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リアデイルの大地にて 作者:Ceez
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15話 亀裂を修復してみよう

  


 エーリネ達は交易の為ヘルシュペルに十日程留まる。
 その間は炎の槍傭兵団だけの少人数警護くらいで間に合うので、ケーナは自由時間を手に入れた。

『ケーナ殿は観光でも金策でも好きにしてらして結構ですよ?』

 エーリネにそうは言われたが、金策は間に合っている。 エーリネの商隊が市場で開いた店で、好事家の間に仏像が売れていると聞かされた。 そのおかげで追加の仏像を四十体ぐらい作らされたが、儲けの四割を貰う約束を交わしたのでお金には困っていない。 ちなみに売値は八銀貨で、元値は薪の二束十六銅貨。 加工代はMPを一割も使わないタダ同然、ぼろ儲けにも程がある。

「……と言われても何をすればいいのやら、ねー」

 すっかり友人関係を築いた団員の一人にお手製の地図を書いて貰い、ケーナは期日中に出来そうな仕事を探しに冒険者ギルドへ赴こうとしていた。 目的は金策ではなく暇つぶしに。

「しかし、この地図をみると子供のお使い感がひしひしと感じるわぁ」

 この世界の識字率がどの辺りまでを高水準と言えるのかが不明な為、説明に困るが。 ケーナの持つ地図には点と線で簡略化した王都地図がある。 そこまでは良いが、問題は書いてある文字がひらがなオンリーで『ぼうけんしゃぎるど』、『しゅくはくち』『いちば』と記されている所であろう。
 まるでテレビの番組で隠れてカメラを向けられていそうな子供の気分を味わっているかのようだ。

 ここの冒険者ギルドは、上段下段で区切られた大通りに面した住宅地側に建てられていた。 何か決まり事でもあるのかフェルスケイロのギルドと変わらずに三本の塔が纏まった形だ。 中の作りも似たような物で、入り口正面に談話場とその奥に受付、左手側に掲示板。 何処へ行っても変わらないかの如くびっしりと依頼書で埋めつくされている。

 ざっと眺めたところ、依頼人が商人で“西の外殻通商路の盗賊を退治してください”的な依頼が三割を占めている。 商人から連想されるものに、以前エーリネから聞いた話に繋がるものがあったので、その辺でたむろしている同業者に情報収集を試みた。
 灰色の鱗を持つ竜人族(ドラゴイド)、巨大な両手斧を背負い重甲冑に身を包む者と、軽装鎧にサーベルを腰に差す女性が居たので声を掛けて見た。

「あのー、すいません?」
「ん、なんだい嬢ちゃん。 同業者にしては随分ちっこいなあ?」
「アンタからみりゃあ誰だってそうだろうよ」

 どうやら二人で組んでる冒険者らしい。 『嬢ちゃん』との呼ばれ方はもう仕方ないと諦めたケーナに、同性の方が話しやすいと見たのか女性の方が対応してくれた。

「アンタこの辺じゃ見ない顔だね、冒険者になったばかりかい?」
「いえ、フェルスケイロから来ました」
「よくもまあこの状況の中ここまで来れたねえ……。 東の外殻通商路を使ったのかい、あっちは確か橋が落ちてたはずだけど?」
「橋が無くても川を渡る手段は有りますよ」
「随分と自信有り気だねえ。 それで私達に声を掛けたのは何の用事だい?」
「こっちの国に湖の中に城が建っている場所があると聞いたんですけれど、どこにあるか知っていますか?」

 これに答えたのは竜人族(ドラゴイド)戦士の方だった。 彼は室内右側、ギルドからのお知らせ等を張る掲示板にある地図を指差した。 ヘルシュペルの周辺を簡略化した縦長の地図で、王都の下に湖や川が描かれていて地図全体の下側三割に赤い線が引いてある。

「ああ、三日月の城か。 あれなら盗賊達の勢力圏内にあるんで立ち入り禁止区域の中だ。 あの赤い線より南になるな」
「なんで三日月の城って言うんですか?」
「何だか知らないが三日月の夜になると城全体がキラキラ輝くのさ。 古代の宝物庫だって言う噂もあるけれど、古いジジイ共の話だと“守護者の館”とか言って随分恐れているよ」

