挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ヤーシャの国の魔法技師 作者:アラトリウス

プルーフ・オブ・ゼム・ライフ

25/28

第22話 待たせたな

9/23は第22話~最終話まで一斉更新です。
読み始める場所にご注意下さい。
 瑛士が目を覚ましたのは、エルフの大使が暗殺未遂を起こしてからわずか数時間後だった。
 たった数時間で、あれほど穏やかだった城内がこれほどまでに殺気立つのかと、空気に乗り遅れて若干引いていたのだが、笑い飛ばすことは出来なかった。
 自室のベッドの上で目を覚ますと、そこには心配そうにこちらを覗き込むシャルロッテと、医療用具をまとめているメリルが居たからだ。

「大丈夫ですかっ、瑛士さん?」

 大丈夫じゃないから寝込んでいたんだけど、という減らず口は、彼女の後ろで変な顔をしてこらえているメリルさんが見れたのでなんとか我慢した。
 両手を開いたり握ったりしていると左の胸部が痛んだけれど、死ぬほど痛いかと言えばそんなことはない。

「大丈夫だよ。ありがとう、ロッテ」
「治療をしたのは主治医とメリルですから、私は何も……」
「メリルさんって、お医者さんだったんですか?」

 瑛士の微妙なつっこみに今度はシャルロッテが顔を歪めたが、当のメリルはしれっと答えた。

「我が家は代々武門で名を上げてきた男系貴族でしたから。生傷の絶えない男共の面倒を見るのがパルシバールの女の勤めでしたので。そんなことよりエンジ様、状況をお聞きしたいのではないですか?」
「はい。聞かせて下さい」

 露骨な話題転換だったが、それが話題そらしだということには気づけた。
 メリルの家に婿に入った旦那さんが、以前の戦争で亡くなられている……というゴシップも、日替わりで侍女達が身の回りの世話をしてくれれば自然と入っていた。露骨に彼女をバツ扱いした侍女さんはその後あてがわないようにお願いしたので、瑛士は細かいことまでは知らなかったが。
 そして転換した後の話題についても、瑛士はメリルが話すままに任せた。
 瑛士が聞きたい情報を適切に話すくらい、メリルにはわけもないだろうと判断し、事実その通りであった。

 サラティオという男は暗殺を目論んでおいて、図々しくも自分の身が害されるとは思いもしない愚か者だったが、エルフ全体が彼と同じではなかったようだった。
 エルフの死体の後始末をしている間に、エルフの森との国境線に建てられていた砦が陥落したという報が入ったのだ。
 大使の移動速度を計算した上で、迅速に攻めに出たのだろう、というのがヤーシャ王の推測だそうだ。

 ヤーシャ王はそれを聞いて、すぐさま前線となるべき戦場を設定して、出発の準備を始めさせたらしい。
 若くして武力で裏切り者の周辺国を平定した実力は伊達ではないということだろう。

「それで、出発はいつになるんですか?」
「ヤーシャ王は既に先遣隊と一緒に出発されています」
「ま、マジですか!?」

 数時間というのが、実践において早いのか遅いのかは分からないが、少なくとも鎧を準備したり、かなり時間がかかるはずだと思っていたので、既に出発してしまっているというのは瑛士にとって予想外だった。
 そして、かつ、悪い情報でもあった。

「メリルさん、今から追いつくことは可能ですか?」
「エンジ様が単独で馬を駆って追いつくのは不可能ですし、危険ですのでやめたほうがよいでしょう」
「そ、そうですか」
「何か王に直接伝えたいことがあるのですか?」
「伝えたいと言いますか……サアラの事は見捨てて、完全にエルフと戦争をするんですか?」

 瑛士には高度な政治も軍事も分からない。
 彼が気にしているのはその一点。彼女の安否だった。
 目の前で息絶えた鷲のあの姿が蘇り、それが彼女自身だったのではという不安がどうしても捨てられなかった。
 メリルの表情は渋いものだったが、シャルロッテの堪えるような顔を見れば、自分が見当違いのことを言っているわけではないと瑛士は確信して、まくし立てた。

