不思議な宇宙のアリス(10/10)縦書き表示RDF


不思議な宇宙のアリス
作:すずね



第二章:作戦会議


 昼を過ぎた頃、一樹はやることもなく部屋にいた。
 ベッドで横になり、なにも考えずに天井を見る。
 ルナ・エイトに連絡しても、まったく反応もなく、フォトンドライブシステムを使用するにも、軍のフォトンドライブコンピュータにアクセスしないと光子力を集めることはできない。民間の業者に連絡しても、現在すべてのFDSの使用はできないとの回答が得られた。
 まず軍に通信できないことと、FDSが使えないこと。一樹を苛立たせる要因だ。
 一樹は民間の衛星を経由して軍に通信を試みるも、民間と軍では通信システムが違い、無理と判断された。
 アリステイルはあと三日ほど地球で、地上の汚染状況を調査する。元々はそのために派遣されたらしい。それに、大気圏内での試験飛行も含まれている。
「RVFは誰が使うの?」
 食堂ではなく、格納庫で昼食を摂っているのはキャシーを含めた十人ほどの整備士。
 RVFの目の前に簡易テーブルを組み立てて囲っている。
「さぁね、でも中尉さんは乗らないみたい」
 と、スプーンをくわえたままのリールが言う。ブラウンの長い髪を邪魔にならないようにと束ねている。
「なんで?」
 さぁ? と全員が返事を返す中、人見知りで引っ込み思案の里美が、
「あ、あの人、私の同じなんだ……」
 紅茶のカップを両手で掴み、ぽつりと言った。
「同じ? TPGS症候群? だから怒ってたんだ」
「えっ? なんで? 症候群を持つ人ってオーガニックコンピュータに乗れないの?」
 何も知らないといった感じで、伊織が言った。
「うん、私みたいな人は、間違うとコンピュータに殺されるんだって。前に聞いたことがある」
「だから怒ってたんだ。そりゃあ怒るわ」
「あんたが言わなかったからでしょ? 艦長も、軍法会議に掛けられるのよ」
「軍法会議!? 本当に? ……どうしよう。私の責任だわ……」
 頭を伏せるアティーシャは、一応五年間整備士を続けるベテランだ。
 アティーシャは昨日、一樹に何も言わずにVRFに乗せた。一樹がTPGS症候群と知らなかったからだ。
「どうすんのよ〜? 艦長、軍法会議……」
「でも通信ができない今、まだ艦長の身は安全よ」
「三日後には地球を出るんでしょう? でも、FDS使えないんじゃ、えっ? 通常推力で!?」
「火星に戻るのに一週間はかかるわよ」
「やだやだ! 火星に帰りたい!」
「わがまま言わないの、ルー」
 ルーは高校卒業して入隊したばかりの、一応パイロットだ。ただ、訓練プログラムを終了しておらず、仕官クラスのベテランパイロットから色々と教えてもらっている。
「中尉さんに、なんとかして軍法会議を取り下げてもらったらどうかな?」
「あっ! それいいアイディア! ……でも」
「そうよ、誰が中尉さんに言うの?」
「私じゃ無理よ」
 流石にアティーシャは両手を振って拒否する。元は自分の責任なのだから、一樹が許すとは思えない。
「じゃあ、中尉さんの気持ちがわかる、里美!」
「えっ! わ、私? 駄目だよ! 口下手だし、あの人怖いし……何されるかわからないし」
「いいじゃんいじゃん。何かあったらそれで脅して軍法会議を取り下げてもらおう!」
 テーブルを叩いて納得するリールの隣、キャシーが「馬鹿!」と言って頭を叩く。
「里美をなんだと思ってるの! でも、里美、できる?」
「そんな……」
 昼食を載せていたトレイで口元を隠し、頷き、かぶりを振るにもそれを伝える勇気もなく、キャシーに無理矢理、縦に振らせる。
「……わかった。やってみる」
「よし! これで里美も一歩前進ね!」
「キャシー!? 言わないって約束したのに……」
 今度は顔全体をトレイで覆う。
「なに? 中尉さんのこと好きだったんだ? いいじゃん、顔は二枚目だし」
 笑い中は、里美は恥ずかしさで死にそうだった。

 その頃、一樹は部屋を出て格納庫へと向かうため、エレベーターに乗った。
 エレベーターは三基あり、二基はすでに動いていた。














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP


小説家になろう