第一幕 伝説の幕開け
249X年 某惑星にて
行き過ぎた文明は、自らを傷つける刃となり、やがては自分の身をも切り裂いてしまう・・・。
世界は突然光に包まれ、多くの生命が死に絶えた。
ある人は、核だといい、ある人は、神の裁きだという。真相は分からない。
それはこの物語を追っていくうちに、もしかしたらわかることもあるのかもしれない。
人が居る限りは、善と悪は絶えず存在する。
自らの善を絶対視することが、狂人と言われるのなら、善人とは狂人なのか?
自らの狂を受け入れた時、人はどんな苦難をも乗り越え、神をも超えることが出来るのかもしれない。
英雄か受難者か。
・・・しかし、その狂人こそ、もしかしたらこの世を救う救世主となりうる可能性がある。
例え、傍から見てどんなに馬鹿らしく不恰好であるとしても、貫けばそれは真実となる。
善人伝説
「ここが魔王城か・・。」
少女がつぶやく。
年の頃15位だろう。 白いコットンハットに、上下白い服を着ている。何かを表しているのだろうか?
髪はセミロングで、瞳孔は青い。存在感が無く今にも消え去りそうだ。
まるでお化けが死人だ。考えてみれば彼女の格好はまるで、お化けの変装のようにも見える。
少女が魔王城と呼んだビルは、ガタがきている八階建てのビルで、
がたがきてる八階建てのビルだ。
長年整備されていないのだがそんなビルはこの時代これだけではなく数多くある。
少女にはこのビルが魔王城に思えるようだ。
この日がちょうど雨が激しく降っており、ビルにバックには雷が浮かび確かに魔王城という感じではあった。
実は、このビルには、いわゆる悪人と呼ばれる人間が、籠っており、大変危険なビルなのだが、
そんなこと少女は意にも返さず、まるで自分の家に入るが如く、しげしげと近づいていった。
「なんだてめえは。」
野太い声が少女を呼び止める。
如何にも悪人という面のおっさんが、少女を警戒気味に見ていたが、少女はそっちの方を見もせずに、
中に入ろうとするので、おっさんは大慌てで、門の前に立ちふさがる。
「お、おい!待て!待つんだぁ!ぐわあ!」
善い人の尋常ではない気配におびえたおっさんであったが、おっさんが待つんだぁといった瞬間には、
もう横に吹き飛び、声を発しなくなっていた。
「うるさい!この善人の邪魔をするか!」
善人?と称した少女は、伸びて動けなくなっている、
おっさんの方をようやく注視した。
「なんだなんだ!?」
表が騒がしいので、がやがやとビルの中から、外へ出てくる悪人達。
「うお!悪人Aがやられてやがる!どいつの仕業だ!」
悪人達は、当りを警戒気味に見渡している。
ビルが空いたので、少女はどかどか出てきた悪人達を避けて、中に入っていく。
少女がビルの中に入ると、人はほとんどいなく、真ん中に上に上がる螺旋階段が設置されていた。
「どうやらこの上に悪人達のボスが居るみたいだね。
その思い上がりにこの善人たる善い人が罰を与えないといけない。」
別に、ひそひそ声でつぶやいたわけではない、
少女にとって、自分の成すことは、公明正大であるのだから、
何故こそこそとやらなければならないのだろう?
