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警告
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。
苦手な方はご注意ください。
FINAL QUEST~呪われし高校生~
作者:気紛れ儘
 迷い込みし旅人をさらなる迷宮へ陥れる魔塔。

 その頂に封印されるは一冊の書物。

 その書物の名は覚りの諸。其処に刻み込まれる言葉を読みし者は、己だけに存在する勇気への路を見出すことが出来る。

 その路は、世界を光に導く唯一の路。


 この世界――デバッカーは一体の魔物により、混沌の路へ一歩一歩近づいている。

 彼の魔物は、魔物の頂に君臨し王。

 人々はその圧倒的な力を恐れ、脅え、危惧する。

 その者の名は


――――――――――魔王

 
 魔王に対抗する力は、人々に勇気を与える職業(ジョブ)勇者とその仲間たち。

 勇者に転職するには、悟りの書を読みて路を開くか、己の力で抉じ開けるしかない。

 
 名誉、力、夢。人々はそれぞれ己の欲するモノの為に勇者を目指す。

 
 そして、ここにもまた勇者を目指す少年がいた。

 

 少年は還るために戦う。

 
 魔王を倒し、平和な世界である“地球”に還る為に…………





††††NOW LOADING††††

 人里から遠く離れた洞窟。入口には白い岩石で創られた二体の岩人形(ゴーレム)が、入口を守護する様に鎮座している。彼らは踏み入りし者を監視するためだけの像。決して動く事は無い。

 しかし、細部まで忠実に創られた像からは命を感じられる。

 ここは鏡の洞窟。真実を映し出す聖なる鏡の元となる鉱石が眠る洞窟。

 洞窟の周囲は草が枯れ、大地は渇き、生命は皆死に絶えた死の大地。この大地に生きるのは生命力の高い魔物だけ。

  人々を襲う魔物たち。彼らは心が闇に染まりし生き物。元を辿れば馬や鳥、人間たちと同じ生き物であった。しかし、闇に染まる事で身体を進化させ、様々な環境に適応し、人間を餌とするようになった。

 しかし、人間を殺すはずの魔物たちは洞窟の入り口に向かって、死体の列をなしている。

 渇いた大地に血が染み込み、黒く変色を起こしている。

 その上には二つ、足跡が残っていた。足跡は洞窟の中へ、奥へ真っ直ぐ伸びている。

 二つの軌跡は洞窟の最深部まで続き、そこでは死闘が繰り広げられていた。


††††NOW LOADING††††


 「喰らいやがれ、火遁ア~ンド     (パンドラ)!!」

 
 職業(ジョブ)忍者の能力(アビリティー)である火遁と俺の特殊能力(アビリティー)を発動させる。

 火遁により生じた火柱に火の魔法フレイムが重なり、二重の火柱となる。その火力は単発の数倍。業火となった火柱は渦を巻きながら、目の前の敵――スカルドラゴンに直撃する。

 骨で出来ている身体が紅蓮の渦に呑まれ、悲鳴を木霊させる。

 その悲鳴と同時に、ウィンドウとメッセージが表示される。脳に直接送り込まれる情報は先程の威力を教えてくれた。

 『マコトは 火遁を つかった。 マコトは フレイムを つかった。 スカルドラゴンは 450の ダメージ!』

 ちっ、火は耐性持ちだったか、ダメージが低い。

 
 思わず舌を打ってしまったが、スカルドラゴンは紅蓮の渦に憚れ、身動きが出来ない。

 熱くて俺自身も追撃に行けないので、少し俺の特殊能力を説明しておこう。

 
 まず、この世界では特別な力を使うことが出来る。それは能力(アビリティ-)

 これは世界の加護である職業(ジョブ)に就く事で習得できる不思議な力。

 先程俺が使った火遁は忍者と呼ばれる職業で習得することが出来る。

 そして、火遁と同時に使った能力は特殊能力と呼ばれ、個人ごとに少なくとも一つ、多くて五つ有する専用の能力だ。

 これらにはある一点において大きな違いを持つ。それは職業による制約。

 通常、職業に就いて習得した能力はその職業でしか使う事が出来ない。

 しかし、特殊能力は個人そのものが有するものであるので、どんな職業に就いていても使うことが出来る。

 中でも、俺の特殊能力は特別でチートと呼べる代物だ。

 一般の特殊能力は水の魔法ウォーターや火の魔法フレイムと同じ性能だとか、重力を操るや、一瞬だけ高速移動が出来るなどの一つの効果しか発揮しない。

 それは世界の(プログラム)において、一つの能力に効果は一つだけと決まっているからだ。

 しかし、俺の     (パンドラ)は一度俺が習得した能力の中から選択し、その選んだ効果を発揮させるという世界の理(プログラム)に反した効果を持つ。因みにさっきは火の魔法フレイムを使用した。

 何故、こんな能力が存在するのか?

 それは俺の……「キシャアァァアアアア」……煩いのが動き出したのでその話はまた後で…………てか、俺は誰に話しているんだ?

 そんな些細なことを考えていると、スカルドラゴンが反撃をしてきた。雰囲気的に怒っている気がする……全身骨なのにカルシウム不足のようだな。

 『スカルドラゴンの こうげき。 ミス!!  げんえいが みがわりと なって きえうせた』

 薙ぎ払われた尾が土埃をたてながら俺に襲いかかる。以外にリーチが長くて普通の方法では躱せそうになかった。

 つーわけで、俺は空蝉を発動させた。この能力は使用者の周囲に幻影を創り出し、一回だけ攻撃を必ず躱すことが出来る便利な能力だ。しかし、一つ欠点があって、一度使用すると他の能力を使わないかぎり、再使用不可能なのだ。

