姫百合は強く、山百合は美しく。
私は、とある小さな国の王女。
優しい国の人達に囲まれて幸せに暮らしています。
だだ、世界には私たち人の天敵である、怖い魔物がいます。
でも、私は怖くありません。
私には、最強の騎士がいますから。
その国の王女は、とてもきれいでした。
なびく金色の髪は太陽に輝く向日葵のように、青い瞳はサンタマリアのように、真っ白な肌は山百合のように美しい。
誰もが見とれてしまう美しい王女。
そんな王女は最近、1人の騎士に夢中なようです。
「ステイリー、今日は暇かしら?よければ、お茶でも一緒にどうかしら」
王女の部屋。メイドに手伝ってもらいながら、といっても着る服を持ってもらってるだけなのだが、着替えている。
「メアリー王女、私は王女の身を凶悪な魔物から守るためにそばにいるのです。一緒にお茶は飲むことは出来ません」
「別にいいじゃない。魔物なんて来ないわよ」
「分かりません。奴らが何を考えているのか、私たち人には到底理解出来ません」
しかし、王女は話を聞きません。
「それに・・・」
服を少しはだけさせたまま、王女は横から覗き込み、
「だって、あなたがどんなときも守ってくれるのでしょう。なら、大丈夫だわ」
いたずらな笑みを浮かべている。
私は、この笑顔に弱い。
というのもその笑顔は、「あの時」を思い出してしまうから。
「ふふ、また顔が紅くなってるわ。何を考えているのかしら、ステイリー?」
「王女はいじわるです」
「ふてくされちゃって。可愛いわ」
私がまだ訓練学校を卒業して、国の騎士団に入ったばかりの頃、自分に自信がなかった私は、周りからの期待の目に折れそうになっていた。それなりに実力があったせいで、余計に期待されていたこともある。
でも私は王女に会い、話したことで、少し変われた気がする。
王女は、私を愛してくれた。
それは、国民皆に向けられているものと変わらない。
誰にでも愛され、誰でも愛する王女の、変わらぬ愛。
だから私が王女の部屋に夜呼ばれ、あんな事をしたのもきっと、王女の変わらぬ愛なのだ。
でも、私はそれで勇気を得れた。
王女を守りたい。
私を愛してくれた王女を愛していたい。
そのためにそばにいたい。
「とにかく、私は王女を守るためにそばにいるのです。だから、そういうのは、あの・・・」
王女が顔を近付けてくる、だんだん言葉が弱くなっていく。
また紅くなってるって王女に言われるのだろうか。自分でも分かるくらい顔が熱くなってなっている。
王女は、お腹に手を当てる。そこから、慎ましやかな胸に、女性らしい細い肩に、唾を飲み脈打つ首に、紅くそまった頬に手を這わせ、王女はそのぷっくりとした唇で私のそれを優しく食べるように・・・。
2人は、その部屋にメイドがいることなどお構いなしに続ける。メイドも見慣れてるのか、静かに目を伏せている。
その時。
コンコン!
部屋のドアが叩かれ、外から切羽詰まった声が聞こえてくる。
「メアリー王女!緊急です。失礼いたします!」
部屋のドアが開いた。そこには1人の甲冑を纏った女性騎士が立っていた。
女性騎士は、抱きついている王女に驚きながらも、用件を手短に伝えた。
「魔物の群れが城に向かって侵攻中です。念のため、安全な場所に・・・」
そこで、王女が抱きついているのが、王女の近衛隊の隊長で、自分の上官であることに気付いた。
「ステイリー隊長!探しましたよ!すぐに、城の防衛の指揮の方へ来てください。緊急時の為の移動準備もお願いします」
「分かりました。王女、早く着替えて準備を」
ステイリーは王女から離れ、真面目な顔になる。これは、緊急事態だ。ドキドキなんてしていられない。
王女も、分かったわ、とメイドの方に戻り手早く着替える。
「ピアーナ、王女を安全な場所へ。市民の誘導の方は?」
ピアーナと呼ばれた女性騎士は部屋に入り、部屋を出るステイリーの為にドアの前を空ける。
「市民の誘導は、防衛隊がすでに行っています。王女の護衛は、お任せください」
ステイリーは王女の近衛隊でありながら、魔物の接近の際には前線に立ち戦う防衛隊の一員にもなる。
元々ステイリーは防衛隊の所属だったが、王女からの願いで平常時は王女のそばにいる近衛隊の所属になった。だがそれは、緊急時には、ステイリーの戦力を前線に置くことを前提として決められたものである。
最前線に向かう騎士に王女は声をかける。
「ステイリー、帰ってきたら一緒にお茶飲んでね」
部屋の外で一度振り返り、礼をする。
「必ず勝利し、王女の元に帰ります」
ステイリーは、多くの魔物をその剣で斬り伏せていく。
私は死なない。王女が私を愛してくれている限り。
私は戦い続ける。
王女を、メアリーの愛するものを守るために。
戦闘の結果は、魔物側が劣勢とみるとすぐに撤退した。人側の勝利である。が、まだ魔物の脅威が消えたわけではない。
でも、これで一時の平和は訪れた。
それは、長くは続かない。
だからこそ。だからこそ、この一瞬を大切にしなくちゃならない。
「ステイリー。お帰りなさい」
「ただいま。メアリー」
2人きりの部屋の中、暗くてもその姿はよく見える。
「大きいね、メアリーの」
「でしょ。みんなの愛が詰まってるもの」
私はその愛ごと優しく包み込む。
「この体で私たちを守ってくれてるのね」
メアリーもそれに応えてくれる。
「メアリーがいるから、私は戦える」
「ごめんなさい。私はみんなの物よ。ステイリーのものにはなれないわ」
「いいよ、それで。私もその中に入れるなら」
「もちろんよ」
「でも、いまだけは・・・」
「ええ、わかってるわ」
2人は一時の平和を愛しあって過ごした。
思いつき作品 その2
ファンタジーものを書いてみたかった。
タイトルはそれぞれのキャラクターから。
ステイリー 姫百合 花言葉は強いから美しい
メアリー 山百合 花言葉は甘美、飾らない愛