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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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38話 ランダムに遭遇しよう

 フェルスケイロ滞在四日目。

 元々の目的は娘達を会わせる事とリットの社会見学だったので、目的はほぼ果たしたと言っても良いだろう。 臨時収入もあったので持ち帰る食材を多目に購入して、午後には村へ帰ろうかと予定を立てる。 ルカやリットにもそれを伝えると、お土産を買いたいと言い出したのでロクシリウスに付いて行って貰う。 一応マイマイとカータツの所には足を運び、村に帰る旨を伝えておく。 ついでに部屋は余ってるから、遊びに来るなり王都を引き払って住み込みに来るなり自由にしろと言っておいた。

 これにはマイマイが面白いくらいに悩んでいた、……夫はいいのか。 昨日、大量に届けられた魚は全部技能(スキル)で燻製に変えて密封し、馬車へしまい込んだ。 街の食堂で昼食を食べてから出発となった。


 帰り道は()く事はせず、【行軍】は使ってもゆっくり行こうと娘達が提案してきた。 ケーナも反対する理由もなく。 フェルスケイロを起って一日目の野営をしようとした時に、進行方向から四騎の騎馬に守られた豪華な馬車が近付いて来るのにロクシリウスが気が付いて、主に報告した。 野営地に横付けされて直ぐに中から『虹の後光』を背負ったスカルゴが飛び出して来る。 苦笑して迎えるケーナ。

「ああ母上殿、このような場所でお会い出来るとは……。 このスカルゴ、神に感謝致します」

 護衛の騎士達は一人で悶えるスカルゴをスルーして野営の準備にかかる。 息子の頭に拳骨を落としたケーナは「騎士ばかりに任せず、アナタも手伝いなさい」と指差した。 母親の笑顔にうすら寒いモノを感じたスカルゴは飛び上がって反転、騎士達の準備を手伝いに行く。 額に手を当てて「ハァ~」と溜め息を零したケーナはルカとリットを呼ぶ。

「……呼ん、だ?」
「なぁに? ケーナおねーちゃん」
「あっちの騎士さん達に夕食をご一緒しませんか? って、聞いてきて貰えるかな」
「はい、頑張、る」
「うん! まかせて」

 二人が手を繋いで仲良く歩いて行く様を見送っていると、傍で焚き火を作っていたロクシリウスが噴き出した。

「どうかした? ロクス」
「スカルゴ様にはお伝えしないのですね?」
「働かざる者喰うべからず、よ」
「それはまた、手厳しい」
「いまいちあの子との距離を計りかねているんだけどねー、これでも」

 「そうは見えませんが」と言いながらお茶を人数分淹れたロクシリウスは、ケーナや戻ってきた子供達にコップを渡す。 自分達でどうにかしようと思っていた騎士達は子供の縋るような眼差しに断りきれず、了承の旨を返した。 ついでにむせび泣きながら「なんで私には言ってくれないんですか!?」と苦情を言いに来たスカルゴに対し、ルカが「お兄、ちゃん。 サボ、ったから、ダメ」とジト目で述べて、石化していたのは割愛する。


 ケーナが料理技能を使い作った、ルッジド大河から採れる大ぶりな貝と野菜、コルトバードの肉でピリリと辛いスープは鍋いっぱいに作ったにもかかわらず、騎士達によって殆ど空になった。 「母上殿の料理だから遠慮して喰べるとかどうなんです」などとブツブツ呟いていた愚息は威圧で黙らせて、ロクシリウスが茶を配る。 街道沿いの沢まで降りて食器を洗い、親子とリットが戻るとささやかな団欒の時間だ。 先にケーナがスカルゴに言い聞かせたので、地位など関係なしの無礼講になっている。 騎士達を率いる小隊長も話の分かる人だったようだ。

 なにせ冒頭から「スカルゴ様、出来れば馬車の中からすれ違う民達に対して星や虹を飛ばすのを止めて貰えませんかね? 我々が恥ずかしいです」とか、苦情が飛び出す始末である。

