挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
リアデイルの大地にて 作者:Ceez
31/75

幕間2  国家の対応




 用を終えて陸地に戻ったケーナに泣きそうな顔をしたルカが真っ先に飛びつこうとした。
 一時的にその突進を止めたロクシリウスに視線だけで礼を述べたケーナは、自分に【乾燥】と【清浄】の魔法を掛ける。 ルカまで濡れる事のないようにするためと、衣服を乾かすためだ。 それらを済ませ、改めてルカを抱きしめる。
 後は忘れる前に蒼竜の召喚解除もしておく。 ひと声グオゥと吠えた蒼竜は、ニヤリと笑うとその姿を水と化して崩れ去った。



「ただいま、ルカ。 ロクスもありがとう」
「いえ、自分の務めですから」
「……おか、えり」

 それだけで一家族の光景に見える三人の様相に、エクシズとクオルケは苦笑いをしながら近付いた。

「心配するこたぁなかったようだな。 竜宮城はどうだった、鯛やヒラメが舞踊っていたか?」
「…………原色ピンクのカエルでよければ……」
「なにそれ……?」

 やや表情を青褪めながらぼそっと呟くケーナに、クオルケは不思議そうな顔をした。

「に、してもそんな魔法もあったんだねえ。 そっちにしておけば色々と便利そうだったかな」
「その反応を見る限り、オフラインクエストはやって無いんですね?」

 簡単にオフラインで得られるスキルを説明すると、クオルケは明後日の方向に目を向けて乾いた笑いを上げた。 どうやら、オフラインの存在に気が付いていなかったらしい。 同ギルド員は初心者に何を説明していたのかと、ケーナは呆れた。
 両方とも砦を作るまでに得られるスキルは、生活に根付いたものが多いからだ。 実ゲーム中だと何の役にも立たないが。

「なんにしても二人ともありがとう」
「いや、特にはコレと言って何にもなかったからな。 お嬢ちゃんも大人しかったし」

 待っている間、ロクシリウスに手伝って貰って身の回りの物を簡単に纏めていた。 着替えが数える程と両親の形見。 母親の使っていたエプロンと、父親が身につけていた腕輪くらいなものしかないが。
 後、クオルケがどうしてもと主張するので、墓とも言えばいいのだろうか? 村のはずれ、小屋がある辺りに石を積み上げて集団墓標が出来ていた。

 ソレに黙祷を捧げお参りを済ませたケーナは、エクシズらと相互名簿登録をしてその場は別れる事にした。

「んじゃ、送るよー」
「お前等はどーすんだ?」
「適当に行くよ。 ルカがいるから【転移】は使えないけど、どーせ三日程度の道程だし」
「もしかしたらお前の名前も説明時に出すかもしれないぞ、いいな?」
「構わないけど、フェルスケイロで私の名前使う時はちょっと注意してね」
「は?」

 使用するのは【転移】の他人のみに効果のある【転送】だ。 当人の意思を無視して他人を別の場所に吹っ飛ばせる魔法なので、狩り場を独占したい者が入ってきた邪魔者を排除するために使う。 但し、当人の意思を無視する場合は、行使する者が行使される者よりレベルが上の場合に限る。 それ以外は行使される者の同意が必要なため、暴挙に出る者は少ない。

 二人の足元から闇色のカーテンが噴き上がり、二人の姿を覆い尽くす。 ルカに軽く手を振ったクオルケ共々、エクシズの姿はその場から忽然と消え去った。 多少残念な顔をしたルカの頭を撫でたケーナ。 しゃがんで視線を合わせると、元気付けるようににっこりと微笑んで見せた。

「よし、じゃあルカも私と行こう。 生きていればまたエクシズ達と会えるからね?」

 頬を染めたルカはコクンと小さく頷いて、自分からおずおずとケーナの手を取った。 微笑ましい光景にロクシリウスの口元も自然と緩む。 そうして歩き出した二人の後を一歩空けて追従していく。

 街道の途中でルカを気遣ったケーナが召喚獣で八脚馬(スレイプニール)を喚び出し、フェルスケイロに到着するのは翌日になった。 そこで先に送った二人と会ってしまうのはご愛嬌と言えよう。











