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隠匿するホテル 作者:kud
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紐解く男

懐中電灯の明りひとつで足もとを照らし、ゆっくり進んでいた。
時折ポタンポタン水滴が垂れる音がする。空気はどこか黴臭く、地下を歩いているのではと思い立つ。
自分がどこにいるのかわからない。
響く靴音で硬い床だと感じる程度だ。
懐中電灯を周囲に向けても、浮かぶのは壁と思わしきものだけだった。

思い出したように背後から冷たい風が抜けていき、そのたび生きた心地がしない。
早くここから抜け出したい──足早に出口を目指すが、どこまで歩いても終わりが来ない。
先が見えないことで走るのは躊躇われた。同じく後ろも見えないことで引き返すのも恐ろしかった。

出来るだけ足音を立てないよう、息も殺して密かに足を運ぶ。
そうしなければ耐えられそうになく、そしてわたしはただ怯えるしか出来ない小動物だった。

またどこかで水滴が垂れる音が立ち、わたしはふと見上げた。
頭上には空間を四角く切り取ったかのように窓らしきものがあった。
やはり暗いが周囲より少しだけ明るみを感じる。
突然現実味を帯びた外の存在に、わたしは半ば呆けたまましばらく眺めていたところ、瞬間的に明るくなった。
山のようなものが見えたが瞬く間に消え、雷鳴が響き渡る。
わたしは口を開けたまま、首を下に向け足もとを見つめた。
山の中にいるのか? 何故。
また背中から身を刺すような風が吹き、怖気と寒さに身震いした。どこかでポタンと水滴が立つ──

ビクッ!
体が跳ねて目が覚めた。
いつの間にか机に俯せ、うたた寝していたようだ。
職場で眠るとは相当疲れている。壁の時計を見たところ23時06分だ。
背中と脇がじんわり汗をかいており、どうにも嫌な夢だと思った。だが内容は起きた瞬間に忘れた。
それにしても、帰宅しなければまずい。こんな遅くまで残っていたのが知れては叱りを受ける。
気だるい体を起こし机上に散らばる用紙を片付けていく。
これらは研究材料である。
とある場所から大量に見つかった、誰とも知れない人たちの手記だ。
母国語で書かれているが、中身は意味不明のそれらを紐解くのが目下の仕事である。

ともかく今日はもうダメだ。よくわからない恐怖心が足もとから背中で燻っている。
少しでも早く帰って熱い風呂にはいるべく、わたしは研究室を後にした。

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  • ホラー〔文芸〕
  • 完結済(全32部分)
  • 2 user
  • 最終掲載日:2014/11/24 17:14
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