ファンタジーショートショート:飛行機内にて
私が、国内線での旅客機で移動していた時の事である。離陸して暫く経った時、突然キャビンアテンダントが、何かを叫びながら通路を駆けていた。
「お客様の中に勇者様はいらっしゃいませんか!」
思わず私は耳を疑った。ファンタジーの世界にしか存在しなかった勇者をまさかここで求むキャビンアテンダントがいるとは思えなかったからである。
とりあえず何が起こったのだろうと、機内の移動してみた。
すると背広を着たサラリーマン風の中年男性が妙な気配を漂わせながら立っていたのだ。
「我が名は魔王!こんなところで覚醒できるとは思わなかったがいい機会だ。この飛行機を皮切りに世界を恐怖と混乱に陥れてやる!」
なるほど、背広は着ているが頭には角が生えているしコウモリのような翼も見受けられる。これは本当にファンタジーの世界がやってきたのかと思案しているうちに先ほどのキャビンアテンダントが帰ってきた。
「勇者様をお連れしました!」
居たのか!という突っ込みたい気持ちを抑えてその勇者を見てみた。
やはり此方もサラリーマンのようである。しかしよく機内に持ち込めたなと思うほどのでかい剣を背負っている。銃刀法違反になりそうだ。
「やはり間違いない!貴様が魔王か!この聖剣で引導を渡してくれる!」
この狭い機内であの剣を振り回すつもりなのだろうか?勇者は剣を構え、魔王は受けるべく何か膜のようなものを展開し始めていた。バリアだろうか?
などとそのやり取りを見ていたら機内アナウンスが流れてきた。
「機内トラブルが発生したため、空港に引き返し居ます。尚飛行に影響はございません。」
勇者と魔王=機内トラブルである。見る見る顔色が変る勇者と魔王。
「これで帰らないと会議に間に合わない!」
「私も商談の時間が…」
等と2人は言っているが自業自得である。勿論他の乗客達からも恨みがましい視線が送られ、2人は身を小さくしていた。勿論私もその視線を送った1人である。
空港に戻った後2人は警察に身柄を拘束され、多額の損害費用を請求されたそうだ。その後その2人が戦ったのかどうか、それは誰も分からないそうだ。