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首吊り小屋は今日も賑やか 作者:Pー龍
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しゃれこうべと束の間の・・・

日常回です。もう少し説明も含め日常回が続きます。書いていて自分でも説明くさいなぁと思う。ある程度まとまったら改稿すると思うけど、内容は維持するつもりです。
 熊の着ぐるみと狼の着ぐるみが水筒を肩に下げ、仲良く連れだってよっちよっちとケモノ道を歩いていく。寮から作業場へと至るルートは複数あり、できるだけ散らばって集合するのが望ましいとされていた。道の開け具合は道によってさまざまのようで、10分も歩けば到着する道、30分はかかる道と数種あるのだが、初めて作業場へ向かう熊向けに10分コースを案内されていた。
 到着した作業場では、熊と狼の他まだ誰の姿も無かった。狼は熊を林の中の作業小屋へと連れて行く。作業小屋ではヘルメットとツルハシ、ノコギリを手渡され、他の作業員の到着をしばし待った。作業小屋の中には道具類が収められていた。やがて到着した着ぐるみたちもヘルメットとツルハシ又はスコップなどを取り出していく。10名ほどが集合したところで狼が点呼を取った後、作業現場への移動が始まった。
 皆が散らばって行く作業現場は雑草や木で覆われた元段々畑のように見える。それぞれ持ち場が決まっているのか、各自ばらばらにそれぞれの持ち場へと散らばって行く。

「あの~、ボクはどこを掘り返せばいいんでしょうか?」

 熊は狼に声を掛ける。

「こっちだ。付いて来るといい。」

 狼はそう言って、どんどん先を歩いて行った。熊は置いていかれぬようあわてて狼を追いかける。やがて到着した場所は既に森と言ってもいいような場所。皆が向かった段々畑とは逆にその場所は谷の底。

「ここはな、もともと果樹園だった場所なんだ。南向きの斜面で本来は日当たりのいい場所になる。この樹は桃の木なんだが、見てみろ。立ち枯れちまってる。」

 狼はそう言って木の枝をボキボキと折っていく。

「ここら一帯を掘り起こしてもらいたんだが、中には生きてる樹もあるみてぇなんだ。果樹だったら残すし、そうでなきゃ切り倒しちまえばいい。その辺の判断はあんたにまかせるから、自分で好きなようにやってみな。新しい苗木や野菜の苗が必要なら作業小屋の近くにあるから、声を掛けて掘り起こして持って行けばいい。」
「最終的にはここら一帯が果樹園になればいいんでしょうか?」
「適当に身を隠せるでかい樹を何本かは残しておいた方がいいだろうなぁ。その残す樹は果樹であるにこしたことはねえが、そうじゃなくても構わない。そこにデカい栗の木があるだろ。見えるか? あれは残しておけよ。あっちに見える柿の木も残しとけ。他にも身を隠せる樹を選んでおくといい、上から見て自然な感じになるくらいになりゃいいらしいんだが、あんたその加減がわかるか? 開けた部分が大きくなり過ぎないように注意すりゃいい。どれくらいかってぇと、だいたい家一軒分くらいなもんだ。大木が一本倒れりゃそれくらいのスペースが出来るから不自然な感じにはならない。それよりも大きく開けちまうと不振がられるかもしれない。開けた部分は野菜畑にしちまっても構やしないし、新しく苗木を植えて果樹園にしてもいい。でも整然としてちゃいけねぇんだ。」
「はぁ、なるほど。」
「この一帯だと畑は多くても3つまでだな。果樹を植える場合は同じ種類ばかりを植えちゃいけねぇ。何種類かをごちゃごちゃと混ぜて植えるといいな。相性とかもあるみたいだから苗木を受け取る時に相談してみりゃいい。」
「わかりました。」
「昼飯は時間になったら俺がここへ持って来てやるから、それまではぼちぼちとやっててくれよな。ここじゃ作業ノルマなんてのは無いから自分のペースでやりゃいいんだ。」

 それだけ言うと狼は自分の持ち場へとさっさと移動してしまいました。
 どうやら上空からの発見を避けるため自然林へのカモフラージュを意識した畑づくりを求められているようです。全体を耕すのではなく、立ち枯れた木を取り除いた後はそこの土を掘り起こし、畑にするか新たな果樹を植えるかといった流れになるのでしょう。
 早速、熊は果樹とそうでない樹の違いを見究めようとしましたが、樹木の種類などという知識の無い熊にはさっぱりわかりません。幸い狼が桃の木と呼んでいた立ち枯れた樹と同じような樹が周囲にあったので、枯れているかどうかを確認した後、取り除いていくことにしました。何本かまだ生きている樹も見つけました。生きている樹の周囲には石を積み、それを印とします。見るからに雑木とわかる樹も切り倒していきます。小さな家が一軒たてられそうなくらいの開けた場所が出来上がった頃、狼がやって来ました。

「よぉ、頑張ってるようだな。もう昼だぜ。休憩にするといい。ほら昼飯持ってきてやったからよっ。」

 いつの間にかお昼になっていたようです。狼に声を掛けられた熊は空腹感を思い出しました。

「ありがとうございます。」
「お疲れ。その辺の日陰にでも腰かけて飯にしようや。どうだい? 作業の方は?」
「果樹なのかどうかがよくわからないんで、とりあえず枯れた樹と雑木を取り除いているところです。取り除いた樹の処分はどうしたらいいんですか?」
「燃えそうな樹は寮に持って帰って調理用の燃料に使ってもらったりしてるな。腐ってるようなのはその辺に放っておけば肥料にでもなるんじゃねぇかな。毎日担いで持って帰れる分だけその辺の蔓で縛ってまとめておいて、あとは放っておきゃいいさ。」