そんなことは断じてないので、
その声は表に出て、がやがや、やっていた悪人達にも丸聞こえになり、
ぎょっとした様子で、またどかどかと入り込んできた。
「ん?なんだあいつは?おい!あいつは誰だ?」
悪人の中でリーダー格と思われる男が、周りの悪人達に問うが、
悪人達の誰も知らないらしく、首を横に振っている。
そんなこといってる間に、
善い人は階段をドンドンと登っていってしまっている。
「ちっ!まあいい。とにかくあいつを捕まえろ。」
リーダー格の男は、
そういっていらいらしたようにタバコを取り出し、火をつける。
周りの悪人達は肩をすくめ、
階段を登っていた善い人においつき、声をかけた。
「おいおい、お譲ちゃん。ここは危ないんだぜ?お家に帰んな。」
そういって、手を触れようとした刹那、
悪人は少女の回し蹴りを食らい、階段の下に叩きつけられた。
一瞬あたりは何か起こったかわからず、静寂が支配した。
ようやく悪人達が事態を把握し、罵声を発しようとしたその前に、
少女が悪人達に向かい、大喝した。
「この善人たる善い人に、そんな策謀が通用しないということが、
まだ分からないのか!」
わけが分からない。
しかし、尋常じゃない雰囲気を感じ取り、悪人の一人が、少女を指差し叫んだ。
「おい!こいつは、狂人だ!いつもへたくそな漫画を描いていて、
魔人に媚を売って暮らしている、悪党だ!」
「そういえば、俺も噂には聞いた。
白服、白帽子、まさしくあいつだ。
確か、自分は善人だとか言って、自分を正当化して、
悪逆の限りを尽くしてるとかいう・・・。」
そう聞いても、リーダー格の悪人は慌てず、にやりとした。
悪人なら、自分達と同じわけなのだから、うまく交渉すれば、こちらの仲間になるかもしれない。
ちなみに魔人というのは、この自治区の実質上の領主のことで、
昔そういわれていた通り名が、そのまま使われているといった感じだ。
しかしながら、この悪人達の罵詈荘厳は、自分は善人だとか自称する
少女を激怒させるに充分すぎる言葉だった。
「この善い人を馬鹿にするのか!おのれ!もう許さん!」
少女は、階段に立てかけてあった、
槍を取って、頭の上でくるくると回した後、後ろに構えポーズをとった。
「唸れ!旋槍!」
そういって、槍を回転させつつ、階段を下りてくる、
それに巻き込まれた、悪人達は次々に吹き飛ばされていく。
リーダー格の悪人はぎょっとし、慌てふためき、地下へと逃げていった。
しかし、なぜか自称善人は、リーダー格の悪人めがけて、
一直線に向かってくる。
「うわあ!やめてくれー!」
「食らえ!善の鉄槌!」
そういって、槍を一閃し、槍の腹に当たった、
リーダー格の悪人は、地下へと転がっていった。
残った悪人達は、おびえた表情で逃げていった。
「この善人から逃げられるとでも思ったのか!悪は逃さん!」
自称善人はそういって、悪人達を一人残らず駆逐した後、
ゆっくりと階段を登っていった。
転がり落ちていったリーダー格の男は、
しかし闘志はまだ失っていなかった。
いやそれどころか、自称善人に逆襲を誓った。
「白服め!俺たちをなめやがって。今に見ていろ・・・。」
階段を登っていき、最上階に登った自称善人は、空を眺めた。
どうやら雨はまだ降っている。近くに雷も落ちているようだ。
なにやら不穏な気配を感じる。
自称善人は、その正体が何か、見極めようとしていた。
自称善人の後をこっそりとつけていった、リーダー格の悪人とその他大勢の悪人は、
自称善人が、空を眺めている間にゆっくりと展開した。
リーダー格の男は気取ったポーズをとって、左手を額にあて、
右手を、伸ばし、手のひらを上にして、自称善人のほうを指しかつ叫んだ。
「はっはー!きさまー・・・ぶぁ!」
リーダー格の男は、セリフの途中で異様な力で、吹き飛ばされ、
ビルの外へと落ちていった。
その後炸裂音と共に、謎のエネルギー体が、自称善人を悪人達を襲う。
悪人達はみな、奇声を発し、ビルの外へと落ちていったが、
自称善人はその攻撃を全て避け、再び空を見上げた。
「けっ。」
漆黒の闇からうっすらとシルエットが浮かび上がる。
男は、禍々しいオーラを纏っている。善人は直感した。
この男が、先ほどの攻撃を放ったに違いないと。
善人は、背から大剣を取り出し、ゆっくりと、横に歩きつつ、男との間合いを取り、慎重に対峙する。
男は、寝そべっていたが、
善人が、先ほどの攻撃に当たらなかったのだと、ようやく分かり、
むくりと起き上がって、善人に尋ねた。
「おいてめえ、ここは俺の寝床だぜ。」
雨に打たれてずぶ濡れになっている男が、ここを寝床だという。
ならば男は、ここのボスなのだろうか。
善人にはそうは思えなかった。ただ思うのは、男は自分の「敵」だということ。
それだけは強く感じた。
男も同様だったのかもしれない。
善人は答えた。