 それはケーナにも確信が持てる情報である。 二百年以上生きたエルフだと守護者の塔を知っている者だって居るはずだ。 逆に聞きに行って『銀環の魔女』だとバレるのも困るので、そちらへの聞き込みは却下するしかない。
 教えてくれた女性と竜人族には礼を言ってギルドを後にした。 問題の場所までは馬で片道二日かかるらしいが、騎士団が盗賊にいいようにあしらわれているのには納得がいかない。 昨日会ったケイリナも今までの中ではダントツの強さであるだけに。


 ケーナの懸念は盗賊退治をした場合、その後の人々の反応にある。
 かつてスキルマスター就任後、ギルド仲間以外に狩り場で意気投合した普通の友人達から提案を持ち掛けられた。 『手数料と紹介料を折半するから優遇しないか?』……と。
 しかもケーナが押し掛けて来る人達にどう対処したらいいかと、相談をした返答の殆どがコレだっただけにショックは言い表せない。
 ギルドの招集以外では辺境に引っ込み、人の多い場所に近付かなくなったのはそんな理由だ。 ゲームを辞めたりしなかっただけ、ノイローゼになった仲間よりはマシなのかもしれない。

 だからと言ってゲーム中がそうだったから、今の人達も同類と決め付ける理由にはならない。 あまり騒がれたくないケーナを理解してくれるエーリネや、強すぎる力をあまり表に出さない様注意してくれるアービタ達と知り合えたのは幸運だし、感謝もしている。

(昨日の今日で会いに行くのも気まずいしー、明日またケイリックを訪ねてみよう。 お土産でも持って)

 悪い思考にハマらない様に気分を切り替えたケーナは市場へ向かう。 お土産をどうするか考える為に。





 ―――同じ頃
 フェルスケイロ王都のスカルゴの執務室には部屋の主がどうしたものかと考え込み、真っ白に憔悴したマイマイが虚ろな目でテーブルに突っ伏していた。
 原因は昨日夕方にケイリナから【以心伝心】で届いた一文。
 内容を簡潔に述べると『ケイリックがお婆様を怒らせた、危うく命の危機だった』である。 後半は悪戯好きの母親を諫める為のものだが、マイマイにしてみれば再び折檻が目前に迫っている絶望感に気が遠くなっていた。

 キラーン
「最早自業自得としか言いようがないだろう」

 歯を光らせつつ書類を片付けるスカルゴに文句を言う気力もない妹。 【以心伝心】が通じれば詳細を母親に求められるのだが、あちら側がスキルを失っている状態では繋ぎようが無い。
 母親がスキルを失った理由は200年前に相当嫌な思いをしたのだろうと推測できる。
 折角引きこもり状態より出て来てくれたのだ。 今度こそは好きな様に生きていて貰いたいと思うスカルゴだった。








「なーにを買ってきたんだよ嬢ちゃんは……?」

 市場で大量に物を買い込み、袋を幾つか抱えて宿屋に戻ったケーナに護衛待機をしていたアービタとケニスンは目を丸くして迎えた。

「なんか色々使えそうな材料があったんで。 ちょっと買い過ぎちゃったかも?」
「ええと、どれどれ……。 ルジュの実に卵に羊乳に砂糖? 料理でもする気かよ?」
「なんかの骨ガラとかありますッスけれど、何に使うんスかこれ?」
「パイとかケーキでも作ろうかなあって。 ……って二人してなんですかその天変地異でも起きたような顔!?」

 目を丸くして無言、あまりの反応にケーナが抗議した。 二人は目線で「だってなあ?」「そうッスね」と会話を交わす。 旅をする間にケーナが料理を担当する場を見た時が無いだけに、料理の方は壊滅的だと思っていた。