「ああ、愚息が馬鹿でごめんなさいね。 なんだったらフェルスケイロに戻るまで、ロープで簀巻きにして行ってもいいわ。 この私が許す」
「は~は~う~え~」
「何を泣いているのよ、スカルゴ。 わりと本気よ」
「否定無しですかっ!?」

 ドッと沸く皆。 爆涙しながらへなへなと倒れるスカルゴがいた。 騎士達からは他にもフェルスケイロまで行った目的を聞かれたが、隠すような事もないので、娘に会いに行くついでに子供達の社会見学だと答える。 暫くはたわいもない話題で歓談が続いていたが、酒も入って饒舌になった騎士の一人がつい漏らした一言によって、静まり返った。

「いや~、スカルゴ様の父上とかどんな人だったんですかねぇ?」

 本来ならばどこかで話の種に出てもおかしくない質問だったが、全く想定してなかったケーナは絶句してしまう。 同時に普段は黙っていてもエフェクトで周囲を明るくするスカルゴでさえも、悲痛な顔で俯いてしまった為に沈黙が降りた。 流石に口を滑らせたと気付いた騎士が我に返り、小隊長に小突かれて「すんません」と頭を下げた。 そこで話が終わればたわいのない話題で済んでいた。 しかし微妙な空気が漂う中、俯き加減でいたスカルゴが頭を上げ、ケーナを見つめた。

「母上殿。 父上殿については我等兄弟、曖昧な所でしか話を聞いてないのですが、どんな方だったのですか?」
「ぶっ!」

 一難去ってまた一難、何とかうやむやになろうとしていた話題に安堵したケーナは、ド直球で聞き返してきた息子に心の中で最大火炎魔法を叩き込んだ。

 厳密に言ってしまえば、スカルゴ達の父親は【VRMMOリアデイル】のゲームシステムそのものである。 言った所で理解はされないだろうが……。 内心パニックになったケーナは最も良く知る男性像(オプス)を参考にして後先考えずに説明を始めてしまった。 曰わく、自分より強かっただの、人をおちょくる事に関しては悪知恵が働いただのを。 喋っているうちに自己嫌悪でドンドン暗くなっていったので、何故母親より強いのに今居ないのか? という疑問には触れられなかったのがケーナにとって最大の救いだろう。

 すっかり落ち込んでしまったケーナの様子にその場はお開きになった。 会話の取っ掛かりを作った騎士はしきりに頭を下げていたが、悪いのは自業自得なので気にしないように告げる。 野営中の警備にケルベロスと雷精を呼び出しておき、スカルゴの方も任せる。 元気の無い召喚主に、体を擦り付けたりして甘えてみるケルベロスだったが、如何せん彼の毛皮はごわごわだった為、癒すまでには至らなかったと言う。




 更にそこから二日経過した道程の野営地にて、今度はコーラルを含むPT五人組と出会う。

「よお、ケーナ」
「あれっ、護衛の仕事じゃなかったの?」

 堺屋からの使者を国境へ護衛する依頼を受けていた筈、なのに終えるには早過ぎる。 心配して聞いてみるが、理由は簡単だった。

「ああ、片道だけの契約だったからな。 帰りは国境に暫く留まるっつーから。 俺らもフェルスケイロに帰るついでだしな」
「そうなんだ。 じゃあ、夕食でも一緒どう?」

 コーラルはケーナの肩越しに、此方をじーっと見ている子供達に気が付く。 その視線を辿って背後を振り返ったケーナは苦笑した。

「邪魔にならねえか?」
「他の人との交流を楽しみにしているみたいなのよ。 ルカが社交的になってくれて何よりだわ」

 今度はコーラルが自分の仲間を振り返って「だ、そうだが?」と、尋ねる。 特に異論の無い仲間達は二つ返事で了承した。

 再び調理技能で今度はパエリアに似た物を作り出すケーナ。 コーラルは兎も角その仲間達は初めて見る『古代の御技』に目を白黒させてびっくりしていた。 実のところ、ルカとリットが野営の時にコーラル達をじーっと見ていたのは、調理技能で作られた料理が食べられるんじゃないかという期待が最大の理由である。 スカルゴ一行と別れた後、昨夜の野営の時にはロクシリウスが調理した保存食の干し肉と野菜を煮込んだスープだったので、誰かが混じると『お客持て成し用料理』が食べられる認識が植え付けられたようだ。 もっともそれを知るのは、『どうしたらお母さんの調理技能(りょうり)が食べられる?』と聞かれたロクシリウスだけであった。



