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第十九幕 愚鈍な王様
ガスの万全の体制も、所詮アッチラの前では無意味だ。

この前は不覚を取ったが、そもそもアッチラは相当すばしっこいから、
ガスなんかに構わず金目のものを盗み出すのは容易だ。

そもそもガスには害児のような威圧感がない。

だからアッチラはうまうまとガスから大金をせしめた。

ガスは、その様子を見て憤慨して部下たちを集めどなった。

「なんとふがいないのだ!我輩の部下どもは!」

叱責された部下どもは不満げな顔であった。お前の指揮が悪いのだろうと
いわんばかりだ。

ガスはますます怒って、不満げな顔をしている部下の一人を呼んだ。

「そこの者、ちょっとこい。」

部下というかガスが新しく大幅に雇ったごろつきだが、は無言でガスに近づく
と、いきなりガスに頬を殴られた。

「我輩の力思い知ったか!」

いきなり殴られたごろつきは激昂した。

「俺たちは精一杯やった!何で俺を殴る!」

「結果が出なければやってないのと同じなのだ!ひゃっは!このごみ虫ども
め。」

部下の一人が憤然と前に進み出て抗議した。

「殴ることはない!何で俺たちを殴るんだ!」

ガスは悠然と答えた。

「我輩の力を思い知らせるためだ!」

「横暴だ!」

「だまらっしゃい!」

ガスと部下どもは見苦しく口論し、やがてガスは複数のごろつきに囲まれて
いた。

ガスは、そんなことはまったく意にかえさず、部下たちを挑発し罵った。

我慢ならなくなった部下の一人が、ガスを殴ったのを基点にごろつきたちは
ガスをふるぼっこにした。

「何をする!我輩は王であるぞ!ひい!やめてくれ~!」

黒服たちは、その有様に驚いたが見て見ぬ振りをした。

やがて気が済んだごろつきは、こんなところにいられるかと言い残し去って
いった。

意識を取り戻したガスは、害児の元部下要するに黒服たちに向かって罵った。

「お前たち!何でとめなかった!」

「私どもは再三申し上げたはずです。あのようなものたちを雇うことは
ないと。」

「下民が口を挟むな!我輩の王者の知略にけちをつける気であるか!」

ガスは黒服たちにとって害児よりはるかに使えにくいお人であった。

いきなり、ガスが害児の地位にとって変わったことはもちろん黒服たちも
驚いた。

「首領はどういうおつもりなのだろう。」

「お前にはわかるまい、しかしこれは首領の深いお考えなのだ。」

「なるほど。俺は頭が足りなかったようだ。しかし首領の知略は神の領域
に達している。」

「ああまさしく、首領の神算鬼謀は恐ろしい限りだ。
きっと今回の件も何か空恐ろしい知略があるに違いない。」

黒服たちは口々に言い合い、害児を慕うこと数倍した。

そして、そういうことならガスに対しても、全力で使えようと決心したので
あった。

ガスの手腕はすさまじく、数日で財団は大きくなった。

前の規模の二倍だが、しかしそのせいでアッチラの言うようにみんなが迷惑
してる節もあった。

今の時代ただ儲ければそれが正義として通るわけでもない。

またごろつきなども好んで雇い、館も以前よりはるかに豪勢にした。

ただ、ガスの弱点としてにらみがききにくいという点があり、それを
補うためのごろつきたちだったが、あまり足しにはならなかった。

おかげで、対外交渉において、害児の自治領に対する自治権に他国が
干渉し始める事態が起こっていた。

他国とはもちろん害児の故郷だ。害児の故郷の地域以外、紛争を起こしている
地域はない。

この地域だけが、前時代的であった。

害児としては、ある程度お金があればよかった。

要するに故郷に対する備えがあればよかったのだ。

ほかの地域にいたっては、貨幣が流通しないない地域がほとんどで、貨幣
による商業が成り立つのは、害児の故郷かここかくらいだ。

ガスと黒服たちがもめたころ、アッチラはお金を町でばら撒いていた。

多くの桜をしこみ、アッチラは英雄であり救世主であるということを町に
触れ回った。

町の人は感心なさげで、もらったお金は害児のところまでわざわざ来て
返しにきた。

アッチラは無駄骨だが、大得意だった。

アッチラは善い人に対し、いかに自分が善人か語った後、機嫌よく酒を
飲みどこかへいってしまった。

害児のところにお金が集まってるということを聞いたガスはさてはと思い
、大急ぎで善い人の家に向かった。

「この大盗人めが!我輩の金を返せ!」

善い人の家の前には金がうず高く積みあがっていた。

「これは我輩の金だ。誰にも渡さんぞ!」

ガスは見苦しく金を拾い集めていた。

善い人がそれを見て一緒に手伝った。

害児はもはや何も言うことはなかったが、しかし言っておかねばならないこと
があった。

「ガスさん。一ついいたいのですが、わが国の自治権が危うくなっています。
お金を溜め込んでばかりいないで、武器でも買っていただきたいのですが。」

「うるさい!何を抜かすか、この盗人め。なぜ下民の分際で王たるこの
我輩を対等の口を聞こうというのだ。」

「・・・。」

「おじけづいたか!」

「ともかくこれ以上危なくなると結果的にあなたの大好きな商売もできなく
なりますよ。」

「ふ、ふん!我輩はガ流である。その程度なんとでもなるのだ。」

ガスは金を集めてそそくさと去っていった。

「やれやれ、困った人ですね。」

とはいうものの、害児のわがままも日に日に強くなってきて、害児はすぐ
駄々をこねて床に転がるので、それを見た善い人が、

「ああまた落ちちゃった。」

とかいいつつ車椅子に戻す日々であった。

害児は害児で、ずっと放置されていると、

「早く車椅子に乗せろお。」

と大声でわめき始めるので仕方なく、善い人かタンクが車椅子に戻してやる
のだった。

どうあってもこのままではすまないだろう。この生活はいつかきっと破綻
するに違いなかった。


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