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#15 Goddess Rebellion phase2:玩具の話

 隕石が落ちてきました。3人仲良くあの世行き。


――リセット


 月が落ちてきました。シェルターに詰め込まれましたが助かりませんでした。


――リセット


 太陽がいきなり大爆発、地球はその余波に巻き込まれて世界中が滅茶苦茶になりました。あたし? 視界が暗転しました。


――リセット


 授業中に突然地球が爆発しました。地球上の生物は全滅です。


――リセット


 大津波が発生。日本は消え去りました。他の国がどうなったのかは知りません。


――リセット、リセット、リセット、、、



「いい加減にしろバカめ! 女神がやらないのなら私が実行者を消し炭にしてくれるわっ!」


 いや、落ち着け。クールになれ。あの時のみっちゃん×くーちゃんを思い出せ。こんなことで怒るような紫光院紫ではないっ!

 私は時間関連の怪異抵抗力が高い。ゆえに世界を「上書き保存オーバーライド」されても記憶の保持が可能。そしてその結果がこの滅びの無限ループだ。いい加減精神的にまいってしまう!!

 娘の譲葉が砂糖を世界から消した時もかなりのストレスになったが今の状況はあれを上回ると言ってもいいだろう。


「譲葉。お前さんもそれなりの怪異抵抗力があるのだから、前回のことは覚えているな?」

「その、夢みたいなぼやーっとした感じでなら覚えてます。確かみっちゃんが、あたし達の戦いはこれからだっ、と言いながら怪獣に走っていって踏み潰された……はず」


 悲しそうな顔でそんなことをいう娘よりも、私の興味はみっちゃんに向かっている。

 みっちゃん。海々という名を持つ我が娘の友達。ふむ……みっちゃんとやら、お前さん相変わらず面白いな。いくら払えば私にペットなってくれるんだろうかね。

 それにしても「みみ」か。「海深」という姉がいるそうだが……「みゆ」か。「海深」なら「みみ」と読めると思ったのは私だけなのか?  どちらかの存在自体がワールドエラーじゃないことを祈っておくか。


「もう友達の死は見たくないか?」

「当たり前ですっ! そもそもこの謎の無限ループはなんなんですかっお母さん!?」

「挑戦……いや、反逆と言うべきか」

「誰に対してのどういう意味の反逆ですか……」

「譲葉。気付いているか? この現象は毎回世界を滅茶苦茶にして終わる。ただし同じ終わり方をしたことは一度もない。つまりは自然現象ではない。人為的に引き起こされた事件だ」

「えっ、じゃあ、誰かが地球を終わらせようとして……他の誰かが食い止めてるというのですか?」

「構図としてはそんな感じだが、反逆者は諦めが悪いな。恐らく無駄に長い時間をかけて念入りに準備し、生贄を用いて上位の悪魔を召喚、自らの魂と引き換えにこういうことを行っているんだろうが……怪異抵抗力が低くて記憶を保持していないのかもしれないな」


 だがしかし、それでもいい加減終わるだろう。


「何度やっても無駄だと気付くこともできないとはある意味哀れだ」

「防衛側が諦める可能性だって一応は……」

「絶対にない。この世界を延々繰り返しているのは人間ではない。超越種だ。明確に言うのであれば女神だよ」

「え? 女神様なんですか? えっ? ……神様って実在するんですか?」

「当然だろう。この世界はその女神が遊ぶためだけに作った玩具だしな」

「えっ!?」

「玩具だよ。誰かが勝手に女神の玩具を壊したら、それを女神が修理する。当然だろう? そして女神は玩具の壊し方にも興味を抱いている。だから繰り返す、次はどうやって壊すのかと繰り返す」

