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短編・恋愛

目障りな小鳥は悪霊に食べられた。

息抜きの小説なので比較的淡々と書かれています。恋愛未経験者の作者による「恋」についての一方的偏見を踏まえて書いてあります。その一方的偏見は自分的にはずれていない、と思っていますが合わない人がいたらごめんなさい。
あと作者に文才はありません。ごめんなさい。
神馬ヒナは、まったりとした高校二年生で容姿は美人と言うより可愛い系。背も平均より低く細いヒナには、大好きな幼馴染みがいる。


嵯峨海斗。
お隣に住む旧華族のお坊っちゃまにして、頭脳明晰容姿端麗その上剣道ではインハイ優勝を納める超人だ。
なんでそんな男が幼馴染みかと言うと、簡単に言えばつい50年前まで両家が主従関係にあったからだと言えるだろう。本来主と侍従であった二人は、それでも海斗の遊び相手としてヒナは海斗の元へ送り込まれていた。


初めて海斗を見たときヒナは海斗がお人形のように可愛いことに驚き、とてもなついた。当時から海斗はクール?というかと動じない性格でありそんな海斗をヒナが守ってあげなくてはと考えたのだ。


「海斗、お茶持ってううわぁぁぁぁ」
「海斗、ボタン取れてる。縫ってあげるね。…………あれ。出来ない、どうしよう次々と糸の塊が」
「海斗、お散歩行きましょう!!えっ、今日はお稽古!?私も参加だっけ??うわぁあどうしようぅ」



ただヒナは残念なほどに不器用で、面倒を見ようとすれば失敗し反対に面倒を見られると言うのが殆どである。次こそは、と意気込んでも小学生位に上がった頃には面倒くさがれた。
海斗もヒナがわざとではないと分かっているため怒りはしないがいつもウンザリしている体で、結局は幼馴染みのよしみで助けてくれる。

小学校中学校と海斗の人気が高まるにつれ、ヒナの海斗への金魚の糞ぶりは、女子に嫌われヒナは学校での女友達は一人もいなかった。高校もヒナは海斗と同じ高校に入学し、他人の冷たい視線を浴びながらも「海斗好き好き」と公言して周り金魚の糞を続けていた。


だが、神馬ヒナ自身は、海斗への恋に盲目過ぎるだけで性格は至って普通。寧ろ良いくらいの優等生であり教師陣からの受けはよかったが、女子からの受けは最悪と読んでもいいものだった。



そして、そんなに海斗一筋に恋をしていても海斗はヒナを全く意識することなく、モテるがまま彼女を作ったりして遊んでいる。海斗はヒナを嫌いとまでは思っていないようだが、好きでもない。
それなのに、今だ諦めきれず意味のないアタックを続けるヒナは、とても憐れで滑稽だと笑われ、ヒナ排除派が殆どを占めるなか、一部ではヒナを面白がる会等が出来ていたりする。






というのが、表向きの見方だ。







いや、殆どま間違ってないんだけどね。








「いってきまーす」


ごく一般的な一軒家から飛び出したヒナは、始めに隣の家、大きい日本屋敷を見る。当たり前のように一緒に登校していた頃はもう、今は昔のことであり隣に住む幼馴染みであっても共に登校することはない。海斗は部活のため朝早く家を出るのだが、それでもヒナが隣の家を眺めるのは単純に海斗が出るもっと前に家を出るからだ。

別にヒナは、朝が好きなわけでもないし強い訳でもない。寧ろ、寝起きはよくないし普段からぼーっとしているのにそれが2割増しになってしまう。



「あー、眠い。でもこれは私の義務だしなぁ」








午前八時二十分。
海斗が部活を終える時間だ。


「まだかな、まだかな」


ヒナは大人しく海斗の訪れをクラス違いの海斗の机の前で待つ。最初は、部活を行う学校裏の道場まで迎えに行っていたが「そういうの迷惑だから」とバッサリ切られ嫌がられてしまった。当時の彼女は弓部のマネージャーだったからというのもあるのだろう。


今日のお供えものは、ジンジャークッキー。甘いものが苦手な海斗のため甘控えめに作ってある。



「海斗!おはよう、今日もお疲れさま」
「ああ」



満面の笑みのヒナにたいして海斗は無表情。悲しきテンションの差にも慣れているヒナは海斗に昨日のことや今日の朝あったことを面白おかしく話す。
それは、あまりにも一方的であり海斗は頷きもしないがそれでも聞いてくれていることにヒナは喜んだ。



