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ああ、なんと空の青く澄み渡ったことか
作:立花友香



[謙一郎(主人公1佐久間謙一郎の生い立ち)]


 二十八になる佐久間謙一郎は弁護士の職に就いて五年になる。
彼は二回司法試験にすべり、三回目にして資格を獲得した。
彼を知る人は彼の事を頑張り屋だと褒めるが、彼自身はそれを褒め言葉とは受け取れなかった。
謙一郎の家庭は決して裕福ではなく、父親は彼が八つの時に殉職をし、それからは彼の母親、清見の女腕一つで育てられた。
清見は体が弱かったが、我が子には決して不自由をさせまいと、とうとう職場で倒れ、そのまま意識不明となるまで働いていた。
彼女が倒れたのは謙一郎が法学部三年の時だった。
母親が倒れたことで彼は弁護士になる夢を諦めなければならない筈だった。
司法試験を受けるには大学を卒業後二年、研修を受けなければいけないのだ。
卒業どころか、今すぐでにも働きに出なければならないかもしれなかった。
しかし、"しれなかった"のだ。
清見は自分の体が丈夫でないことを知っていたので、自分のもしものときの為に、"息子が決して不自由をしないように"と彼の為に貯蓄をしていたのだ。
そのお金のおかげで彼は大学を卒業し、二年の研修をも修めることができた。
しかし、司法試験には合格しなかった。
謙一郎は、ここで諦めたりしたら、僕の夢の実現を自分のそれ以上に待ち望んでいる母に申し訳がつかない。
母はもう一度受験することを勧めるに違いない、と考え再度挑戦を決意した。
が、しかし、二回目の試験にも合格することはできなかった。
その頃には母親は少しずつよい兆候を見せて、最終的に会話をできるほどに回復をした。
謙一郎はここまでやったのだし、これ以上は強情を張るわけにいかない、働くことにする、と母親に告げた。
が、清見は彼を叱った。
『おまえの夢はその程度のものなのかい?私は今まで何の為に苦労をしてきたのだろう?おまえの人生だ。おまえの望むだけの努力をすればいい。途中で諦めたのなら、私はおまえを許さないよ』
そして彼は三度目の受験をし、そして合格をした。
清見は息子の夢の実現から一ヵ月後にこの世を去った。
そんな経緯で彼は"母親の犠牲の上に成り立つ自分の成果"を褒められたくはなかったのだ。


 謙一郎は法学部の友人、水草敬一の叔父、水草利夫が経営する務所で働いていた。
利夫はこの道三十年のベテラン弁護士である。
四十になって自分の事務所を持った。
それまでは二十人の弁護士を抱える大きな弁護士事務所に所属し、刑事事件を専門に法廷に立っていた。
利夫は二十年間事務所を一人で切り盛りしていたが、敬一が自分に憧れて弁護士になったことを知ると、すぐさま彼を自分の下で働くよう勧めた。
謙一郎と利夫は敬一を通して知り合い、謙一郎にも利夫は時分の事務所での勤務を勧めた。
色々と制約の多い他の事務所と比べ利夫の下ではゆったりとした環境で働けるので謙一郎はその誘いを喜んで受けた。
利夫は今年で六十五になる。
近頃では自分は事務所の管理をするのみで、もっぱら二人に弁護の仕事をさせていた。
あと四、五年もしたら引退をして甥の敬一にこの事務所を引き継がせるつもりである。




   [謙一郎(主人公1佐久間謙一郎の生い立ち)]を読んで下さってありがとうございます。
随分と以前に書いた作品で、今回、投稿のために読み返してみましたが、なんだか恥ずかしい出来です。
[謙一郎(事の起こり)]へと続きます。












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