 夜も更けてコーラルの仲間が自分達の体験を子供達に面白おかしく披露している時、コーラルとケーナは焚き火を囲んだそれぞれの仲間に一言断って、馬車を隔てた暗い闇の広がる森を見渡せる場所に二人だけで居た。 ケーナが内密の話があると誘ったのにコーラルが了承したからである。

「なんだよ、内密の話って?」
「コーラルってこっちに落ちてきてから十年も経っているのよね? その経験を見込んでちょっと聞きたいんだけど……」
「なんだ、改まって? とはいっても実力を隠して初心者みたいな状態を装い、身を小さくして生きてきたってぇだけだぜ。 ゲームのプロに答えられるほどの知識量は持っちゃいねえ」
「真面目な話なんだけど……、はい」
「おー、悪いな」

 予め作り出しておいたビールの入ったコップを渡すケーナ。 この技能の欠点はいちいち作るたびに樽の大容量でしか作成出来ない所にある。 前回のスカルゴとの遭遇時に作ったのが沢山余っていたので、ここでコーラル達に会えたのは丁度良かったと言える。

「コーラルは、自分の力量でしか相対出来ない敵と出会った事はある? この前のイベントモンスターを除いて」
「うん? えーっとなあ……。 記憶している限りではそんなのないな。 ケーナはあるのか?」

 聞き返されたケーナは嘆息して今迄出会った高レベルモンスターを説明する。 新しいモノでは先日釣ったばかりの鮫鰐モンスターと、オーガを率いていたダークエルフに、ルカを引き取る原因になった幽霊船などだ。 どれもそこにケーナが居合わせて丁度良かったというタイミングで倒されている。

「居合わせたうんぬんは自意識過剰なんじゃねえ?」
「まあ、そんな感じもするけどさ。 問題は鮫鰐を抜かせばイベントモンスターって点なんだよね。 NPCとの対話から発生する一連の事件の中にイベントモンスターの出現が組み込まれているのに、どうしてNPCも事件も起きていない状況でイベントモンスターが稼動しているのかが解らない」

 ケーナは果実酒の入ったコップを見下ろして淡々と述べた。 その様子だけで延々と溜め込んでいた愚痴にも聞こえ、コーラルは頷いた。 話を聞いた限りではケーナの普段の生活上、コーラル達のような同郷プレイヤーの仲間に会うことは難しい。 ただでさえ全員が全員、冒険者を生業としているのだ。 本拠地としている都市に行きました、で会えるとは限らない。 使用人に話すのは筋違いだし、実際のところ愚痴相手が欲しかったのだろうと憶測をする。 それでも何かの糸口になればと、コーラルは十年の間に培った経験と知識等から彼女が望むものを拾い集めた。

「うーん、廃都って知ってるか?」
「ぐさっ……。 嫌味か嫌味ね嫌味なんでしょう」
「ああ! 茶国を廃墟にしたのお前だっけ、忘れてた」

 天気予報と言われる製作者側の呟きに従い、茶国首都に出現したモンスターの大群討伐。 それを駆逐する為に魔法攻撃特化のスペシャリスト、ハイエルフ種最大レベル保持者、兼スキルマスター特権装備使用により、直前に攻撃に対する建造物の破壊バージョンアップが終っていたのが要因だ。 広範囲魔法【隕石落下(ギガ・ストライク)】が数百発降り注いだ結果、茶国首都は瓦礫の山になっていた。 以降茶国首都は通称『廃都』と呼ばれるようになったのはゲーム内での常識であり、ケーナの不名誉なあだ名『銀環の魔女』が広まった原因でもある。

