に対して停めてくれるように頼めば、この危機を回避できるのではないか?』という藁をも掴む結論に至った。 直ちに騎士団や冒険者から希望者を集めて山の様な亀に挑む作戦が決行された。 そしてその十数人の無謀に挑む者の中に、エクシズとクオルケの姿がある。

「なあ、もしかしてこれって、ケーナの探していた守護者の塔なんじゃねーの?」
「ああ、そうかもと思ってさっき伝言飛ばしてみたんだがねぇ、『取り込み中』って返って来たさね」
「限界突破が取り込み中かよっ!? いったいどんな厄介事に巻き込まれているんだかなあ……」

 王都より随分と離れた森の中。 挑む者達は各自思い思いの方法で亀を登坂する準備に追われていた。 第一の難関は『どうやって登るか?』である。 前方からはゆったりと迫って来る巨亀。

 どずうぅぅぅん!

 と聞こえてくる一歩が約八十メートルほど。 しばし間を空けて足元から微細振動が伝わってくる。
 エクシズ達はこの亀を見るのは初めてではない。 過去に噂を聞いて見に来たことがある。 まさかそれによじ登る日が来ようとはその時は思いもしなかったが。

「行かんのか?」

 更に予想外が一人加わっている。 決死の特攻隊メンバーの中に混じっていたドワーフが、何故だかエクシズらと行動を共にしていた。 なんでも「おぬしらと一緒のほうが面白そうじゃ」と言う事らしい。 言葉巧みに言い負かされて一緒にここまで来てしまったのだ。 「名前は少々難しいのでな、気軽にジジイとでも呼べばいいぞ」と言われて困惑するエクシズたち。 ドワーフにも色々人の想像できない事情があるのかもしれないと二人は思考を放棄した。

「俺達は俺達なりに登る方法があるが、爺さんは大丈夫か?」
「見くびるでない。 年寄りの蓄えた知識と技を良く見るがいい」
「大丈夫そうさね。 んじゃさっさと行くよ」

 三人は森の梢の遥か上に見える甲羅に向かって行動を開始した。








────── フェルスケイロ side


魔法技能(マジックスキル)黒衝弾(ハザードブラスト)

 ゴブリン闇夜の魔術師(ナイトマスターロード)の杖に真っ黒な球体が形成され、そこから無数の黒い弾丸がケーナ目掛けて撃ち込まれた。 闇系統の範囲魔法で術者から扇状に拡散する限定範囲攻撃魔術だ。 ケーナの左右の逃げ道をふさぎ前進を阻害するつもりだろう。 ケーナは特に驚いた表情もせず、突き出した左腕はそのままに右手に持ったルーンブレイドを下から上に振り上げた。

【飛斬】

 ルーンブレイド特有の特殊効果。 蓄えた魔力を半月型の衝撃波に変えて飛ばし、対象を切り刻む攻撃である。
 ケーナに当たる軌道だった黒い魔力弾だけを弾いていくが、欠点として一直線にしか飛ばないのでゴブリン魔術師は慌てて横に逃げる。 その代わりに後ろで命令を待っていたTS(ティラノサウルス)一匹を縦真っ二つにした。 それだけでも威力が衰えず、更に疫蠍(ウィルスコーピオ)を一匹斬って森の奥深くに消えて行く衝撃波。
 後ろで地響きを立てて倒れた虎の子の配下の惨状を振り返り、冷や汗を垂らすゴブリン魔術師。 ようやく今相手にしている存在がどれだけ規格外なのかを思い知ったようだ。

 強い魔力を感じ慌てて振り向くと、ケーナは突き出している左腕から白い魔法陣を展開した。 何を飛ばしてくるのかと身構えたゴブリン魔術師の予想外の言葉を呟く。  

召喚魔法(サモニングマジック):load:クリムゾン・ピグ(小)】

「く、クハハハ! 何かと思えば召喚魔法かっ!」
「生憎と相手はアンタじゃないんだよ」
「何じゃと!?」

 やや安堵した感のあるゴブリン魔術師の相手はケーナ自身がするつもりである。 召喚した者は何をするのかと言うと……。

「あっちはお願いね、ぴーちゃん」

 ぴ───っ!!

