第九幕外伝 世界の敵
「ちっ・・。またかよ。」
ここはあるサイキック施設。才能ある子供を集め訓練させている施設である。
この施設では定期的に、念力の出力検査をすることになっている。
「次。ナンバー6」
「だりい・・。」
出力を検査されたが、機械はゼロを表示している。
「なに?ゼロだと?何かの間違いではないか?」
試験官は、ナンバー6の顔と機械を交互に見る。
「何度測ってもゼロだな・・。」
「おい。もういいだろ?くだらねえな。ゼロだからなんだっていうんだ。」
「ゼロだとしたら、お前をここに置いておく理由がないんでな。」
「冗談よせよ。いたくてここにいるわけじゃないぜ?」
「ふんっ。貴様にサイキックネームを与えてやろう。貴様はサイキッカ
ーゼロだ。
今後ネーム入りを果たすまでそう名乗るんだな。
まあ・・・貴様のような無能者がネーム入りできるとは思わないがな。」
「馬鹿もここまで来るとあきれるぜ。で、カスみてえなくだらない話
はそれだけか?」
「なんだと?」
「へっすごむなよ。それともお前に俺に手を出す勇気があるのか?」
「貴様!言わせておけば!」
「やめとけよ。勝負にならねえぜ。」
ナンバー6の目がギラリと光る。
「く・・。」
妙な威圧感に当たり、何も言えなくなる試験官。
「・・・懸命だな。まっせいぜい長生きするといいぜ。負け犬人生
だろうがな。」
この話は一瞬で広まり、この日から彼はゼロと呼ばれるようになった。
通常ネーム入りを果たしていないナンバーズは数字で呼ばれるが、それ
だけでは判別つきにくいのであだ名をつけることもよくある。
特に彼の場合は、インパクトが強かった。
みんなが馬鹿にする仲、一人だけそれは違うといっていた人物がいた。
それがナンバー101であった。この施設の中では若いほうであった。
そして、能力は平均より多少下程度だが、間違いなくこの施設で最も
努力をしている人物であった。
身長が小さく、小動物のような容姿と、頭に大きなリボンが付いており
本人もかわいいもの好きだが、その本質は狂気の人間であった。
世界が終わった日はどうして起こったのか。
それはこの一人の少女が大きく関係していた。
ナンバー79、彼女は101の友人でセリルという名前であるが彼女は、ネ
ーム入りできるだけの実力が十分あったが、ネーム入りを断っているとい
う珍しい人物であった。
彼女は例外的に、あだ名ではなくセリルというネームを認められてもいる。
だが、セリルというのはサイキック名ではないことはいうまでもない。
通常ネームは、過去の英雄的サイキッカーの名前から取っている。
ゼロは、何度も試験をさせられそのたびにゼロの数字を叩き出しており、
ゼロというあだ名は定着しつつあった。
「ゼロはどうして何度やっても機械が反応しないんだろうね?