「長老が訪れてきた時、たしかにサアラが次期長老と決まったわけではない、とあの人は言っていました。実際に彼女はその座につけなかったんだろうし、長老が危惧していたよりも事態は悪化しているのかもしれません。だけど、彼女は確かに、僕に危機を伝えてくれたんです」

 政治やら軍事やら歴史的発明やら、そういったものの現実感は未だに側にない。
 だが、彼女の死はそうではなかった。

「……エルフを全て滅ぼすことが、この戦争の終わりじゃないんでしょう?」
「それは……そうですが、だからといってサアラさんを救出する手はずもありません。送り込んで貿易を管理させていた者は死体が届きました。今のところ現地にはこちらの手駒が何一つないのです」
「潜入して救出してくればいいんでしょう?」

 話が進むにつれて目をぎゅっと閉じていたシャルロッテがそこで反応した。

「出来るんですか?」
「多少準備に時間を頂ければ」
「……メリル、私達が現地へ向かう馬車を一台追加してちょうだい」
「姫様、しかし」
「彼の仕事道具一式を全部詰め込んだ馬車を用意して。現地でお兄様が話を聞いてくれなければそれでいいけど、何もしないまま友達を見殺しになんて出来ないでしょ?」
「はぁ……分かりました。準備はさせます。しかし今回の件、私から説得の材料は出せませんので」
「お兄様くらい、私が説得してみせるわよ」

 肝心の瑛士の作戦は全く打診されないまま、瑛士は馬車に押し込まれて連れだされてしまった。
 だが、悪い気はしなかった。
 やはり仕事であれ、なんであれ、信頼が篤いというのは彼にとって嬉しいことだった。
 そして、信頼が篤いのであれば、それに応えたいと思うのが彼の性だった。

◇◆◇

「で、どうすると言うのだ?」

 前線を構築するための砦として選ばれたヤーシャの国の大都市リマイ。
 領主館の一室を間借りして前線で政務を行っていたヤーシャ王の元へとシャルロッテは瑛士を引きずって突撃したのだが、ヤーシャ王の第一声がこれだった。

「エルフとの国交が大事であることは認める。そのために友好的なエルフが必要であるということも確かだ。だが、手立てがない」

 表面上はまったく持ってあっさりと。一切合財を躊躇なく切り捨てた。
 それはいつもどおりのあけすけなヤーシャ王だったが、瑛士には言外に「心外だ」と言われているようだった。

「エルフには借りがある。義理を果たさぬつもりはないが、それはヤーシャあっての義理だ。国と天秤にかけることはできん」
「ですが、エルフの森からの木材支援がなくなることは」
「我が国の経済への影響が測りしれん。俺なりの筋道は、人間に敵対するエルフを全て斬り殺すという一手しかない。彼女が戦場に出て来る前に、味方以外の敵を殺す」

 やり方が完全に脳筋だった。
 シャルロッテは非難の言葉をすんでの所で飲み込んだ。
 このやり方は、両親を殺された時から二人が選んできた道なのだ。兄妹二人で国を守ると誓って、守り抜いてきた道だ。

「で、手を持ってきたのはお前なんだろう、エンジ」
「バレてましたか?」
「フン、新しい魔法を持ってきたんだろう?ウズウズしているのがバレバレだ。見せてみろ」

 では。

 瑛士が懐から取り出したのは巨大な腕輪……どちらかと言えば腕甲だった。
 手首から肘までの半分ほどを覆う銀細工の腕甲には、見覚えのある巨大な宝石が埋まっていた。

「では、"お見せする事は出来ません"が」


◆◇◆

 そして今、エンジは遥か東に居た。
 天を覆うほどの巨大な木々。大森林と呼ばれる所以を存分に満喫する。
 物珍しい獣や、巨大なファンタジー的鳥類の鳴き声に耳を澄ませてマイナスイオンを堪能しつつ、