 2人は大木の根元に並んで座ります。狼は頭を外し、お弁当を食べ始めました。熊はそのままお弁当を食べようとして失敗した挙句、狼が頭を外していることを知り、マネをします。
 やがて弁当を食べ終わり、熊が口を開きました。

「煙草って無いんですかね?」
「食後に吸いたくなったんだな。」
「えぇ、まぁ。」
「その気持ちは俺にもよくわかるんだが、ここにはまともな煙草はねえな。そもそも作業中の火の使用がここじゃ禁止されてるんだ。」
「そうなんですね。わかりました、あきらめます。」
「中にはその辺の葉っぱをむしって適当に丸めて干したのを晩飯の後に吸ってるやつらもいるみたいなんだが、アレはやめといたほうがいいぞ。運が悪けりゃ毒にあたって倒れちまう。ここで暮らして2、3ヶ月もすりゃそのうち煙草の味なんざ忘れちまうさ。それまではなんとか我慢するんだな。」
「はい。・・・この弁当箱どうしましょう?」
「食い終っちまった弁当箱は洗って返さなきゃいけねえんだ。みんな寮に持って帰って洗ってから晩飯の時に食堂に戻すようにしてる。さて、弁当も喰ったしぼちぼち俺も戻るとするか。仕事終わりの時間が来たらまた声掛けに来るからよぅ、それまでまた作業のほうよろしく頼むわ。」

 狼は立ち去り、また熊は1人その場に残された。
 熊は蔓を採取し、集めた蔓を使って薪に使えそうなそこらにある木片をまとめると、一所にまとめていく。それが終わると家一軒分の開けた地面にツルハシをふるい始める。地中には石も埋まっており、その石を掘り起こしながらの作業ははかどらない。狼に声を掛けられたことに気付いた時は既に太陽は翳り始めていた。

「そろそろ上がりにするぞぉ。」

 その声に促された熊は、作業用具を小屋へと戻し、薪と弁当を持って寮へと戻っていった。
 寮に帰り着いた熊は指示されていたように自室の鍵を受け取り部屋へと向かう。鍵を開けた中の部屋は2室に分かれており、それぞれに9の寝床があった。熊は着ぐるみをようやく脱ぎ、自分の寝床を決めた。熊用に支給された日用品も室内に置かれていたので、寝床へと持ち込む。
既に食事ができる時間になっていたので食堂に空の弁当箱を持って行くため階下へと降りていった。
 食事を摂った後、外の風呂を使い汗を流し、部屋へと帰り蝋燭に火を点けてみる。薄暗い炎の明かりの下で日報を記し、一階に設置されていた箱へ入れるともう後はすることもない。
 8時を過ぎた頃、どこからとなく寮の周囲の森の中からいくつもの女の嬌声が響いてくる。風呂で男と戯れている女の声や、森の中で男女がもつれあい快楽に喜んでいる女の声だ。戸尾はその声に反応してしまっていた。
我慢しきれず風呂へと覗きに行ってみると薄暗い月明かりの下、女の裸が目の前にあらわれる。
着衣姿が不自然なことに気付き戸尾も全裸になり風呂に浸かる。
 引き続き覗いていると、裸の女たちは気に入った男に声を掛け、声を掛けられた男と一緒に森へと消えていく。女たちの中には戸尾のタイプの女もいた。その女はさっき若い男と手を繋いで森へと消えてしまった。

「兄さん、あんた見かけない顔だね。新入りかい?」

 女の声が戸尾に向けて掛けられた。

「はい。今朝からここに――――。みなさんずいぶんと開放的なんですね。」
「ここじゃこれが当り前さ。初めてで驚いたのかもしれないけど、これくらいしか娯楽は無いからね。あんたもどうだいアタシと。」

 女は風呂の中で立ち上がり、上半身を戸尾に見せつけてくる。戸尾は誘われるままに女と一緒に森の中へ消えていった。

 それから20分ほどした頃。

「ギャー!」

 森の中で戸尾のあげた奇声が響いた。

「おい、また新人が騙されてるよ。今日の犠牲者は誰だい?」
「竹山ん所に新しくはいってきた熊がさっき連れていかれるところを見たぜ。」
「ハハハっ、そりゃ気の毒にな。」
「あの婆さん、なかなかいい身体しれるからそれなりに楽しめたんじゃないか?」
「事が終わってから本当の姿を見せるなんざ、婆さんもあれでなかなか良心的なんだよな。」
「どうせなら最後まで騙しとおしてやりゃいいのに。」
「それじゃ、あの婆さんは面白くないんだろうな。人を化かして喜んでるんだから。」

 そんな会話を湯船に浸かってのんびりとしている連中のもとへ全裸の戸尾が這うようにやって来て、
「はっ、白骨死体が・・・・・・」

「知ってる。」
「抱いたんだろ。」
「気持ち良かった?」
「あれ、ここらに出る妖怪だから。」
「気に入ったんなら明日も婆さん相手してくれると思うよ。」
「お気の毒さま。」

 皆の説明によるところでは、戸尾と一緒に森へと入った女はこの森に住む妖怪で、日中は森の妖精さんチームと共に作業をこなし、夜は新入りの男を誘いだし、最後に自分の姿を見せてびっくりさせるのが趣味のしゃれこうべだということだった。実害は特にないので割り切って付き合ってみたらどうかと勧められたが、戸尾はその勧めを丁重に辞退して風呂に浸かりなおして部屋に戻った。

 まだ森の中から女の声が聞こえていたが、戸尾は眠りについた。


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