 ────── オウタロクエス

 かつては国の半分が砂漠地帯だった、とは思えないほど国中が密林に覆われている国である。

 王城はかつてこの地で栄華を誇ったギルドが造り上げた城。 基部は森に埋没していて、表面は緑に覆われている。 巨木に埋没しているとも、共生しているとも取れる外観を持つ。 城内にも蔦や枝葉が侵入しているが、そこに住む者達は不便を感じていない。 この自然が国独自の魔法技術と融合した結果、植物が危険を排除する兵士になっているからだ。

 城下町と言えるモノは全て樹上に広がり、釣り橋で縦横無尽に繋がっていた。 民は木の幹や枝に住居を構え、地上に住むのはドワーフの職人を除けばホンの一部である。 樹上生活者だけがエルフで占められている訳では無く、人族もいれば風変わりなドワーフ族も居る、猫人族(ワーキャット)竜人族(ドラゴイド)も他の街と変わり無く存在していた。


 その王城の玉座の間。 
 オウタロクエスを二百年に渡り維持し続けてきた女王サハラシェードを筆頭に、政治に関わる者がその場に勢ぞろいして居た。 隠者の持ち帰った情報を吟味するためと、この国が大陸で請け負った役目を果たすために。

 拝謁しているのはケーナと連絡を取る為に二国へ放たれていた隠者、クロフを含む三名。 それぞれフェルスケイロ王都とヘルシュペル王都と辺境の村へ向かい、何処かで出会った者が彼女と交渉を行う役目に当たっていた。 
 クロフが持ち帰った彼女の返答は「否」。 この一言に尽きる。

 腰まである黒髪に前髪の一部だけ青い部分を弄りつつ、サハラシェードは「そっかー……」とクロフの報告に気の抜けた返事を返した。 ケーナと違い、大人の女性の魅力に溢れる女王の仕草には万人が惹かれるものがあった。

 女王は兎も角、臣下の者達はケーナを名前だけで判断するのは性急だと考えている者が多い。 但し短命種に限るが。

 騎士団長を務めるのは三百歳を越える魔人族の若者。 彼は二百年前に超越者と呼ばれる身内が、たった一人で成し遂げた偉業を目にした事がある。 前衛戦士であったその人物は、敵対砦を剣技の一撃で両断したのだ。 それと同等の術者であれば女王の言った事柄も頷ける。
 宰相を務める老齢のドワーフも長い生の中で、たった二人の超越者が平原いっぱいに広がる魔物の群れを、一瞬で駆逐した光景を見た記憶があるだけに、反論はしない。

「女王の身内びいきだけで、得体の知れ無い冒険者ふぜいを王宮に招くとは感心しませんな。 そういった相談事は、事前に我々を通して頂きませんと」
「そうですな、実力の伴わない者を国に召し上げても利益になると考えられませんからな」

 文官長の中でも公爵や伯爵家出身の者達が、口さがない言葉を吐く。 女王は完全に相手にしない方向でスルー、騎士団長は小馬鹿にした目で彼等を見ていたクロフに、目線だけで頷いた。

「心配せずとも、実力は測らせて貰いました。 私の妹が手も足も出ない無敵っぷり、感服致しました」

 部屋の警備に当たっている騎士や兵士から「お~」や「馬鹿な……」等の感嘆の声が上がった。 多少高飛車で毒舌なクロフィアだが、騎士団の中でもその実力は評価されている。 クロフィアぐらい将来有望株な人物さえ手も足も出ないとは、どれだけ規格外な者なのか? と、戦いに身を置く者達からは興味深々な視線が飛ぶ。
 逆に国内でも強者にカテゴライズされているクロフの自信満々反面、自分でも決して手が出せないとも取れる発言に、嫌味を口にした文官達は口ごもって身を縮めた。

 臣下のやり取りをひと通り眺めていた女王は、だらけきった姿勢のまま足を組み変える。 とても王族が臣下の前でするような態度では無いが、独裁者だった場合であれば問題はなさそうだ。 それでも宰相や騎士団長は特にたしなめる事もせず、表情を引き締めた。

「まあ、予想通りな結果が得られて嬉しいわ。 ご苦労様」
「ハ、ありがとうございます。 それでは御前失礼致します」

 自分達の役目は済んだと一礼をし、クロフ達は退出して行った。
 行き違いに入室して来たのは、赤銅色のローブを着込んだ一団だった。 先頭のエルフはこの国の魔法師団長を務める者で、後ろに人族の部下を二人連れていた。
 三人は玉座の遥か手前で膝を突き、女王に頭を下げる。 サハラシェードが大仰に頷くと師団長だけが立ち上がり、携えていた巻物を広げた。