「おい、聞いたか、スウィルノウ様の本体が出陣するらしいぞ」
「やっとかよ。それじゃ、北の針の木のやつらも鎮圧されたのか」
「らしいぜ。やっぱりあんな老害共に従ってたのは間違った時間だったんだな」

 そして同時に、周囲から聞こえる噂話にも耳を傾けた。
 無駄話をしているのは、軽く武装した二人組のエルフだ。敵地でもないのに武装しているのは、戦時下だからだろうか。する必要のない緊張をしている……とバカにすることはできない。24時間365日のシステム稼働を保証します!という狂った世界からやってきたのだから人のことは言えない。
 手すりに腰掛けて話す彼らが瑛士に気づかないことは、更に責められないだろう。
 なにせ瑛士は透けて透明になっていたのだから。

 これが瑛士の秘策だった。
 瑛士に反射する光を屈折させ、まるで素通りしたかのように彼の向こう側を見せる。
 外から入ってくる光を遮ると瑛士にも何も見えなくなるので、あくまで瑛士から跳ね返る光だけを細工する。
 小難しい計算はしなくても、光を司るエレメントに"そう"するように指示を与えればよかった。
 意識はないが反応する精霊という存在は、このステルス装置を実現してくれた。
 ローブ姿で旅の道具をリュックに詰めた姿のまま、工夫一つで瑛士は堂々とエルフの森を渡り歩いていた。もちろん、足音だけには気をつけて。

 情報収集は順調だった。
 例えば、スウィルノウというえるふについて。
 彼はエルフ全域の支持を集めているわけではなく、次の族長を決める五人の長の一人だったらしい。
 勢力としても全体の五分の一しかなかったが、彼の元には好戦的なエルフが多かった。
 あっという間に他の部族を黙らせると、血気盛んなエルフだけを引き抜いて戦力を強化していったらしい。
 そして他の四人の族長をすべて殺し終え、ようやく外部に全力を割ける、という段取りのようだ。

(なんとも自信過剰というか。武力を信頼してるようで)

 しかし長らく平和に過ごしてきたエルフの中には好戦的な意見に流されるものも少なくないようだった。
 例えば、この目の前の二人がそうだ。
 戦後の処理も厄介そうだったが、瑛士の目的は内部からの破壊工作ではなかった。
 この二人からはサアラの情報は漏れなさそうだ。そろそろ盗み聞きの場所を変えようかと思案しだしたその時だった。

「さて。んじゃあ俺はこの後仕事なんで、そろそろ行くわ」
「今日の登板はどこだ?」
「お姫様のとこだよ」

 ティンときた。
 思わず声を上げそうになるのを我慢して静かにガッツポーズ。

「その言い方、スウィルノウ様に伝わったらただじゃすまないぜ」
「あぁ、分かってるよ。それじゃ行ってくる」

 姿を消したまま、足音を立てないように、その場を離れていく兵士についていく。
 たどり着いたのはまるで金属のように表面のなめらかな灰色の大樹。
 先を行く兵士がパリパリと音を立てながら、押している小枝を踏み折って歩く。
 ように、ではなくまさしく金属で出来ているのかもしれない。
 歩行音を合わせて大樹のうろの中に入ると、そこは天然の牢屋だった。もちろん鍵はかかっているが、鉄格子は天然の金属だ。

 木の幹の裏側を螺旋を描くように登っていく。
 最初は木の幹の外側に寄っていた階段も次第に中央に収束していった。最終的にたどり着くと一面が牢屋で、中央だけが牢屋の外という奇妙な部屋だった。
 だが、木の作りなどどうでもいい。
 牢屋の奥、ベッドに縛り付けられているのは、顔見知りの少女だったのだから。

(サアラ……自由にはさせてもらってないんだな。捕らえられているのか)

 この広い部屋をあてがってもらいながらベッドに縛り付けられるとは奇妙な話だが、彼女がおとなしくしていたとも思えない。
 見張りは一人で交代制のようだ。
 女が暴れたかどうかを確認し合い、大人しいものだとわかると気を抜いて手を振り合って監視用の椅子を入れ替わっていた。

 瑛士は部屋の隅でじっとその男の様子を探っていた。
 が、それほど我慢する必要はなかった。
 男はすぐに眠りこけ、監視はおろそかになったからだ。
 当然何もしてないわけではない。
 男の周囲の酸素密度を変えたのだ。正確には気絶してしまったのだが、結果として見張りの目がなくなったことに変わりはない。

(鍵……これも魔法か?)

