【9】試験1
部屋に戻ったヴィオを待ち受けていたのは、大勢の兵士たちだった。
「・・・それで?!ゼノン隊長は何の用だったんだ?」
ヴィオに群がる他の兵士たちを部屋から追い出し、アフマドが詰め寄る。
他の2人も興味深そうにヴィオを見ていた。
どうやらゼノン隊長がヴィオを連れ出したということが、相当広まってしまったらしい。
(あれだけ注目されてる中だったからな・・・むりもないか・・・・)
ヴィオは目立ちたくなかったのにとがっくりと肩を落とし、興味深々な3人の様子にため息をついた。しかたなく事の次第を大まかに説明する。奴(※ゼノン隊長)に口止めされた、レイの話は伏せて・・・
ヴィオの話にアフマドは瞳を輝かせ、ルネイは腑に落ちないといった表情を作る。ディセルにいたっては、なにか探るような視線でヴィオを見つめるのだった。
(何で秘密がふえるんだよ・・・・ただえさえ自分の身の上を隠すのに必死なのに!!泣)
己に次々と降りかかる災難に、ヴィオはため息をつくしかなかった。
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等級試験当日
あの日以来幾度となく、様子を見に来るゼノンにヴィオは大いに困り果てていた。いわば英雄である彼が、一介のしかも見るからにひ弱そうな少年を訪ねるとあってその噂はあっという間に広まり、毎回鍛錬の時には大勢のギャラリーが集まった。中にはとんでもない噂をする者もいて――ゼノン隊長はオルレアの少年と付き合っている・・・――
どんな噂だよ!!これを聞いた時には流石のヴィオも噂を流した奴に殴りこもうかと思ったほどだ。
(だけど、そんな大変な日々も今日まで・・・・)
ヴィオはすっと試技場を見下ろした。――――必ず1位になってやる・・・・・
それは奴(※ゼノン隊長)との”契約”だから。
”契約”とは、1位になったあかつきには前線での戦いの免除とそれなりの等級を、ならなければ即刻強制帰還させられるというものだ。まさに横暴、無茶苦茶すぎる。
ヴィオはまだ帰るわけにはいかなかった。何もせずただ帰ったのでは、それこそ女王の思う壺だ。陛下は容赦なくヴィオの居場所を取り上げるだろう。剣士とゆうヴィオにとって唯一の居場所を・・・・
だから絶対負けるわけにはいかない。ヴィオはじっと前を見据えた。
ゼノンは一番高い席からその様子を観覧していた。
「高みの見物か?ジル」
その声にゼノンは、振り返らずに答えた。
「お前はどう思う?あれが1位を取れると思うか?」
質問を質問で返され軽く眉ねをよせながら、声をかけた男はゼノンの隣に腰掛けた。ゼノンを愛称で呼ぶその男は190の巨体をもつシルビ=アークライト、近衛第2隊長だ。
「取れるかと聞かれたら・・・・・・無理じゃないのか?あの少年はまだ若い、背も体格も未発達じゃないか。いくら強いと噂されててもたかがしれているだろ・・・」
そんなシルビの答えにもゼノンの表情はまったく変わらない。無表情のまま淡々とヴィオを見つめる。
「・・・・・さぁどうだろう」
いつになく冷えた彼の雰囲気にシルビは肩をすくませた。第一この男が他の誰かに興味を持つこと自体珍しいのだ、こんな風に真剣に相手を見つめるのをみたら・・・
(そりゃぁ誰だって疑いたくなるよなぁ・・・・・・・・恋人説・・・・)
はぁとため息をこぼし、シルビは試技場に目を向けた。そこでは今まさに、噂の少年、ヴィオの試合が始まるところだった。
いつになく満員の観客が見守る中、始まりの合図が響き渡る。
まるで舞うような動きに目を奪われたのを覚えている。
風になびく漆黒の髪、意志の強い瞳
華奢な体から繰り出されるのは、見事なまでの剣さばき
それはまるで・・・・・・
舞姫のようだった
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