斬るのみっ!!(7/27)PDFで表示縦書き表示RDF


大蛇妖魔と対峙するナナシ。左腕をかみ砕かれ、それでも立ち向かう…
斬るのみっ!!
作:ごん太



弐の四 大蛇、斬る!! ―2―



 蛇に睨まれた――とは、よく言ったものだ。
 冷たい光を宿す瞳は、人間、獣、妖、霊、問わず怯ませる力を持つ。

 蛇はナナシを睨み、ナナシは蛇を睨む。

「人の身にしては随分やりおるのう。
 ただの、わらわは、もう飽きたのじゃ。食われてくれんかえ?」

 蛇の言葉にナナシは口もとを緩めた。

「お前に“ヤツ”を倒す力があるなら、食われてやってもいいがな」

 話終えると傷付いた左腕をかばうでもなく、勢いよく襲いかかった。
 蛇もそれに合わせるように顎を開く。
 距離は詰まるが、ナナシは蛇の顎を避けようともせず、いっそう速く駆ける。

『どうする気だ!』

「斬るのみっ!!」

 右片手に構えた刀を振りかぶると、まるで薪割りでもするように力まかせに振り下ろす。
 刃は柔らかいモノを斬るように、蛇の上顎にめり込む。
 だが、やはり片手の力では斬り抜けるハズもない。

「残念だったの?左も使わねば無理じゃろう」

 嫌味を込めた蛇の言葉に、鼻で笑い応える。

 骨を砕かれた左腕を刀の背に乗せ、グッと体重をかけた。
 体重の乗った刃はズブリズブリと蛇の皮膚にめり込み、ついには上顎を斬り裂いた。

「キサマーー!」

 自身の舌のように上顎を斬り裂かれ、怒りをあらわにし、全身をうならせ突進してきた。

『ヌシ、無策にもほどがあるぞ!どっ、どうするのだ!?』

 大蛇の突進にさすがのギンもうろたえる。

 焦るギンとは対照に、ナナシは死を覚悟しているように落ち着いた表情。

 ゆっくり、閉じられた左目を開ける。
 同時にナナシの全身を黒い影が包みはじめた。

 その左目は黒目以外は真っ赤、血のように深紅。

「ギン、遠くへ、逃げろ」

 ナナシは刀は投げ捨てると、蛇の前に歩きはじめた。
 人の姿に戻ったギンは、急いで後ろに隠れる。

「ほっほっ。面白い芸じゃの」

 まがまがしい力の波動に突進を止めていた蛇は、軽く笑い、顎を開き襲いかかる。

 両腕は変形し、人のそれとはまるで違う形容をしている。


 それは、黒い、ただただ黒い獣の爪――


 単純に爪を右から左に払った。
 振り払った事で発生した空気の衝撃が蛇を襲う。

 蛇は悲鳴を上げる間もなく首を跳ね飛ばされ、一瞬で絶命した。


 しんと、静まる――


 我に返ったギンはナナシに駆け寄る。

「ナナシ!」

 ナナシはギンに笑いかけると、その場に崩れた。

――――――

 ナナシが目を開けたのは、あれから1週間が経った後。

 左目は閉じられ、両腕は人間のそれに戻っていた。

「……?」

 そこは、芳の家。

 ナナシは、己の体に乗る別の体重に目を開ける。

「……ギン、か」

 胸の辺りに頭を乗せ、すぅすぅと寝息を立てていた。

 銀色の透き通るような髪に触れると、それに気付きギンは目を開けた。

「ナナシ、起きたか…」

 眠たそうにしながら、優しく笑う。

「…“取り込まれ”なかったか」

 右手で左目まぶたを撫でる。

「ナナシ、“それ”は使うなと言ったハズだ。力に飲まれたら……ヌシを、殺さねばならん」

 ナナシは体を起こすと、寂しそうな表情でうつむくギンの頭をクシャクシャやる。

「こ、こら!ガキ扱いするでない!」

――――――

「ナナシ様!よかった、起きられたのですね!」

 家に帰るなり、芳は隣家にまで聞こえるほどに声を上げた。

「あぁ、芳が看病を?」

「ギン様にも手伝って頂きましたよ」

 ギンは腕を組み、鼻を鳴らした。

「そうだ!感謝するのだぞ?」

「へいへい」

 2人を見ると、芳はクスクス笑う。

「さ、今日はご馳走にしますよ!ギン様、手伝って下さいな」

「おう!まかせろ!」

 2人は楽しそうにしながら、台所へ向かった。

――――――

「本当に行かれるので?」

 翌日、2人は朝早く町を出る事にした。

「探しモノがあるんでね」

「探し、モノ?」

 芳の質問に頭をかき小さく笑うと、歩き出した。
 ギンは軽く手を振るとナナシに駆け寄る。

「ナナシ様、ご無事で!」

 2人の背中を見つめ、祈るように手を組んだ。


《続く》


 蛇は「管」と言う呼称があったのですが、すっかり忘れていました。 ナナシの左目や“ヤツ”など、いろいろ出てきましたが、対して深い伏線ではなく、よくある感じのモノです。 面白いカモと感じた方、感想なり評価なりメッセージなり催促なり下さると幸いデス。











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