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常識をブチ壊せ!
作:緑平和



第6話 哲多クンの訴え


恋愛の真の本質は自由である。 シェリー

ストーカー規制法というのが平成12年に公布された。
はたしてこのストーカー規制法と言うのは、今の僕を助けてくれる法になるのだろうか?
同性の人に追われていたとしても ストーカーとして罰してくれるのだろうか?
図書館で借りてきた「困った時に安心 ストーカー行為規制法の解説」という本を
講義が始まるまで 読み続けるオレに
多野は 朝から よく本読めるなぁ。と言いながら
冷めきった(たぶん 二日酔いで7割 僕の過剰な防衛に引いて3割)瞳で見る。
朝妻を無視して2日が経った。
多野が言った 朝妻はSだから逃げれば逃げるほど燃える という性格を僕は嫌ってほど知った。
食堂に行き席に座れば 朝妻が隣に座りこんでくるのはもちろん
毎回 講義が終われば どこで情報を得たのか 僕の教室廊下で待っていて 横にくっつく。
幸い 朝妻は低血圧なので午前の間と大学の門を出たら 全くついてこなく
ケイタイもアドレスや番号を教えてないので 連絡をしてこない。
つまり 大学にいる間の我慢で済むのだ。
しかし いつ こいつの家まで行ってやろうか と思い 僕の素性を調べられるかわからない。
今 朝妻のストーカー的な行動が浅いうちに なんとか仕留めなければ。
どこかの野球漫画のように 瞳に炎を入れて本を読む僕。
「お前さぁ 本当におもしろいよなぁ。」
そこまでムキにならなくてもいいのに。多野は自分のケイタイを見つめる。
そして 僕と本の間に自分のケイタイを入れ画面を見せる。
「ほら 今日の朝妻君。」
  やべっ やっぱり朝起きれないわぁ =3
  早く哲多に会いたいのに やっぱ朝は駄目だわオレ(+_+)
  いつものように 哲多の1日の講義科目教えてちョ(^^♪
宛先に朝妻と書かれたメールを読み 僕は一気に血圧を上昇させる。
「お前か 朝妻に講義課目教えてたのは!!」
朝妻が毎回廊下に立っている理由が分かった。
まさか裏切り者がここにいたとは…
大声出すな。頭響くじゃん。
多野は両手で頭を押さえて 瞳を大げさに強く瞑った。
「朝妻 本当に良い奴なんだからさぁ。仲良くして上げてよ〜梅宮君。」
「無理。絶対無理。」
本を読んでも 無駄だ。僕はパタンと本を閉じて 多野を見る。
「多野!僕 本当に悩んでるんだよ!なのに どうして多野は朝妻の味方するんだよ?僕を助けてよ!」
男のクセにウルンと瞳を濡らす。
こんな必死な訴えを聞いても 多野はヘラヘラと笑い
「いやぁ そう言われてもねぇ。」
と答えた。
たぶん 中学の頃から朝妻との仲だった多野は 朝妻のしつこさを本当によく知っているのだ。
あいつに言ったところでなぁ。
そう言って眉を緩ます多野を見て 彼を頼みの綱にしても無理だと確信する。
僕はオーバーに肩を落とす。
「梅宮 もう1回朝妻と話してみれば?このまま無視してもらちあかないと思うし 本当にお前が困ってるってこと言えば あいつも付きまとうのやめるかもよ?」
かもよ?ってやめるよ!と ここは断定で言って欲しかった。
しかし多野が言っていることも一理ある。
最初は学食しか近寄らなかったのに 昨日は講義終わりのたび来るようになったのだ。
やはり無視をしてばかりだと 朝妻の行動が過激になるだけだ。
ここは1度ガツンと言わなければいけないなぁ。
以前 食堂でガツンと言ったものの 結果は悪化したことを忘れ
僕はもう一度朝妻と話すことを決意した。