「海斗、好きです」
「俺は好きじゃない」



これで何回目の失恋だろう。ほぼ毎朝言っているから3桁を超えている。


「ヒナちゃん、またやってるの?もう、やめなよ。こんな冷徹人間」
「斎藤君!?」


そしてひょっこりとやって来たのは海斗の親友、斎藤健児だ。ふつめんではあるものの爽やかスポーツマンに加え、性格の良さから海斗の次にモテている。


「えー、海斗は冷徹人間なんかじゃないよ!小さいときなんかいつも、私が転んだら助けてくれたし、高そうな花瓶を割ったら一緒に謝ってくれたし」
「おい、やめろ」
「へー。こんな冷徹人間にも優しい所はあったんだなぁ」
「まあ、年々冷たくなっているのは事実だけどね!」
「だったら現在進行形で冷徹人間って間違ってなくない?」
「っ海斗、ごめん!!否定できない・・・」
「あははは!!」



そのまま3人で?楽しく?お話ししていると、教室のドアに学校1美人と評判の鮎田さんが顔をだし海斗を呼んだ。


「あー、次の彼女は鮎田さんか。あいつ面食いだよなぁって、ゴメン。ヒナちゃん」
「ぜんぜんかまいませんよぉ。実際二人は美男美女でお似合いですよね」
「妬かないの?」
「寂しいけど妬きはしません」
「海斗のこと実は恋愛的に好きじゃないとか?」
「違いますよ、恋愛的に好きですけどだからってどうにかなりたいわけじゃないんです」
「……ヒナちゃんって面白いよね」
「そうですか?」
「うん、変わってる」




斎藤とヒナが変わっているかどうかで激論を繰り広げたが、チャイムがなることで打ち切られた。



「じゃあね、海斗、斎藤君!!また、お昼に来るからねぇ」
「来るな」



これまたお決まりの挨拶をしてから別れる3人。お昼休みはいつもヒナが海斗のクラスに突撃していて。海斗が教室にいるかいないかは、7対3位の割合である。いたら勝手にそのままお邪魔して、いなかったら自分のクラスに戻りヒナを面白がる会のメンバー兼友人の真奈美と恵美子と共に過ごす。

海斗は、誰かと付き合っていてもお昼を共にするほど熱をあげたこともなく斎藤とご飯を食べている。斎藤は彼女を思いやり「俺と食べてる場合か?」と言っていたが、海斗はそこまで付き合う義理はない、とクールに対応している。ご飯を共にするのも面倒と思うくらいなら付き合わなきゃいいのに、とは言ったたことがない。

といってもヒナが海斗に無理矢理ついていき、見向きもされていない故、せめてお弁当のおかずを分けるなんて女子らしいことをしても、海斗はお金持ちでお弁当も立派だから、かえって呆れられるだけであった。









「今日は、海斗いるかな?」


3限が終わり、海斗のクラスへスキップしして向かったヒナは教室で海斗を見たが。


「なあ、ヒナちゃんにもうちょっと優しくしてやれよ」
「なんで?」
「だってヒナちゃん可哀想でさ」
「そんなのあいつが勝手にやってることだし、俺は頼んでもいない。正直、いつもいつもピーピー煩いんだよ、あいつ」
「おい、そんな言い方、っヒナちゃん!?」



ポジティプ女子のヒナにも流石にこれはキツかった。いつもの笑顔を硬直させていたら斎藤が必死にフォローしようと言い訳をつのる。



本当に優しいよね、斎藤君。
海斗じゃなくて斎藤君を好きになれればいいのに。



固まった頭のなか、そんな風に現実逃避していたヒナは漸く海斗と目があった。一瞬、いつもの無表情にしまった、という感情がのっていたが今はもう「本当のことだろ、清々した」という態度だ。


「あはは。ショックだなぁ、でも確かに私煩いよね。じゃあ今日は自分のクラスで食べよう」


笑いながら微かに声を震わせたヒナにかかるのは、馬鹿にするような笑い声だった。
「あいつ、いいきみ」「幼馴染みだからって海斗君に色目だすからこうなるんだよバーカ」「ピーピー煩いよね、確かに」教室中から聞こえる女子のヒナを嘲笑う声。


「っおい!」
「いいよぉ、斎藤君。本当のことだし。斎藤君って優しいよね」


バイバイと笑いながら去る姿は、もういつものヒナに戻っていておっとりと明るく笑っている。こんなことのあとにすぐ調子を戻すことができるヒナに驚きつつも斎藤はホッとして手を振った。その間も海斗は興味なさそうに豪華な弁当を食べていた。