 まー、連続で使えたら、一方的に攻撃出来ちゃうから、そういう制約をつけたのだろう……

 てか、ちょっとビビッたのでお返しに手持ちの苦無を投げつける。

 俺の手元から飛び立った鉄の爪は、狙い通りにスカルドラゴンの身体に突き刺さる――ことは無く、骨の間を抜けて、黒く染まった地面に突き刺さった。

 俺の意図を全く理解してない、骨の獣は何事も無かった様に襲いかかろうとする。しかし、己の異変に気付き、唯一生気が見られる眼が驚きの色を見せた。
 

 『マコトの こうげき。 影縫い!! スカルドラゴンは うごけなくなった!!』

      (パンドラ)で狩人の能力影縫いを発動。影を地面に固定させる事でその持ち主に動きを封じる技。

 ここまで来るのに大分MPを消費し、尚且つ回復もしていないのでこいつを仕留める大技を使えない。

 
 だから、ここは彼女に任せる。俺の思考を理解していると信じ、俺は後ろに下がる。


――――――――刹那

 
 洞窟内に聖なる光が満ちる。温かな光は岩を、地面を、魔物を包む。もちろん俺の視界も光に包みこまれてしまう。不意撃ちに気をつけようと身構えるが、頭に流れたメッセージにより脱力する。

 
 『クレアは シャイニングを つかった。 スカルドラゴンは 1653の ダメージ!! スカルドラゴンは ちからつきた……』

 
 メッセージが流れると同時に目の前の敵が崩れ落ちた。一つの身体を創っていた骨たちが分離し、地面に乾いた音を立てる。
 

 ドラゴンと言えども、所詮は骨で出来た死体(ゾンビ)。ゾンビには光。これはゲームでは絶対不変の(設定)

 『スカルドラゴンを やっつけた。 マコトたちは 800の けいけんちを かくとく………………』

 魔物の亡骸からほのかに光る粒子が放たれ、俺たちの身体に吸収されていく。

 『マコトは レベルが あがった! HPが 10 あがった。わんりょくが 7 あがった。こううんが 4 あがった…………』

 どこか聞き覚えのある、小気味良い音楽と共にパワーアップのお知らせが送られる。し・か・も、メッセージがまだ終わってないことから、新しい能力を習得したことがわかる。

 勿論、攻略本や、インターネットで情報を見れないので、どんな能力が来るかも分からない。前回はたしか……水遁を覚えた気がする。その前は土遁、風遁と一通りの属性を覚えたので、今回はまったく予想が出来ない……

 
 『マコトは 微塵がくれを おぼえた。』

 おぉ、微塵といえばアレじゃないですかっ!?身代わりの死体に爆薬を仕掛けて、追手に自爆したと見せかけたり、追ってきた相手を爆殺するアレじゃないですかっ!

 どれどれ、早速能力説明を見て見ますか……この世界は習得した能力をみたい時に頭で描けば、説明をみることができる、やさしい作りなのだ!

 『微塵がくれ ………… みずからの みを ばくはつ させて てきを こうげきする。はつどうご HPが 1に なる…………』

 オーアールゼット……期待を裏切る自爆技に、おもわす地面に突っ伏してしまった。

 何?このドM能力。おかしくね?この世界ではHPが零になっちゃうと死んじゃうんだよ?それが1だけ残るて何よ。機密情報を守るために自決しようと使っても、生き残っちゃダメじゃん!!

 なにこの能力!?何時!?何処で!?誰が!?何の為に!?使うんだよっ!!

 どうせなら、某忍者漫画の口寄せや、鹿○の影真似を覚えてみたかった……。それなのに、こんな存在価値零の技を覚えるなんて、容量(メモリー)の無駄じゃないか!!

 目と鼻の先にある地面に、滾々と湧き出て来る暗い感情をぶつける。ドンッ。と一発殴る毎に洞窟が揺らぎ、天井から土砂が僅かに降り落ちる。

 『マコトは ぼうそう している。マコトは はんどうで 10の ダメージ! マコトは 8の ダメージ! マコトは 9の ダメージ!……』

 一発地面を叩く毎に、何故か殴っている、いわば攻撃側である俺のHPが減っていく。

 俺の防御力を地面以下ですか?確かに忍者だと防御力の伸びはいまいちだが、殴った反動でダメをうけとか、凹むわ…………

 当てつけにもう数発殴ってやる。いいもんね!HP減っても回復すれば関係無いもんね!!

 『マコトは じぼうじきに なった。マコトは はんどうで 10のダメージ! マコトは 19の ダメージ! マコトは かくせい しかけている。マコトは 14の ダメージ! マコトは ちょっぴりMに なった!』

 「っなるかぁぁああ! ボケェェ!!」
 
 ふざけたことを抜かすメッセージに、強烈なツッコミをぶっこむ。

 『マコトは 気合い溜めを つかった。 マコトは 気功弾を つかった。』

 ツッコミの際にあまりの勢いで、      (パンドラ)を発動させてしまった……しかも、拳闘士の数少ない遠距離技に、威力上乗せさせた一撃が、壁に向かっていく。

 先程、地面を殴っただけで、天井が揺れるほど脆い洞窟。

 さて、そんな所であんなカメ○メ波みたな、気功(エネルギー)弾を撃ったらどうなるでしょうか?…………正解は~~~崩☆壊。テヘッ
 
 着弾と同時にDOGooooooooooooN!と我ながら感心する爆発音と激震が、洞窟内に響き渡る。そしてそのまま、天井が落下してくる映像が、俺の脳内で再生された。

 地響きと共に着弾地点から、岩壁が崩れ落ちた――――否、それは鉄の人工物だった。

 それは壁の開口部を閉じたり、空間を他と遮断する役目を持っていたり、望まれない“部外者の侵入”を阻むものであったりする。

 この人工物――扉は周囲に隠されるように設置されていたのを見ると、“部外者の侵入”を拒否するためのものだろう。結構な強度であったみたいで、全体(壁の下から天井まである高さ)に僅かな穴しか空いていなかった。おおよそ、俺らが通れるくらいの穴だ。