食堂で 僕に近寄って来た朝妻に声をかけると
待ち続けていたエサをもらえた犬のようにキャンキャンと喜んだ。
「ここで話そう。」
僕はそう言って誰もいない教室に入った。
「おい そんないきなり誰もいない空間だなんて」
朝妻は 照れるわぁと言い頬を赤くした。
お前が思ったことを口にする性格だから 誰もいない場所にしたんだよ。
また人前で何か変なことを言ったら 誤解が増える一方だ。
多少の怖さがあるが まだ2人きりの方が 僕の秘密を守るためには安全だ。
「でっ 話す内容って何?」
学生が大勢いる前では 必要以上に近づいていた朝妻だが
教室に入るなり 僕から離れ 空いている席に座った。
こいつ やっぱり僕が嫌がるのを楽しんでいたのか?
そう思うと 僕が今までしていた朝妻への行動は逆効果だったのだ。
無駄なことをしたな 自分。
僕は髪をくしゃくしゃとかきながら 朝妻の前に立つ。
「朝妻。何度も言うけれど お前と付き合う気は全くないんだ。だから 付きまとうのはやめてくれないか?」
朝妻の小さな瞳をしっかり見て言う。
すると朝妻は視線を外し 天井を見た。
「またぁ その話ですか?やっと話できたのにさぁ。」
両腕を伸ばし欠伸をする。
僕の訴えを受け入れる気が全くない朝妻。
多野 君が言っていた やめるかもよ?って台詞
かもよ?で正解です。
やっぱり やめてくれるわけはありませんでした。
「哲多ぁ お前さぁ オレの性格わかってる?オレは こんなこと言って止める性格じゃないの。」
多野からも聞いてないのかなぁ。朝妻は 肩に力を無くし瞳を閉じ続ける僕に言う。
「確かに お前がオレと付き合う気がないのはよく分かったけどな。」
両腕を組みうんうん。と頷く朝妻。
「分かってるけどさぁ。やっぱり諦めきれないんだよねぇ。恋は障害があってこそ 燃えるものだし。」
そうですか。
僕は口を無意味にあけて 朝妻を見る。
無視してもダメ 話してもダメ だったら 後何をすれば良いのだろうか?
朝妻と話す理由を失った僕。たぶん瞳には何の力もなく澄んでいると思う。
しかし 朝妻の瞳は生き生きとしている。いくつかの星屑が見えるほどだ。
そのキラキラな瞳で僕を見つめ
「オレ 哲多好きだしな。」
と言い にんまりと笑った。
やばいことに その笑顔に胸が揺れてしまった。
もちろん晴加の笑顔を見た時の 胸の揺れに比べたら何百分の1の揺れだが
こいつ良い顔だなと思ってしまった。しかも 自分に告白している顔にだ。
そう思ったとき 僕の瞳に少しだけ輝きが入ってしまった。
朝妻の瞳が少し細くなり切れた瞳になった。
「なぁ 哲多。お前は あれからどうなの?」
「あれからって?」
「オレ言ったじゃん。常識なんてブチ壊せって。」
食堂で言ったことを 朝妻はもう一度言う。そして更に付け加える。
「あれから常識ブチ壊せた?」
常識をブチ壊せたって…つまりは 彼女と別れたかということなのだろうか?
僕は少しだけ朝妻の言った意味を考えて答える。
「壊してない。壊す必要なんてない。」
きっぱりとそう言うと 朝妻は鼻で笑い まだかぁ と言った。
「じゃぁさ オレから壊してあげようか?お前の常識。」
はぁ 何言ってるの?こいつ。
僕がそう言おうと口を開いたと同時に 朝妻は席を立ちあがった。
そして そのまま顔を上げ 僕の顔に近づけてきた。
これってもしかして こいつ僕にキ…
そう思った時 すでに遅し。
朝妻の鼻が自分の鼻に触れた時 僕は無意識に瞳をつぶってしまった。
そして唇には 僕が一番知りたくもない感触がした。
朝妻は僕から顔を話すと 先ほど僕が言った良い顔をした。
こいつ 僕にキスをした。
キス…キス…キスしたのか。
頭が大きく揺れて眩暈がする。認めたくないことが更に増えてしまった。
泣きそうになるのを我慢して 朝妻を見る。
「どう ブチ壊された感想は?」
その答え 出してやるよ。
僕は右手を勢いよく朝妻の左頬にあてつけた。
バチン!という音が 誰もいない教室に大きく響いた。
「最低!お前は最低だ!!」
ついに流した一粒の涙。
左頬を赤くした朝妻は 僕の涙を見ながらも笑顔を作り 舌を出し 上唇をなめた。
僕はヘビに睨まれた蛙のように 朝妻の顔を見つめたままになる。
「なぁ 哲多。」
言葉を失い 涙を流す僕に朝妻は言う。
「お前ができなかった常識を壊してやったんだ。早くこっちに来いよ。」












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