 魔方陣からポーンと飛び出した全長五メートル全高三メートルのウリ坊(五百レベル)は、ケーナの言葉に「まかせろ!」とでも言うようにかわいい雄たけびを上げ、短い足を高速で動かして土煙を吹き上げ急発進した。
 【戦闘技能(ウエポンスキル)突撃(チャージ)】でもって、まごまごしていたTT(トリケラトプス)を一匹跳ね飛ばし、押さえに掛かった岩ゴリラ(ロックハイド)一匹と疫蠍一匹を意にも介さず轢殺し。 さっきの飛斬と同じく森の中を西に向かって全力疾走していった。 【飛斬】と違うのは、木々をバキバキとへし折って行っているところだろう。 樹の悲鳴は聞こえてくるが、ケーナは今現在それに耳を傾けている暇はない。

 戦闘を始めて二十一倍の戦力差だった筈が、ほんの少しで配下が半分になってしまった現状を引きつった表情で見つめたゴブリン魔術師。 気持ちは解らないでもないが、相手をこの世で最悪の相手だと理解していなかったのだから、自業自得とも言えよう。

「伸びろ!」
「ッ!?」

 そのゴブリン魔術師の横をひゅんと音を立てて赤い棒が通過。 残っていたTTを頭から串刺しにし、刺さったままの如意棒を振り回して投げ捨てる。 想定外の光景を見せ付けられたゴブリン魔術師はジリジリと後退する。
 そして本能しか持たない率いる部下も、ケーナから放出される濃密な魔力に押されたのか腰が引けている状態だ。 そんな彼らの状態を好機と見たケーナは、如意棒を引っ込め右手のルーンブレイドを腰に収めて腕を高く掲げる。

魔法技能(マジックスキル):炎系自己付加:増幅(ブースト):start】

 幻想的な赤い火の粉がケーナの輪郭を赤く染める。 魔物たちの目には明らかな怯えの色が混じり、ゴブリンの中でも最高峰な筈の闇夜の魔術師(ナイトマスターロード)に至っては背を向けて逃亡しようとしていた。

魔法技能(マジックスキル)炎嵐舞溶イア・コープァ・ストリーム:ready set】

 自分の配下を掻き分けて逃亡しようとしていた指揮官も含む群れを囲んで、赤い蛍が円を描くように舞う。 粒は寄り集まって線となり、それが火弾と変わって周囲を籐籠の模様のようにくるくると取り囲む。 じりっと後退した疫蠍がその赤いラインに触れた瞬時、接触した箇所が炭化してボロッと崩れる。 「ギョゥアー!」と悲鳴を上げた疫蠍をギョッとして見詰めた魔物たち。

 彼等は赤い竜巻の本来の形とは逆、底が太いタジン鍋の蓋のような形の天辺に、下から終わりなく吹き上がる炎が固まっているのを見付け硬直した。 その球体はどんどんと大きさを増していく。 五メートル、十メートル、二十メートル、二十メートルを超えた所で親指を立てた握り拳を突き出したケーナ。 すいっと親指を下に向けた瞬間、巨大炎球がストンと落下。 そこに身を寄せ合っていたモンスター達をあっさり呑み込んだ。 緋色に包まれたモンスター達は、とんでもない温度の中で瞬時に燃え尽くされて焦がされて炭化されていく。 残った炭も溶かした炎球は最後に大爆発。 元からあった籐籠模様に沿って上空に炎を吹き上げた。 その噴火のような炎嵐はフェルスケイロの街中からも良く見えたという。

