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Chapter:01 誤解
Episode:09
◇Imad
 ロア先輩の「予感」は当たってた。
 おとなしくて引っ込み思案なのもあって、ルーフェイアのヤツは前から女子と馴染めねぇだけと思ってたけど、どうも違ったみてぇだ。
 つか、ここんとこもっとあからさまで、聞こえよがしにいろいろ言うヤツまでいるし。

 仕切ってんのは、シーモアのヤツだろう。スラムあがりのあいつは性格がキツいうえ、良くも悪くも統率力はある。
 ただ幸い、いまんとこ持ち物に手出されたりはしてないっぽい。むしろヤバいのは、クラスの雰囲気のほうだ。

 このクラスは女子は少なめだけど、そんでも数人はいる。これがツルむとすげぇうるせぇし、口じゃまずかなわねぇ。しかも中心にいるシーモアのヤツは、ケンカもハンパなく強かったりする。

 このせいでAクラスの男子連中も最近は、ルーフェイアに近づかなくなってた。シーモアたちにからまれたらヤバい、ってんだろう。
 ただ当のルーフェイアのほうは、まだ状況を理解してない。自分が簡単には馴染めないと思ってるから、そういうもんだとヘンなとこで納得してる。

「数学と理科、どうしよう……」
 ルーフェイアのヤツが心配そうに言う。テストの点が、この二つはこいつ、イマイチだった。
――あれで「どうしよう」とか言われたら、怒るヤツ山盛りだろうけど。
 そんでも当人に取っちゃ、大問題だ。

「おまえ、難しく考え過ぎなんだよ。単純に公式だけ当てはめてけって」
「だって……」 
 ちょっと視線落として、困りきった表情しやがる。

「ったくしょうがねぇな、教えてやるよ。移動すっぞ、自習室な」
「いいの?」
 ひさびさに、こいつの表情がほころんだ。

「いいって。つか、荷物取ってこいよ」
「うん」
 ルーフェイアが荷物を取りに、自分の席へ行く。シエラは成績順で席が決まるから、ホントならあいつは前のほうだけど、途中入学の関係でいまはいちばん後ろだ。

――って、なんだ?
 たむろってる女子のあいだを通り抜けるルーフェイアに、足出してるヤツがいる。どうも引っ掛けて、転ばせようって魂胆らしい。
 まぁやられてんのがルーフェイアだから、ほとんど無意識に避けちまって、意味ねぇんだけど。

 ただ状況は、俺が思ってたよりさらに悪りぃってことだ。
 気になってそのまんまルーフェイアのやること見てっと、こいつが机の上に手を伸ばした瞬間、かすかに空気がふるえた。
 けど、そんだけだ。つか空気がふるえたのだって、ほかの連中は気づいてねぇだろう。

 ルーフェイアのヤツが、教科書だの抱えて戻ってくる。
「おまえさ、机んとこ、なんかしてあんのか?」
「えっと……結界のこと?」
 よく訊いてみっとこいつ机だのなんだの、ともかく自分だけが使う場所ならそこらじゅうに、簡単な結界張ってるらしい。

「なんでそんな、面倒なマネすんだ?」
「え? 持ち物って、放置……しないでしょ?」
 なんか激しくズレた答えが返ってきやがった。
「盗まれたり、攻撃で壊されたら、困るし」
「ここで攻撃はねぇだろ……」
 危機管理って意味じゃ間違ってねぇけど、ちと行きすぎだ。

 けど、それを言うつもりはなかった。なんせ状況が状況だから、このまんまにしといたほうが、ぜったい被害が少ねぇはずだ。
 なるたけ手を出されねぇ状態を保って、そのあいだにどうにかする。自分でもモヤモヤすっけど、こんくらいしかテが思いつかない。


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