「ええい、じゃあちょっと待っててください! 今、度肝を抜いてあげますからっ!」

 買って来た材料を纏め、宿泊している二階の部屋へ上がって行ったケーナにアービタは首を傾げた。
 てっきり宿屋の厨房を借りるのだとばっかり思っていたのだ。 かくして十分と経たずに降りてきたケーナの手には、甘い匂いを漂わせるオレンジ色のルジュという果実をふんだんに盛り込んだパイが出来上がっていた。

「って、早っ!?」
「なんスかコレッ!? ちょっと早過ぎやしませんか!」
「ほーっほっほっほ。 この私の実力を思い知るがいいわ、さあ喰え!」

 匂いに誘われてきた宿屋の女将から包丁を借りて切り分ける。 ほかに誰も居ないので、宿屋の主人と女将もご相伴に預かった。 口にした者が目を丸くした後にペロリと平らげる。

「美味い!」
「美味いッスよケーナさん」
「そーでしょう、そーでしょう。 ふふん」
「ちょっ、どーやってこんなモンを!?」
「……むむむむ。 しっとりとした甘さにパイ生地は硬すぎずふんわりとルジュの果実が形を崩さずにシャクシャクとした歯ごたえが有り二重のハーモニーが……」

 宿屋の主人が絶賛して語り始めるのに時間は掛からず、アービタ達も流石に引く。
 リアデイルのゲーム中で【技術技能(クラフトスキル):料理】で作ったものは、短時間限定で様々な補助効果を及ぼす能力UPアイテムとして扱われていた。
 流石に味の保障までは出来なかったが、ゲーム内で食べても“パイらしい味”としか感じ無かった為、殆どハッタリで押し通したケーナも内心安堵した。 まさかこんな美味い物が出来上がるとは、作った本人も予想外である。
 パイ系の能力上昇値は魔法威力UPで、ルジュのパイは三%上昇だ。 ケーナが使っても千百ダメージが千百三十三ダメージになるくらいの違いでしかない。

 エーリネの話によるとパイは各家庭料理でよく見るものだが、ケーキの類は貴族か王族が専属の料理人に作らせるものらしいので知る者は少ない。 続いて苺、に良く似たリーベリーという木の実のケーキを作ってみると、全員に高評価で綺麗さっぱり皆の胃の中へ。
 宿屋の主人にレシピを聞かれても、スキルで作る場合は材料でしか公開できるシロモノでは無いので、一子相伝の技と誤魔化す。
 実際の所、マイマイ達に言わせるとケーナの【スクロール作成】で作られるモノは『読む物』じゃなくて『理解するモノ』だそうだ。 この二つの違いが実に幅広いらしく、今の時代の人達で理解してもらえるかは望み薄いとの事。 

 結局皆に乗せられる形で次々とレシピを披露。 団員や商隊の仲間も話を聞きつけて集まってきて、全員が満腹でアザラシの様にゴロゴロ横たわる頃には材料を使い切っていた。

「これは売れますよ、ケーナ殿」
「生ものだからお店には並べられませんよ。 保冷設備があるわけでも無いし……」

 口の周りをクリームで真っ白に染めたエーリネに呆れるケーナ。 材料を買い足しに行き、ついでに肉料理や魚料理も出来ないかとひと通り見て回り、宿屋に戻る頃には再び荷物だらけになっていた。





 翌日に張り切ってイベントの時だけに作る二段ケーキを作成。 手に持って行くと堺屋の店頭混雑で潰れる可能性もあったので、アイテムボックスに仕舞ってから向かう。 問題はアポ無しで対応してくれるかだけれど、そんな心配は杞憂だった。
 先日のエーリネと交渉していた青年。 どうやらケイリックの息子だったらしく、ケーナを見た途端奥へ案内してくれた。
 同じ部屋に案内された後に、事の次第を知らぬままケイリックを呼びに行く青年。

「しばしお待ちください、曾お婆様。大急ぎで父を呼んで参ります」
「ああ、……うん(ひ、……曾孫かー)」

 この年にもう曾孫の顔を見るという珍事に遭遇するのは、奇跡なのかアクシデントなのか本気で悩むケーナ。 しかし屋敷の奥からドタドタと走り回る音が聞こえ、この部屋の扉が勢いよく開き、エルフの美丈夫ケイリックが姿を現した。
 肩で息をする程慌てた様子でケーナの姿を見ると目を見開き、いきなり床に平伏した。

