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Chapter:02 苦悩
Episode:11 苦悩
◇Rufeir
 重い音を立てて、魔獣が倒れた。
 ここは校舎がある場所ではなくて、隣のちいさな島だ。丸ごとぜんぶが魔獣を放った訓練施設になっていて、日に何度も連絡艇が往復している。
 わざわざこんな場所まで来ているのは、校舎裏の訓練施設を使うのを、禁止されてしまったからだ。

 ほんとうは校舎裏の施設も、低学年は使用禁止だ。でも訓練が出来ないと困るだろうと、学院長が例外で、あたしの使用を許可してくれた。
 けどそこで、朝夕自主訓練を兼ねて魔獣を倒していたら、怒られた。根こそぎ狩ったらダメだそうだ。
 ともかくそういう理由で、ここまで毎日、通うことになってしまった。

 倒した魔獣がもう動かないのを確認して、息を吐く。
 複雑な気分だった。
 望んで来た学校は、楽しい。初めてのことで戸惑ってばっかりだけど、それも楽しかった。
 でもまさか、こうやって戦っているときがいちばん、気楽でいられるようになるなんて。

 馴染めない自分。
 同じことができない自分。
 ここはシエラでMeSだけど、それでもみんなとの間に、深い溝があるのが分かる。
 彼女たちは、実戦なんて知らない……。
 それはいいことだと思う。けどそのことが、どうにもならない差になってた。
 あたしにとっての当たり前。生きていくために必要だったこと。けどそれはどれも、みんなにとっては非日常で、想像を超えた世界だと思い知る。

 いろいろ考えながらも、背後に忍び寄る気配に、ふたたび戦闘態勢に入る。音と気配と臭いが、どの魔獣かをあたしに告げる。
 間合いを計りながら振り向いた先には、イソギンチャクを思わせる魔獣。
 触手を振り上げ、一気に繰り出してくる。
 身体を入れ替えてかわすと、鞭のようなそれは、近くの大きな石を突き砕いた。
 この島に放されている魔獣は、さすがに強さが違う。

――でも。

 十分に引きつけておいて、低位の雷撃魔法を放つ。
 魔獣がひるんだところで、続けて火炎魔法。炎といっしょに突っ込んで、急所へ太刀を突き立てた。
 同時に、太刀を媒介にして、魔獣の体内へ雷撃を放つ。
 完全に動かなくなったのを確かめてから、あたしは魔獣から離れた。
 大きく息を吐く。

 やっぱり、ここへ来たことそのものが、間違いだったんだろうか?
 最近はみんな、露骨にあたしのことを避けてる。こっちを見ながら、囁き交わしてるのもしょっちゅうだ。
 中にはあからさまに言う子もいたし、持ち物に手を出そうとする子もいる。
 つまり……出て行け、と言いたいんだろう。

 異質なものを、人は警戒する。
 シュマーという一族の、総領家。代々傭兵をしてきた集団を、束ねる存在。
 冷静になって考えてみれば、こんなものがふつう人たちのあいだで、馴染めるわけがない。
 なのにそう分かっても、諦めきれない自分がいた。イマドがなぜかあっさり受け入れてくれて、だからもしかしたら他の人も、と思うのだ。
 けどそれは、彼が例外なだけで……。

 どうしたらいいのか、まったく分からなかった。
――バトルなら、考えなくても身体が動いて魔法を使えるのに。
 自分が情けなくて、涙がこぼれる。
 教室の中で、みんなといっしょにやっていきたい。ただそれだけのことさえ、あたしはまともに出来なかった。
 母さんがなぜあたしを学校に行かせなかったか、やっと分かった気がする。


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