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#16 金髪の話

 放課後にて。


「くーちゃん! くーちゃん! 大変だよっ! 金髪さんだよ! 金髪女子だよっ!」

「なんだみっちゃん騒がしいぞ。歩く騒音発生器は家電リサイクル法でも処分できない面倒なものなんだぞ!?」


 そもそも家電じゃないよねそれ。歩くインターネットの亜種だよねっ!?


「そんなことよりも金髪の人をみたんですっ! この中学校にそんな人がいるなんて知らなかったよ!」

「いや名前は知らなくても存在してることくらいは知ってて欲しかったな!」

「どうしてあたしは黒い髪の毛で生まれてしまったのか……!!」

「純粋に日本人だからだろ? それ以外の理由が必要なのか?」

「いやきっと探せば日本人にだって金髪、青髪、ピンク髪! 色々いるはずですっ!」

「ピンクだと……! そんなやつアニメ以外にいるわけがない!」


 あたしはアニメ以外でも見たって断言します! ゲームで見た!!


「見たことがないからって存在しないと決め付けるのはおかしいとあたしは思います!」

「……くっ、確かにその通りだ。よしっ、ゆずちーに判断を仰ごう。歩くインターネット卿は今どこにいるんだ? コンピュータ室か?」

「確かさっき図書室で図鑑見るって言ってたよ」

「行くぞみっちゃん! ゆずちー捕獲を目的とした『魔法少女は笑わない作戦』を決行する!」

「おおー!」


 そして図書室にダッシュしていたら、先生に捕まって注意されました。おう……。あたしはもうダメだ、あたしの屍を踏みつけて先に行くがよいぞ。


「みっちゃん、本当に踏みつけてもいいのなら今すぐ床で寝るがいい」

「さーてゆずちーのところに行こうか! 歩いて!」


 早歩きは走ってるうちに入りますか? 先生には見つからなかったので謎になってしまいました。


「ゆずちーこの世界に絶望していないかいっ! この世界にゆずちーの太陽はあるかいっ! 見つからなくても大丈夫! さあ、ゆずちー今すぐ金髪になるんです!」

「えっ、えっ!?」


 いきなりの言葉に驚きを通り越して、困惑しているねゆずちー! ふっふっふ、つかみはオッケーかな?


「待て待て、みっちゃん。一緒についてきた私も意味不明だぞそれは」

「そんなことよりも金髪だよゆずちー。アメリカだよっゆずちー! ユーエスエーのようにビッグに!」

「あの……みっちゃん、そのですね、金髪イコールUSAというのは安直過ぎます」

「イギリスだって金髪碧眼だしな。それに全員が金髪ってわけでもないぞ」

「分かってるよ分かってるよ2人とも! ピンクの人がいるってことだよねっ!」

「えっ!? ど、どこでピンクの人をみたんですかっ!?」


 ふっ、その反応! その驚き! どうやらゆずちーはピンク頭を見たことがあるようですね、フッフッフ。


「見てはいないけど、きっとあたしはいると思うんですっ! ゆずちーはどう思いますかっ!?」

「えっ、あっ……ええっと、その。い、いたとしてもそれは染めているだけだと思います。人間の遺伝子ではピンクや緑といった髪の人は生まれません」

「ほーら、私の言った通りだろう」

「でもでも、あたし達には現代科学という最強の武器があります。いないなら、作ってしまえ、フルカラー!」

「やめるんだみっちゃん! そんな人間社会はカオスだっ! 最凶の生体操作なんて非人道的すぎるだろう!」

「宇宙に適応するためには仕方ないんだよくーちゃん! 今の人間は地球の重力に魂を――」

「みっちゃん……それきっとアニメか何かのセリフですよね」

「髪の毛がフルカラーになれば、他のアニメ要素だってきっと現実で生まれるはずっ!」

「魔法少女ならもういるだろ目の前に。それを考慮したまえ。フルカラーにしなくてもアニメ要素はドンドン生まれてるんだよ。君が何かをする必要はないってことだ」


 一理あります。でもねくーちゃん! そこにあたしが手を貸せばもっとパラダイムシフトは加速するんだよっ!!