 魔法を解除すれば、鉄の幹に取り付けられた蝶番が静かに鳴った。

「誰だ?」

 あの明るかったサアラの面影がまったくない、暗い声だった。
 瑛士はノータイムで魔法を解除して姿を表した。

「待たせたな」
「瑛士!?どうやって」
「静かに。これも全部魔法?」

 ベッドの上に手枷足枷で繋ぎ止められているが。そのどれにも鍵穴はない。
 エルフの生活はヤーシャの国よりも魔法に密接だ。
 おかげで特に泥棒の技能を持たない瑛士でも奥深くまで入り込めてしまったわけだが。

「そうだけど、でもこれを外したらすぐにスウィルノウに伝わって……」
「大丈夫」

 なんせ魔法を外したことを伝えるのも魔法なのだ。
 大した問題ではない。
 瑛士の嵌めた紅の指輪が八度光る。
 サアラを拘束していた全てが割れた。

「そうか……通りで。さっきのやつは新しいやつか?」
「うん。君のくれたコレのおかげ」

 瑛士はローブをめくり、左腕につけた腕甲を見せた。
 そこに嵌められていた翡翠の宝石を見て、サアラは納得したように息を吐いた。

「それを使ったのならその大魔法にも納得だ」
「ほんと、様々だよ。どんな大きな宝石でもこの魔法には耐えられなかったから」
「ホントはもっと、瑛士のために使って欲しかったんだけどね。私のために使わせてごめん」
「いや、こんな隠しアイテムみたいなのが作れるなんて、それだけで満足だよ」

 サアラは隠し?とかわいく首を傾げていたが、和やかにそれを楽しんでしまうほど気は抜けていなかった。

「さぁ、脱出しよう」
「でも最近は全く動かせてもらえなかったし、足手まといになっちゃうよ……」
「大丈夫。全部任せて」

 瑛士はそう言うと、懐からもう一つの腕甲を取り出した。
 瑛士に与えられたものとは別の、もう一つのエルフの涙。

「ロッテも待ってる。急ごう」
「ちょ、その石……っていうか、アレ?あぁもう、道中色々聞かせてもらうからね!?」

 ようやく抜け出せるという実感が湧いてきたのか。じわりと湧いてきたそれを隠そうとしてサアラは瑛士の首元に抱きついた。
 その腕に腕甲をはめて、瑛士は小さく呟いた。

精霊保持(エレメントセッション)、同期開始」

 2つの宝石が反応する精霊を互いに交感させる。

「アンチマテリアルワン、実行」

 二人の姿は同時に淡い光に包まれる。
 初めは不安だったが、これでしっかり他人からは見えなくなっているのだ。
 サアラの右手を左手で握り、更に魔法を発動する。

「風作成、持続強度1」

 弱ったサアラを宙に浮かばせて抱きかかえる。
 彼女の加速魔法は自身の体裁きも必要とする高等技術だ。弱った状態で彼女が逃げるだけの速度は出ない。

「しっかり捕まって。それと」
「それと?」
「手を離しちゃ、ダメだからね」
「うん。瑛士もだよ」

 彼女を捉えていた木の幹が内側から盛大に爆発した。


◆◇◆


「ちょっとぉー!?!?」
「黙ってて下さい!」

 風の強度はもはや最大。
 2つに増えた緑の指輪は交互に複雑に光り、加減速を巧みに繰り返して二人を枝から枝へと運んでいく。
 だが、ランデブーは二人きりではない。
 当然だ。脱走に気づいた衛兵たちがこぞって二人を追いかけていた。

