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車輪の唄
作:わかな




ボクは今日彼女と離れてしまう…



《キーキー》

錆び付いた車輪が悲鳴を上げてボクらの体を明け方の駅へと運ぶ。

前でペダルをこぐボク。キミはボクの背中に寄りかかる。キミから背中に伝わってくるのは確かな温もりだった。

線路沿いの上り坂で『もうちょっと!!あと少し!!』と後ろからキミの楽しそうな声が聞こえた。

街はとても静かすぎて、『世界中に2人だけみたいだね』と小さくこぼしたボク。キミは小さく笑った。

坂を登り切ったとき、ボクは言葉をなくしたんだ。坂の向こうで迎えてくれた朝焼けがあまりにキレイすぎたから…


あの時キミはボクの後ろ側で笑っただろ?でもボクは振り返ることが出来なかったんだ。
ボクが泣いてたから…
キミに見られたくなかったんだ。
だからボクは必死に涙を拭った。





駅が見えてきた…
なんだか急に心に寂しさを感じたんだ。



駅に着くとキミは券売機で1番はじの1番高い切符を買った。ボクはその中で1番安い入場券を買ってすぐに使うのに大事にしまった。


おととい2人で買いに行った大きなカバン。
キミが改札を通ったときに引っかかった。キミはボクを見たけどボクは目をあわせないようにして頑なに引っかかるカバンのひもを外してあげた。


そのとき別れを告げるベルが響いて電車のドアがあいた。乗るのはキミだけ。
キミは何万歩よりも距離のある一歩を踏み出しながらボクに言った。



『約束だよ。必ずまたいつの日か会おうね。』と。ボクは答えられず俯いたまま小さく手を振った。





間違いじゃない…あのときキミは…キミは…






《キーキー》

線路沿いの下り坂を風よりも早くキミに追いつけと飛ばして行くボク。

錆び付いた車輪は悲鳴を上げながら精一杯電車と並ぶけれどゆっくり離されていく…



キミはあのときドアの向こう側で泣いてただろ?ボクは顔見なくてもわかってたんだ。

キミの声が震えてたから…



キミの最後の言葉が響く。



『約束だよ。必ずまたいつの日か会おうね。』



ボクは泣きながら離れていくキミに見えるように大きく手を振ったんだ。





街は賑わいだしたけど『世界中に1人だけみたいだなぁ…』とボクは小さくこぼした。



《キーキー》
錆び付いた車輪は悲鳴を上げて、残されたボクを運んで行く。



ボクの背中に残ったのはキミの



かすかな温もり…



{完}














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