「さ、さいあく……最低」

「いやいや。もっと純粋なものだ。女神は、幼稚園児みたいなものだと思え。譲葉よ、壊して直す、その繰り返しに先にあるものはなんだと思う?」

「それは……」


 少しだけ考え、


「壊すことに女神様が飽きる……?」

「だろうな。もういいや、となれば必然的に世界は元通りだ。なぜなら玩具が壊れていては女神が遊べないだろう?」

「そうですけど……」

「神に挑むというのはそういうことだ。勝ち目などあるわけがないだろう」

「でも、女神様を相手にしてるつもりなんてないのでは……」

「自覚の有無などどうでもいい。私としても世界がなくなったら困る。お前さんだってみっちゃんだってくーちゃんだってそうだろう」

「そうですけど……」

「それに女神はこの世界にいるのだ。この世界で人間に扮して遊んでいる。これは世界が最終的にはしっかりリセットされることの絶対的な保証だ」


 断言できるぞ。私は女神に会ったことがあるからな。あれを会ったと言っていいのかは分からんが、まあ会話したのなら会ったと表現してもいいだろう。


「人間に扮しているのですよね? 女神様は誰なんですか?」

「知らない。私の知る限りでは日本語を話すが、神である以上言語が壁になるとは思えない」

「たまに思うんですけど、お母さんって一体何者なんですか? いろいろと知りすぎです」

「紫光院は元々神道会の巫女の家系だ。私もちょっとくらいそっちに行ってたこともあるんだよ」

「はぁ……」

「なんにせよそのうち反逆者には天罰が下る。それだけのことだ。……いい加減疲れたんだよ、早く死んでくれ女神に反逆してるバカ野郎」

「お母さん最後にぶっちゃけすぎです! 元々巫女だったというのでしたら、女神様宛てに祈り? 祈祷? 儀式? 分かりませんけど、そういうので意思を伝えてみたらどうでしょうか?」

「その手があったか!!」



 お母さんが巫女装束で舞を踊っている夢が頭から離れません……。コスプレダンサーだなんていい年して何をしているんでしょうかこの人は。……とは口が裂けてもいえません。言ったら絶対に怒るじゃないですかぁ……。

 うちのお母さんは平然と女の子のお腹を蹴るので怒らせると将来子どもが産めなくなるかも……。


 朝食をもぐもぐしつつテレビを眺めていたら、殺人事件がどうというテロップが出ていました。村木さん(31)が胸に刃物を刺された状態で発見されたとかなんとか。


 村木……むらきさん、ですか。


 手元には海外からお母さんが取り寄せた新聞らしきものがあります。中身を要約するとこんな感じです。極東の魔術師「Shinichi Muraki」が大規模な儀式を準備中になんらかの要因で心臓麻痺を起こし死亡。どういうわけか神託を受けた神道会の巫女達が速やかに偽装工作。なんとなく事情を察した魔法省に教会は「触らぬ神に祟りなし」と不干渉を決め込む。だそうです。


「これをやったのは女神様ですか?」

「だろうね。証拠など出るわけもないが」

「つまり、この村木さんが犯人だったということですか?」

「さてね。それこそ女神しか知りえないことだ。犯人だったのか、たまたま犠牲になっただけなのか。どちらにせよ、犯人による女神への反逆は失敗したわけだ」


 朝食を食べ終えてから、釈然としないまま登校して友達2人の顔を拝みました。


「なんだかよく分からないけど怪獣に踏み潰されたようなリアルな感覚があって」

「私なんてみっちゃん踏み潰した怪獣に咀嚼されて食われたんだぞ! あれは痛かった! ……と思う」

「夢の話なのに痛いとか言ってるくーちゃんをあたしは笑ってもいいんだよねっ!」

「おはようございます、みっちゃん、くーちゃん」

「おはようゆずちー」

「おうっ、おはようさん。みっちゃんは後で殴るとして」


 2人の会話はあんまりにもいつも通りすぎます。もうこの2人が酷い目に遭うこともないんですね。そう思うと嬉しくて、制御できない感情が暴走して、それで――


「なんであたしなぐら――ゆずちーどうしたの? 急に涙なんて流して!? どこか痛いのなら保健室に行きますかっ!?」

「取り敢えずハンカチだ、使いたまえ」

「あ、ありがとう……」


 友達って、いいなぁ……。


「ゆずちー、何かあったのなら相談していいんだぞ。どんな爆弾だって受け止めてやろうじゃないか」

「あたしだってそれが爆発しても耐えて見せるよゆずちー!」

「なんでもないんです、本当に……なんでも。私はただ、みっちゃんとくーちゃんにこうやって会えたことが嬉しかっただけで……」


 女神様、私はこんな日がずっとずっと続いてくれることを望みます。どうか私の祈りが、巫女の家系の娘の祈りがちゃんとしっかりと届きますように。


「よしっ、2人ともたまにはうちに泊まりにくるといい。また布団を敷いて3人一緒に寝よう!」

「おっ、いいですねっ! あたしは賛成です!」


 巫女装束を身にまとったわけでもなければ、正式な手順を踏んだわけでもありません。ですから、もしも私の祈りが届いていたとすればそれは奇跡なのかもしれません。


――Goddess Rebellion/ゴッデスリベリオン 了

次からはいつものみっちゃんのはず

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