未知の要素でもあるかな?」
「はっはっは。決まっておろう。」
「え?フラワーちゃんは分かるの?」
「何を言うか。たわけめ。」
フラワーというのは、101が本人が勝手に名乗ってるだけの名前で認知もさ
れていない、セリルだけが呼んでくれるだけのあだ名である。
あだ名といっても勝手に名乗れるものではなく、フラワーもまた施設の中
では例外的人物で、唯我独尊の人物である。
「さすが、フラワーちゃんね。頭がいいわ。」
皮肉ではない。
他の人間はフラワーを狂人とか馬鹿者扱いだが、セリルだけはフラワーの
ことを天才だと思っている。
そしてその洞察はきっとおおむね正しい。
だが本当の天才はセリルのほうであった。何しろほとんど努力もせず
ネーム入りできるほどのサイキックの才能があった。
そしてフラワーは、おそらく全サイキッカーの中でいちばん努力し血の
にじむような特訓を繰り返しているが、能力は並であった。
「やつの力が大きすぎて機械が反応しないということだけの話よ。」
フラワーはあっさりと答える。
「え?でもそれは変だよ。だってあの機械は、初代トキトの念力のデ
ーターを元に作られてるんだから、それで反応しないってのはどう考
えてもおかしいよ。
彼にそれほどの念力があるとも思えないし。」
「はは・・はっはっは。面白いことを言うなあー。ならゼロがトキト
の念力を超えているほうが考えるのが道理に合っているではないか。」
「それはそうだねえ・・。でもなあ。」
「時間だ。」
「あっそうだね。じゃあ再開しようか。」
彼女たちは合同訓練している途中であった。
二人で訓練していると、話しかけてくる人物がいた。
「セリルよ。そんな落ちこぼれなんかと組んでどうする。能力の無駄だ。」
セリルはその言葉を聞いて怒った。
「なによ。私がだれと組もうが・・。」
だがフラワーがその会話に割って入る。
「無粋な輩め。わきまえろ。セリルは今私と楽しく訓練をしているのだ。
たわけ。分かったら失せろ。」
「な、なに?貴様下手にでていればつけあがりやがって!雑魚の分際で俺
様に楯突こうというのか!」
だが無視である。
「き、貴様!無視するな!こっちを向け!」
無視して訓練を再開している。セリルは何か言いたそうだったが、フラワ
ーはその男にもう何の興味関心もないようだ。
雑音にすら思わないだろう。
「ちっ。屑が・・。」
そのうち男は去って行った。
「はああ・・・。なんでだろうね。サイキッカーってさ・・。時々いる
よね。ああいう人。」
「なんだ?」
「ほら。さっき私たちに難癖付けたきた人だよ。」
「ほう。」
「忘れちゃったの?のんきだなあ・・。」
フラワーは興味のないことはとことん忘れてしまうのである。
「ねえ。フラワーちゃんは今、楽しい?こんな施設にいて・・。」
その言葉にフラワーは驚いた。
「当り前であろう。だからここにいるのだ。」
一体何を馬鹿なことを言うのだといわんばかりであった。
そしてそれは楽しくなければすぐに出ていくという意思の表示でもあったが、
セリルは実力は十分でも、精神的にはフラワーと比べてまるで大人と子供
だった。
とはいえ、フラワーのそれは狂気といっていいので、大人としての良識など
無きに等しいが。
「そうだよね・・。でも私はなんだかな。合わないのかもしれないな。
もしフラワーちゃんがいなかったら私はもうここをでていってたかもし
れない。」
勝手にしたらいいとフラワーは思ったが、黙っていた。
「ねえ。二人で一緒にここを出ない?」
とんでもない話だった。フラワーが自分の能力を開発するのにこれ以上の
場所は思いつかない。
ただセリルはフラワーの友人だった。それだけはおそらく確かなことだった
のだろう。
「でてどうしようというのだ。」
「うーん・・。それはまだ考えてないけど、もっと自由に好きなこと
を見つけてさ。」
「それが望みか。」
「そうだね・・。フラワーちゃんはなんかそういうのないの?」
「私か。私はただ・・駆け抜けるだけのことだ。」
「駆け抜ける?なにを?」
フラワーは澄んだ目でセリルを見つめる。
「生をだ。」
「生・・。」
そんなことがあった数日後、フラワーは養父のトキトに呼び出されていた。
トキトは同時にテンマでもある。なにがいいたいのかというと、トキトとは
彼のネームであり、テンマとはサイキッカーを束ねるものという意味だ。