「私は、善い人だよ。悪人をやっつけるのが私の使命だ。」
男は、頭を指でくるくるさして、呆れた表情で善い人を見る。
「何だその顔は?この善人たる善い人を馬鹿にしているのか?」
男は答えた。
「どうやら、てめえは俺にぶっ潰されてえみたいだな。」
「なんだと!もう我慢ならん!」
なんだかよく分からないタイミングでぶち切れた善い人は、
姿を消し、穀潰しに向かって剣を振り落とす。
いや姿を消したのではなく、あまりの速さにそう見えただけだ。
当然男は哀れにも真っ二つになっているはずなのだが、
そうはならなかった。
善い人の背後で声が聞こえる。
「なんだそりゃ?素振りの練習か?。」
男はそういって、ナイフを抜いて、善い人に向かってきらりと光らせた。
その後ナイフをしまっているところを、善い人に再襲撃されたが、
またもや、善い人の背後に現れる。
「ひゃっは!潰れちまえ!」
そういって、手を構えた先から、目に見えない何かが、発せられ、
善い人に襲い掛かった。
それらの攻撃をことごとく善い人は避け、男を驚かせる。
「な、なに?」
一方善い人は、心なしか笑いながら、攻撃を加える。
善い人ほどの力を持つと、それを振るう対象が限られる。
全力を持って、力を受け止める相手は、彼女にとっても、
快い存在だった。例えそれが直感的に「敵」だと認識したとしても。
男はそれどころではない。
攻撃が避けられたということが信じられず、
やたら滅多ら不可思議な攻撃を繰り出し、それら全てを善い人に避けられる。
ということを繰り返した。
「なんで当たらねえ!当たれ!」
心理的なあせりは隙を生み出す、男とて戦闘の素人ではないが、
心情的な余裕が、力の差を生んだ。
「見えた!突き刺さる脚!」
針の穴ほどしかない、男の心の隙をつき、
善い人は必勝の攻撃を繰り出す。
男は、片手で蹴りを受け止めるが、吹き飛び、ビルの外に転落しそうになるが
かろうじて、それを阻止する。
ぶら下がっているところがもろく今にも崩れそうなため、
長くは持たない。
すぐに、這い上がろうと思ったが、そこへ善い人がやってきた。
「へへっ。なんだてめえか。おいっ!てめえ善人なら俺を助けやがれ!」
善い人は腕を組み考え、男に尋ねた。
「そういえば、君の名前は?」
「ああ・・・。穀潰しっていうんだ。なあ助けてくれよ。」
善い人は、哀れな穀潰しの命乞いに、助けようかと思ったが、
なぜか穀潰しがにやにやしているのが、癇に障った。
「残念だよ。穀潰し君。私は善い事をする使命に忙しい。」
「おい、てめえ。俺を今ここで助けねえと後でどえらい目にあっても、
知らねえぞ!」
善い人は、その言葉を無視し、去っていき、それをほぼ同時に、
瓦礫が崩れ、穀潰しは下に落ちていった。
落ちた先には、先ほど穀潰しが落とした先客達がうずくまっていた。
「ちくしょう!えらい目にあったぜ!ん?なんだこの偉そうな野郎は!」
穀潰しが落とした悪人達をせっせと運んでいる、ハエのような生き物。
ハエのような生き物だが、大きさは牛ほどにあるハエが、
穀潰しに対する、あてつけのように、悪人達を介護していたので、穀潰しは腹が立った。
「ひゃっは!潰れろ!」
「ピギー!」
そういって、ハエを蹴っ飛ばすと、上に載っていた悪人がごろりと落ち、
穀潰しも少し悪いことをしたかなと思ったが、いや痛い思いをしたのは自分も同じだ。
こいつらだけじゃねえんだ。と思い直して、気を取り直し、
「善い人とかいったな。暇つぶしくらいにはなりそうだな。」
と呟き、穀潰しは、またビルの中へと入っていった。
善い人は、屋上にはボスがいなかったと判断し、
そういえば地下があったことを思い出したので、下へと降りていった。
この際、ボスがいるかどうかは、問題ではない。
このような建物にボスがいないなどということはないのだから、
いないのなら無理やりでも見つけるべきだ。
あるいは、あのリーダー格の男がボスだったのかも分からず、
善い人もその可能性もあると思ったが、風格が足りないから現場の指揮官レベルだと判断したのだ。
まあ善い人の場合、なんとなくで全て片付けられる。
直感のみで動いている人間だ。
ビルの中は誰も居らず静かだ。
地下への入り口は開いている。
「おそらくここに、ボスがいるはず・・・この善人の目は欺けない
ということを思い知らせてやらないといけない。」
そういって、善い人は地下へ下りていった。
洞窟のような地下をある程度進むと、鉄の扉があり、それ以上進めない。
「突き刺さる脚!」
ドカーン。
突き抜け、体を回転させ、部屋の真ん中に着地する。
着地した瞬間、何者かにぶつかり、よろける善い人。
「おう!善い人か!どうやらこの奥にボスがいるみたいだぜ!」
ぶつかった人物は穀潰しらしい。穀潰しは巨大なハエと交戦していた。
「ひゃっは!あいつもなかなか手ごわいみたいだぜ!善い人さんよお!
