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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第01章 突然の急展開

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第7話

涙を流しながらも俺の頭は現状を整理するために動く。それこそが、両親の望んでいたことなのだから。

(つまり、俺の母さんは異世界人…いや、異世界の『真竜』か。俺の生きるこの世界とは違う場所…。そしてこの爺さんは母さんの言うことを守った、つまり俺のことを助けようとしてくれた訳なのか)

目を袖で拭い、俺は祖父さんの顔をまっすぐ見つめる。


「ごめんなさい。俺の不甲斐なさを祖父さんにぶつけてしまっていたようだし、暴言を無責任にぶつけた。心配してくれたようだし、本当に申しわけない」


しっかりと俺は頭を下げる。落ち着いていたならこういう暴言は吐かなかっただろうか。
所詮、自分が未熟なだけだろう。もっと精進しなければ。


「それは構わん。で、行くのか行かんのか?」

「それは…。今すぐじゃないといけないのか?俺としては友人の容態が安定するまで居たいんだが…」

「そうか…。なら0時には出発するから、それまでなら何とかなる。後一時間くらいか、それまでに準備をしろ。文化ハザードを引き起こしかねない物品はお前以外には触れられないように、管理者権限でロックをかける。空間をつなげるから、持ち物は全部で3キロ以内に抑えろ。他に質問は?」

「そうだな…。二つ、いいか?」

「言ってみろ」


質問を促されたので、俺は考えた結果の質問をすることにした。


「両親はなぜ死んだんだ?」

「魔力の枯渇だ。殺人事件に巻き込まれたというより、殺人犯が人を殺す前に取り押さえるため魔力を使い、その結果魔力が枯渇して二人とも死んだんだ。二人ともあと一回でもこの世界で魔法を使ったら死ぬって分かっていたのに、なぜ使ったのか…。自分たちで決めたのだから、何も言えないがな」

「…そう、か」


やはり、母親も父親も自分で死に方を決めて死んだのだ。
みっともない姿を見せるわけにはいかない。


「もう一つは?」

「ん、ああ、俺はなぜ今まで魔力を奪われて死ななかったんだ?」

「それは…。お主の魔力は血にあるからな。母親は身体すべてが魔力だったがお主は流れる血だけだ。他はきちんとした肉体なのだよ。だから17までその力は見逃されることになったのだ」


だから怪我したら一瞬で治っていたわけだ…。
そりゃ真竜さんなんだから、ファンタジックな能力の一つや二つ持っていてもおかしくはないわけか…。


「なるほど、分かった」

「さて、あの娘のところだったか?時間までに行ってきたらどうだ?」

「ああ、ちょっと行ってくる!」


俺は家を飛び出した。少ししか時間はないが、今まで鍛えてきた力で走れば病院まではすぐだ。師匠の話をするっていう約束をしているのだ、今から紙でも残しておかないと!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「父上、あまりに露骨では?」

「ふぉっふぉっ、こっちが素なのじゃが孫は腹が立ったようじゃのぅ」

「そうではありません、魔力の話です!彼に露骨に可能性を示唆したでしょう?」

「ふぉっふぉっ、どうじゃかのぅ。それよりみーくん、病院のセキュリティくらいごまかしてやるとええ」

「言われなくてもわかっています。兄上亡きいま、私がここの監視者ですよ?」

「そうかそうか、立派になったのぅ」

「やはりあなたは謙人にブッ飛ばされたほうがいいと思いますよ」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


15分ほどで病院に着いた。少し息が切れているが、しんどいほどではない。
しかし、問題はここから渡辺の病室へ行く方法である。正面玄関は閉まっているし、急患受け入れ口から入ったりしたら即効警察に突き出されるだろう。

彼女の部屋は6階の一番端の部屋だ。どうするか…と考えていたら、迷案・・が閃いた。


「登るか!」


俺は病院の雨どいにとりつき、登り始めた。たいてい転落防止のために窓の下には足場が付いている。それを蹴りながら、俺は6階まで登っていく。


「これ、降りるのやばいな…。まあ、飛び降りても怪我は治るだろうしいいか」


そして、渡辺の部屋までたどり着き、窓から中をのぞく。
運よく、窓のカギはあいていた。するりと中にもぐりこみ、渡辺の顔を見る。

マスクをつけられ、点滴を打たれながら渡辺はベッドに横たわっていた。しかし、間違いなく呼吸はしている。手術そのものは成功していたのだろう、一安心だ。
だが、体の弱い彼女には手術はつらいはずだ。俺としても、彼女の気配がとても希薄になっているのがよく分かる。分かってしまう。