「何か用でもあるのか?親父殿。」
「きたか101。考えてみたが、お前は型にはまったことを習うよりも新
しく創造できる能力のほうがあっている。」
「ほう。」
「わしの短剣をお前をやろう。これはサイコウェポンというサイキック増
幅装置だ。
これを扱うには一種特殊な才能が必要で、万人に一人の資質と粘り強い
根気が必要とされる。
お前にはそれがある。」
ガチャ。トキトは机の上に短剣を置く。フラワーはそれを手に取り眺めて
いる。
「なかなか面白そうな代物だな。」
「資質の薄いお前が、他のサイキッカーと渡り合える唯一の手段といって
いいだろう。
・・・これ以上わしを失望させるなよ。」
何かついでのような言葉にフラワーは違和感を感じ、意地悪っぽく笑った。
「親父殿は私にこの短剣でさしてほしいと見えるな。」
「な、なに?」
「はははは。では失礼する。」
そういって、部屋から出ていくフラワー。部屋の外ではフラワーの不気味な
笑い声が聞こえた。
「恐ろしい子供じゃ・・。」
あれは人間というよりは、悪魔に近い。
他の者は評価していないがあれをもし野放しにしていたら、この組織
は滅んでいただろう。
だから無理を言ってわしが引き取ったのだ。他のものは道楽としかみ
てくれなかったが・・。
「あの子がわしを殺す日か・・。」
その日から、フラワーは自室に閉じこもり短剣の研究ばかりしていた。
サイキック増幅装置にも種類があることが分かり、さらに上位のものが
ほしくなってきた。
そしてそのチャンスはすぐにやってきた。
「これは偉大なサイキッカーグレンが使っていたアームだ。グレンはサ
イキックの資質に恵まれていなかったが様々なサイキックツールを開発し、
後世に貢献した。
今の様々な機械や施設はすべてグレンの賜物といってもいい。」
アームは、腕につけるもので小型の大砲のような形状で、その先に何か
者をつかむようなロボットの手みたいなものが付いている。
「ここに飾ってあるアームはなぜ使われていない?」
「それは、扱える者がいないからだ。元々サイキック増幅装置は扱うの
に特殊な創造的才能が必要とされるからな。」
「はっはっは。たわけ。武器を飾ってどうなる。なら私がもらおう。」
フラワーの突然の暴挙に沸き立つ、生徒たちと講師。
「な、なにをする!誰か101を取り押さえろ!」
「カス以下の分際でグレン様の武器に触れれると思うな!」
サイキッカーは念動波を放つ。勿論本気。日頃あまりよく思わないフラワーを
この際殺す勢いだ。それを短剣で軽々切り裂くフラワー。
「な、なに?サイキック増幅装置?」
講師は驚き、フラワーに攻撃を仕掛けたサイキッカーは両腕を斬られる。
「ぐわあ・・。」
「ひい!」
フラワーは辺りにいる連中をめちゃくちゃに斬りまくった後アームを
強奪して、その後行方不明となった。
普通なら処分ものだがいつものようにおとがめなし。それはなぜか。
別に彼女の養父、トキトが圧力をかけているからではない、彼女には底知れぬ
なにか存在自体を食われるようなそういう威圧感、それをひしひしと感じ
させるからだ。
今はサイキッカーのなかでも中の上といったところだが、彼女が力を手に
したら果たしてどうなるのだろうか。
そして、その後ある日のある夜、フラワーはトキトの部屋を訪ねる。
トントントン。
「私だ。」
「101か?行方不明と聞いたが。」
とはいえトキトはそろそろ現れるだろうなとは感じていた。
ガチャ。扉が開きフラワーが姿を現す。
「親父殿。私はこれが使いたい。」ゴテっ。
塊が机の上に置かれる。
「派手にやったそうだな。少しは増幅装置を扱えるようにでもなったか?」
「親父殿。これを使う方法を教えよ。」
トキトは不可能だと思った。そしてそのまま率直にフラワーにそれを伝えた。
「・・・無理だ。いくらなんでも。だが・・腕と直接つなげればあるい
はお前の粘り強さならばなんとか制御できるかもしれんが、それでも万
が一だな。」
スパン・・。トキトは一瞬何が起こったのかわからなった、左腕をなく
したフラワーがそこにいた。
「この後は?」
平然と答えるフラワー。フラワーを知り尽くしてるトキトはこの程度日常
茶飯事だった。
「・・・止血しつつアームを制御するのだ。止血のほうは手伝ってやろう。」