「え? あのー、ケイリック……さん?」
「申し訳有りませんでしたっ!!!」

 口を挟む暇も無く、謝罪を述べたままじっと耐える姿勢で床に頭を擦り付ける。
 先程の一言以外に何も言い訳にしかならないと思わせる態度に、ケーナも大きな溜息を吐く。
 びくっと震えてそろそろと覗き見るように顔を上げた孫に、イイ笑顔を向けたケーナは腰に手を当てる。

「とりあえずその土下座をやめて椅子に座れ!」
「は、ははは、はいっ!!」

 飛び上がったケイリックがテーブルを挟んだ対面に座るのを見て、ケーナも肩の力を抜く。 なにかとんでもない“お仕置き”を覚悟していたケイリックは、溜息を付いて首を振った祖母を伺った。

「……まあ、とりあえず御免なさいね?」
「…………え? ええ? え、あの『身内でも木っp……」
「誰がするかンな事ッ!? マイマイね、それを教えたのはマイマイね!!」

 素直に謝罪した祖母の態度に疑問を持ったケイリックを逆に叱り飛ばし、「ひっ!?」とか怯えた孫がおずおずと頷いたのを見たケーナの背後に暗黒星雲がゴゴゴゴッと渦を巻く。 

「どーしてくれよう、あのバカ娘……。 そだケイリック」
「は、はひっ!」
「【以心伝心】が使えるのよね? マイマイに伝言を送ってくれるかな?」
「ははは、はいっ! ぶ、文面は?」

鉄の処女(アイアンメイデン)とギロチンと風葬と生き埋め(スイカわり)蓑踊り(ひだるま)、どれがいいか聞いといて」

 その時の祖母は眼がマジだった。 後日震えながらケイリックは姉のケイリナにそう語ったと言う。 ちなみに返信は皆無だったそうな。






 怯えるケイリックを笑顔となだめすかしで何とか落ち着かせてケーキを渡すケーナ。 甘い匂いのする巨大な物体を目にして、ようやく落ち着いたケイリックは改めて祖母に頭を下げる。 ケーナはソレを受け入れ、何で機嫌を損ねたかを明らかにした。 

「皆に商品を届ける元締めとしてのお恥ずかしい発言。 申し訳有りませんお婆様」
「いいよもう、謝らなくて。 大人気なく怒った私も悪いんだから」

 紆余曲折の上ようやく普通に会話を交わせるようになってほっとするケーナ。 
 リラックスして含むところの無い祖母の笑顔を目にしたケイリックも、使用人を呼びお茶を持ってこさせる。 ケーキは自分達の分以外は下げさせるが、運ぶのに二人必要だったのに驚いていた。

 自分の作ったケーキを口にしたケーナは「うん、良い出来」と満足そうに。 同じく食べてみたケイリックも目を丸くして、その後がつがつとあっさりと平らげる。

「アービタさんみたい、そんなに珍しいんだね?」
「いえ、パーティで食べた事くらいはありますが、これほどのモノは初めてです。 うーん……」
「『これは売れる』なんてエーリネさんみたいな事言い出さないでよ? 気が向かないと作らないんだから」
「そうですか、残念です」

 後は普通の雑談に。 簡単に引き篭もりから出て来て今までの経緯を説明する。

「お婆様はその経緯で冒険者に?」
「200年前にもしてたけどね。 まさか七国が跡形も無く消えちゃってるとは思わなくて、どーしようかと迷ってたら今お世話になってる商隊に色々教えて貰ってね。 エーリネさん達には頭が上がらないわ」

 過去の名声はさっぱり捨てて、一介の冒険者として歩むのが面白い。 そういった主義の祖母の姿を受け入れたケイリックは、会った時に考えていた頼み事を諦めた。 かぶりを振って考え直したケイリックは、祖母がニヤけた顔をしてるのを見て挙動不審になる。