俺はまず窓際にあった紙を取り、そこに師匠から聞いた話を書く。


『渡辺未菜様

あなたと約束をしていたので、あなたの思い出についてここに書いておきます。


あなたが中学1年生のころですね、暴漢に襲われたのは。
その時、私の師匠である方があなたの襲われているところに駆けつけ、助けたそうです。しかし、あなたは恐怖のあまりか意識を失っていて、富士山のふもとという場所ではうまく治療することはできないだろうと考え、あなたを病院まで運んだと言っていました。
私の師匠の写真を添えておきます。この人ではないかと。
ただもう亡くなっていますので、会うことはできません。この町の共同墓地にお墓はありますので、顔を見せに行ってあげてください。

名前は神野仁。60歳で亡くなるまで、見た目が少年のままだった若々しく、強い方でした。』


こんな感じだろうか。俺はここからいなくなるのだから、名前を書く必要はないだろう。
願わくは、これで渡辺が新たな恋路に進めますように…。


「…さて、ここからが本番だ!」




俺は自分に気合を入れる。そして渡辺の布団をめくり、手術着を少しはだけた。

意識のない彼女を横目に見ながらゆっくりと包帯をほどいていくと、渡辺の体が夜の空気にさらされる。

真っ白な肌が露わになる。日焼け一つしたことがなさそうな肌。そこに刻まれた痛々しい傷跡に、俺は唇をかみしめる。
そして、彼女の胸の上に俺は右手を伸ばすと…。




左手に持ったカッターナイフを力の限り、俺の右手に突き刺した。

焼けるような痛みが腕を走り、溢れ出た血液が雫を作る。その痛みをこらえながら、なるだけ傷口が閉じないようにカッターナイフを動かした。
そして、雫が渡辺の傷口の上に落ちた瞬間、落ちた血液が光り、傷口を治していく。
うっすらと輝くこれが魔力というものなのだろうか。

俺の血にはこの世界にはない魔力があるらしい。そして、それによって体の治癒力が異常な速さになっていたことは祖父さんの話から分かる。
なら俺の血には万能薬みたいな働きはないだろうか、ということだ。風邪も引いたことないから病原菌もないはず…。
血液型を調べたことがなかったのは、血液型がなかったからなんだろう。

俺の血は彼女の傷口を通して体の中に流れ込み、傷んだ体を癒していく。そして、渡辺の体全体が淡い青色に輝きだした。血の流れに乗って体中を巡っているのだろうか。

幻想的な風景に見とれていたら、光がゆっくりと消え始めた。そして、最後まで輝いていた胸の傷のところから光が消えると、完全に怪我の治った渡辺の姿があった。


「良かった…」


ふと自分の体を見ると、俺の傷口もふさがりそうになっていて焦る。


「っと、やべっ」


慌ててカッターナイフを引き抜く。放っておいたら簡単には抜けなくなりそうだったからだ。


カッターナイフを拭ってポケットにしまい、渡辺を見るが、もう大丈夫そうだ。
と、今更ながら俺は自分のやっていたことに気づく。
意識のない美少女の服をこっそり脱がせた不審者が、息を少し切らして立っているのだ。


(アウトォッッッ!!)


「すまん、渡辺。見てない、見てないからな?いや、見たんだけど…」


勝手に服を脱がせてしまったことに、聞こえていないとは思いつつ謝る。気分の問題だ、うん。

手早く包帯と手術着を元に戻し、そのまま毛布も掛けてやる。…たぶんこれで問題はない、はず?


「それより、守れなくてごめんなさい!家にきちんと送り届けるって言ったのに、俺が不甲斐ないばっかりに怪我させてしまった。あと、バレなかったら問題ない!とは言わないけど、渡辺の素肌を拝んでしまったことは誰にも言わないから!」


言うことは言って頭を下げる。

渡辺ごめん、本当にごめんなさい。

カッターナイフ再登場…。

次の更新は次の週末ごろになります。
少し忙しいので…

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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