斬るのみっ!!(16/27)PDFで表示縦書き表示RDF


 家族の仇である妖魔と対峙する志郎ナナシ。 その頃、ギンは……
斬るのみっ!!
作:ごん太



四のニ 妖魔、斬る!! ―2―



 廃坑内に響く足音。
 ギンは、志郎が戦っているであろう巨大空間に向かい走っていた。

「あのバカモノ!勝手な事ばかり言いおって!」

 目に涙を溜め、荒く息をしながら、それでも走る足を休ませる事はなかった。

     ◆

 別れ道に差し掛かる。
 ギンは志郎に手を引かれていたため、どちらを通ったかサッパリ覚えていない。

 落ちていた錆びた刀を拾うと、地面に逆さまに立て、柄に指を置く。

「さあ、どっちだ?」

 指を離すと、刀は左の通路側に倒れた。

「左……」

 ギンは刀の示す左通路へ向かった。

     ◆

 それからすぐ、狭い空間にたどり着く。

「右だったか…」

 岩壁には何か彫られた後がある。
 近付いて目をこらす。

『く・い・た・い』

 食いたい。
 炭坑夫が飢餓に苦しんで刻んだのか、それにしては力強く壁深くまでえぐられている。

「よくわからんな。とりあえず今はナナシ……いや、志郎だったな。志郎のところへ行かねば」

 そこを出ると別れ道へ急いだ。

――――――

 妖魔は左腕を肘辺りから斬り落とされ、しかしなお口もとはニヤついている。 対する志郎は、腹部に一寸ほどの穴が横並びに3ヶ所空き、大量に出血している。

「そろそろ限界かい?結構楽しかったぜ?兄ちゃん!」

 逃れられない死を感じた瞬間、体内の血液が沸騰する感覚が伝わる。

 妖魔は、口を三日月のようにさせ笑い声を響かせた。

「やっぱりだ!兄ちゃんもオイラと同じだよ!
 刀を持ち、人を斬り、その悲鳴を浴びる!サイコーの快感を感じるんだろ!?」

 ふいに襲う空気の衝撃に上に高く跳ぶ。

「オイラとした事が、やっちまったぜ!」

 地面に立つ生物全般に言える弱点、上空に飛んだ場合大きく軌道を変えられない。

 妖魔に追撃の衝撃が襲いかかる。
 それを右爪で払い落とすが、衝撃の強さで爪に亀裂が走る。

 着地すると、左膝を付き顔を上げる。

「兄ちゃん、あんたオイラ以上の妖魔に“なれる”よ!」

 志郎はゆっくり歩いた。 その姿には恐れも、憎しみも、怒りすらもない。

 妖魔は立ち上がると、詰め寄り右爪を払う。
 左腕に当たるが、弾かれた。
 皮膚は妖魔のように硬質化していた。

 弾かれてよろける妖魔に、左爪を振り下ろす。
 横に跳び避けるが、体制を崩し倒れる。

 右足に目を向けると、ふともも辺りから下がなくなっていた。

「……つ、強えぇ」

 顔を上げると、志郎の左手には妖魔の右足が握られていた。
 それをゴミでも捨てるように妖魔の前に放る。

「…こんな、もんかよ」

 志郎は小さくつぶやくと、右爪を横に薙ぎ払う。

 悲鳴も、斬る音も、何もなく妖魔の首が跳ね飛ばされる。

 宙を舞、地面に落ちる。 そこには、ギンが立っていた。

 足もとに転がる狼の首に視線を落とす。

「………志郎」

 ギンの言葉に振り返る。

 両目は紅く染まり、両腕の黒色は全身を侵食していた。
 首の根本から上は、なんとか侵食を防いでいる。

「……ギン、チカラってのをはじめて感じた。
 みなぎる…押さえ切れない衝動が、体中に流れる!!」

 志郎の言葉に、ギンは後ずさりした。
 目の前にいるのは志郎であった“妖魔”。

「ヌシ、力に飲まれおったな…!」

 ギンは両腕に霊子を集め刃を形作る。

「俺を、殺すのか?」

 ギンは唇を噛み締め、駆け出そうとした。
 大気がわずかに揺れ、目の前に志郎が立つ。

「ギン…」

 志郎は優しく笑うと、いつものように頭を撫でる。

「志郎、ヌシ…」

 正気に戻ったのかと、顔を上げたが志郎の目は紅く輝いていた。

「妖魔を殺し、世を地獄に変えた人を殺し、楓とギンと3人で平和に暮らそう」

 優しげな表情とは逆に、全身を覆う気は黒くまがまがしい。

 撫でる手を払うと、後ろに跳び両腕の刃をバツ字に構える。

「ギン、そんなに俺を殺したいか?」

 ギンは、目か止めどなく涙を流す。

「殺したくなど、ない!ワシはヌシを殺したくない!しかし、このままではヤツのようになってしまう!」

 地面に転がる狼の首に一瞬目をやる。

 その瞬間、志郎はギンの背後に回り込む。
 ギンの肩に手を置く。

「…掃除が終わったら、また会おう。それまで、死ぬんじゃないぞ」

 ギンの頭を軽くポンポンとやると、走り去った。

 その場に崩れるようにヘタリ込むと、涙がボロボロ流れ落ち、地面を濡らしていく。

「行くな、ナナシ……ワシを置いて、行くな…」

 つぶやくように、ナナシの名前を呼び続けた。



斬るのみっ!! 第1部


    ―完―


 第1部終わりました。 壁に刻まれた文字『食いたい』は狼ヤローが刻んだモノですが、人を食いたい、妖魔を食いたい、人を殺したい、妖魔を殺したい、意味は様々です。      どう思ったかは皆様におまかせします。それと狼ヤローも元々は人間です。 ネタバレです。     追記・感想BOXが空っぽなので、我こそは(?)と言う方はテキトーに感想下さい。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう