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 僕は落ち着くために指先から塩を出してペロリと舐めた。

 すると気持ち悪さは一蹴され、何ごともなかったかのように気分がスッキリとする。


「……もう、大丈夫だから」


 僕はコロに笑顔を返す。


「はい、無理しないでくださいね」

 心配そうな視線を向けてくるコロ。



「うん、コロは大丈夫?」

「はいっ、元気モリモリですわん!」


 僕はオークを殺した事で気分が悪くなったがコロは大丈夫そうだった。

 もしかしたらこの世界ではこのくらいのことは日常茶飯事なのかもしれない。



「はじめてのモンスター討伐だったのですか? ならば無理もない、はじめは皆そうなるものです」


 僕の方へと近付きながらリリアンナさんが優しく言葉をかけてくれる。

 リリアンナさんは歩き方一つとっても優雅で凛々しく、モデルみたいなスタイルと相まってなんともかっこいい。


「スライムなら何度かあったんですけど、こういう本格的なのははじめてでした」


「そうでしたか。だが、君達が来てくれなかったら私は死んでいたかもしれない。私の名前はリリアンナ、改めて礼を言う。勇気を出してくれてありがとう」

 そう言ってリリアンナさんが深々と頭を下げた。


「いえ、無事で良かったです。僕はソルトと言います、こっちはコロ。傷の方は大丈夫ですか?」


 僕は自分とコロの紹介をしつつ、リリアンナさんの体調を尋ねた。


「ええ、今ポーションを使ったから問題ないです」

 確かに彼女の腕やお腹にあった傷には応急処置が施されていた。



「でも町に一旦帰った方がいいですよ。お送りしますから一緒に帰りましょう」


 いくら傷の手当てが済んだとはいえ、今の状態で無理をするのは得策ではない。

 そう考えた僕はリリアンナさんに一緒に帰ろうと誘ってみる。


「ん、そうですね。だがその前にオークの討伐部位をはぎ取りましょう。君達が倒したから全部持っていってください」

「え、いや、僕達はいいですよ。それじゃあ横取りしたみたいですし……」


「変なところで頑固な人ですね。まあいい、じゃあ私が一つ貰って残りは君達です。それなら文句ないでしょう?」


「う〜、わかりました」

「よし、ちょっとはぎ取るから待っていてください」


 討伐部位の分配を強引に了承させたリリアンナさんはササッとはぎとりを済ませてしまう。ちなみにオークの討伐証明部位は鼻だった。

 そんな血濡れの肉塊をリリアンナさんから受け取る。


 僕はオークの鼻をリュック越しにアイテムボックスにしまい、準備を終えたアピールをする。すると周囲に帰宅ムードが漂いはじめ、誰からというわけでもなく町へ向けて歩き出した。



「時にキミ達」


 町を目指して歩く中、リリアンナさんが僕とコロをジッと見つめながら呼びかけてくる。リリアンナさんがこちらを向く時に風で金髪が棚引き、それをかき上げる仕草がまた様になってかっこよかった。


「何ですか?」

「わふっ?」


「剣の扱いが素人同然でしたが剣術スキルを取っていないのですか?」



「「剣術スキル?」」


 リリアンナさんの質問に二人同時に首を傾げる僕達。



「え……、まさかスキルを知らないのですか!?」


 そんな様子を見て“おいおい、マジかよ”みたいな顔をするリリアンナさん。

 どうやら僕達は知っていて当然っぽいことを知らなかったようだ。


「あ、はい。最近冒険者になったばかりで分からないことだらけなんです。それでスキルってなんですか?」

「教えてくださいっ」


 事情を説明しコロと二人で教えて欲しいとお願いしてみる。


「まさか本当に知らないとは……、だが早いうちに知っておけて良かったかもしれません。そのままスキルなしで戦っていればいずれ大変な目にあっていたかもしれないですからね。スキルというのは戦闘を補助する技能の事です。スキルはギルドのカウンターで手続きする事によって収得でき、それではじめて使用する事が可能になります」


「そんなものがあるんですね」

「おお〜」


 どうやらリリアンナさんの話ではギルドで戦闘に役立つ技能を収得できるようだ。きっとマニュアルを斜め読みしたときに読み飛ばした部分に載っていたのだろう。



「ええ。ギルド内にスキルを収得する専用カウンターがあります。詳しくはそこで聞くといいですよ」


「「ありがとうございますっ!」」


 丁寧に説明してくれたリリアンナさんに僕とコロは深々と頭を下げた。



「そ、そんなにありがたがられても困ります……。むしろ助けてもらったのはこちらなのです、今日は本当にありがとう」

 すると照れくさそうに慌てふためくリリアンナさん。

 肌がとても白いせいか頬が少し赤らんだだけでもかなり目立ってしまう。


 そんなリリアンナさんとの道中はスキルの話を終えた後も雑談を交えながらの楽しい帰路となった。その後、全員無事に町まで辿り着くとリリアンナさんはギルドへ行く前に治療院に寄るということで門の側で別れることとなった。


「今日はありがとう! では縁があればまた会いましょう!」


「こちらこそありがとうございましたっ!」

「またですわん!」

 僕達はリリアンナさんの背中を見送ると冒険者ギルドへと向かった。



 ギルドへ到着すると受付で依頼を報告する前に掲示板をチェックしにいく。

 目的はオークの討伐依頼の有無のチェックだ。


「おっ、あった。しかも一体から複数まで幅があるな」


 掲示板をチェックするとオークの討伐依頼を発見する。

 幸運なことにオークの討伐依頼は細分化されており、一体の討伐から集団、巣の駆除と多岐にわたる。


 そして今オークの討伐部位が三個ある状態だ。

 これなら一体の討伐依頼を受ければ二人分依頼達成にできる。


「やりましたね! これで今日だけで四つも依頼達成です!」

 それに気付いたコロも大喜びだ。


「じゃあ早速報告に行こうか」

「はいっ!」


 僕達は依頼カウンターのお姉さんへ報告に向かい、無事依頼達成となった。


 一波乱あったが四つの依頼を達成できた形となる。



 残すは一つ。






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