「ということで、一緒に食べていい?」
「ヒナって本当に鉄のハートだよね」

そんなことないよ。実は結構傷付いてる。

「えへへ、これが私の取り柄だもん」


あげそこねたジンジャークッキーを食べながら代わり映えしない会話をしていると、話題はヒナの出席日数の話になった。


「ヒナって成績いいわりに学校休んでるよね。先週も今週も」
「ああ、そうだねぇ。でも計算して休んでるし大丈夫だよ」
「まあ、ヒナは出なくても勉強についていけるもんね……てか、休んでる日って何してるの?」
「えー。・・・どういう理由にしよっかなぁ。うーん、じゃあお爺ちゃんとデートしてるよ」
「うん。普通にどういう理由にしよっかなって言ったね。嘘だね。話したくないならそれでいいけどさ。まあ、授業のこととかで困ったらすぐ言いなよ」
「なよなよ」
「うん。ありがとう」


ヒナは優しい二人の友達に感謝した。自分はこんなにも身勝手に動いているのに、それでも気をかけてくれている。

だからこそ、二人には言っておきたかった。


「・・・内緒にしてね。私今週の金曜日休むんだけど、その日ってね、凄く大事な日で、私その日を境に変わるかもしれない。それでも友達てでいてくれる?」


この突然の話に二人は困惑したが、いつにないヒナの真剣さにつられその話を真面目に受け止めた。


「当たり前じゃん」
「そうだなぁ、ヒナがジンジャークッキーもうひとつくれたら約束するよ!」


二人の嬉しい言葉にヒナは泣きながら笑った。
その後のヒナはお昼休みのことがなかったようにいつものように振る舞った。ヒナの心は鋼で出来ているとか、狂ってるなんて言われて過ごして、遂に金曜日。

ヒナは友人に話した通り、学校をやすんだ。














それからヒナは変わった。




次の週の月曜日、学校に訪れたヒナはぼろぼろの状態だった。顔には大きなガーゼが、片目には眼帯をつけ左手は骨折していて、右足は捻挫。それこそ交通事故にあったかのようであったが、それでもヒナは笑っている。いや、いつもより晴れ晴れと笑っている。


「ヒナ……約束通り何があったかは聞かないけど大丈夫なの?」
「そうだよぉ。まさか変わったのは外見だけで、遅い廚二病デビューとかじゃないよね」
「酷いなぁ、本当のケガだし変わったのは本当だよ。忌々しい過去から解き放たれるという今までにないさっぱりとした気分!」


忌々しい過去?と二人は首を傾げたがヒナの何も聞かないよ、という態度に負けそれをスルーした。


そんなヒナに対してもまだ、攻撃的な人がいる。それは、海斗のファン達だ。学校の有名人である海斗にはたくさんのファンがいて、二年生の殆どの女子がそれに当たるが、その間では「嘘の怪我で海斗君に心配されようとしている」ともっぱらの評判で、遂に姑息な手段を使ってきたと話題になっていた。

今度、海斗君の前に現れたら私達ファンが海斗君を守って、あの忌々しい目障りな小鳥に引導を渡そうと決定していて、多分それが行われる未来は早いだろう、と準備し始めたファン達だが意外にもそんな日は訪れない。
毎日毎日、朝から放課後まで現れたヒナはすっかりと姿を消し、海斗の前には全く現れないのだ。


「ヒナちゃん、ここにも来れない位怪我酷いのかな?」
「知るか、別に大丈夫だろ」
「お前なぁ、幼馴染みなんだろ?」
「だからどうした?好きで幼馴染みなんかじゃない」


この一貫した海斗の態度にファンたちは安心したが怪我をしてから、一週間してもヒナは現れない。たまたまだろうか、廊下ですれ違うこともなく日々は過ぎていて。



「……でもまあ、一応様子を見に行ってやるか」
「お前な……」


海斗はあくまで不遜に上から目線で、ヒナに会いに行くことに決めた。別に心配とかではないが、ただ単に最近静かで調子が狂うのもあるし、あのヒナが会いに来ない程の傷がとれほどか気になった。

その程度の興味だ。

斎藤は、実はこの前のことを気にしてるんじゃないか、と海斗を責め立てるがこの前の暴言程度今までにな何回も吐いていて、その度にヒナは少し傷付いた顔したが、それでも次の日にはケロッとして海斗の前に現れた。