 武器を収めたケーナは周囲の木々に謝罪の言葉を述べながら、ウリ坊の後を追って西へ向かう。

『先程、フレンド登録者クオルケ様ヨリ伝言(メッセージ)ガ届キマシタガ』
「うん、なんだって?」
『“守護者の塔で亀って知っているか?”ダソウデス。 戦闘中ダッタノデ留守電返答『取り込み中』ト、勝手ニ返信シテシマイマシタガ、宜シカッタデショウカ?』
「亀ぇ? って九条のじゃなかったかなあ? 返信は一応入れておこう。 えーっと……」









────── オウタロクエス side

 エクシズは【能動技能(アクティブスキル):地走り】を駆使して、巨亀の足から甲羅まで一気に駆け上がった。 このスキルは効果時間内であれば、壁だろうが天井だろうが足の着く場所を走破できる技能である。 ギリギリ時間内であった為、かなり冷や汗モノだった。 クオルケは鞭をあちこちの突起に絡みつかせながら上がって来た。 【浮遊】も併用していたので、特に危険もなかったようだ。 自分ももしもの為に掛けてもらえば良かったと、落ち込むエクシズ。

「では行こう、エクシズ?」
「あ、ああ。 っと爺さんは?」
「何を言っているんさね。 エクシズの後ろに居るじゃないかい」
「は!?」

 驚いて振り向いたエクシズの背後には、柄の長い大型の斧を肩に担いだドワーフの姿があった。 一体何時どうやって上がって来たのかと首を捻るエクシズに対し、ドワーフの爺さんは柄の先で彼の腰を突き、早く動けと急かす。 歩き出したエクシズに並んだクオルケは小声で会話をする。 

「今さっきケーナから返信が来たんだがねえ」
「なんだって?」
「『クイズ頑張って』だとさ。 意味わかるかい?」
「クイズと亀に何の関係が…………って、なんだこりゃあ?」

 甲羅の縁から坂を登り天辺に見えてきた建築物は四角い箱型だった。 ついでにその脇には赤い電波塔が立っていた。 建物の入り口側の上の壁には立体の文字が貼り付けてあり、そこには“九条テレビ局”と文字がある。 洒落なのかマジなのか判別がつかないエクシズとクオルケ。 
 彼らの背後が不意に騒がしくなる。 振り返ったクオルケの視界にはロープを肩に掛けてこちらに歩み寄ってくる騎士が数人、どうにかしてロープを甲羅か何かに掛けて登ってきたのだろう。 騎士甲冑を着込んでいるのにもかかわらず、その使命に対する執念に感嘆する。 先頭にいた中年の騎士は立ち止まっているエクシズ達を睨み付けた。

「国家の一大事だぞ、ぼんやりしている暇はない。 お前達冒険者にも早く解決することで報酬の金額が決まると伝えてあるはずだ」

 返事は聞かずに一緒に登ってきた部下三人を纏めると、建物の中に入ってしまう。 騎士四人が入り込むと今迄開けっ放しだった扉が音を立てて閉じ、中で施錠する音がガチャンと響いた。 

「え? あれ!?」
「慌てるでない。 一度に入れる人数は決まっているのじゃろう。 少し待て」
「お爺さん、よく知っているのね。 来た事があるの?」
「……幾度となくな」

 アゴに手を当て感慨にふけるドワーフに、何か難しい事情があるのだろうと思ったクオルケはそれ以上の追求を諦めた。
 待つこと十分程度経った頃だろうか。 ばい~ん! とかいう愉快な音と共に天井から四人の騎士が射出された。 放物線を描いた彼等は「ぎゃああっ!?」とか「うわあああっ!?」とかドップラー効果を伴った悲鳴と共に眼下の森へ消えていく。 脂汗を垂らしながらそれを見送った二人は「死んだんじゃねえか?」と思った。

「死ぬことは無いじゃろう。 そういう風に作られている」

 確信を持って言い放つドワーフの爺さんに目をやるも、この人も過去に同じ目にあったんだろうなーと遠い目をするクオルケだった。 同時に扉の施錠が解除され再び開く。 先に入ろうとした爺さんを制したエクシズは「若い者の後について来いよ」と言って先に中へ入る。 その後にクオルケが続き、何やらうれしそうに鼻を鳴らしたドワーフを最後に扉は閉まった。