さあ行こうぜ!気にいらねえやつをぶっ潰してやろうぜ!」
この男は何か勘違いをしているらしい。
この善人たる善い人と自分が同格だとでも?善い人は不満を感じた。
「この善人たる善い人が、君ごときと同格とでも?」
その言葉を聴き、にやりとした穀潰しだったが、
腕がハエの真空波によって切り裂かれ、顔色が青くなる。
すぐに、腕を回収した後、くっつけなおす。
「気合で腕もくっつくのか。」
善い人のトンチンカンのような台詞に、いちいち受け答えしている状況ではない。
たかがハエと馬鹿にしていたが、どうやらシビアな展開になってきた。
穀潰しは、腕から衝撃波を発し、ハエに応戦するが、殺傷能力、速度、
共に、ハエの真空波のが上を行く。
穀潰しは、焦り善い人の後ろに逃げる。
善い人は向かってきた真空波を、大剣でなぎ払う。
「やるじゃねえか。」
穀潰しは、善い人に話しかけた。
「まあね。こんなの簡単だよ。」
その言葉を聴き、穀潰しは、お気楽な頭だ。騙すのは簡単だと思った。
「おい。さっき俺はボスは奥にいるといったよな。
あいつはそれをこばんでいる。つまりあいつは、悪人ということだ。
俺に協力しろ。それとも善人というのは口だけか?」
善い人は憮然として答えた。
「この私は、善い事をしなければならない。」
「分かった。時間を稼げ。けりはつけるぜ。」
善い人はしかし、腑に落ちなかった。目の前にいるハエは悪人ではない。
善い人の善人魂はそう告げていた。
しかし今は、先に進むしかない。
善い人は、穀潰しに降り注ぐ、真空波を全て切り裂き、接近する。
まるで小枝を振り回すように大剣を振るい、ハエに攻撃するが、
その攻撃をことごとく避けられる。
「私より早い?」
ハエは善い人を振り払い、穀潰しに向かって突撃した。
「ちっ!」
穀潰しは、横っ飛びし、ハエは突撃が外れるが、目からビームを繰り出し、
穀潰しを攻撃する。
穀潰しが、展開していたバリアーをつきぬけ、床に穴を開ける。
「なに?バリアーごと?切り裂け!サイコカッター!」
カッター状の衝撃波をハエに放つ。ハエはそれを旋廻してかわす。
「おいおい善い人さんよお!これじゃ大技が使えねえぜ!
ひゃっは!」
そういつつ穀潰しは、内心肝が縮む思いで、冷や汗をたらしていた。
「当てる!ダブルボーガン!」
どこからかボーガンを取り出し、雨あられのように矢をハエに降り注がせる。
時間差で、槍に持ち替え、ハエに向かって突進する。
「捻じ込む!トルネードチャージ!」
自分の放った矢の嵐をつきぬけはじき、ハエの羽を捕らえる。
「決める!突貫脚!」
空中で、方向転換し、速度の速いとび蹴りを放つがそれも外れる。
その時・・・。
「潰れろ!ランダムスフィア!」
穀潰しは、球状の爆裂する衝撃波の玉をいくつも、善い人とハエに向かって放つ。
ちょうど体制を崩していたハエはその攻撃に巻き込まれ、
善い人も余波を受け吹き飛ばさせる。
幸いダメージは軽症だ。しかしハエはもろに当たってしまった。
「ひゃっはっはっは。ざまあみろ!」
穀潰しは勝ち誇り、ハエに近づいていく。
ゴゴゴゴゴ。
「ん?」
洞窟全体が揺れている。
「おい。善い人さん。どうやら洞窟が崩れるらしい。」
善い人は、腕をかばいつつ穀潰しのほうに歩いてきた。
「そうみたいだね。」
穀潰しは善い人の怪我に気づき、声をかけた。
「てめえは間抜けだな。俺の攻撃に当たっちまったか。」
「なんだと?どうしてもこの善い人を馬鹿にしたいなら、
私にも考えがある。」
「ああいいぜ。ひゃっは!」
穀潰しが、右手を善い人に向けて、左手でナイフを構える。
善い人も、大剣を片手で構える。
ゴゴゴゴゴ。
しかし、さらに洞窟が崩れ始め、それどころではなくなってきた。
穀潰しは、心配になった。穀潰しは狂人の善い人と違って、こんなところで
埋まって死ぬ気は毛頭ない。
「おいおい。こりゃやべえぜ。こんなことしてる場合じゃ・・・げほっ」
穀潰しは善い人の回し蹴りを食らい、吹き飛び壁に叩きつけられる。
