誓い-Aprilfool Style-
「ねぇ、ケン」
「どうしたの、ユウ?」
「あの、さ。……怒らないで、聞いてね」
「どうしたんだよ」
「………。やっぱり、いいや」
「なんだよ、言えよ」
「怒らない?」
「聞かなきゃわかんない」
「あのね……」
「……」
「好きな人が、できたの」
「――!? 俺の他に、ってこと?」
「うん……」
「だってっ!!」
思わず言葉に詰まる。
「だって、誓っただろ!!? 一生俺のことを愛すって」
「………ごめん」
「本気、なのか?」
「……うん」
「じゃぁ、もういいよ!! 勝手にしろっ」
俺はユウをおいて走り出した。
情けねー。
ガキみてぇじゃねーか――。
消してしまおう。
俺はじっくり悩んで、そう決めた。
ユウとの思い出は、なにもかも。
メールも、ボイスも、通話記録も、連絡先も、けがれのない残像も。
忘れろ。忘れてしまえば楽になるから。
ケータイを手に取った瞬間、俺の名前を呼ぶ声がした。
まさにそのケータイからだ。
『ケンー!!』
――ユウから専用の着ボイス。
正直、うれしかった。
「はい」
「あ、ケン!! よかった、でてくれたっ!!」
「どうしたんだよ、今更」
「ケンが本気にするもんだから、僕、焦っちゃったよ」
「は? 本気?」
「うん。もちろん、嘘に決まってるじゃん」
「バカ、なんでそんな嘘つくんだよ」
「びっくりさせようと思って」
「だから、なんでわざわざ」
「だって」
ユウがあきれたように言った。
「今日はエイプリルフールじゃん」
「えっ!? 今日?」
「うん」
「それならそうと、早く言えよ」
「それに、ケンのほかに誰かを好きになる訳ないじゃん!! 本気でそう思ったの!?」
「だって、ユウには幸せになってほしいし……」
「ありがと。でも、誓ったでしょ? 一生ケンを愛すって」
ユウは今、どんな表情をしてるのかな。