案の定訪れた教室でヒナはニコニコしながらクラスメイトと話している。海斗は随分と楽しそうだな、と何故かイライラしながらヒナの目の前に向かった。


「あ、海斗と斎藤君、ひさしぶり。どうしたの?誰かに用事でもあるの?」


拍子抜け。怪我は酷いが、ヒナはいつものようにぽわぽわと笑いながら海斗と斎藤に話しかけてくる。


「違うよ、ヒナちゃん。ヒナちゃんが大ケガしたって聞いてお見舞いに。遅くなってごめんね」


ブスッとした海斗を他所に斎藤はお見舞いのお菓子をヒナに渡す。
ヒヨコの形をしたクッキーだ。


「うわぁ!ありがとう斎藤君!このクッキー好きなんだよねぇ」
「それは、よかった。それにしても怪我酷いね大丈夫?」
「あはは、ヒナ、こんなに酷そうな怪我してますけどケロケロしてますよ。歩かない以外いつもと同じ元気ですよ」
「そうなんですか、えっとヒナちゃんの友達?」


コミュ力の高いもの同士、流れるように自己紹介する斎藤と真奈美をニコニコと見守るヒナ。そして、海斗はまだイライラしていた。
何故、そんなにもイライラするのか海斗にはわからない。ただヒナが楽しそうなのが許せなかった。


「あ、そういえば海斗も心配して来たんだよ。この前のこともあったし全然クラスに来ないからどうしたのかなって」
「わっ!海斗にし心配されたの初めて。ありがとう海斗。あと、この前のことも別に気にしてないよ」
「俺も悪いとは思っていない」
「おい、海斗」


本当は少しだけ悪いと思っている。だけど言いにくいし、ヒナにムカついていたから言いたくもなかった。


「あ、やっぱりそうだよねぇ。じゃあそんな海斗君には朗報です!!」


またニコニコと海斗のそれを受け止めたヒナは今度は一段と嬉しそうにその言葉を紡いだ。


「もう、会いに行かないから海斗は静かに暮らせるよ!!」
「えっ」


驚いた声を出したのは斎藤のみで。
真奈美と恵美子はそれを当然のように見てるし、海斗もポーカーフェイスの裏で驚いている。


「な、やっぱり気にしてるんじゃ!?」
「あはは、だから違うって。会いに行く理由がなくなったの」
「会いに行く理由?」
「うん。会いに行く理由。今までは海斗が好きだったから会いたかったけど、もう好きじゃないから無理して会わなくていいかなって」



その理由は、聞き耳をたてていたクラスメイトをも絶句させて教室を静まり返らせた。


「好きじゃない?」


次の声は海斗のポカンとした静かなもので。


「うん、勿論幼馴染みとしては好きだけど恋愛感情はない」


にっこりとした笑みで言い切ったそれは、この日の放課後までに全校中に広がることとなる。








事の真相は。

ヒナの家、神馬家は代々続く霊媒師の家であり昔は嵯峨家に使えていたが、現在個人で活動している。当然、ヒナも霊媒師見習いで学校を休む日や放課後、土日は日々霊媒師の仕事をしていて。



隠された真相の中でも、ヒナが海斗を好きなことだけは本当だった。
いくら完璧人間でも、なんであんな冷たい人を好きになったのかよく分からない。それでも、ただヒナは海斗のことが馬鹿みたいに好きだった。



しかし、付きまとっていたのは違う理由からだ。

それは、先週の金曜日のちょうど10年前。当時から海斗を好きだったヒナは海斗の「毎日、つまらない」という言葉に反応して、自分の見ている霊のいる世界を見せようとした。ヒナの家には、霊感を人にもたらす秘術が伝えられていて、ヒナはそれを試そうにしたのだ。

実際に、その頃から霊媒師の訓練を始めていたヒナは調子に乗っていたのだと思う。そして、結果的にそれは失敗し厄災をもたらしたらし、強力な悪霊を呼び込んで海斗を呪ってしまったのだ。

それは、常時発動する災難の呪い。これは、海斗自身には知らされることなく、償いとしてヒナは海斗を浄化する役目を追わされる。その為ヒナは海斗が外にいるとき、しょっちゅう浄化しに近づかなければならない。海斗の屋敷に協力な結界が貼ってなければ屋敷に居候させられていたかもしれなかった。


ヒナは、好きな海斗の傍にいれることは嬉しかった。でも、海斗の冷たい反応が、態度が、ひたすら悲しくて苦しくて、あの無関心な眼が、とぎることない彼女達が嫌で嫌で仕方なかった。
それでも、海斗を嫌いにはなれない。あの美しく強い男を嫌いになんかなれなかった。自分の犯した罪の罰、恋による訳も分からない小さな喜びと、それを大きく上回る悲しみと苦しみ。そうした心の葛藤がヒナのニコニコとした笑顔を生み出した。

笑顔は、最大の防御。

心と顔は乖離して、海斗の前では笑うことしか出来ない。いつからは始まったかわからないこの処世術はヒナを飲み込み一人歩きしていく。長い間染み付いた仮面は剥がれることも、剥がすことも出来なかった。


