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Retrieving the Dragon of the youth
Retrieving the Dragon of the youth  pt.28
 死ぬことを怖がったことはないだろうか?
 体の奥底から寒気がこみ上げて、言いようのない恐怖に怯えるときのあの気持ちを――生きていれば一度は味わうはずだ。
 親を失ったときの私が、そんな状態だった。

 友達なんていない。親戚もいない。
 あるのは、親が残した莫大な財産だけ。お札の人物画に話しかけたところで、返事をしてくれるわけもない。
 群がるのは、今まで見たこともない大人たち。『財産贈与』だの『分配』だの、面倒なことしか口に出してこない連中ばかり。

 どこにいても、何をしていてもおとずれる空虚感。私は無力で、寂しくて、誰とも本音で話せなくなっていた。
 私が心の底から語らえたのは――家族だけ。
 その家族は、私のアルバムから消え失せてもういない。
 あの火山噴火のせいで。母が――ドラゴンに取り込まれたせいで。

 暗くて淀んだ『何か』が真綿のように締め付けてくる。水を吸って、少しずつ重たくなって――私を押し潰すのだ。
 母の名前ばかりつぶやく父の世話をするのが、私の日課だった。父の目は未来を失い、過去しか見なくなっていた。
 そんな父が、私を押し倒したときは驚いたものだ。最初は何が何だか分からなくってなすがままにされていて、二度目は早く終わらないかと天井ばかり眺めていて、三度目で――今までに感じたことのない感情がふつふつと湧いてき始めたのを覚えている。

 肌を舌先で転がされるたびに、自分でも出したことのない声が出た。
 揉みしだかれるたびに、自分の脳が甘い蜜で蕩けていくのを感じた。
 父に蜜壺を掻き回される度に、嬌態を曝してよがり狂う自分がいた。

 父と裸で舐め合っている間だけ、全てを忘れられた。暗くて淀んだ『何か』のことも。
 気持ち良くって、途中で色んなことがどうでも良くなってた。
 もっと欲しい。もっといっぱい熱いの注いで。もっとぐちゃぐちゃにしてちょうだい。
 めんどくさいことも嫌なことも、全部忘れさせて。

 それだけでいい。それしかいらない。
 だから終わらないで……。


 その願いが叶えられることはついになかった……。
 衰弱に勝てなかった父。もう私には、誰も残っていない。

 再びおとずれる、暗くて淀んだ『何か』
 違う。やってきたんじゃない。私がずっと見ないふりをしていただけなんだ。

 だから気づいた。分かってしまった。この『何か』の正体を。
 これは――闇だ。
 命を蝕む、暗くて重くて痛くて苦しい闇の黒。
 それが私を締め付ける。

 ああ、私死のうかな……。
 そう思っていた私は気づいてしまう。

 自分の物と異なる心音に。
 私の中に『何か』いる。闇とは違う、『何か』が。
 お腹の中に宿った命。それが私の中に宿ってる。

 …………。

 …………。

 アア、そうダ。父はまだ死んでいナい。
 まだ『ココ』にいルじゃなイ。

 笑いがこみ上げてくる。こんなに楽しいのはいつぶりだろう。
 あのときの感覚だ。父とベッドで思いにふけっていたときに感じた――背徳的で刺激に満ちた開放感。

 これは光だ。太陽のような、強くてまぶしい輝き。
 私の中で太陽が、命が渦巻いていく。
 闇を蹴散らす清い光で私の全てが満たされていくのを感じていた。体も、心も、何もかもが。


 その光は、闇と同じくらい黒くて淀んだ色をしていた……。



 さあ、愛しい子。
 もっと育って。もっと歩いて。
 いくらでも可愛がってあげるから。私にはもう、貴方しかいないのだから。


 いっぱい食べて大きくなって――私の孤独を、喰らい尽くせ。
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