「なんでこっそり逃げないのよ!?」
「いやぁ、ロッテがそうしろって」
「あの子がそういうなら何か理由はあるんだろうけど……」

 とたんに大人しくなった。
 うーん、サアラの中での信頼度ランキングではかなり序列に差があるようだった。

「でも、引き離せるの?」
「引き離すのは無理だね。だから……あ、腕甲の横の蛇の模様を指でなぞってもらえる?」
「こう?」
「オッケー。それじゃ」

 向こうから離れていってもらいますか。

 動きの変化は突然だった。というか、事故にしか見えなかった。
 お互いの間に足場の木々はなく、次の跳躍で追いつかれるというタイミングで、ローブ姿の盗賊はサアラを抱えたまま足を滑らせて枝から落ちたのだ。

 逃亡速度に落下速度が乗っては危険だ。
 衛兵たちは全員がそれを追って地上へと加速した。
 その加速を見切ってから、盗賊は何もない宙空で上へと再加速したのだ。

「なに!?」
「くそっ、足場はないだろう!?」

 だが重要人物の見張りだ、そこで諦める程度のぼんくらではない。

「俺を踏み台にしろぉ!」

 下を行く仲間を足掛かりにして、二人の衛兵が瑛士達に追いつこうと上昇する。
 だが、高い枝に足をついたその時、彼我の距離は再び開いていた、強く踏み出そうと体を大きく縮め、

「「またか!?」」

 再び目標は落下していた。
 わざとか、事故か。
 どちらにせよ、彼らは追いかけるしかない。
 先ほどの手順と一緒だ。仲間を足蹴にできる距離を保って落下軌道に入る。

 謎の急上昇も、先ほどの繰り返しのように再現される。
 追っ手は確信した。
 これは彼らの行っている大跳躍とは違う。
 飛行だ。
 仲間を使って上へと跳躍して後悔した。
 次はどうする?
 足場はもうない。もう一度繰り返されたらおいていかれる。しかし地上を逃げる相手を木の上から追うのは不可能に近い。遮蔽物が多いのだ。
 考えている間にループは3周目に入った。
 またも足を踏み外して落下軌道に入る逃亡者。見逃す事はできず、ひたすら追いすがるしか無い。だが、今回は動きが違った。中空ではなく、木の幹に足をかけて上昇軌道に入ろうとする。
 それならば追いつける、と追手が意気込んで踏み抜く地点を探した隙に、彼は一つの動作を見逃した。
 抱きかかえていた瑛士ではなく、身を回したサアラが木の幹を蹴り飛ばしたのだ。
 エルフの魔法と、瑛士の魔法。二倍の加速度がついた二人は、追手の視界から一瞬だけ逃げることに成功した。

「くそっ……えっ!?」

 そして追手が追いかけようと見上げた先には、誰も居なかった。

「消えた……嘘だろ?」

 だが、頭上のどこにも逃亡者の姿はない。
 地上を見てみるが、そちらも同様だ。

「ちくしょう!!」

 悔しそうに気炎をあげる追手を、瑛士達は透明化して見守っていた。

(ここからどうするの?)

 無言で手を握り直したサアラの気持ちを汲んだのか、瑛士は最後の魔法を一つ唱えた。
 創りだされた風が、木の葉の間を駆け抜けて、音を立てて空を走る。

「そこか!!」

 追いついてきた追跡者三人が、揃って風の立てた音を追って、その場から去っていった。
 なるほどね、と呟いたサアラは今度こそ本当に緊張の糸を切らしたらしい。
 ぐったりとうなだれて瑛士の腕の中で気を失っている。しかし手はしっかりと握られたままだった。

「……さて、急いで帰りますか」

 サアラを抱えて空を飛べることは過去に証明している。
 指輪も増えたことだし、ちょっと最高速度に挑戦してみようか。
 高い森の木々の更に上を飛んで、瑛士達は危険地帯を離脱した。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