「まあ、元が茶国の場所だけどな。 旅の途中で聞いたんだけどよ、『廃都』って言うのはフェルスケイロとオウタロクエスの間の西側にあって、存在自体が三国間の協定によって隠されているらしいぜ」
「はあ? 国同士が協力して隠さなきゃいけない危ない場所なの? それとも国の利益になるための場所?」
「それは知らねえけどさ。 なんか公然の秘密みたいなもので、廃都の存在も信じてる奴と御伽噺だと思っている奴とで半々だっていう事だ」
「事情は分かったけど、それと私の話とどーいった関係があるの?」

 もったいぶったコーラルはビールを一息に飲み干すと、空になった杯をケーナへ突き出し「わかってんだろ?」というようにニカッと笑い掛けた。 「はいはい」と頷いたケーナは一旦そこを離れて馬車を回り、焚き火の方へ近づく。 それだけで事情を察した気配りの達人ロクシリウスに、なみなみとビールの注がれたコップを二つ渡された。

「ありがと」
「いいえ、お気になさらずに」

 そしてまた元の場所に戻り、コーラルにコップを二つとも渡す。 一杯を一気に飲んだ彼は口の滑りが良くなったようで、脇腹を突いて続きを促すケーナに先程の続きを語る。

「俺も御伽噺としてしか知らんが、『廃都』ってのは二百年くらい前、大陸に三国が建国された時、神が残った災いを封印した地なんだそうだ」
「……災い?」
「俺も災いと言われてピンと来なかったんだが、それがケーナが言うところのイベントモンスターなんじゃないか?」
「………………おお! なるほど!!」
「なー、符号としては一致するだろう?」
「確かに……」

 だいたいの確信が持てて納得しかけたケーナは、コーラルやシャイニングセイバー、エクシズやクオルケがここに居る理由に思い当たって動きを止めた。 

「ん、どうかしたか?」
「コーラルはさ、サービス終了の日って何してたの?」
「あー、確か普通にその辺の奴とパーティ組んでザコ敵倒してたなあ」
「……って事はだ。 二百年前のサービス終了の日にはクエスト起動させて、イベントモンスターが出現する条件を揃えていた奴が沢山居て、それが全部『廃都』に封じられていたら……? そもそもなんで外に出ているの?」

 ケーナの言わんとするところが分かったコーラルも冷や汗をたらりと垂らした。
 『VRMMOリアデイル』は七国がサーバとして別れていた。 サーバーひとつの最大容量は各国ばらばらだが、戦争開催時には平均で一国千人強の統計が取られていた記録がある。 サービス終了の日には、一週間前から専用のバージョンアップであちこち飾り付けられて都市や村には花火も上がっていた。 お祭り騒ぎが好きなプレイヤーであれば、というかお祭り騒ぎが好きそうなプレイヤーばかりだった気もする。 引退した者も久しぶりに参加していたとの声も聞くので、下手をするとリアデイルというゲーム稼働中で最大人数がアクセスしていた可能性もあった。

 そんなお祭り騒ぎの中、ゲーム終了まで普段と変わらないレベル上げに勤しむ者はコーラル以外にも沢山居た筈だ。 その中の一握りが通常の狩りではなく、最後だからと今までやったことのないクエストを起動していたら? もしかしたら最終ボスとの戦闘中に全サーバーがシャットダウンを食らい、そのまま倒されず世界にイベントモンスターが残る事になっていたとしたら? ゲームとこの世界がどれだけ忠実に密接に繋がっているのか不明だが、ケーナの遭遇率と御伽噺と三国の取り決めを鑑みるにそれが一番確実な推測だと二人は思った。

「シャイニングセイバーなら国の上層部としてこの情報とか知ってるんじゃない?」
「ケーナの息子とかはどうなんだ?」
「流石のあの子でもプライベートと仕事は分けると思うなー。 でないと国のNo.3とか言えないでしょう」

 態度はちゃらんぽらんだが人格も変なスカルゴ、と認識しているケーナ。 スカルゴ自体が母親を国自体に係わらせない処置を取っているので、自分から国の重要機密をバラしたりはしないだろうとケーナは思う。 だからと言ってオウタロクエスまで足を運び、女王サハラシェードに聞くわけにもいかない。 この辺りの情報を確認するのならば国に一番近い位置に立つケイリックが妥当だろう。 商人であれば情報も商品として扱っていないか聞いてみようと考えた。 後はエクシズ達にも意見を聞いてみる必要があると心内(キー)メモ帳に記憶させ、次に会った時に情報交換をしようと約束してその夜はお開きとなった。