 捨てる神あれば拾う神あり。この世界(デバッカー)の神は俺を弄ぶが、俺が還る先の世界(地球)の神は俺に憑いている様だ。


 「…………気のせい……被虐趣味の……変態には……神どころか……悪霊も憑かないから……」
 
 良い様に考えていたら、背後から棘のある言葉が不意打ちしてきた。その声の持ち主は一人しかいない。その前に一つだけ言ってきたいことがある。

 「俺はマゾじゃねぇぇえ! あと、人の心を勝手に読むなよっ!!」
 
 「……プイッ……」

 「無視ですか! ねぇ、聞いてます? クレアさん!?」

 そっぽを向き、俺の言葉なんぞには耳を傾けることもせずに、穴が開いた扉へと歩いて行く少女。

 「おい、危ないから先に行くなって! 待てって聞こえてるだろ!?クレア!!」

 どんどん一人で先行する少女――クレア。

 俺は彼女を追いかける為、慌てて苦無を回収し、走って扉を潜った。

 彼女は俺にとって大事な存在だ。普段は大人しくて可愛いのだが、時々先程の様に、容姿に似合わぬ鋭い言葉を放つが、俺にとっては命の次に大切な人だ。

 俺が彼女を追いかけている間に、その理由も含めてさっきの話の続き――俺がこの世界に存在する訳を話しておこう…………




††††NOW LOADING††††
  

 『名前を入力してください』

 ピッ ピッ  ピッ 
 カーソルを動かして一文字目を入力する。

 『マ_____』

 ピッ ピッ  ピッ
 再びカーソルを移動させて二文字目を入力する。
 
 『マコ___』

 ピッ ピッ ピッ  ピッ
 最後の文字を入力して決定を押す。

 『マコト』


 NOW LOADING……………


王様「おぉよくぞ参った、勇者マコトよ。うむ、強そうな体格をしておる。流石は伝説の勇者オヌテガの血を引く者よ。お主を呼んだ理由、分かっておるな?」 

 『 はい   →いいえ 』
 ピッと問答無用で右の選択肢を選ぶ。

王様「おぉよくぞ参った、勇者マコトよ。うむ、強そうな体格をしておる。流石は伝説の勇者オヌテガの血を引く者よ。お主を呼んだ理由、分かっておるな?」 

 『 はい   →いいえ 』
 ピッと再び右の選択肢を選ぶ。

王様「おぉよくぞ参った、勇者マコトよ。うむ、強そうな体格をしておる。流石は伝説の勇者オヌテガの血を引く者よ。お主を呼んだ理由、分かっておるな?」 

 『 →はい   いいえ 』
 お決まりの無限ループを楽しんだ所で物語を進める。

王様「お主の知っての通り、最近破壊神と名乗る新たな魔王がこの世界にあらわれたのじゃ。そこで伝説の血を引くお主にその魔王を倒してもらうことにしたのじゃ。そういう訳であるからのこの世界の為に戦ってくれ、これが我からの選別じゃ」

 『マコトは50Gを手に入れた。マコトは薬草を手に入れた。マコトは檜の木刀を手に入れた・・・・・・・・・・』
 続々と理不尽な選別を手に入れていく。

王様「魔王についての情報は城の兵士たちが知っておるから聞いておくと良い。お主の活躍に期待しておるぞ」

 俺――兵藤(ヒョウドウ)(マコト)は任店堂とソヌィーが異例のコラボレーションで製作したゲーム―――FINAL QUEST~伝説のクリスタル~をプレイしていた。
 このゲームは各会社の代名詞と呼べるRPGゲームを一つにまとめた贅沢なRPGである。その人気ぶりは発売日初日で二百万本も売りあげるという空前の大ヒットを起こすほどだ。

 ゲームに目が無い俺はもちろん予約をして確実に手に入れようとしたのだが、インターネットや各店で予約が開始したと同時に予約を終了してしまった。
 
 しかし、俺はそんなことで諦めることなど無く。発売日の前日から高校を休んで並び、買うことが出来た。

 手に入れた感動を噛みしめながらゲームを起動させて、プレイしている最中だった。

 
 この後俺は翌日は高校が休みと言う事もあって夜通しこのゲームを遊んでいた。それはもうとても有意義な時間であり、至福の時間でもあった。

 俺は人間の三大欲求を無視してゲームを続けていたのだが、長時間脳を使った所為か次第に睡魔が頭上に舞い降りて、ゲームをそのままにして俺を夢の世界へと連れて行った。


 この後の出来ごとが俺の人生の歯車を大きく狂わせることになった…………




††††NOW LOADING††††


 『貴方の名前を教えて下さい』
 そんなメッセージが目の前に浮かび上がった。俺はこれを夢だと思い込み、同様に浮かび上がっているカーソルを使用して名前を入力した。

 『貴方の名前はマコトで本当によろしいですか?』

 『 →はい  いいえ』
 はいを選択すると次のメッセージが表示される。

 『それでは、冒険の始まりです。頑張って下さい』
 そのメッセージと共に眩い閃光が視界を覆い、俺は意識を失った。





 全身が寒い。ベットに預けてるはずの背中が痛い。それにさっきの夢は何だったのだろうか。名前を入力しただけで終わってしまった夢。そんな事を考えながら俺は重たい身体を起こした。



 その時だ。己の異変に気が付いたのは。何が可笑しいって?全てがだよ



――――だって俺、裸だよ?しかも、石の上に座ってるし。

 これはさっきの夢の続きだと思い、俺は再び冷たい石に寝ころび、瞼を閉じた。こうすればこんな夢なんて覚めると思っていた。

 寒い思いをしながら、夢よ。覚めろと念じていたが中々この夢から脱け出すことは出来なかった。それでも諦めずに俺は念じていた。

 しかし、その念を遮る様に二つの足音が聞こえてきた。その音に俺は跳ね起きて、辺りを見回した。夢とは言え今の俺は裸である。何か身を隠すモノは無いのかと懸命に探すのは当たり前だ。

