斬るのみっ!!(21/27)PDFで表示縦書き表示RDF


 都に訪れた2人の、つかの間の凪説。       都篇の間は平和続きなので、幕あいとほぼ同じ扱いです。
斬るのみっ!!
作:高田高



六のニ 師範、楓



 土地が枯れ腐り
 水は汚れ濁り
 風は冷たく凍える

 人の心に闇を生む
 人の心は餓える
 人の心が錆び付く

 負は寄せ集まり
 負は大きく固まり
 負は流れ出す

 獣は血を求める
 獣は肉を求める
 獣は負に染まる

 妖とは獣なり
 妖とは人なり
 妖とは負なり

 負を滅す事、すなわち
 妖を滅す事なり

     ◆

 楓は書物を読み終えると、目を閉じた。
 その姿にギンが問う。

「わかった、か?」

 楓は、首を横に振る。

「だろうな。簡単に言えば元凶となる“負”をなんとかすれば、恐らく…」

 ギンが言い終わる前に、部屋のふすまが、すぱんっと勢いよく開く。
 そこには青年が立っていた。

「師範!戻っていらしたのなら、道場にも顔を出して下さいよ!」

 青年の言葉に、ギンが首を傾げる。

「師範……?あぁ、楓の事か」

「三郎……いや、太郎だったか?私はもうあそこは辞めた身だぞ?」

 楓の言葉に、青年は少し寂しそうにうつむく。

「あの、圭太です…」


 圭太けいた
 歳は十五
 身長は五尺四寸と、かなり小柄。
 剣術一直線の剣術バカ。


「そうか、圭太だったか。先生は元気か?と言ってもここを出たのは三ヶ月ほど前だし、な」

 その話に真吾が割って入る。

「楓さん!みんなあなたの帰りを待っているんですよ!?」

 楓は少し困ったような表情をする。
 それを見ていたギンは、少し寂しそうな表情を浮かべた。

「楓、ヌシはやはりここに残るべきだ。皆に心配かけていてはいかんぞ?」

 楓はギンに近付くと、優しく抱きしめる。

「私はお前を一人にはしない。大丈夫、皆わかってくれるさ」

 頭を撫で、微笑んで見せると、ギンもつられるように笑い返した。

――――――

 楓は道場に向かう事にした。
 圭太の言う事もあったが、やはり少し懐かしさもあるからだ。

 ちなみにギンは一人残り、境内にある、陽の一番あたる場所でひなたぼっこをしている。

 ――大黒剣術道場

 大黒だいこくと言う剣豪の開いた道場で、楓は通いはじめて2年足らずで、道場主を打ち負かした。 楓は百年、千年に一度の剣術の才能の持ち主だったわけだ。

 道場内からは、活気溢れる声が響いていた。
 楓が道場に入るなり、その姿を見つけ、20人ほどの生徒達が、10人2列で並ぶ。
 その光景に、楓は苦笑いを浮かべた。

「あ、あの、皆稽古に戻ってくれ」

 楓の一言で、全員が稽古に戻る。
 それを楓の横で見ていた圭太は、少し興奮していた。

「スゴイです、師範!たった一言でみんな従うなんて!」

 圭太が驚くのには理由があった。
 その日稽古に集まっていたのは、段位を持つ熟練者ばかり。
 普段、教えるばかりの段位所持者は、週に数回集まり熟練者のみで稽古を行う。

 ちなみに、落ちぶれ宗蔵も、一応は段位所持者ではあった。

「スゴイ?何言ってる、私などまだまだだ!私以上の達人、何万といる」

 圭太の興奮を冷ますように、楓は鼻で笑った。

「師範がいつも言っていた、志郎様の剣、是非見てみたいものですが…」

 その言葉に、楓はうなづいた。
 圭太はもちろん、志郎が妖魔になってしまった事など知るハズもない。

     ◆

 楓は、その場の流れで稽古に付き合うハメになってしまった。

 武器は竹刀。
 木刀だと、楓の攻撃をまともに受けた場合、骨を砕きかねないと言う理由からだ。

 対する相手は、怪力自慢の筋肉ダルマ。
 例によって、楓は相手の名前をサッパリ覚えていない。
 身長は真吾と同程度のため、少し見上げる位置に相手の顔がある。

 じりじりと近寄る両者。

 先に仕掛けたのは相手。 上段に構え、楓の頭部を狙って打ち込む。
 しかし、楓の太刀は一瞬速く、相手の左手首を軽く打ち、竹刀を落とさせ、あっさり終わらせた。

「つ、次は自分と手合わせをお願いします!」

 現れたのは圭太。
 竹刀を握る手が少し震えている。

「大丈夫か?」

 楓の言葉に緊張しているのか、無言でうなづく。

 構えると、圭太の竹刀を上からの一振りで叩き落とし、近付きざまに、胴を打ち込んだ。

 一瞬の出来事に圭太は呆然としていた。

 ちなみに圭太は段位所持者ではなく、頼み込んで今日の昼稽古に参加している。

「圭太?」

 楓の声にようやく我に返ると、肩を落とした。

「師範やっぱり強いです。さすが、鬼斬りと呼ばれるだけありますね」

 圭太の言葉に、楓の眉がピクリと跳ねた。

「そのあだ名、誰から聞いた?」

「え、あ、あの、しゅ、宗蔵さんに…」

 その名を聞くと、体中に力が入り、竹刀の両端を掴みギリギリと反らせはじめた。

「あの毛玉男、次に会ったら……!」

 ミシッと音を立て、竹刀の刀身部分をへし折る。
 その音に、生徒達が振り向くが、気付かなかった事を装い稽古を再開した。

 楓に鬼斬りと呼ぶのは禁句、と言うのをその日はじめて知った圭太であった。


《続く》


 作中に書いてありませんが、過去話から1話までは2、3年経ってます。   楓は18、9歳くらいになってる計算。      キャラクター設定に関しても、書かれていないモノが結構あります。     説明臭い文が増えるのを防ぐためですが、逆に読み手に対して不親切になっているカモ?        宗蔵、真吾、圭太は完全にノリで登場させたので、都篇終了とともに消滅するでしょう。











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