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#17 ◆クリスマスの話

 12月25日はクリスマスであると同時に冬休みの初日でもあるのです!

 ゆえにぬくぬく寝てようと思いましたが、お昼にゆずちーの家に行くつもりなので迂闊に寝過ごさないように起きることにしました。

 昨日、24日は家族でクリスマスパーティをしました。イチゴの乗ったショートケーキを始めとしたご馳走の数々に囲まれながらみんなでレンタルしてきたDVDの映画を見て結構楽しかったよ!

 今日は今日でゆずちーの家に集まってパーティ予定です! パーティの後は家族そろってお出掛けの予定!


「はっ!? ということはあたしにはサンタさんがプレゼントを持ってきてくれているはず!!」


 枕元にある小さな袋、これがきっとあたし宛てのプレゼントに違いないねっ! もう1つ、ベッドのすぐ横に寝袋並の大きさがある大っきな袋があるけど、あれは違うと思います。


 今年のプレゼントは、白熊の飾りがついたオルゴールでした! やったね! 小物を入れるスペースもあるのでこれは便利!! ゼンマイを巻いてオルゴールの音を楽しみつつ、巨大な袋に目を向ける。


「……どうするべきでしょうか! こんなとき我が家にゆずちーがいれば!!」


 今は一家に一台ゆずちーが欲しい時代なんです! この際くーちゃんでも我慢しますよ?

 でも、ないものは仕方がないので自分でなんとかするしかありません。


「覚悟を決めましょうみっちゃん。いくらなんでも死ぬことはないはず」


 巨大な袋を足でちょんっと触れてみたら、ピクッと袋が震えました。……うん、開けましょう。そうしましょう。


「海々ちゃんへのプレゼントはこの私です! さあ、私を食べて~♪」


 予想通りに姉らしき人が詰まっていたので飛び出してくる前に袋を閉じて、部屋を出ました。


「ああ、海々ちゃんそんなつれない態度をとらな――」

「パーティはお昼からだし、まずは朝ごはんだよねっ!」


 聞こえてきた声を自らの声で上書きしました。いえ、声なんて聞こえませんでした。この部屋にいたのはあたしだけなんです。というわけであらゆる現象を無視すると心に決め、部屋のドアをパタンと力いっぱい閉めてポンポン階段を下りてリビングへ。


「おはよう海々、海深を見なかった?」

「お姉ちゃんならまだ夢の中だと思います。そんなことよりもお母さん、ごはんだよごはん! 朝食を食べないと1日を過ごすためのパワーが得られないんですよっ!」

「昨日の残りものならすぐに出せるけどそれでいい?」

「よきにはからえ」

「はいはいお姫様」


 残り物と言われているのにお寿司とか出てくるとちょっぴり幸せになれる気がします。

 ご飯を食べて支度をして待つ、待つ、待、てない。ちょっと早いけどもう行きましょう。お姉ちゃんが袋から出てくる前に!!


「海々ちゃん行ってらっしゃい」

「お姉ちゃんも早くご飯食べた方がいいと思います。行ってきます」


 袋の中から聞こえた声に律儀に返事をしてからブーツを履いて出発。嫌になるほど積もりまくっている雪をギシギシ踏みしめゆずちーハウスへ。


「みっちゃんだな。合言葉を言いたまえ」

「プリチーゆずちー!」


 インターフォンに向かって適当に叫んだらゆずちーママが扉を開けてくれました。


「みっちゃん!! 玄関先で変なこと叫ばないでください……後生ですから」

「まあまあ、クリスマス気分ということで水に流したまえよ」

「なんですかそれは……もう」

「そんなことよりも見て見て。サンタクロースがあたしにくれたプレゼントだよっ! オルゴールぅ!」

「わぁ、装飾も音色も綺麗……」


 しばらく玄関でオルゴールを聴き入ってました。いいよねこの澄んだ音。オルゴールとか風鈴とかあたしは好きだねっ!