 「!!ゲットォォォ!!」
 俺は石の端に白い布が折り畳まれて置いてあるのを見つけて、某ネコの如くズザーーッと滑り込んで布を手にした。
 布を手にした時に俺は気付いた。ここは石畳の上、そんな所で滑りこめば俺の露出させられた皮膚は当然酷い目にあう事を……


―――――だが、痛みを感じることは無かった。何故って?そりゃあ頭に突然意味不なメッセージが流れたからだよ。

 『マコトは しろいぬのを てにいれた。マコトは ひざを すりむいた!! マコトは 10の ダメージ!!』

 はぁあ?何だよコレ。と言おうとした時、後ろで徐々に大きく音を立てていたものがぷつりと途絶えた。

 それが意味すること。

 ギギィと油が切れた人形よろしく、首を一八〇度近く回転させた。

 そこには、何やら汚物を見るような視線を送る美女と少女が立っていた。

 どちらも司祭服の様なローブを着用していて、袖口から露出している肌は穢れをしらない雪の如き白さ。現実では一生出会うことが無かったであろう、彫像のように美しく完璧に整った端正な顔。そこから覗く瞳は、俺に送られてくる冷たさと同じ寒色の青いサファイアさながら。

 美女はややつり目な感じであるが、よれがより一層顔のバランスは良い方向へ引き延ばしている。片や、少女も子供に相応しい幼さを残しているものの、気品があり、彫像のように美しく整っていた。
 しかし、見開かれた瞳は、やや虚ろでほとんど何も残していない。むしろ、覗き込んだ者を取り込んでしまいそうな程である。

 白い肌にかかるはいくら手を伸ばしても届くことが無く、誰もモノにすることが出来ない青空の髪。一本一本の髪が超高級な絹ような光沢を放ち、双方共に腰まで伸ばしている。

 美女はゆったりとした服の上からも分かる程、自己主張が大きい胸、相反するようにしっかりと引き締まった腰と世の男を釘付けにする身体つき。対し少女は、隣に比べればまだまだであるが、いずれは隣の美女が霞むほどまで成長するであろう。

 一度見てしまえば、目だけでなく心まで虜にしてしまう魅力を纏った二人。各言う俺も、現在目を離すことが出来ません……。

 俺の視線に気付いたのか、白い肌に映える妖艶な口が開かれた。
 
 「穢れた目で、アタシたちを見るな! このっ……変態野郎!!」

 好き好んで裸でいる訳ないのに、目の前の女は右手を振りながら、俺にそんな台詞を放ってきた。

 次の瞬間……

 俺の身体が宙に浮いた様な錯覚に襲われと視界が転がった。同時に身体中に痛みが走り、頭に激痛が加わった。

 『ファイスは 帰還滅殺を つかった!! マコトは 100の ダメージ! マコトは のろわれてしまった…………マコトは いしだたみのかどに あたまを ぶつけた。777の ダメージ!! マコトは ちからつきた…………』

 俺は意識を手放す直前に、心の底で誓った。

――――必ず生まれ変わって、あのアマをぶん殴ってやる――――




††††NOW LOADING††††

 それから、俺はリバイバルと言う魔法で生き返させられ(・・・・)、この世界に呼ばれた理由や、俺の仕事、立ち位置をおしえられた(・・・)

 纏めるとこんな感じだ。

・俺を召還したのはエルフのファイスと言う悪魔。
・この世界は魔王の恐怖に晒され、人類滅亡の危機に掛けられている。
・そこで召喚能力を引き継ぐエルフが、異世界から救世主を呼ぶことにした。
・召還対象にかかるのは、ゲームの様な世界を強く考えている者。ゲームに全てを注ぎ込んでいた俺は見事にその抽選対象に当てはまっていた。
・異世界人にはこの世界(デバッカー)では考えられない特殊能力が備わっている。
・だから、俺が魔王を倒せと。
・嫌と断ったら“笑顔で殺されて、また生き返させられ”もう一度一から聞かされる。
・俺には帰還滅殺という呪いが掛けられ、魔王を倒すまで世界を渡れない――つまり、地球に還れない。
・この帰還滅殺は強力で、今のところ掛けた本人は召喚で能力が下がった状態にあり、百年は呪いを解けない(魔王を倒せば問答無用で解ける)+召還(帰還)能力を使えない。
・しかし、ファイスの妹であるクレアにも召喚と召還、呪い(掛けるのと解除)の能力が“眠って”いる。
・目覚めさせるにはレベルを途方もない位あげなくてはならない。俺にとって彼女が大切なのは、彼女が死ぬと俺が生きて還れないからだ。

 纏めたのに長げぇぇ……

 まー、こんな感じで俺は魔王殺害(デリート)の為に旅をしている。後、強くなってあの悪魔(ファイス)を一発殴るため。寧ろ最近はストレスにより後者がメインになってきている。

 でも、あのファイス(悪魔)は賢者と呼ばれる後衛系では最高位の職業(ジョブ)で、尚且つレベル100という正真正銘の化け物であったりする。

 そんな化け物に勝つために俺は色んな職業に就き、様々な能力(アビリティー)を覚えている。能力を覚えるたびに     (パンドラ)は凶悪になっていく。

 一方、職業を変えるいわば、転職するとレベルは1に戻ってしまう。そのため、俺の今のレベルは30……因みにクレアは賢者50……オーアールゼット……

 だが、そんな俺ももうすぐ勇者になれる。勇者になるには個人ごとに定まった職業を一定レベルまで極めるしかない。しかし、それがどんなジョブで、どの位のレベルまで上げるかは知る余地が無い。

