Retrieving the Dragon of the youth
Retrieving the Dragon of the youth pt.1
1 名前:1さん。 投稿日:10/30 20:59 ID:keyaBsqA
お尋ねしたいことがあるんです。
自殺したいんですけど、どこがいいですか?
2 名前:86 投稿日:10/30 21:00 ID:DCDwrdr5Y
↑森がいいですよ。
3 名前:NoName 投稿日:10/30 21:02 ID:GlLh3vSM
死ぬってどんな気分?
4 名前:死神さん 投稿日:10/30 21:03 ID:y.S0K8UU
3>痛かったー(笑)
5 名前:いっちー。 投稿日:10/30 21:03 ID:TwyW0ght
↑それウケルwww
キーボードの上で踊る十の指。
たからたからか。叩く音。
狭い個室。
壁紙にはうっすらとカビが浮かんでいて、床には埃と髪の毛が這いつくばっている。
脱ぎ散らかされた服や、ビニール袋に無理やり詰めこまれたカップ麺の空容器。
本棚にびっしりと埋め尽くされた書物と熱を帯びているパソコンが、家主の閉鎖的な趣味を垣間見せる。
それはまさしく、絵に描いたような一人暮らしの部屋だった。
たからたからか。キーボードをさらに叩いて、自分の心を世界中に発信していく。
12 名前:マイロ 投稿日:10/30 21:11 ID:lGe35tPa
生きてるのに疲れた。
実際疲れた、と彼は思う。
死ぬ気など毛頭ないが。
ただ退屈だ。
碁盤のようにそろえられた高層ビル群。夜闇をかき消すネオン。水道電気の管理が行き届いたライフライン。魔法技術によってほとんどの病気は撲滅され、悠々自適の生活が保証されている。
これは何だ? 男は思う。
男は狩人だった。【元】狩人だった。
村へおもむいては、人を襲うモンスターを狩ったり、財宝のために人里はなれた奥地へ冒険に行ったこともあった。その身一つでドラゴンをしとめたことすらあって、酒場では必ずこの武勇譚を話すのが彼の日課だ。
昔は良かった。毎日森へ駆け出し、親父からもらった剣を振るってモンスターを駆り、皮を剥いで衣服にし、骨を使って舟を作り、肉を使ってまた新しいモンスターを駆って……。
それが今では――ネット通販で欲しいものは何でも手に入るし、服なんて、一度袖を通したら捨ててしまう罰当たりなやつまでいるくらいだ。昔は寒い冬を着回ししながら過ごしてきたというのに……。
冒険などない、あの刺激的な毎日は帰ってこない。
あの壁が――この街を取り囲む分厚い【壁】が人間とモンスターを隔て、人間に至極の平和をもたらしているのだから。
もうモンスターを狩ることは出来ない。街の人のために夜も寝ず番をする日は来ない。あの刺激的な日々は――もう二度と帰って来ないのだ。
何が平和だ。何が安全だ。
そんな恩恵と引き換えに、人間はもっとも大事な者を失ったのではないのか?