「例の観測結果、出揃いまして御座います」
「申せ」

 何故かこの一瞬にだけ玉座の間は静まり返った。 ひそひそと会話をしていた文官達も、この報告は聞き漏らすまいと傾聴する。

「結論から申しますと、前回の計測に比べてだいぶ綻びて来ていると予想されます」
「…………そう、」

 感情の削げ落ちた表情で女王はそれだけを搾り出した。 両脇に控える宰相と騎士団長も血の気が引いた顔で、ゴクリと唾を呑み込む。


 かつて茶の国ヘジンギウムと呼ばれる国土があった。

 二百年前以前に、そこは今の世の者達には預かり知らぬ事情で『廃都』と呼ばれるようになり。 二百年前の三国成立の時分には神の手によって、今後の世界の在り方に不必要な有害となるモノが押し込まれた。 神はその『廃都』を中心に周囲を堅固な結界で覆った。 ……と、伝承には伝えられている。 実際、サハラシェードもその場に立ち合っていた筈だったが、その時の記憶は失われていた。 当時、ヘルシュペルとフェルスケイロの初代国王にも確認してみたが、彼等も同様にだ。

 覆ってはくれたのだが、二百年もの歳月が流れて問題が生じた。 オウタロクエスはその『廃都』と呼ばれる地域の監視を役目としていたが、ここ数年の観測で結界に綻びが生じている事が判明したのだ。 神の御力が二百年しか保たない事に疑問を投げ掛けるべきか、それとも中に封じられた存在の強大さに戦慄を覚えるべきか……。 

「どちらにしろ他国にも協力を呼びかけるべきよね……」
「仕方ありませんな。 中に封じられたモノは、見た目矮小でも恐るべき実力を持っていますからな」

 宰相のドワーフが力強く頷く。 不甲斐ないと笑われようとも、中から漏れ出した魔物に騎士団が壊滅状態寸前まで追い込まれるという前例があった。 付近を通り掛かって助太刀してくれた冒険者がいなければ、死人が出ていただろう。 その相手がたった六匹のゴブリンだったとしてもだ。
 フェルスケイロにしても問題の廃都とは隣接しているので、他人事にはならないだろう。 問題は直接の関係が無いヘルシュペルだ。 建国当時と違い、王家に比べ商人連合の発言力が強いとされている為、協力を取り付けるのは容易ではない。
 宰相と女王が各国に回す書類の文面であーでもないこーでもないと相談しているのを後に回させると、騎士団長は魔法師団長に別の懸念事項にあったものを尋ねた。

「例の……、海側から流失したという魔物の船はその後?」
「ああ、例の奴か。 此方の隠者で追跡をかけていたのだが、フェルスケイロの領地にある漁村を二つ壊滅させた後、その場で冒険者によって討伐されたらしい。 その中には女王の伯母上殿も混じっていたそうだ」
「まあ、ケーナ伯母上の手を煩わせてしまうなんて……。 先にフェルスケイロにも警告の文面を出していた筈よね?」

 対応出来る余地はあったはずだと女王達は予測していた。 折りしも同タイミングで、フェルスケイロとヘルシュペルの騎士団は共同で盗賊団の討伐に当たっていた。 文書が届けられたのが騎士団が城を出た後だったので、国としても身動きが取れなかった、というのがオウタロクエスの見解ではある。

「あとその場の隠者からの情報で、女王の伯母上殿は『守護者の塔』と言うものを目覚めさせる使命があるらしい。 そちらの点から協力を呼びかけてみれば、今回の廃都についても見返りが獲られるのではないでしょうか?」
「そう言えばケーナ伯母上は守護者(スキルマスター)でしたね。 過去は十三人居たそうですが、今の世では他の方々は何処に行ってしまったのやら……」

 その隠者はロクシリウスは勿論の事、ケーナの放った精霊にまでその存在を確認されていた。 ケーナ自身にもアガイドの隠者がついているので、害意を加える者では無いと精霊は判断した。 しかし、ロクシリウスはそうは考えなかったようで、野営中にソレを穏便な態度(・・・・・)で追い払っている。 ケーナには「何もありませんでしたよ」としか報告して無いが。