 そこで覚りの書というモノが大きな力となってくれる。それは勇者転職への路をその書が示してくれるのだ。

 俺は最初は     (パンドラ)の事もあるので、本になんか頼らないつもりでいたのだが――――6つの職業を40まで上げたのに一向に転職することができない。

 そこで、書を読むために、封印されし場所に行こうとしたのだが、そこには強力な魔法(どちらかと言えば幻術)が掛けられていて頂上まで辿り着くことが不可能だった。

 そこで、その魔法を払い退け、真実の路を照らしてくれる真実(ヴェーラ)の鏡を作る為に、材料である魔鉱銀をこの洞窟に取りに来た。

 そして、今遂に長い道のりを経て、隠れた最深部に眠る鉱脈に辿り着こうとしている。

 「クレア、ちょっとストップ。ここいらでMPを回復しておこう」

 もうMPは底が尽きかけている。もし、こんな状態で強敵と出会ったらこっちがやられてしまう。俺は生きて帰って、ゲームの続きがしたいからこんな場所で死ぬわけにはいかない。もちろん、クレアも死なせない。

 「……ん、わかった……」

 クレアは先程とは打って変わって、大人しく俺の言うことを聞いてくれた。否、正しく言うのならこちらが普通のクレアなのだ。

 クレアはあの悪魔(ファイス)の血か一緒に生活していた所為か、時々あのようなキツイ一言を言ったり、勝手に無茶をやらかすことがある。その大半、否、ほとんどが俺に精神的ダメージを与えているのは言うまでも無い。

 まー、普段もちょっと不思議系が入っているが可愛いので、それくらい許してあげてる。――――俺ってやさしぃ~~。

 さて、MP回復効果があるエリクサーを飲んで、互いに準備万端である。

 さぁ!!鬼でもスライムでも魔王でも出てきやがれってんだ!俺の村雨と菊一文字の錆にしてくれる。

 「……錆に……されちゃえば……」

 隣で何やらスイッチが入り、死の宣告を放っているがノってきた俺には効かないZE☆

 今なら、あの悪魔(ファイス)――俺的にはアイツのが魔王だとも思ってる――に一撃くらい(・・・・・)なら入れれる気がするぜ!!

 「……たった……一撃……」

 また、俺の言葉に不意打ちしてきたぜ、この子……

 「だ・か・ら!心を読むなよっ!!」
 
 何この子!?読心術でも身につけてるんですか!?

 ……さぁ?……勝手に……

 無意識ですか!?しかも、心で返してきよった! クレア……なんて恐ろしい子……

 そんな感じで心を平常にし合っていると(俺はそう思っている)、通路の先からドッ。と今までの敵とは比べ物にならない殺気が肌を撫でて来た。それだけで、全身に鳥肌が立ってしまったのは、人間の本能だろう。

 明らかにこちらの存在に気づいてる。ちっ、盗賊の能力(アビリティー)で足音消して、姿透明にして、臭い消して、闇に紛れて、後ろから堂々と必殺の一撃を喰らわしてやろうとおもったのに……。
 
 えっ? 卑怯だって? 馬鹿言っちゃイケないよ。勝てば官軍負ければ賊軍って言葉を知らないのかい?

 たとえ道理に合わなくても、戦いに勝った者は正しく、負けた者は悪いということさ☆

 勝てば、いいのさ。勝てばね……ニヤリ。

 ん?そういえば昔、究極魔法を覚える為にそれを司る神に最も近いとされる精霊との戦いのときも不意打ちを決めてやったな。

 あん時はウケたぜ。あの精霊、クレア一人で来たと思いこんでたから、無茶簡単に一撃を入れれたよ。

 盗賊の能力(アビリティー)で足音消して、姿透明にして、臭い消して、闇に紛れて、後ろから堂々と必殺の一撃を喰らわしてやったのは良い思い出ww

 さて、話しが逸れてしまったが、そろそろ戦闘開始かな?さっきから殺気が強くなっていく一方だし。

 「……っ!!……来る……」

 クレアが俺の腕を引っ張て、盾に隠れる如く俺を前に引き摺り出した。

 「うおっ、水遁!」

 何事かと思ったら、目の前から真っ赤に燃え盛る炎球が飛んで来ていた。咄嗟に水遁で相殺を計ったが、無理ぽそうなので土遁を追加しとく。

 『ベリアルは 地獄の火炎を よびよせた。 マコトは 水遁を つかった。 土遁を つかった。 マコトは 0の ダメージ!』

 案の定、水遁は炎球を僅かに消滅させ、一回り小さくだけだった。炎球は止まることを知らずに、俺へ向かってきたが、土遁により顕現された土の壁により、俺に届くことは無かった。

 「いくぞ!!」

 通路では回避が制限されるので、追撃が来る前に一気に駆け抜ける。後ろには少し距離を取ってクレアが追いかける。彼女は生粋の後衛であるので、俺が前に出て魔法の時間を稼ぐのが何時もの戦法。魔法は能力と異なり即座に発動出来ず、発動まで時間がかかり、隙が生まれるので、この隊列が基本となっている。

 何時でも迎撃出来るようにしているが、あの炎球から全く攻撃してこない。魔物側はメッセージが表示されないらしいので、さっきので決まったと思い込んでいるのか、それとも――――

 そんな事を考えていると、先から洞窟を照らすランタンより強い光が溢れて来た。着いたか、大きさ口が俺たちを待ち構える。その先に待っているのは………



――――天使。

 白い天使服に、一対の純白の翼。その物腰は優雅かつ威厳に満ち天使と呼ぶに相応しいだろう――――頭上に浮かぶ漆黒の輪と発せられる邪気が無ければ。

 「熾天使(セラフィム)であり、力天使(ヴァーチュズ)の支配者であったが、天上界の政争に負けて“自ら”地上に降りた炎の王――ベリアル」

 この世界(デバッカー)には地獄や天国という世界があるとされ、そこには悪魔や天使が住んでいると言われる。偶然なのか、地球の伝承が彼らには当て嵌まる。

 「ほう、我を知っていたか……人間よ」

 奴から発せられた言葉は心地よさを秘めていて、悪魔とは思えない。しかし、騙されてはいけない。奴は偽り・ねたみ・破壊・患難・捕虜・欠乏・混乱・荒廃等に敏感に反応し、人間を誘惑し、堕落の道へと引きずり込もうとする。他にも人間の心に罪を芽生えさせ、イタズラを助長し、人が怒る様子を見て楽しむ悪辣な存在。