「なんじゃこら……」
「………………」

 室内に入ったエクシズとクオルケはそのあまりの懐かしい、どこかで見たことのある光景にアゴを落とした。
 内部はまるでバラエティ番組を撮影する番組のセットそのものだったからだ。 床の中央に大きく書かれた丸とバツ。 ゲストたちが居並ぶ個別の小さい席。 壁一面に大きく描かれた何処かの国の象徴たる女神像。 手前に置いてあるカメラ機材に司会者が解説なりをする大きな席。 そしてその手前にこの場にそぐわない物体が浮いていた。 蓮の花を模した台座に結跏趺坐(けっかふざ)をした半裸の神仏像、全身金箔貼りがいた。
 そしてセットの中央にまで恐る恐るエクシズ達が歩み寄ると、しっかりとつぶっていた目を薄く開けて金箔神仏像が闖入者達を睨みつけた。 剣を抜くなりしてそれぞれに警戒態勢をとる二人。 ドワーフのお爺さんだけは特に何もせずに。

「ようこそ、挑戦者の方々。 meはこの守護者の塔の管理者でありますえ。 数々の思考の御技と英知を求めていらっしゃったのですね?」
「は?」
「……え?」

 浮いていた神仏像から流暢な挨拶をされて戸惑う二人。 斧を担ぎながら「ふんっ」と小馬鹿にしたような息を吐くドワーフ。 ちろりと薄く開いた瞳にドワーフを映した神仏像は肩をすくめ「Oh」と感嘆する。

「またいらっしゃったのですね、お爺様? 今度は三人で挑戦と……、成程それなら正解率も上がるでしょう。 はっきり言って先程の方々のような無知は本当に面白くありませんでしたえ」

 このドワーフのお爺さんは挑戦者としては常連のようだ。 いささか呆れた様子のある神仏像は三人をスタジオ中央のマルバツまで誘う。 途端に三人の頭上へ『00/00』のカウントが出現した。 左側の数字が青色、右側の数字が赤色で、クオルケとエクシズが疑問を挟むよりも早く神仏像が解説を入れる。

「出題は百問、先に八十問正解でクリア。 しかし、先に二十問間違えたらそこでリタイア、遠慮なく資格なしと判断して外へ放り出させて頂きます。 準備はよろしいですね? それではスキルマスターNO.2、九条様管理下、守護者の塔、試練開始致します」



 一番最初はマルバツクイズからだった。 中性的な雰囲気の神仏像とは別の、物静かさを感じられる女性の声で問題が読み上げられていく。 一問ごとに制限時間は五秒だそうで、まごまごしている暇はない。

『それでは一問目。 スキルマスターは全部で十四人である。 マルかバツか?』

 特にそれに疑問を挟まずクオルケとエクシズはバツの方へ移動した。 そしてドワーフの爺さんがマルの方へ立ったままなのにギョッとする。 慌ててこちらへ呼び込もうと思ったがすでに遅く。 ドワーフの爺さんの頭上には黄色いベルのグラフィックが現れて「チリーン♪」と音色を響かせる。 頭上の数字が『01/00』に変わり、同時にエクシズとクオルケの頭上には大きな赤バツ印が現れ「ブブーッ!」と音が鳴り、二人のカウンターが『00/01』と変わった。

「え? あれ? 何で!?」
「クソッ、爺さん以前この問題に直面したんだろう。 教えてくれよっ!」

 悔し紛れに悪態をつく二人に、ドワーフの爺さんは涼しい顔だ。

「スキルマスターは当初十四人おった。 これは本当のことじゃ」
「……って、それ知っているって事は爺さんプレイヤーかっ!?」

 何気ない言葉から重要な事に気づき、慌てて【サーチ】でドワーフの爺さんを眺めてみる。 エクシズより上のレベルだったので表層情報だけは見ることが出来た。

「赤の国所属の……、『隠れ鬼』ってちゃんと名前があるじゃねーか爺さん。 ってスキルマスターなんばあじゅうにいいぃっ!?」
「ぬ、しまった。 ヌシら御同輩か……。 まあいい、細かいことは後で話す。 とりあえずはこの試練を抜けてからじゃ」
「ちょっとお待ちよ、スキルマスターならここの守護の塔の操作も何とかなるんじゃないのかい?」
「何とかするための試練じゃろうが、まずは終わらせてからじゃ」