 会議はその後、細かい連絡事項などを報告し合い終了した。 官僚が玉座の間を退出するのを見届けたサハラシェードは、騎士達も部屋から出させ、玉座からズルズルと床に敷かれた絨毯へ座りこむ。 気疲れの溜息を吐くと残っていた騎士団長や宰相、魔法師団長に苦笑された。 

「陛下、お気持ちは分かりますが、だらしないですぞ?」
「懸案事項ばっかり増えていって嫌になるわ……。 伯母上とか手伝ってくれないかなあ……」
「話だけ聞くなら苛烈な方のようですが、クロフの報告を聞く限りでは随分とのんびりした方のようですね」
「伯母上は自分がハイエルフ族だっていう自覚が無いもの。 市井の者とは直ぐ仲良くなっちゃうし、威厳なんか何処かに置き忘れてったって感じよね」

 心配するよりは母親が子供を叱る気持ちにも近い。 どちらが年上か分からない発言に宰相達は吹き出した。 が、直ぐに真面目な表情で互いに頷き合う。 魔法師団長は引き続き廃都の監視に、騎士団長は軍備の強化に、宰相は女王と各国との連絡を密にする為にそれぞれ動き出す。

「陛下。 休憩は終わりにして、儂とお手紙でも書きましょうぞ」
「格好良い人が一緒だといいんだけどなあ……」
「では騎士団から見目麗しい者でも向かわせましょうか?」
「……もう冗談だから。 騎士団長は自分の仕事に集中して!」









 ────── フェルスケイロ

 王城のかなり高いところのテラスにて。
 国王と宰相のアガイドと大司祭のスカルゴ。 王女であるマイことマイリーネ・ルスケイロがテーブルを囲んでいた。 
 高所といっても風は気にならない。 かつてはこの城も何処かのギルドの所有物にあった。 そこのギルド員は余分な課金ポイントを消費し、城の外観を保つことを趣味にしていた。 その影響で城に掛けられた結界は今現在も機能しているのである。

「通商ギルドからの報告が来た時には何かとは思ったが……」
「直前に届いたオウタロクエスからの文書の裏づけが取れる報告ですな」

 王がテーブルの上に広げられた二枚の書面に対して渋面を作る。 
 アガイドは報告書の片方に、国としてもやや扱いに困る者の名前が含まれている事に眉をひそめた。
 国として対する対応には慎重になりたい相手なだけだが。 その関係者であるスカルゴはいつもの奇行(・・・・・・)も潜め、オウタロクエスからの文書に思案顔で居た。 ついマイリーネが心配して声を掛けてしまうくらいに。 

「あ、あのスカルゴ様、どうかなされたのですか?」
「ああ、いえ。 王よ、廃都についてオウタロクエスから援護要請等は来ていないのですか?」
「いや、今回の通達は海側からの脅威に対する勧告のみだな。 廃都に関して我等よりはあちらの国が詳しいだろう。 大司祭殿は廃都について何か知っているのか?」

 基本的に廃都と呼ばれる場所について、一般人が知っている事は御伽噺で神が悪意を封じた場所である事。 ソレくらいであった。
 これが国の上層部になると廃都の実在と位置、フェルスケイロの南西、オウタロクエスの西端にあると知っている。 だけれども中には『悪意が封じてある』としか伝えられていない。 この一連の事情をプレイヤーが知った時はまた違う判断を下すだろう。

 スカルゴは確かに“プレイヤー”であるケーナに連なる者だが、国に属する者でもある為に三国の機密情報を安易に流しても良い訳でも無い。 知恵を借りるには一番の適任者なのだろうが。 だからといって本人が国家に関係したくないと大っぴらに公言しているので、事情を説明して知恵者になって貰う事も出来ない。 残った適任者はと言うと……。

「……騎士団長が戻ったら、聞いてみた方が良いでしょう」
「あやつにか? あんまり頭脳労働担当に適任とも思えぬが?」

 ここに居ないからと言えばそうだが、アガイドの酷い発言に王とスカルゴは苦笑した。 スカルゴは以前見聞きした情報だけで判断し、本人には後で謝ればいいと考えて爆弾発言を投下した。

「シャイニングセイバー殿は、母上と同じく二百年前の人物ですよ」
「…………なんじゃと!」
「っ……、ええ。 以前に聞いてしまったのです、母上と大戦中に同士だったと言う話を」