 「こちらと色々と事情があってね。そういった知識は人並み以上など思うぜ」
 
 奴に気を引かせつつ、両手を後ろに回し、背中側の腰の提げられた村雨と菊一文字の柄に手をかける……OK、いつでも斬りかかれる。

 「ならば、我が此処にいる由縁も知っているのかの?」

 「そんな個人的な理由まではしらねぇよ。まー、大方魔王に敵対する勇者の数を増やさないために、ここで真実(ヴェーラ)の鏡の材料を押さえてる感じかな? 封印場所の魔塔じゃ悪魔は近づけないからなぁ」

 後ろにいるクレアに指で合図を送る。不意打ちで魔法をぶち込み、一気に俺の能力で追い詰めてやるぜ。

 「そこまで、分かっているなら我と戦う気はあると見るぞ」

 奴が右腕を振り上げる。また炎球かと思い、水遁などを準備する。しかし、それが間違いであったことをメッセージが教えてくれる。

 『ベリアルは 配下を よんだ。 魔物たちが あらわれた!!』

 メッセージだけならあまり脅威を感じないだろう。しかし、魔物と呼ばれた生き物たちは凶悪なモノであった。

 大河の氾濫も意に介さぬ巨大な体躯に、青銅と鋼鉄の骨格、杉の枝のようにしなやかな尾を持ついわれる――ベヒモス。四本の足を地に着け、腿の筋が硬く絡み合っている。身体は装甲の如く全身を覆われ、頭には二本の凶悪な角。

 他の存在を圧迫すような力の奔流、畏怖の念すら感じざるを得ない神々しさ、翼だけでなく全身が輝く炎に包まれ、その神炎を振りまきながら飛び立つ。その息吹が触れた後には、火が燃える前に灰と塵しか残らない。神々しい不死鳥(フェニックス)の姿が現れた。

ワニのような長くのびた口にナイフのような牙がずらりと並び、コウモリのような翼を持ち、鷲のような2本の足で地をしっかりつかんでいる。長く伸びる尾の先には紫色の瘴気が滲み出ている。おそらくは毒であろう。飛翔能力はドラゴン以上、炎は吐かにないが、その尾に潜む毒で獲物を仕留めるワイーバン


 他にも、一つ目の巨人サイクロプス、石の翼で空を飛び、近づいた者を鋭い爪と牙で襲いかかるガーゴイル、冥府の門番――三つ首の魔犬ケルベロス等など……。

 げんなりするほど大量、多種の魔物たちが俺たちの前に立ちふさがる。

 「はははは、何だよコレ……」

 乾いた笑い声と一緒に、目の前の現実を疑う。こっちは二人だぞ。たった二人相手にこの軍隊は無いんじゃないか?これだけで一国を滅ぼせるぞ。

 「どうした?恐怖に圧されて、壊れたか? ならば、一思いに殺してやろう」
 
 ベリアルが合図を送ると、ワイバーン二体が俺たちに飛来する。片や白く光る牙を掛けようと、片や尾の毒で殺そうとそれぞれ別の手段で襲ってきた。

 「殺す? 誰に言ってんだよ。あぁ? この堕天使ごときが!! 俺をなめんじゃなぇよ!!」

 自らを鼓舞する。俺は死ねない。こんな所で死ぬわけにはいかない。

 逆手に持った二刀で、迫り来る翼をもったトカゲを斬り殺す。二本の軌跡は宙に弧を描き、首を切り落とす。

 『マコトの こうげき。 クリティカル!! ワイバーンたちは ちからついた……マコトたちは 1500の けいけんちを かくとく。』

 急所を攻撃したので、HPに関わりなく命の灯火は消えさる。これは人間、魔物双方に共通する一撃の(ルール)。大半は心臓、脳に決めれば一撃で葬り去ることが出来るので雑魚戦では便利なルール。

 二本を逆手に持ち、相手に間合いを計らせなくさせ、自身の間合いを縮める。忍者特有の持ち方で俺は軍団と対峙する。

 「ふはははははっ、よかろう。その意気込み、我の力で撃ち砕いてやろう!!」

 奴も何処からともなく漆黒に染まった三つ叉の槍を取り出して構える。矛先を天井に向けて、柄で地面を叩き、魔物たちに行け。と一言。

 それが合図となって、俺たちの死闘は始まった。



††††NOW LOADING††††

 「……呑まれろ……我が奔流に……」 

 クレアの隣に位置する空間から一本の奔流が噴き出し、魔物たちを呑み込む。そこに俺は雷遁を乗せる。

 『クレアの スプレッド。 マコトの 雷遁 発動。 魔物の群れに へいきん 800の ダメージ!! 数体の魔物は ちからつきた……クレアたちは 2500の けいけんちを かくとく……』
 
 数体が力尽き、経験値を吸収する。身体の底から力が湧き出てくる感覚。これは――

 『マコトは レベルが あがった! MPが 10 あがった。わんりょくが 4 あがった。しゅんびんが 4 あがった……マコトは 絶影を おぼえた!』

 この死闘が始まってから五度目のレベルアップ。遂にあの微塵かくれから新たな能力を身につけれた。

 飛来するフェニックスの翼を切り落とし、ガーゴイルの尾を薙ぎ払い、サイクロプスの脛の筋を断つ。
俺が行動不能にした魔物をクレアが魔法で纏めて仕留める。これをやり続けて漸く軍隊は最初の頃に比べて、半分の数まで減らすことが出来た。

 しかし、ここからが踏ん張りどころだ。あのベリアルは今だ槍を支えにして、立ち往生したままである。舐めやがって……手出しするまでも無いってか? むかつく……ぜってぇ、地獄を見せてやるよ。