 コーラル達と別れて更に二日後、やっと辺境の村に帰って来る事が出来た。
 村の入り口のラックス工務店は、工務店兼雑貨屋として店舗を開店していた。 早速ラテムにお土産を渡しに行ったルカとリットのついでにスーニャと挨拶を交わしたケーナは、国境に建設する砦の補給所として一般品を扱うのだと聞かされた。 当然村の人も利用可能である。

 マレールはリットが無事に帰ってきて喜んでいたし、娘からお土産を貰って更に喜んでいた。 ケーナが「長い間すみません」と謝ると、抱きしめられて背中をばしばし叩かれた。 「別にケーナの気にすることじゃないよ」と言いたかったらしい。

 自宅に戻ると玄関先で待っていたロクシーヌが深々とお辞儀をした。

「おかえりなさいませ、ケーナ様、ルカお嬢様。 途中役立たずになっていないでしょうね、ロクシリウス? アンタが無様だと私まで同等に見られるから気をつけてよね」
「誰が率先してそんなことをしなきゃならないんだ……」
「旅の間ロクスは凄く有能だったよ。 シィが心配することなんか何一つもなかったし」
「そうですか。 それを聞いてやっと安心いたしました。 ロクス、お茶の用意が出来ている。 お嬢様をつれて先に行って」
「……わかった」

 ルカを促して先に家に入るロクシリウスとルカ。 ちらちらとこちらを見てくるルカにロクシーヌは「ケーナ様に報告があるだけです。 すぐに参りますから」と優しく告げて、ケーナを家の隣に建つ倉庫まで案内する。 その倉庫の脇にくっつくようにして小さな小屋が建っていた。 中を覗き込むと白い山羊が「メェ~」と鳴いてケーナを迎える。

「こちらの小屋は村の人達が共同で建ててくれました。 後は鶏も十羽来たので、村で放し飼いになっている群れの中に加えてあります。 それとこちらがビールとウイスキーの受取証です」

 A5サイズの小さな紙には、ビール十樽とウイスキー五樽確かに受け取りました、と書いてあった。 ロクシーヌも山羊一頭と鶏十羽の受け取り証を持ってきた商隊(砦まで商談に行った堺屋の使者)に渡したとか。 その際の輸送料と値段で銀貨三枚だったそうな。

「ビールは一樽四銀貨、ウイスキーは一樽十二銀貨ですね。 合計百銀貨です」
「高っ!? なんだそれ、元が取れるのかな?」
「さあ? その辺りはケイリック様の腕次第ではないでしょうか?」

 倉庫の地階に貯めてあった樽がなくなっているのを見、倉庫内に残る麦袋を見たケーナにロクシーヌが補足する。

「麦に関してはラックス様に頼む方法と、自分で買いに行く方法のどちらでもいいそうですよ」
「それでラックスさん所へ手数料が入る寸法かな? 次はいつ取りに来るとか言ってた?」
「三十日後だそうです。 一応売れ行き次第では頼む数が前後すると言っていました。 それもラックス様が伝えてくれるそうです」
「成程、ラックスさんの所には堺屋と直通通信を繋げられるアイテムがあると」

 ケーナの言葉に頷いて次に言葉を繋げようとしたロクシーヌは、自分のメイド服を引っ張られ背後を振り返った。 寂しそうな顔をしたルカが小さな紙袋を持って、ロクシーヌの服の裾を摘んでいたからだ。

「……シィ、おねーちゃん。 一緒に、お茶、……しよ?」
「ルカお嬢様……」
「じゃ、シィ。 報告はまた明日でも良いや。 ごめんなさいねルカ、待たせて?」
「……ううん」

 年の差姉妹みたいに仲良く手を繋いで歩いて行く二人。 その後ろを着いて行きながら、のんびり過ごせると思っていた日々が急展開を見せる事態にケーナは溜息を付いた。


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