「ん?間抜けな穀潰し君は私の攻撃に当たってしまったようだね。」
「て、てめえ・・・。だがそれどころじゃねえ。そこをどけ。」
穀潰しがハエに近づいていく。
「なにするの?」
善い人が尋ねた。
「ここをでる前に止めをささねえと、
こんな化け物に命を狙われちゃたまらねえからな。」
それを善い人が制止する。
「いや、善人は動物には優しいものだよ。君も善人になりたいなら、
知っておいたほうが善いね。」
善い人が得意げに穀潰しを諭す。
穀潰しとしては、どっちにしろ、
洞窟が崩れている状況の方が気が気でなかった。
「はっ!勝手にしろ。」
ドカーン。彼らが話し合っている間に、出入り口が穴でふさがってしまった。
「やべえぞ。ドンドン崩れてやがる・・・。
俺はまだ死にたくねえ・・・。」
早く脱出しておけばよかったと穀潰しは後悔した。
こんなハエ野郎や、善人だとか抜かす狂人と関わったばかりに、
自分の人生はめちゃくちゃになったと穀潰しは思った。
しかしわめいても仕方ないので、何とかする策を考える。
「どうするか・・・。おい、善い人さん。てめえは・・・?」
見ると、善い人は悠長にハエの手当てをしてる。
「とんだ物好きだな。」
とはいえ、直接攻撃をしたのは自分だし、少し気兼ねもしたので、
手当てを手伝おうと善い人達によっていった。
「どうやら、乗せてくれるらしい。これでここから出れるよ。」
そう善い人がいい。それを聞いた穀潰しの表情は明るくなった。
「おう!じゃあさっさとこんなところからおさらばしようぜ!
ひゃっは!いや善いことはしておくものだぜ!」
善い事をしたのは善い人で、穀潰しは何の役にも立たぬ、
考え事をしていただけであった。
とはいえ善い人にとって、穀潰しなどどうでもよかった。
そのため、穀潰しの勘違い発言に対しても、寛大な心でスルーした。
「そうだね。さすがにそろそろここは限界だよ。さあ行こうか。頼むよ。
ハエ。」
「ひゃっはー!あっ?」
穀潰しは、ハエに飛び乗ったが、ハエに避けれる。
「おいおい、そりゃどういうことだ?命の恩人だぜ?この俺は。」
善人たる善い人は、ハエに賛同した。確かに穀潰しは悪人であるのだから、
ここで反省して貰うのは悪い案ではなかった。
善い人は哀れみの表情で穀潰しを見た。
「残念だけどここでお別れだね。君のことは忘れないよ。3時間ほどね。」
穀潰しは慌てた。
さすがの穀潰しでもこんなところにおいていかれたらただではすまない。
穀潰しは必死になって弁解した。
「そりゃあねえんじゃないのか?俺は善人だぜ?
善人が善人を見捨てていいのかよ!?」
善い人は、穀潰しの戯言を無視した。
というより、ハエにすでに、飛んでいたので、これ以上穀潰しに付き合う
時間は無かったのだ。
善い人にとっても、ここに長居するのは、善い状況とはいえない。
穀潰しは呆然とした。
自分は善人だと言ってるのに、なんであのバカ野郎は聞き耳を持たないのだろう。
穀潰しは、こんなところで生き埋めになりたくなかったので、必死になって、テレポートしながら、
善い人達に追いついた。
「助けてくれー!俺は死にたくない!俺は役に立つ男だぜ!
ここで俺に恩を売っておけばお前は、一生俺に感謝することになるだろうよ!どうだ?」
善い人もハエも無言だ。善い人は何事か考え事をしているし、
ハエは、穀潰しには恨みがある。
穀潰しは、なおも食いついた。
「くそっ!恨んでやる!この偽善者め!頼むよ!助けてくれ!」
穀潰しの声は徐々に遠ざかってくる。善い人達は洞窟を抜け、地下を抜け出し、
ビルの外へと脱出する。
そして、ビルは、ガラガラと音を立てて崩壊していった。
善い人はつぶやいた。
「なるほど。世界は広い。ああいう人もいるならこの私も考え直さないといけないね。
とにかく進もう。私の善行をみんなが待っている。」
善い人はまっすぐ前を見る。その澄んだ目は、とても狂人には見えなかった。
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