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隠匿するホテル 作者:kud
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好奇心が旺盛な男による手記──暗闇とガラスに写る──

 夕方から降り出した雨は夜半過ぎに激しくなった。
 ガラス窓にぶつかる雨音と、流れる雨だれをなんとなしに見ていたところ唐突に空が光った。
 夜空を一瞬だけ照らしたあと、ゴロゴロ唸るように空が鳴く。
 雷鳴の到来は久しぶりの客を意味しており、僕の口元は緩んだ。
 今日のフロントは確か顔隠し男だ。
 彼は顔を晒すのが嫌いで、古い未亡人のように豪奢なベールを纏っている。顔というより視線を嫌がっていたかもしれない。
 ベールは彼の拘りを感じる、芸術的価値がありそうなほど美しいものばかりだった。黒か白の二色に限られていたが、見る度に違うデザインだった。共通点はただひたすらに美しい点だった。
 そんな彼が迎えた客はどんな人だろう。僕はとても興味深く思う。
 フロントの仕事は、受付と部屋までの案内だから客と接する時間は短い。その分とても重要だ。
 迎えられた者が、これからどうなるかは彼にかかっていると言ってもよい。

 雨の向こうは、もうなにもない。ホテルの外にはもうなにもない。
 客はきっとロビーへ入る前に、山に沈む太陽を見たはずだった。
 日が暮れなければロビーは開かない。

 どうにかして客を見たいと思った。
 それにはこの部屋から出る必要がある。けれど、果たして出られるだろうか。たったひとつのガラス窓は開いたためしがなく、この部屋にドアはない。

 ガラスの向こうがまた青く光った。
 見えるのは暗闇と、ガラスに写る──
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