何より悔しいのは――
空になった胃袋が苦情を訴えてくるのを感じて、男は重い腰を上げて家を出る。深夜帯だが、コンビニならこの時間でも開いているはずだ。手術のせいでうまく動かない足をひきずりながら夜闇を歩く。
何より悔しいのは――自分自身が恩恵にあやからないと生きていけないという事実だった……。
「ありがとうございました」
やる気のない店員が温めたばかりの弁当を渡してくるので、男をそれを無造作に受け取る。
ふらりふらりと覇気のない足取りでコンビニを出ると、星空のまたたきが見えた。もっとも、夜にもかかわらず光をさんさんと振り撒く忌々しいビルの光のせいで、星などほとんど見えなかったが。
その空の向こうに見えるのは――【壁】
まるで山のようにそびえ立つ巨大な【壁】だ。
円状に街を取り囲み、モンスターから人々を守るための【壁】
それが男の目にはひどく醜く、そして憎らしいものに見えてたまらなかった。
いっそ壊れてしまえばいいのだ。そうすればモンスターがよだれをたらして人々に殺到することだろう。綺麗に飾られたブティックのショーウィンドウを蹴散らし、洗車されたばかりの自動車をひっくり返し、手当たり次第にオブジェをひっくり返して――まるで暴徒がやって来たかのように街は騒然とするはずだ。ざまあみろ。
モンスターさえいれば、それだけで人生が楽しくなるというのに……。
「……?」
ふと、男は足を止めた。
振り返ってみると、見慣れた寂れた道が続いているだけだった。舗道が黒い鏡となって、信号の光を鈍く照り返している。
このあたりは男が数年の時間を過ごした場所だ。迷うわけがないし、目隠しをしたってアパートにつける自信がある。
だからこそ、感じていたのかもしれない。
――何かいる、と。
目つきを鋭くさせて、男は辺りを見回した。それはまるで、森に潜んだモンスターを嗅ぎわける戦士の目にも似ていた。
そこらの悪ガキが盗み強盗をしているというのならそれでもいい。こちらには、盗まれて困るものなどさしてない。
けど、だけど――男は確かに感じ取っていた。
気配とも殺気ともつかぬ、人間じゃない――人間にはない【何か】を。
「――っ!?」
聞こえた。
吐息の音。
ひどく不吉で陰気な匂いすら漂ってきそうな、そんな吐息だった。
確かに何かいる。そこにいるのだ。
反射的に、男は腰に手を伸ばす。しかし、昔なら肌身離さずつけていた剣も無ければ、投げナイフすらない。今の男は完全な丸腰だった。
あたりを包み込むのは静寂。真夜中であるとはいえ、それはあまりにも不自然な静けさだった。
濡れた闇が辺りを包み、侵食していく。
夜明け前にもかかわらず、空は歪んだ黒とともに笑い出す。
見慣れた町並みが、異質な空間に変わっていくかのようだった。
いったい誰がいるんだ? いや――【何】がいるんだ?
吐息が聞こえてくる。とても荒い。それもそのはずだ。それは男の口から出ているのだから。
手が震えている。それに足も。
大丈夫だ。大丈夫だ。男は必死に自分を抑えこむ。あの時だって自分はドラゴンを狩れたじゃないか。
だがあれは現役のときだ、ともう一人の自分が訴えてくる。果たして今の自分にそこまでの動きが出来るか? こんなたるみきった体で何が出来る? それにここには、武器になりそうなものなんて何も無いじゃないか……。
戸惑いはあせりになり、あせりは緊張になり、緊張は恐怖になり、やがてその恐怖が全身に――
聞こえた。
吐息の音。
はっきりと。
――男の後ろから。
「―――――っ!!?」
勢いよく男は振り向く! そして覚悟した。
静寂。
「…………」
男の顔を拭きぬける冷たい風。それは吐息のように感じられなくもなかった。
後ろには何も無かったし、誰もいなかった。だだ見慣れた道路が広がっているだけ。何年も見てきたさびれた町並みだった。
思わず、男の口から笑みがこぼれる。
なんだ馬鹿馬鹿しい。ただの一人相撲じゃないか。
この街には【壁】があるのだ。モンスターが入れるわけがない。さっさとアパートに帰って弁当を食おう。
男はきびすを返して振り返る――
瞬間、生暖かい吐息が男の顔面にかぶさった。
いた。モンスターが。
男の目の前に。
「――っ!?」
男は戸惑う。突発的な出来事にからだがうまく動かないでいる。
トラブルに慣れていたはずだが、それに対処するには彼の【休暇】はあまりにも長過ぎた。
とどのつまりそれが――彼の【敗因】だった。
醜く爛れた顔が男の視界を奪い、濁った双眸から放つ眼光が男の視線にからみつく。
何だこれは。何だお前は。何でモンスターが街の中に――
たくさんの疑問が一瞬の間に男の中で湧いては消え、喉元を噛みつかれた瞬間にすべての思考が真っ白に塗り潰されてしまう。
自分の悲鳴と、自分の肉が食い千切られる音が、男の最後の記憶だった……。
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