「ゆずちーはプレゼント何を貰ったの?」

「えっと、私は、その……服を頂きました。そのうちお見せできる機会もあると思います」

「ほほーそれは楽しみですね。魔法少女の変身セット」

「違いますっ!! 普通に外で着れる服ですっ!! か、勘違いしないでくださいよぉ……」


 ちなみにくーちゃんは「メリークリスマス」と言って入ってきました。くーちゃん、あたしはもっと面白い合言葉を言って欲しかったです!!


「クリスマスだぞ? 当然こういうに決まってるだろ。冬休みバンザーイとちょっと迷ったけどな」


 そもそも聖夜とか呼称されるクリスマスとは何なのか!? プレゼントが貰える日という認識だったけど、よーく考えてみると謎のイベントデーだよねっ! 世界中の子どもにプレゼントを配っているサンタクロースとは一体なにものなのかっ!


「くーちゃんはクリスマスプレ――」


 と言い掛けて前にゆずちーが言った言葉が脳裏を掠めました。このタイミングで思い出せたのは奇跡!? それとも神様からの忠告ですかねっ!?


『あ、あのねみっちゃん。くーちゃんは悪い子だからサンタクロースがきてくれてないだけなんです!』


「なんだみっちゃん? 何を言いかけたんだ?」

「プレゼント交換用のプレゼントは持ってきましたかっ!?」


 ふぅ危ないところでした。くーちゃんはサンタクロースがプレゼントをくれないことを忘れていました。


「ふっ、この私をボケボケのみっちゃんと同一視してもらっては困るな。ちゃんと持ってきてるぞ」

「あたしもちゃんと持ってきました! 買い忘れてるなんてこともありませんよーだ」

「2人とも、お昼まではまだ時間がありますけど何かしますか?」

「やはりはやく来過ぎたか……。しかしだ、うちの兄貴のサンタコスとか見てるくらいなら私は外に出るさ」

「あたしも姉の様子が不審者だったから逃げてきました」

「海深さんはいつものことだろう? うちの兄貴はたまにやらかすから困る。そして誰も止めないからアレなんだよ」

「提案なんですけど、先にプレゼント交換をするというのはどうでしょうか」


 ゆずちーからの提案を受けることにしました。プレゼントは各自1000円以下のものを事前に準備することになっています!


「あたしからのクリスマスプレゼントだよっゆずちー!」

「ありがとうございます。私はくーちゃんにプレゼントです」

「よしっ、それで私がみっちゃんだな! 全員、包装を解除して中身をおがめえええええ!」

「イエース!」


 くーちゃんからのプレゼントは何かなーっ!? こ、これは!?


「クールお菓子の詰め合わせだと思ったのに!!」

「何を期待してるんだ君はっ!」

「好き嫌いさえ把握してれば、食べ物ほど安全な贈り物はないんだよっ!」

「贈り物だろう? 食べたら消えるものじゃなくてだな、ずっと形が残るものにしないか?」


 くーちゃんからは変な形をしたコマを貰いました。これを使って新年に対戦したいという意思表示でしょうか!? コマをぶつけて遊ぶのはさすがに男の子の遊びだと思いました!


「もしかしてそれって、地球ゴマ……ですか?」

「ちきゅうごま? 何それ? 地球で作られたコマのこと? ならあたし火星ゴマが欲しいですっ! きっと空中をぶんぶん飛び回って――」

「そんな重力を無視した玩具があってたまるかっ! そんなものが実在するなら人間はとっくに宇宙に進出してるぞ!」

「すみません……火星ゴマはきっと存在してません。それはジャイロ効果を応用して作られた特殊なコマなんです」

「ジャイロだかジャイカだかジャンボだか知りませんけど、どうせ全部分かりません。コマなんでしょう? 違うの?」

「ジャイカって聞いたことあるな。何かは知らないが」

「ジャイロ効果というのは回ると安定する効果、ですね。普通のコマがまさにそうでしょう」

「じゃあ普通のコマもジャイロ効果の応用じゃないの? 何がどう違うの?」

「えっとですね……普通のコマは全体を回しますけど、地球ゴマは中だけを回すのでちょっと動作が特殊で普通のコマにはできないこと……綱渡りとか変な角度で回したりとかできるんです」


 な、なんだってー!? 後で綱渡りさせてみましょう! 人間にできないことをあっさりやれるとは地球ゴマ恐るべしだねっ!