「ど、どうしました? お婆様……」
「私に盗賊退治をやって欲しかった、って顔に見えたけど。 違う?」
「はあ、その通りです。 しかしお婆様はあまり大仕事には乗り気で無いご様子、諦めたほうが良さそうです」
「良い勘してるね。 別に私もやりたくない訳じゃないけど、その後の他人の反応が怖いのよ。 騎士団で苦戦しているのに小娘があっさりやっつけちゃった、ってな噂が広まって御覧なさい。 私はまた引き篭もるわよ。 口封じの為に国ごと消し去ったほうがいいかしら?」
「ご、御冗談ですよね?」

 深刻な声で悪戯っぽい顔で呟く祖母にゴクリと喉を鳴らしたケイリック。 剣呑に光る瞳を消し去って真面目な表情で「冗談よ」と告げる祖母に安堵して胸を撫で下ろすケイリック。 言った事が出来る実力があるだけに冗談に聞こえないのがはた迷惑なところだ。

「話は変わるけど、この国に『三日月の城』と言うのがあるとエーリネさんに聞いて、冒険者ギルドで場所を調べたんだけどー?」
「え、ああ。 あれも一応この国の観光資源なんですが、今は野盗達の勢力圏内ですね」

 ギルドで見たよりは詳しい地図を取り出したケイリックは説明をする。
 王都より南下した位置にある水源、湖沼地帯の脇を通り橋を二つ越えたところが騎士団で境界線を張り、かろうじて北上する奴等の勢力を食い止めてある場所だと。 そこまで馬で二日、更に一日南下した所に問題の城はあった。

「ふーん、問題の砦(れんちゅうのアジト)はそこからまだ南の方なのね。 そこまで勢力圏内ってことはこの城がなんなのか知っているのかな?」
「あのーお婆様。 その城が何か?」
「どうも“守護者の塔”みたいなんだよねー」
「なんですとぉ!?」

 かつては神から賜ったと言う世界を支える十三個の基盤。 至宝のお宝が眠っているが、選ばれた者しか入れない神秘の塔。
 一般的に流布される噂をまくし立てるケイリック。 激しく間違っている情報に引きつるケーナ。 200年間の伝言ゲームの成果恐るべしといったところだろう。

「壊されたりする前に、中の守護者起こして防御を固めて貰わなくちゃ。 明日にでも行って見るかー」
「いえ、ですがお婆様。 手前に騎士団が防壁の陣を構築しているはずですが?」
「大丈夫よ、通り抜ける手段はいくらでもあるもの」
「問題の城の周辺にも野盗が居ると思うんですが……?」
「ああ、それは大変ね。 邪魔だったらどいてもらえばいいのよね。 それで野盗達が後退してくれれば、海路でも使って荷は運べるわよね?」

 ケーナの言い方にケイリックはハッとなった。 確かに見落としていたがその辺りから野盗が居なくなれば、レッドゾーンに入ってる漁村からフェルスケイロまで舟が出せる。 ケーナは盗賊退治をするつもりは無いが、通商がどうにかなる程度くらいまでは手を貸すと言ってくれているのだ。 そこまで言われればケイリックにも出来ることがある。

「判りました。 たしか今日辺りから姉が任務であちらに行っているはずです。 一冒険者の進路を妨げないように取り計らってもらいましょう」
「あら? 天下の堺屋がたかが一冒険者に手を貸すなんてあっていいのかな?」
「問題有りませんよ。 その冒険者にはウチから騎士団の防衛陣まで補給物資を運んで貰う、という大事な依頼を受けてもらうのですから」

「ふっふっふ、堺屋。 そちも悪よのう?」
「いえいえお婆様には適いませんよ」

「ふふふふふふふ…………」
「ははははははは…………」


 お茶のお代わりを持ってきた使用人は、扉の向こうから聞こえて来る不気味な含み笑いの二重奏にビックリして逃げ出したそうである。





最後の会話がやりたかった、後悔はしていない。
+注意+
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