プロローグ
真紅のトキ-第一話
今日、逢京梳和~アイキョウトキワ~はツイていた。朝の星占いでは一位だったし、返ってきたテストは全て赤点を免れていたし、帰り道に万札まで拾ってしまった。
そんな日だったからこそ逢京は、ひょっとしたらまだ良いことが起こるのではないかな、と思い寄り道をしたのだ。
もうかれこれ三十分くらいは歩いたであろうか、着いたのは小さな川のほとり。川の淵には小石が敷かれ、周りは木々で覆われている。めったに人に会うことのない場所。暇なときによく梳和がよく訪れるところだ。
真っ赤だった空が少しずつ黒く塗られていっている。そんな空を眺めながらゴロンと川原に寝転ぶ。ゴツゴツとした小石の感触が心地いい。
来てはみたものの、結局いいことなんてなかったな、なんて思いながらもこの風景を見れたことをよしとする。
「はぁー、なんかおもしれーことないかな」
いくら幸せなことがあっても刺激がないんじゃ人生つまらないよな、と思った瞬間、
「何だっ!」
遠くの遠くの方から聞こえた爆音。首をそちらに向けるとうっすらと煙が上がっているのが見て取れる。
「事件? それとも何かの撮影? けどまぁやっぱり……行くしかないよな」
これは面白いことが起こった、と言わんばかりに逢京は興味本位で音がしたほうへと向かう。
◆◆◆
「おいおいマジかよ」
そこにあったのはあまりにも現実~リアル~から吹っ飛んだ非現実~リアル~ 。
爆発した川原の中心にいるのは、十歳前後だろうか、とても背が小さくで金色の髪をした少女。
そして二十歳くらいの同じく金髪の女。
二人の周囲はまるでダイナマイトをぶっ放したかのように小石が周りに飛ばされていて、爆発の余韻の煙がまだくすぶっている。
「な、なあ、これなんかの映画の撮影か?」
目の前に広がる世界に、あぁ、これ絶対ヤバいだろうな、とは思いつつ梳和は声を上げる。
「ヒトか、邪魔だ」
身長は百七十センチほどあるだろうか、長身の女が俺を睨む。深い海の底のような蒼い目に見つめられると、なんともいえない不快感が体を駆け巡る。少女は横で口をポカンとあけて梳和の方を見ているだけだ。
「まあいい、消えろ。氷刺!」
女が妙なことを叫んだ刹那、手にその女の身長ほどの氷の槍のようなものが現れて、
「危ない!」
少女が叫んだときには、氷は梳和の腹に向かって真っ直ぐと吸い込まれていた。
「か……ハァ!」
見事なまでに赤い鮮血を吐き出し、まぶたを閉じると逢京の意識は闇に引き込まれていった。 |