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Chapter:03 転機
Episode:20
「ルーフェがね、ふつうとはちょっと違うのは、たしかだけどさ。でも、それといじめは別だよ。いっしょに考えたらダメだよ」
「そう、なの……?」
「そだよ」
 ひょいっと彼女が立ち上がる。

「違う違うって言うけどさぁ、同じ人なんて、ぜったいいないじゃん。みーんなどっか違うもん。なのに比べるとか、あたし分かんないなー」
 はっとした。たしかにミルの言うとおりだ。
 何もかもすべて同じ人は、どこにも居ない。

「ちょっと、分かった?」
「……うん」
 少しだけ、楽になった気がした。
「よーし、そしたらイタズラいこー!」
 彼女はどこまでも楽しそうだ。

 そのようすに呆れ顔で、イマドの友だちが突っ込んだ。
「もしかして、ルーちゃんのためってより、単に面白そうだからって言わないか?」
「うん」
 きっぱりとミルがうなずく。

「でもさ、悪くない話だと思うんだ〜。
 あたしは楽しめちゃうし、上手く行けば片付くし。サイアクでも、現状維持ってだけだし」
 彼女の魔を秘めた笑顔。
「イマドたちも利用できるものは、利用したほうがいいんじゃない?」
「………」
 三人とも言い返せないみたいで、そのまま黙る。

「じゃぁそしたら、次の授業からやってみよっかー」
 次の授業っていったら、午後の実技だ。内容はたしか、自衛のための格闘技。
「なにを……するの?」
「んー、要するにこういうのって、勢力図がが変わればいいんだよね」
 ミルがちょっと考え込みながら言う。「どう説明すればいいか」を考えてるみたいだ。

「えーっとだからね……こういうのって誰か、中心になってるのがいるでしょ?」
 イマドたちがうなずいた。あたしは気づかなかったけど、みんな分かってたらしい。
「じゃぁさ、どうしてこういうふつうじゃダメなこと、やれちゃうか分かる?」
「本人が、そういう性格だからじゃ?」

 ヴィオレイの答えに、ミルは首を振った。

「それもあるけどね、それだけじゃできないよ。ひとりでやってたら、その人のほうが“おかしい人”になっちゃうから」
「――そういうことか!」
 納得がいった顔で、イマドが声を上げる。

「けど、どうやるつもりだ? 切り崩すったって、ちょっとやそっとじゃできねぇだろ」
「女子はねー。でもさ、今回って男子は日和見だから〜」
「そりゃそうだけどよ、だからってすぐ、どうにかなるもんじゃねぇぞ?」
 二人の話に、ついていけない。

「あのな……オマイら二人、何の話してんだ?」
 イマドの友だちがそう言って、ちょっとほっとする。分からなかったのは、あたしだけじゃなかったみたいだ。
「えー、こんなに説明してんのにー?」
「してないしてない」
 たいへんな話のはずなのに、なんだか笑ってしまうようなやり取り。

「だからね、切り崩す話なんだってば〜」
 ミルは自信満々だけど、あたしたちは顔を見合わせるばかりだった。
「ワケわかんね……」
「というか、ミルの言うことだから、最初から理解とか無理だってば」
 ひどい言われようだ。
 だけどこれがふつうなんだろうか? イマドは当たり前って顔をしてるし、ミルのほうは完全受け流しだ。

――彼女、強いな。
 そう思った。周りを気にしないで、自分のスタイルを貫けてる。

「ともかくさー、やってみようよ? おもしろそうだし。
 それにもう、毒流してきちゃったーし。上手くいったらいまごろ、仲間割れかも?」
 楽しそうに、くすくすと笑うミル。
「――しゃぁねーな。ほかに選択肢、いまんとこねぇし。やるだけやってみっか」
「そだな。このまま何もしないじゃ、ルーちゃんいつまでもこのままだし」
 みんなの意見がだいたい一致した。

「じゃぁ決まりね!
 そしたらさっきも言ったけど、次の授業からやってみよ!」
「だからさっきも聞いたけど、何すんだよ」
「んー、わかんなーい。でもそのときになったら、ヒラメくと思うんだ。ともかくお昼お昼!」
 ミルの言うことはなんだかいい加減で、ちょっと不安な気はする。
 でも、何かが少しだけ動くかもしれない、そんな感じがした。


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