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斬るのみっ!!
作:ごん太



参の二 霧谷の巨大生物



 翌朝――

 体調が快復したギンに巨大な蟻の話をした。

「“鉄伏”だの」

 鉄伏てつふせ
 鉄のように硬い甲殻からそう呼ばれる。
 大きいだけで行動、思考などは蟻。

「妖魔か?」

「違う。デカければなんでも妖魔、と言うわけではないぞ?鉄伏は龍脈の影響を受けた、ただの蟻だ」

 龍脈りゅうみゃく
 全ての力の源とされる、霊子集合体。
 地下深くを川のように流れると聞くが、実際に見た者は皆無。

「龍脈?伝説に聞いた事はあるが、本当にあるのかよ?」

 ナナシの言葉にやれやれ、と首を振る。

「龍脈はの、物体ではない。言わば生きる者全てが一つの龍脈だの。
 ヌシ達の言うところの龍脈とは、恐らく“土地魂”の事だろうのう」

「土地魂?…あぁ、いや、やめとく、頭が痛くなりそうだ」

 ナナシは頭を振るとため息をついた。
 ギンもナナシの態度にため息をついた。

「少しは話を聞け。全く」

 2人は小屋を後にした。

――――――

 深い深い霧が覆い、両脇を高い崖がせびえる谷。

 混乱する可能性があるので説明すると、両脇に絶壁が口を開ける谷を進んでいるのではなく、谷底の狭い道を進んでいる。

 霧谷、と呼ばれる。

「……キツイ」

「しっかりしろよ」

 谷を進むうちに、ギンの体調が再び悪化したらしく、ナナシに背負われている。

「ここは、土地魂の影響が、濃い…らしい」

 ギンは苦しそうに声をもらす。

「わかった、わかった。しゃべるな、余計辛くなるぞ?」

「…ん」

 ナナシの言葉に低く返事をすると、目をつぶった。

――――――

 どれだけ進んだか、ナナシは立ち止まっていた。
 ギンは目を覚ましたのか、ナナシの背中でもぞもぞしている。

「どうした?」

 ギンの声が聞こえなかったのか、ナナシは黙っている。

「ナナシ?」

 ナナシの妙な態度にギンは正面を向く。
 そこにいたのは、道を塞ぐように横たわる、巨大なミミズ。

「ギン…」

「嫌だ」

 ナナシが言い終わる前にギンがそれを制止した。

「進めないだろ?」

「引き返せ、ここは諦めろ!」

 ギンの言いたい事はつまり、刀になりミミズを斬って追い払うのは嫌だから別の道を進め、と言う事。

「バカ言うな、谷は一本道だぞ?他に道はない!」

「ミミズだぞ!?あんなモノ斬るくらいなら別の、谷以外の道を行く方がいいだろう!」

 背中で子犬のように騒ぐギンを無視して、ミミズにゆっくり近付く。
 丸くなっているミミズはどちらが頭で、どちらが尻かサッパリわからない。

 ミミズ丘登山をする羽目になったわけだが、掴むデコボコが見当たらない。

「コイツで刺しながら行くしかないか…」

 腰に提げた、小屋から拝借したナタを引き抜く。

 ピンク色の肌にナタをズブリと突き刺す。
 弾力は強いが、それでも容易に刺さる。

「ギン!く、首絞めるな!」

「き、気持ち悪い!は、早く登ってしまえ!」

 ギンは相当苦手なのだろうか、ナナシの首に腕を絡め、悲鳴を上げている。

 首を絞められ、意識が飛びそうになりながらもなんとかミミズ丘の頂上に到着した。

 ナナシは荒く息をし、腰を下ろす。

「こんなところで座るな!早く地面に下りろ!」

 首に腕を巻き付かせ、足がミミズに触れないようナナシの腹辺りを挟む。

「苦しいんだから背中から降りろよ!」

「嫌だ!こんなところに足付けられるか!」

 ナナシは深くため息をつくと、登った時と同じようにミミズの肌にナタを突き刺す。
 わずかにだが、肌が振動するのがわかる。

「ん?動き出した…」

 ミミズの体はゆっくり伸びはじめ、そして体を波打ちながらゆっくり進みはじめた。

「こりゃ楽だ!コイツに乗ってれば谷を越えられるぞ!」

「……」

 ギンはナナシの背中にしがみついたまま、小さく震えていた。

「ギン?調子悪いのか?」

「あぁ、吐きそうだ…」

 調子が悪いのは、力の影響ではなく、ミミズのせいだろう。
 時折、襲いくる嘔吐感から顔を背中に埋める。

「おいおい!吐くなよ!」

「……無理」

――――――

 ミミズの背に乗り揺られる事20分ほどだろうか、谷を抜け草原に出た。

 ナナシは近くを流れる小川にしゃがみ込み、ふんどし姿で着物を洗っていた。

「あー、一張羅が…」

 もはや説明不用かと思うが、ギンはナナシの背中に胃の中のモノを思い切りぶちまけた。
 顔を埋めた状態で。

「仕方ないのう。ワシの言う事を聞かんからそうなるのだ」

 ギンは木陰で倒れたまま、ナナシに言った。
 その姿を見て、ナナシは深く深くため息をついた。


《続く》


 土地魂に関しては次回説明するつもりデス。











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