「頭が混乱してきたからそれ以上の補足はなしの方向で頼む」

「そう……ですね。実際に使ってみるのが一番分かりやすいと思います」


 ゆずちーからくーちゃんへのプレゼントはお菓子じゃないけど安全牌なハンカチが贈られました。


「ありがとうゆずちー、大切に使わせて貰うよ」

「はい」

「ゆずちー! プレゼントはもっとこう派手にいった方がいいと思います!!」

「えっ!? ……そんなこと言われましても」

「みっちゃん。君は一体何をゆずちーにあげたんだ?」

「さあ、ゆずちー! あたしからのプレゼントをオープンするといいよっ! 盛大にねっ!」

「あけたら爆発でもするのかそれはっ!」

「さあゆずちーっ!」


 あたしからの小さなプレゼントを恐る恐る開けるゆずちー。爆発したりしないからもっと堂々と開けていいんですよっ!?


「えええええええっ!?」


 深くて青くて派手? なものです! ……ああ言った手前派手だって言っておきます。


「ちょっ、みっちゃん!? 予想外にもセンスは悪くないと思うんだがこれはどうなんだ!? 1000円とかあり得ないだろっ!!」

「青くて綺麗だよねっ! でもギリギリセーフの1000円!」

「いえ、その……嘘でしょう? 本当にこれを貰ってしまっていいんですか?」


 その「青」はあたしからゆずちーへのプレゼントなんだよっ! 貰ってくれないと困ります!


「ラピスラズリのペンダントとかもろ宝石だぞおい……」

「お姉ちゃんと一緒にインターネットのオークションで落としました! なんと500円! 送料も500円でほら1000円!」

「ダイヤモンドみたいに高いものではないとはいえ、本来なら5000円はするものだと思いますけど……」

「黙ってあたしのクリプレを受け取りなさい!」

「はいっ!!」

「……安全なお菓子はどこに行ったんだよみっちゃん」


 とまあプレゼント交換であれこれありましたけど、概ね平和にランチタイム――お昼のパーティタイムを迎えることになりました! 待ってましたー!


「おおっ、二段重ねのケーキなんて初めて見ました!!」

「友達呼んでやるだけの小さいパーティなのに金かかってるなぁ。参加費本当にいらないのか?」

「えっと……はい、お金の心配はいりません。それにこのケーキ、手作りなんです」


 チョコレートのケーキに粉砂糖で雪の演出がされています。これが……手作り? ゆずちーママは医者からお菓子屋さんに転職すべきだと思いますっ!


「というか子どもはそういうこと気にしないでいいんです」

「ホスト様が偉大すぎる……」

「ゆずちーの場合はホステスっていうんじゃないの?」

「それはあれじゃないのか? キャバクラの人だけを言うんじゃないのか?」

「そうなの?」

「分からん」


 ですよね。あたしもホストとかホステスなんてドラマでしか聞いたことありまえせんし。パソコンでホストが使われることあるみたいだけど、あたしには何のことだかさっぱりだよっ!


「ゆずちーゆずちー! これ美味しい! なんだか分からないけどこのポテトみたいの美味しい!」

「それは多分あれだ。カボチャだと思うぞ」

「カボチャ!? カボチャポテート!?」

「いえ……ポテトではなくて、カボチャをスティック上にして揚げたものです」


 フライドカボチャですと? 料理というのは奥が深いですねっ! そして思うんです。カボチャの甘さはスイーツ向けだと!!