せめて、近づかなくて済む方法は海斗を呪った悪霊の浄化することで。10年ごしにやって来るその悪霊の再来の為にヒナは必死に訓練を重ねた。












そうして訪れた運命の日。



十年前訪れた祠に佇みヒナは、神経を研ぎ澄ます。



「これで海斗は救われる」


そして、私も救われる。
意を決して挑んだ相手は今まで対してきたどの悪霊よりも強かった。それでも海斗のためと、必死に頑張るヒナを。
悪霊は飲み込んだ。



「ヒナっ!!」
「え?」



覚えているのは、目の前に広がる暗黒色の絶望。大きく口開いたそれはヒナを飲み込み、何か大切なモノを奪っていく。何にも感じられぬまま延々の時を感じたが、現実には一瞬の事だったらしい。助けられた後も無作為な恐怖がヒナの足をおぼつかなくさせた。



「ヒナ、大丈夫か!?」
「大丈夫、体に変化はない!ありがとう、つっ君」



けれど、もう一人の幼馴染みに助けられたときヒナの体に異常は見当たらなかった。
なにか重要なモノを奪われたはずなのに、何を奪われたのか分からない。自分の状態が不明瞭のままでヒナの心はもやもやとするが、強い悪霊を前にそんな些細な事を気にする余裕はなく、戦ううちにそのことを忘れてしまった。


思い出したのは、漸く宿敵の悪霊を倒した時。



「やった!!!」
「ああ!!これでヒナの悲願が達成できたな」
「うん!!これで海斗も…………あれ?」
「?、どうした?」



宿敵を倒して一段落してから気付いた、違和感。



あれ、私海斗のどこが好きなの?













憎き宿敵が奪ったのはヒナの『海斗を想う気持ち』だった。
それは、海斗のためのヒナの努力を打ち砕くものであって。

もう一人の幼馴染みつっ君は、それに同情したがヒナは久しぶりの本当の笑顔で「スッキリした」と答えた。ヒナは哀しくなんかなかった。『海斗を想う気持ち』がない今、それがないことの何が哀しいのかがわからない。

寧ろ『海斗を想う気持ち』を持っていた自分が愚かに見えてしょうがなく、それに開放されたことに単純に喜びを感じた。奪われる前はそんな風に思っていなかったかも知れないが今は、『海斗を想う気持ち』が心からさっぱり抜け落ちている。
周りから痛々しく思われていても、それでもヒナは何処が哀しいのかが分からなかった。


ああ、私はこの忌々しい過去からやっと抜け出せるのね!!!






ヒナが来なくなってから海斗は彼女を作るのを止め、度々ヒナの元を訪れるようになる。その眼には明らかな好意があって彼は失ってからやっとヒナの大切さが分かったのだ。

それでもヒナはあんなに恋い焦がれていた彼の好意を「でも、私は海斗のこと好きじゃないから」と笑顔で断る。二人は、あの金曜日までと立場が正反対になっていて。
海斗が自ら行っていることだからファン達も手が出せない。

三年生に進級しクラスが同じになった海斗は、毎日のようにヒナにアタックをかけている。



「ごめんね、海斗のことは好きじゃないの」



運命の日以前なら簡単に、嬉し泣きで引き受けられた愛の告白もヒナはバッサリ、ゴミ箱に投げ棄てる。







(海斗を想って付きまとった)目障りな小鳥は(海斗の為戦った宿敵の)悪霊に食べられた。


歪に笑う愚かな小鳥は消え去って、現れたモノの正体は掴めない。









ヒナは、心から幸せそうに笑った。





「恋」をすると楽しいって人は言いますが本当にそうなのでしょうか?ネガティブ思考の作者は「恋」って楽しそうだけどきつそうっていうイメージがあります。
この作者の微妙な感覚を伝えたかったのですが、文才がありませんでした。悔しい。せめて、解説でもと思いましたが、くどいので止めときます。

といっても、恋する乙女(この物語の中では元恋する乙女ですが)には幸せになって貰いたいのでヒナちゃんはきっと新しい恋をします。お相手は、斎藤君?それともつっ君?王道ではやっぱり海斗君ですが、ヒナちゃんはあの辛い経験で海斗君にときめく気持ちを無意識にブレーキをかけてしまうので時間がかかりそうです。(それでも作者は海斗君推しです)

全く関係ありませんが小説をパソコンで見直している時、ふと下を向いたら血だまりが出来ていました。鼻血です。皆さん、冷房代をケチり過ぎるのは止めときましょう。


お読みいただきありがとうございました( ;∀;)

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