 心にそう誓いつつ、絶影の説明を見ておく。――――大まかに言えば、俺の気配を断つものであった。

 ふむ、これは何か使えそうだな……

 新たな能力の活用方を見出しながら、次々と魔物を行動不能に追い込む。

 爆裂剣。真空波。連撃。ドラゴン切り。気合。気合溜め。気功弾。

     (パンドラ)で戦士と拳闘士の能力を乱発する。

 村雨と菊一文字がそれぞれ四回ずつ軌跡を残し、切り裂く。高速で振るられた刀の先からは真空波が飛び立ち、遠くにいた魔物を襲う。ドラゴン系に有効な斬撃が連続でワイバーンに襲いかかる。気合で身体を強化、気合を体内に留めて次の一撃に蓄える。そして、村雨を握ったまま、右拳を振り抜けば、エネルギー弾が軍団を呑み込む。

 『マコトの さまざな アビリティー 発動。 魔物の群れに へいきん 1500の ダメージ!! 数十体の魔物は ちからつきた……マコトたちは 8000の けいけんちを かくとく』

 メッセージの表示も徐々に乱雑になっているが、今は気にせず、思考を続ける。

 …………!! 思いついたよ。良い作戦が一つだけ。これをやればばクレアはMPを完全に尽きることになるが、俺が絶影と鬼札(ジョーカー)を組み合わせて切れば、勝負は決まると思う。

 やるだけの価値はあると思う。このままいけば俺もクレアも共にガス欠になるのがオチだ。

 「クレア! 究極魔法を使え!! 大丈夫、俺もアレを使う!!」

 叫びながら、虫の様に群がって来る魔物を切り捨てて、クレアの元へ戻る。そして、その瞳を覗けば、確かな色が見られた。俺を信じ、命を託してくれる決意の色が……

 「……その歌声は至上の響き……その音色は天国の至宝……」

 クレアが詠唱を始める。不意打ちで倒した精霊から授かりし、最強の魔法。それは全てを滅する歌。

 完全に無防備の状態にあるクレアを守るために刀を振り続ける。なりふり構わず振り続ける。

 それは剣閃の檻。近づく者を容赦無く切り裂く猛攻の防御壁。その周囲には何千粒の鮮血が飛び散る。

 代償に俺の腕は鳴き続ける。悲鳴を上げる。筋がはち切れそうになる。血管が浮き出て、音を立てて血が噴き出す。

 別に能力じゃなく、俺が力の限り行っているので、腕が傷つく毎に守りは崩れて行く。徐徐に魔物の攻撃が俺にまで届くようになり、傷つける、だが、クレアには指一本触れさせない。後はクレアの魔法が戦場を握っているのだから。

 三つ首の犬が俺のわき腹に噛み付く。生きた石像の尾が足に刺さる。巨人の棍棒が身体を打ちつける。鳥の嘴が身体を啄ばむ。

 『魔物の群れの こうげき。 マコトは ごうけい 4000の ダメージ!!』

 ヤバイ!残りHPが1000を切った……クレアはまだか――――


――――刹那

 洞窟に光が満ちる。そして、クレアに一対の魔力の翼が現れる。

 来た。遂に究極魔法の準備が整った。余剰MPで創られた翼がそれを教えてくれる。

 ここで俺は隠しておいた千本針をありったけ、投げつける。もちろん     (パンドラ)を乗せて。

 『マコトの こうげき。 影縫い!! 魔物たちは うごけなくなった!!』

 何十本の千本針が魔物たちを縫い付ける。そして、そこを、否、敵全体を最強の魔法が襲う!!

 七色に光る翼から何本もの光が放出される。翼が羽ばたけば、光は全方位に飛び散る。翼からは羽根が抜け落ち、風に舞って魔物たちに降り掛かる。羽ばたく度に天使の歌声の様な素晴らしい音色が響き渡る。それを放つ術者はまさしく天使。

 『クレアは 熾天使の福音(セラフィムソング)を つかった!! 魔物たちに 9999の ダメージ!! 大量の魔物が ちからつきた……』
 
 光に触れた魔物は聖なる力に焼かれ、羽は触れた瞬間に高密度のエネルギーが爆破し、魔物を無慈悲に襲う。その音色は魔物の脳を揺らし、直接脳に影響を与える。

 ベリアルを残した魔物は全て“消え去った”。聖なる力に浄化され、無に還ったのだ。

 一方、翼が消えたクレアはその場で尻もちを衝き、肩で息をしている。白い顔は青ざめていて、限界が近いことを警告している。

 そんな弱ったクレアに、ベリアルが近づき、その細い首を掴んで、持ち上げる。その顔には配下を殺された怒りで満ちていた。

 「さすがはエルフと言っておこうか。まさか、その歳で究極魔法、しかも! 光を使えるとは夢にも思わなかったぞ。だが、残念だったな。あれでは我を殺す事なぞ出来ん!! 残念だが、ここで終わりだ!!」

 ベリアルは掴んだ手に力を込めて、クレアを殺そうとする。だが、クレアは死に屈することなく言葉を発した。

 「……死ね……負け犬……天使……」

 その言葉ベリアルが青筋を立てた瞬間、二つの斬撃が純白の翼を切り落とした。グハッ。と痛みに耐えかねたベリアルはクレアを落としてしまう。クレアは咳き込みながら、その場から逃げ出す―――――――本気を出した彼に巻き込まれない為に……

 彼女は距離を取り、己がいた場所を見つめる。そこにはリミッターを解除した俺が立っていた。



††††NOW LOADING††††

 クレアが熾天使の福音(セラフィムソング)を発動させた後、俺は煌く翼で身を隠し、様々な能力(アビリティー)を発動させる。

 クリープ。ステルス。デオード。そして絶影。後、一応空蝉も掛けておく。     (パンドラ)で発動させた三つは順に足音、姿、臭いを消し去る盗賊の能力。絶影と空蝉は前言った通りの能力。