「あの、私の魔法少女設定はもうデフォルトですか……」

「何を言ってるんだゆずちー?」

「魔法少女と言ったらゆずちーだよね」

「ううっ……」


 ゆずちーは図鑑に顔を埋めてしまいました。


「で、みっちゃん」

「なんですかくーちゃん」

「染めるのか?」

「染めたら怒られたりするんでしょうか?」

「そりゃ先生に怒られるだろうし、海深さんは……君を掴んで離さないさ」

「よしっ、やめましょう!」

「今度からみっちゃんが何かやらかしたらすかさず海深さんの名前を出そう」

「あたしの自由を封じ込めるのは犯罪だと思います!」

「封じてはいないぞ。妨害してるだけだ」

「くーちゃん! この日本国には迷惑防止条例違反というものがあるんだよっ!」

「で? それはどういうものなんだ? 詳しく説明してくれないか?」

「えっ……ええっと……」


 ちらりとゆずちーを見るも、まだまだインターネット回線は切断されたままのようです!


「そうっ、ちょっとでも迷惑かけたら逮捕されます!」

「恐ろしいなその条例!! なんでみっちゃんは逮捕されてないんだっ!」

「あたしの前にお姉ちゃんとポンちゃんもだよっ!!」

「そこの人たち! 図書室では静かにお願いします!」

「イエスマム」

「すみません」


 図書委員と思わしき上級生の声にあたしもくーちゃんもドキッとしたね。でも終わらない止まらない。ゆずちーが復活するまでこの不毛な争いは細々と続きました。ちなみに迷惑防止条例には引っかかっていないらしくてあたし達は無事でした。


「みっちゃんはよく知らないことを適当に言わない方がいいと思います!」

「でもゆずちー! 場合よってはハッタリが有効だって、逆転が売りのゲームの中で弁護士な主人公が言ってたんです!」

「裁判ゲーだと……みっちゃんがそんな高度なゲームで遊べるはずがないっ!」


 確かにあたしの力だけじゃいつまで経っても先に進めないかもしれません! でもあたしには力強いお供がいるのです!


「攻略本があればあたしに遊べないゲームはありませんっ!」

「今時はインターネットの攻略サイトだろ常識的に考えて。攻略本とか高いだけであんまり役に立たないしな」

「そ、そんなことよりも金髪についての話をしたいとあたしは思っています」

「もういいよ、その話。会話のテーマっていうのは移り行くものだろ、金髪に拘りすぎだみっちゃん!」

「金髪じゃないみっちゃんなんてただのみっちゃんだよ!」

「それなら、金髪のみっちゃんは一体なになんですか?」

「英語のできるパーフェクトみっちゃん!」

「ないな」

「ごめんなさい……私もないと思います」


 ふ、2人とも酷いです……。


「そんなに金髪が好きならウィッグでも付けてみたらどうだ?」

「ウィッグ!? なにそれ? ヘアカラー?」

「分かりやすく言ってしまうとかつら、でしょうか? 演劇部の備品に混ざっているかもしれませんね」

「演劇部の知り合いなんてあたしには……!」


 と思っていたら、


「あー、もしもしヒメ。私だ。君って確か演劇部じゃなかったっけ? うん、そう。備品に金髪のウィッグ的なものがあったらちょっと一瞬貸して欲しいんだけど、だめか?」


 くーちゃんが突然どこかのヒメ様に電話をかけ始めました。


「ゆずちーゆずちー、くーちゃんは一体どこのおヒメ様と会話してるの?」

「多分同じクラスの姫宮さんのことだと思いますけど間違っているかもしれません」

「いや、あってるぞ。そしてオッケーが出た。体育館に行くぞみっちゃん!」

「いってらっしゃい」

「ゆずちーは? ゆずちーはこないんですか?」

「私はまだ調べものが……雑談していたせいでまったく進んでませんので」

「邪魔して悪かったよゆずちー。今度みっちゃんが何かおごるから」

「えええええええっ、あたしがゆずちーに!? さ、300円以内だと嬉しいです……」

「いいですから、そういうのは。早く体育館へどうぞ」

「私達そのまま帰るから、また明日」

「じゃあねゆずちー」

「はい、さようならまた明日」


 そしてあたしはついに念願の金髪を手にしたのです!! ありがとう姫宮さん!


「どう? 金髪はあたしに似合いますか?」

「悪いがみっちゃん。今世紀最大のミスマッチだ」


 酷いです……。くーちゃんに虐められたってお姉ちゃんに言いつけようと思いました。

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