 エクシズに詰め寄られて渋い表情になる爺さん、もとい隠れ鬼。 クオルケも手早く終わらせておきたいのでエクシズの後押しをしてみるが、言うことは変わらない。 どうやら塔には塔それぞれのルールがあるようだ。 だったら試練を終わらせた方が話が早いと悟ったエクシズとクオルケは、隠れ鬼(じいさん)に習って守護者に向き合った。 どうやら話が終わるまで待ってもらったようで、クスリと笑みを浮かべた守護者はあらぬ方向に視線を向け、頷いた。
 室内に流れる音声が『二問目……』と言い始めたので一語一句聞き逃さないように口を閉じる三人。



 ………………数分後。

「うー……、あー……」
「なんかもういっぱいいっぱいじゃのう。 大丈夫か?」
「連続で間違えたからな。 だから俺について来いって言っただろーが」

 マルバツ形式を終えた後の成績はドワーフ爺さんが『19/01』、エクシズが『17/03』、クオルケが『07/13』となっていた。 この後はスイッチのついた回答者席に移動して、三人で残りの八十問を消化していけばいいだけである。 その間に七問間違えるとクオルケが脱落するだけだ。 目先の絶望的な壁を想像したクオルケは、あらぬ方向に視線を向けてひとり黄昏ていた。

「うううぅ、ものの見事にゲームの問題ばっかり……」
「すこしはリアルな物も混じっていたはずなのだがのう?」
「どんだけの割合で混じってるんだよこれ。 ケーナが言ってたのはこの事か……」
「ケーナ嬢もこっちに来ておるのか!?」

 ボソッと呟いたエクシズの言葉に真っ先に反応して詰め寄る隠れ鬼。 その剣幕に目を丸くしたエクシズは「あ、ああ」と返し、クオルケはこくこくと頷いた。 それを受けて難しい顔をして黙り込んだ隠れ鬼だったが、真摯な瞳を二人に向ける。

「すまんが、ケーナ嬢にはワシとここで会った事は黙ってて貰えぬか?」
「え? でもさ、アンタ達数少ないスキルマスター仲間なんだろう? 少しでも会って安心させてやったらいいんじゃないかい?」
「生憎と「スキルマスター」などと言う称号はこの世界ではただの紙切れのような物じゃよ」

 寂しそうな感情を含んだ、どこか他人事な物言いにクオルケは沈黙し、エクシズはため息をついて頷いた。

「『探さないで下さい』ってヤツだな、了解したぜ」
「えっ! で、でもさエクシズ?」
「でも爺さんと会ったことはケーナには言っとくけどな、理由さえ聞かせてくれりゃあ『探さないで下さい』って方向で説得しておくぜ」
「ぬ、……スマンな」
「ケーナのお節介には歯止めを効かすのが大変だがな。 これでも同じギルドで修羅場をくぐって来た仲間なんでね。 とりあえずはこの試練を抜けて、亀を止めてからだな」

 納得がいかないという顔をしたクオルケは「話は後でつけてもらうからな」と呟き、エクシズを睨んでから先行して回答者席に移動していった。 肩をすくめたエクシズと隠れ鬼はそれに続く。 三人の会話を見守っていた神仏像は、天井に向けて問題を続けるように促した。
 神仏像は身構えるように天井を睨む人族、竜人族(ドラゴイド)、ドワーフを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべる


「さてさて、予測(prediction)とは全く別の獲物がかかったようですよ、My Master?」

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