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変容

作者: a


 ある、一つのデータが有った。

 そのデータは地球から、電波に乗せて発信された物であり、月にある基地へと送られるはずであったのだが、送受信を行う装置に不具合が有り、しっかりと受け取る事が出来なかった。月に向かった情報が乗った電波は、そのまま遠く遠く、暗黒の宇宙空間を飛んで行く事となる。

 それからは、しばらく長い年月が掛かる。太陽系を越えて、オールトの雲を越えて、天の川銀河を越えて、徐々に電波の品質が落ちながらも、飛び続けて行った。

 飛び続けて、長い時が経った頃。

 劣化に劣化を重ね、殆どの情報が失われてしまっていたそのデータを、地球から遠く離れた場所に住む、ある宇宙人たちがキャッチする。彼らは未知の生命体からの情報であると言う事に、驚き、興奮し、そして期待を持った。一体、何が記されているのだろう、と。

 彼らが解読した結果、そのデータには一種の競技―――彼らはそれらを読んで『競技』だと思った―――のルールが記されている事に気付く。

 所々が欠落している物の、大よその内容は理解出来た。具体的な競技の流れ。人数の問題。ルールと反則。それらを十分に理解した後、彼らは実際に行って見る事にした。

 すると、これが思っていたよりも楽しく、また熱くなれる競技だった。初めは数人単位で行っていた物だったが、やがて人気が出ると共に、十数人単位になり、その次はチームを作り競い合う様になり、そして何時の間にか、国家間で行われる、途轍もなく人気があり、全国民が行う競技となっていた。


 また、長い時の後。

 その惑星の全国民は今、大きな熱狂の渦にある。理由は一つ。遠い惑星から、一人の『地球人』が訪問した為だ。もう少し正確に言うと、今彼らの国民的なスポーツを生み出した『地球人』であるからこそ、その惑星に居た彼らは熱狂していたのだ。

 今この惑星には、このスポーツを考え出した生命体の末裔、『地球人』が居る。その事実だけで、彼らは熱狂出来た。

 つまり、それだけそのスポーツが、彼らにとって大きな意味を持つ事を、意味していた。


 だが、当の地球人は嬉しさを覚えながらも、若干困惑していた。

 確かに、嬉しさはある。地球で発生した一つの文化が、偶然に偶然が重なって、今こうして、他の存在が行っている事に。それも、独自の考え方に基づいて、判定機器なども取り入れている。

 だが、どうにも困惑してしまう。

 地球で生まれた『達磨さんが転んだ』と言う遊びが、まさか競技の一つ、しかも全世界の国民が行われる様になっている、と言う事実は。



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