そうしてフラワーはなんとかアームを腕にくっつけれるようにまでになった。
グレンが未来を切り開いた有名なサイキックウェポン「アーム」。
フラワーはその武器で何を切り開くのか。
「どうだ?魂が引かれるような感覚がするだろうが。そんなものつけ
たままだと身が持たんぞ。」
「心地よいな。」
「心地よい?」
「親父殿。私はもっと増幅器の研究をしたい。専門の施設に送るがよい。」
トキトは不思議となにも思わず、フラワーを他の施設に送った。
薄々感ずいていたのかもしれない。彼女こそ自分を解放するものだと。
そして2ヶ月後。
「親父殿はレンズを持っているそうだな。それを頂戴したい。」
「どこから聞いた?いやそんなことより手に入れてどうする?」
「どうするとはなんぞ。」
「・・・最近はサイキックアーマーにも手を出しているそうだな。お
前にももう立派なウェポンがあるだろうが。
過去二つ以上の増幅装置を身につけたものはいない。」
「親父殿は身につけていたではないか。」
「・・・レンズは他の装置とは勝手が違うのだ。聞くが、お前はすで
に十分は強さを得ている。
訓練を重ねれば時期にネーム入りも果たせるだろう。
それ以上何を望むのだ?」
「はっはっは。面白いことをいうものだなー。高みへ行くのに何か理由
が必要であるか?」
「・・わしもサイキッカーだ。力への信望はある。だがな。お前のやり
方は急すぎる。
第一このレンズは適正者以外であると身につけるだけでショック死す
る代物だぞ。
残念だがお前は適正者ではない。
お前は、テンマを受け継げる人間ではない。受け継げるとした
らそうだな・・。」
「ゼロか?」
「気づいていたか。」
「それがどうした?私の行く道は私が決める。老害さるべし。」
カチッ。アームのスイッチを入れる。グワワワワ・・。
「グラビディ・フラワー!」
アームから重力の場を発生させる。
「ぐ・・。」
すさまじい念力の圧縮にさすがのトキトも表情をゆがめる。
「どうしたあー??やってみよ!」
闘争を呼び起こせと伝えるフラワー。しかしトキトに戦う意思はない。
「む、娘とは戦えん!」
「脆弱だなあー!戦えぬ兵士に用はない。」
グサッ・・。トキトの体にアームをさす。トキトはフラワーに笑いかける。
「ブハッ・・・。こ、これで解放される。ありがとう。」
「ヒート・フラワー!」ジュワッ!
アームから念力で圧縮された熱が放出し、トキトの体は蒸発する。
「親父殿の力はもらいうける。が、親父殿の精神はいらんよ。」
後にはレンズのみが残り、フラワーはそれを拾った。父親を殺したこと
に対する感傷などはもちろんない。
「これがレンズか。親父殿は右目につけていたようだな。」カチッ。
「ふふっ・・・。心地よいな。」
右目が溶けていく・・。さらに体中の神経がずたずたにされる。
レンズの許容量にフラワーの許容力が耐えきれない。
魂ごと蒸発するような感覚だがフラワーはそれを心地よいと感じているようだ。
「馴染むな。まるで昔から自分の体の一部のようだ。」
父親を殺したときでさえ何も思わなかったフラワーだがこのときは珍しく感傷
的なことをいう。それだけこの瞬間はうれしかったのだろう。
「ほう・・。レンズは勝手は違うというが、親父殿はレンズの力を解
放してなかったようだな。
無駄なことよ。
使わぬ武器に何の意味があろうか。サイキッカーとて同じこと。
この私が世界を乱世に導いてくれようぞ。
・・はっはっは。はっはっはっは。」
笑い声がこだます。その彼女はトキトを受け継ぎ、サイキック機関
のリーダーテンマとなる。
親殺しという恩知らずな所業だが、ネーム持ちの誰もフラワーのテンマ
就任に異論を唱えなかった。
彼らはわかっていたのだ。彼女こそが自分たちを導くものだと。
フラワーは、サイキッカーの歴史が始まって以来初めて三つの増幅装
置を扱うこととなった。
ウェポン、アーマー、ブースト。そしてそれら全てが最高ランクの代物
であった。
ブーストであるレンズは適正者でないため形状を維持できず後に改造、
そのときに初代トキトが完成させた終焉に導く一筋の光を体現させるこ
とに成功する。
その光で彼女は世界を終焉に導き、現在に至る。
知る人ぞ知る、本当の世界崩壊の原因を作った人物である。
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