 さらに、俺の切り札と言える能力を     (パンドラ)で発動。コレを使えば、明日から一週間はまともに動けないだろう。だが、その反動に見合った力をコレは秘めている。



――――――剣の極み


 剣聖と呼ばれる剣士最高位の職業(ジョブ)で習得することが出来るアビリティー。身体の底から力が溢れ出て来るのを感じる。否、実際に溢れ出ているのだ。コレは使用者の肉体を限界以上まで強化、そして限界以上まで酷使出来るようにリミッターを外す能力。加えて、脳に剣聖としての知識が一時だけ埋め込まれる。

 足音を消した、姿も透明にして、臭いも消して、加えて気配を消した。後は闇に紛れて、後ろから堂々と必殺の一撃、だけでは済まさず完膚無きまで叩き込んでやる……

 クレアの魔法が終わりに近づいてきたので、闇に同化して、奴の背に回り込む。奴さん、頭に血が上ってるのか、俺の事を完全に忘れてるぜ。これは良いチャンス。

 菊一文字は鞘に納め、村雨を両手、しかも正眼の構えで持つ。さっきまでの俺は忍。だが、今の俺は剣聖。達人に武器の形はいとわない。

 呼吸を整え、タイミングを図る――――そして奴がクレアに手を掛けた瞬間、俺は飛び出した!

 喰らえ。


――――――連閃

 神速の速度で村雨を四度振るう。だが、宙に煌く軌跡は二本だけ。しかも、その二本は一寸のずれも無い、全くの同タイミングの連撃。

 『マコトは 連閃を つかった! ベリアルに 3500の ダメージ!!』

 数多の血を吸ってきた村雨が、純白の翼に喰らい付いた。根元からばっさりと一対の翼は折られ、堕天使は地に堕ちる。まだ終わらせない。

 『マコトは 陽炎 焔月 月光 花車 陣風 飛燕 乱鴉 鳳蝶を つかった。 れんぞくヒット!! ベリアルに 9999の ダメージ!!』

 その認識出来ぬ剣閃は揺れ動く陽炎の如し。鮮血を纏いし軌跡は燃える半月の如し。その剣閃は常闇に浮かぶ三日月の如し。回転せし軌跡に乗る雫は紅き花の如し。その神速の二撃は戦場を翔ける疾風の如し。袈裟、逆袈裟が描くは燕影の如し。荒れ狂う剣は乱れ飛ぶ烏の如し。嵐の如く降りかかる牙の後は紅蓮の蝶が舞う如し。

 脳から知識を引っ張り出し、剣聖の奥義とも言える剣技を乱れ撃つ。それは刃の嵐よろしく触れれば精神までも斬り裂く、しかし外から見れば舞いと言える程軽やかに、美しく、見る者を魅了する剣舞。

 剣風の目にいるベリアルは槍で防ごうとしていたが、武器は折られ、服はズタズタに切り裂かれ、己の血で真っ赤に染まっていた。頭上の輪はいまにも消えそうな蝋燭の火の様に弱々しい。

 一旦後ろに下がる事で距離を取る。そして、刀を二本とも鞘に戻し、村雨の柄にだけ右手を添える。

 「――――これで……決めるっ!!」
 
 決着の宣言を高らかに叫び、一気に駆け抜ける。

 「はぁはぁ……はぁ……待っ……で……ぐれ……」

 命乞いをしているが生憎俺は聖人じゃないのでね、そんな言葉で見逃したりなどしない。だが、せめてもの情けでこの一撃で全てを終わらす。この神速の一撃をも超える、最速の秘奥義で!!

 時間が止まった世界で俺だけが動いている様な錯覚を見る。脳と身体が人間の限界を突破し時間が極限まで引き延ばされる。

 止まる事無く、ゆっくりと奴に近づく。

 間合いまで後五歩……ベリアルが唯一動く右手を懸命に動かしその場から逃げようともがいている。

 四歩……その奥で地べたに座っているクレアが俺に言葉を送る。

 三歩……無音の世界に至る俺にはその言葉は聞こえないが、口の動きで分かる。  

 二歩……一つ一つの文字が伝わる。

 一歩……それは彼女が滅多に口にしない、俺に向けられた言葉。

……零
――――――――抜刀術:無刀

 その抜刀は刀が無きに如し。刀の軌跡も、それも振るう腕も、斬られた跡も、何事が無かったと思えるくらい認識出来ない神をも超越した抜刀術。その刃はどんなモノも、例え空間であろうとも両断する剣の極み。

 一瞬の静寂。

 『マコトは 抜刀術:無刀を つかった!! ベリアルは 10000の ダメージ!! ベリアルは ちからつきた……マコトたちは 9999の けいけんちを かくとく』

 静寂の後に訪れたのは、死闘の幕閉じの合図だった。斬られたベリアルの身体からメッセージに遅れて血が噴き出す。あまりの速さに身体が斬られたと認識されなかったのだ。

 俺は座り込んでいる彼女に近づき、手を差し伸べる。

 クレアは少し俯いてから、俺の手を握り立ち上がる。互いに殆ど動けぬ身体なので、支え合ってこの広場の奥へと進む。

 そこに眠るは真実(ヴェーラ)を産み出す、最高の鉱石。そして、真実は路を映し出す。その先にあるのは勇者への階段。

 その階段の先に待ち受けるは、この死闘をも超える混沌の闘い。一人では乗り越えることは不可能だろう。

 しかし、俺にはクレアがいる。さらに、俺たちは負けれない理由がある、この世界に平和を取り戻す為、懐かしき世界に還る為……この強い思いは俺たちの力となってくれるだろう。

 そして、俺はその力を……

――足音消して、姿透明にして、臭い消して、闇に紛れて、後ろから堂々とを喰らわしてやるよ――


たとえ相手が悪魔だろうが、神だろうが、魔王だろうがな……







††††TO BE CONTINUED††††

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