Retrieving the Dragon of the youth
Retrieving the Dragon of the youth pt.2
パリカンツァ【Palicanza】
この国は、常日頃からモンスターの襲撃を恐れている。
巨人族の襲来。ドラゴンの飛来。はたまた吸血鬼が人にまぎれて牙を向いてくるかもしれない。
枕よりも近い位置に死が待っている。そんなものを受け入れられる人間などこの世にいない。いるわけがない。
だから決意する。自分たちの住処とモンスターを隔絶することを。
それが、人口800万都民の総意でもあった。
街外周のビルはすべて高強度コンクリートで造った要塞であり、非常に強固だ。
配備された軍隊は非常に優秀で、防刃性能の高いグローブで人食い鬼の爪を直接受け止め、高周波レーダーによって野蛮なゴブリンが背後から来ようともすぐさま対応し、地雷すら踏み潰せるブーツで墓からよみがえるゾンビの頭を生卵のように圧し潰し、厳しい訓練によって鍛えた体力と技量で、いかなるモンスターをもナイフ一本で対処できるだけの実力を備えている。
そして何より、人々を守ってくれる頼もしい存在――それは【壁】だった。
街の外をドーナツ状に囲んだそれは高さ80メートル。厚さ50メートル。
それはまるでダムのように見えなくもなかった。迫り来るモンスターをせき止める、強固な防波堤。
ドラゴンの突進にも耐えられるだけの強度を誇り、たとえ火を噴こうとも1200度の高温にも耐えられる耐火装甲を【壁】の外殻として貼り付けており、さらにその上から塗りたくられた塗料は火に触れると泡となり天然の断熱層となって火を弾く力を持っている。
まさしく、災いたるモンスターから人々を守ってくれる無敵の【壁】。平和の象徴であり、また街そのものを表すシンボルでもあった。何せこの【壁】を題材にした宣伝映画すら作られたほどだ。
モンスターをよせつけぬ鉄壁の王国。
それがこの街――パリカンツァ。
この街にも警察という組織が存在する。
モンスターがいなくとも犯罪は起こる、なぜなら、犯罪が起こるのは貧困からであり、それを生み出すのは人であり、それに巻きこまれるのもまた――人だからである。
パリカンツァ警察機構。通称【P.P.D.】
パトロールカーで街を巡回し、小金を稼ぐチンピラや銀行強盗を取り締まる。それが彼らの仕事だ。
しかしながら、昨今では警察でも取り締まりきれない不可解な殺人事件が発生しつつあった。
ひどく難解で、奇妙で、凄惨で、混沌に満ちた謎。
それはまるで、モンスターのような……。
人々は忘れかけていた恐怖を呼び戻され、再び震えつつある。
再び人は立ち上がり、真っ向から立ち向かうための特務機関を作り上げた。
今度は無機質な【壁】ではない。感情を持った人間たちによる、使命感に満ちた血潮滾る組織。
その名は【A.R.I.S.E.】
Anaiyse Research Institute of Science Experiment――科学実験分析研究所。略称アリス。
これから綴られる物語は、パリカンツァ800万都民を守るために結成された新生警察機関と、未知なる犯罪との遭遇と戦いを描いた【事件】である……。
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