 想定していたより随分と驚愕したアガイド宰相のリアクションに、失言だったかと焦る。 それは表面には出さず『きらーん』と歯を光らせ、憂い顔でいけしゃあしゃあと告げた。
 プレイヤー同士なのは合っているが実際の所、所属国的には敵同士だったと言ったほうが正しい。 それはスカルゴも知らない情報ではある。 むしろ散々魔法で吹っ飛ばされたと言う、一方的な(かたき)同士だ。

「父上、だからと言ってシャイニングセイバー殿一人を詰問すれば良いという訳でもありません。 建国以前の事象についての情報は国に混乱を及ぼすものです。 ケーナ殿と行動を共にして分かりましたが、あの人の使う技術(わざ)は今の世に不釣合いなものだと考えます」
「いや王女……、母上の存在は密輸品ですか……」
「どちらかというとタチの悪い蔓延する可愛い捨て犬のような……」

 王と宰相で騎士団長に問う事を詰める中、スカルゴはマイリーネの言葉に正論だとつい頷いてしまった。 自分達もそうだが、懐に入られると誰も彼もケーナに甘くなってしまうところとか。











 ────── ヘルシュペル


「その後、どうですか? 彼の様子は?」
「は、これはケイリナ様」

 罪人を強制労働に従事させる鉱山にやって来たケイリナは、看守を受け持つ数人のドワーフに例の人物の動向を訪ねた。 言わずもがな祖母の捕えた魔人族の頭目の件である。
 報告によると、あれ以降苛烈さは成りを潜め、至極真面目にツルハシを振るっているらしい。 夜には時折うなされたり、泣いていたりする時もあるとか。 あれだけの凶行に走っていた人物とは思えない。

 野盗の砦を攻略し、生き残った盗賊達を尋問なり砦を捜索なりして得られた情報としては酷い物だった。 少なくとも二百人近い旅人、商人、冒険者が頭目の餌食になっている事が判明した。
 フェルスケイロ騎士団長の銀竜人(シャイニングセイバー)には頭目を捕えたくだりを簡潔に説明した。 驚いた事に彼は祖母を知っていたようで、経緯には特に疑問を挟まなかった。 しかし、頭目の目的が『れべるあっぷ』の為の『ぷれいやーきらー』と聞くと随分動揺していた。

 ケイリナが収監されている頭目の動向や素行をわざわざ確認しに来た理由は、先日の祖母がいきなり訪ねて来た時の話し合いに遡る。 とっさに頭目の処分について暴露してしまったが、ケイリックと論議していた議題は全く別のモノだった。

 ケイリックの創設した通商ギルドには表側の役割。 ―――各国の流通網の把握やら価格調整、流通路の構築―――、の裏側で王家に出入りする商人(てのもの)が国家間の機密情報を入手してケイリックが取り纏め、然るべき所へ売り払っていた。

 当然の事ながらオウタロクエスで発生した廃都絡みの騒動も把握している。 国家の対応についての情報はまだ得ていないが、下手をすると三国の戦力を結集する必要があると読んでいた。

 あちらで発生した騒動については以下の通りだ。
 廃都から結界を抜け、ゴブリン六匹のチームが商隊を襲撃。 数人が命からがら逃げ出して騎士団の知るところとなった。 問題の脅威はこの先で、討伐に向かった騎士団百人余りが、たった六匹のゴブリンに壊滅寸前まで追い込まれたと言うのだ。 運良くその場に数人の冒険者が割って入り、騎士団の窮地を助けたと。 おそらくはその冒険者達は、祖母と似たような境遇の者だろうと予測している。

 廃都の問題を解決する為に戦力が必要になると判断したケイリックは、頭目を適当な恩赦か何かで釈放し、ヘルシュペルの騎士団に組み込めないかと画策していた。 あっさり負けたとはいえ、あのケーナと打ち合った実力を評価しているからだ。

 問題は頭目の人格的な所にある。 本人が泣き崩れる程自身の行いを悔いている、と言う報告には疑問の声が上がっていた。 要するに自白に良く判らない単語が並んでいた為に、取り調べに関わった者達からは狂人扱いをされているのである。
 『ぷれいやーきらー』『れべるあっぷ』『ろぐあうと』など、何の暗号なのかさっぱり不明だ。 幸いにして当人は此方の意向に従順なので、罪の償いとでも伝えておけば従ってくれるだろう。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