「ところでキャバクラとキャバレーとクラブは何がどう違うの?」

「キャバレーなんて聞いたことないんだが……」

「こう言ってはなんですけど……私、たまにみっちゃんって天才なんじゃないかなって思う時あります」

「すまないゆずちー。私にはいきなり話が切り替わったようにしか思えないんだ。一体何があった?」

「私の知る限りではキャバクラというのは、キャバレーとクラブが合体してできた言葉なんです。ですから……」

「さすがゆずちー! 豆知識の宝庫だねっ!」

「さすがホステス様は本場を知ってるな」

「……いえ、深くは知りませんけど」


 と大人のお店の話をしていたら、にゅっとゆずちーママが顔を出しました。


「お前さん達酒に興味があるのか? 飲んでみるかアルコール?」

「お、お母さんっ!?」

「あたしはこの機会にチャレンジしようと思います! イエスアイキャン! ハッピークリスマス!」

「待て待て。未成年の飲酒は法律的にアウトだぞ。ばれたらもうちょっとで貰えるはずのお年玉がパアになるぞ」

「それは困るのでやめましょう! あたしはお年玉で買いたいものがあるんですっ!」

「なんだ残念だな。じゃあこっちはどうだ? このミニスカサンタコスを……」

「もうお母さんは向こうに行っていてください!!」

「譲葉が母親に冷たい。さすがは冬だ。まるで氷、肌に刺すような冷たさだ」


 将来はクリスマスパーティでお酒を飲んで騒ぐにもありだと思います。あたし達、20歳になっても友達のままですよねっ! 引っ越したりして離れ離れにならないといいなぁ。


「仕方ないお前さん達が着ないと言うのなら私が」

「歳を考えてくださいっ!」

「なんだとっ! 私はまだまだ若い!! サンタコスだろうと巫女服だろうとメイドだろうと余裕だ!」

「この際言わせてもらいますけどそういうのは見てて痛いのでやめてください!」

「ナースは別にいいだろう? 私は医者だぞ!」


 ゆずちー親子の不毛な争いが勃発しそうになっています!! これはなんとかしないと!


「ゆずちーママもキッチンにずっといないでパーティに混ざればいいと思います!」

「……譲葉、みっちゃんに免じて引き下がってやろう。それとピザが焼きあがったら混ぜて貰おうか。本日は無礼講だ! 好きに食べ、好きに飲み、好きにキャッキャウフフするがいい!!」


 気の合う仲間と集まって騒ぐのって楽しいですよねっ!


「キャッキャウフフなどするものかっ! もう絶対にするものかっ!?」


 こうやって集まれるのは一体いつまでなんでしょうかねえ。


「みっちゃん、フルーツの砂糖漬けもありますけど如何ですか?」

「フルーツ!? 砂糖!? いただきましょう!」


 大人になってもずっとずっとこうやって遊べるとあたしは嬉しいです。姉妹よりも友達だよねっ! 優先すべきは姉ではないと思いました!!


「みっちゃん、どうした? なんだか浮かない顔してるな」

「くーちゃんがキスしてくれれば治ると思います」

「平手ならいくらでもプレゼントしよう」


 午後からは家族で出掛けることになっているのでこのパーティが終われば帰らなければなりません。この楽しい宴は1時間もしないうちに終わりを迎えてしまうのです。

 どうして楽しいことはすぐに終わってしまうんですかっ! ずっとずっと続けばいいのに!


 ……お姉ちゃんがいる家に帰りたくない故の現実逃避的思考だなんてことはありませんよ? ああ、アルコールプリーズしたいです……。

 いっそのことお出掛けなんて無視してゆずちーに泊めてもらうつもりで準備しておけばよかったです!!


「フライドカボチャのおかわりをプリーズ!」


 食べなきゃやってられません! さあ、騒ぎましょう! カラオケはないんですかねっ!? 楽しい時間はいっぱいいっぱい楽しんで思い出をスーパー強化するべきなんですっ!


「カラオケならあるぞ」

「よっしゃあああああああああああ」


 みっちゃんフィーバーはじまるよーっ!


 家に帰るのが遅れてちょっぴり叱られましたが、楽しかったのでオールオッケー! クリスマスな2日間、とっても楽しかったです!!


 さあ、こーい! しんねーん!! あたしの準備は万端だよっ!

 でも冬休みは永続して欲しいと思う12月25日のあたしです。

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