斬るのみっ!!(14/27)PDFで表示縦書き表示RDF


 幕あいは、劇と劇の合間の事です。 今回のは余興だと思って下さい。
斬るのみっ!!
作:ごん太



幕あい 向かうは死地



 話を聞き終えると、2人は黙り込む。
 ただ、焚火のパチパチと言う、熱で木の枝が爆ぜる音が響く。

「…ヌシ、妹がおったのか。聞いてなかったぞ」

「あぁ、言ってなかったからな」

「生きて、おるのか?」

 ナナシは目を閉じると、うつむく。

「…死体は、なかった。都に逃げたと思う」

「妹を探さないでいいのか?たった一人の家族であろう」

 そうは言ったものの、ギンにはナナシの気持ちはわかっていた。
 今すぐにでも妹を探し出したい思いと、しかし、両親を殺した妖魔をすぐにでも斬りたいと言う思い。

「すまぬ、酷な事を言ってしまったな」

「……いや」

 その後、2人は言葉を交わす事なく夜を明かした。

――――――

 朝もやが草原を包み込む頃、ギンは夢心地のまま寝言をもらしていた。

「こら、ナナシ。止めぬか、くすぐったいぞ!」

 ギンは体中をざらついたモノで舐められる感覚にピクリとさせた。

「舐めるな、バカ。ヌシは犬っコロか?」

 着物をはだけ、肌を直接舐める気持ち悪い感覚。

 ギンはその感覚に目を開けると、自分に覆い被さるように重なる、人間ほどの大きさの野犬が目に映った。

「ぎゃーー!犬ーー!」

「うおっ!?」

 ギンの悲鳴にナナシは跳び起きる。

「ギン!うおっ!!」

 ギンと野犬が絡み合っている姿に、再び驚きの声を上げる。

「コイツを退かせ!殺してくれる!」

 ナナシは薪として使うハズだった木を野犬に放る。 目もとに当たり、キャンと高い声を上げギンから跳び退く。

「犬コロ風情が!ワシの肌を舐めたくりおって!」

 ギンは着物を着直すと、フサフサの帯をしゅるりと巻き付ける。
 帯は、実はギンの尻尾である事は今さら言う事でもないが、それゆえか、気が極端に緩むとほどけてしまう。
 普段は更に上から霊子の帯び紐を巻くのだが、寝ている時は四散してしまうので、力を加えれば簡単にはだける。

 ギンは殺気だった目で野犬を睨むと、両腕を霊子の刃が覆う。

「おいおい、こんなヤツ相手に大袈裟だぞ」

 野犬はギンの姿に尻尾を振る。

「気に入られたみたいだな…」

 ギンは歯ぎしりを立て、野犬に近付く。
 野犬は尻尾を振りながら、勢いよく飛びついた。

 どすんと音を立て、野犬はギンを押し倒した。

「この犬コロ!」

 右刃を突き出したが、首を反らしてかわすと、右手に食いつき、ペロペロ舐めはじめた。

「なっ!?」

 刃をかわされた事に一瞬動揺するが、左刃を首に向けて払う。
 しかし、右前足で左腕を押さえ込まれた。

「コイツ!」

 端から見ていたナナシは、愛犬とじゃれ合っているような姿にあくびを一つ。

「ナナシ!なんとかせい!このままでは犬に喰われる!」

 ナナシは近寄ると、野犬の腹を思い切り蹴り飛ばした。
 衝撃で地面に倒れ込み、なんとかよろけながら立ち上がろうとしたところに再度、蹴りを入れる。
 野犬は、たまらず逃げ出した。

 ぜぃぜぃと荒く呼吸するギンに向く。

「狐は犬の種類なのか?」

「貴様!ワシを侮辱しておるな!」

 いつもと明らかに違う怒りの声に、ナナシも野犬のように逃げ出した。

――――――

 それから小1時間ほど、広い草原で追いかけっこをしていた。
 最も今はギン1人が、通常の数倍はある巨大な蝶々を追いかけている。

 ギンは幼い外見とは裏腹に、本来野山を駆ける狐ゆえか、一向に体力の衰えを見せず走りまわっていた。
 ナナシは、その姿を木陰で眺めていた。

 するとギンが近付いて来た。

「もう疲れたのか?だらしないのう」

「……俺達、何してたんだっけ?」

 2人は、うーんとうなり考えはじめたが、ナナシが急に立ち上がった。

「遊んでる場合じゃないぞ。先を進もう」

「そうだの、ここを抜ければ妖魔の巣穴はすぐだ」


 妖魔の巣穴
 集団意識を持たない妖魔にあって、わずかな数だが高い知能と仲間意識を持つ妖魔が住む場所。
 仲間と言っても助け合うわけではなく、同族意識があるだけで、殺し合う事も多い。

 ヤツが居るかどうかはわからないが、少なくとも手掛かりにはなる。


「なあ、ギン」

「……ん?」

 真剣なナナシの表情に、ギンは動きを止めた。

「妹は楓って言うんだ」

「昨日聞いた。変なヤツだのう、どうした?」

 ギンは不思議そうな表情で、ナナシの顔を覗き込む。

「いや、なんでもない」

「……?」

 そう言うと、ギンの頭をいつものように撫でた。
 ギンは頭を撫でる手を掴み、頭から下ろす。

「さ、行くぞ!」

 ギンに手を引かれナナシは歩き出した。


 憎き妖魔の待つ地へ…


《続く》


 楓の伏線は今後の展開モロバレな可能性がありますが、きっと「えっ?」って感じると思います。 まあ使い古るされた手法ですが。











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