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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第07章 決戦

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第51話

重く、黒く、何もない暗い空間に、俺は1人たたずんでいた。
ただひたすら、何をすることもなく。


「いつまで立ってるの」


かなり昔に聞いたきり、耳に入ってくることのなかった声色が俺の耳に届く。


「……母さん」

「あら、分かったの。嬉しいわね」


少し淡白な物言いの中に、愛情がたくさん含まれていることを俺は知っている。
辺りを見回すと、小さな青い竜がちょこんと丸まっていた。
パタパタと尻尾をゆらしながら、丸い瞳でこちらをじっと見つめている。


「母さん、生きてたの?こっちの世界に戻ってたとか?」

「いいえ、私もお父さんも死んだわ。それは変わらない事実ね」

「なら、どうしてここに?」

「あなたの血よ。あなたは真竜としての血を引いているのだから、そこには種族の記憶が含まれるの。本能で知っているような内容をね。そこに、私の魂の一部を残してあるのよ」

「そっか……父さんは?」

「お父さんはこっちの世界には来られないからね。一応あなたの中にいるけど、出て来られないわ」

「そう……でも、会えて嬉しいよ」


俺がそういうと、母さんのしっぽも少し弾むように動く。
やっぱり心配してくれていたのだろう、胸が熱くなる。


「まあ、私が出てこられる時間も短いので早く済ませましょうか。悪魔に腕切られていますし」


……やはり、あいつは悪魔だったか。
体にまとっている魔力は綺麗なのに、深層にある魔力は真っ黒だったのだ。
何か出来るわけではないけれど、何者かが分かっただけでありがたい。


「さて、教えてなかったから仕方ないですが…………あなたの血は猛毒です。体質の合う人ならうまく取り込めますが、普通の人なら即死ものですよ?3人に渡して、3人とも切り抜けるなんて奇跡以外の何物でもない」


鋭い眼光と共に放たれた厳しい言葉に、俺は縮こまる。
母さんは翼を広げ、俺は母さんの目から目を離すことが出来なかった。


「はい……」

「そして、血を渡すことの本当の意味……。魔力が抜けた自覚はありますね?」

「……はい、あります」

「血を渡すこと、それは求婚と同義です。真竜は怪我をしない限り永遠に生き続けます。そのとき、異種族と結ばれたら必ず別れなければいけない。そこで、自らの眷属とすることで永遠の命を分け与えるのです」

「……まさか」

「そう、あなたが血を分け与えた3人は、もう普通の種族ではないのですよ」


母さんの言葉に俺は凍り付く。
母さんは嘘をつかない、ということは……。


「俺は3人の人生を、勝手に、決めてしまった……?」

「まあ、3人ともあなたの血が無ければ死んでいますから。それをどう思うかは3人次第ですよ。少なくとも、死にかけていた子たちを助けたことには変わりありませんから」

「……はい」


落ち込んでいた俺を少し、慰めてくれるように母さんは言ってくれる。
知らなかったとはいえ、適当な行為は良くないということを痛感させられた。


「そして、もう一つ。あなたが倒したゴーレムには、真竜としての権能を目覚めさせる欠片が封じられていました。真竜が滅んでから、次に力を持って世界を守る種族の助けになるように私たちは封じたのですが……あなたが生きてこちらに来たので、こちらが優先されたのですね」

「そうだったんですか……」

「しかし、あなたはその力をその3人の女の子に渡してしまっている。だから、光は女の子たちに分かれたのです」

「でも、光は二つしかなかったけれど……」

「もう一つは人間に渡していたのですよ。ところが、悪魔の手に渡っている……やはり人間は、きちんと管理することすら出来ないようです」


氷より冷たい声で言い放つ母さんに、俺はますます小さく縮こまる。

……本当に怖い。


「さて、あの猫の女の子に渡った力は重量操作。ただ、こちらの世界には重力の概念がなかっただけで、本質は重力操作だと私は思います。これが何かは分かりますか?」

「……母さんの姿を見ていると、その翼だけでは単純に体を持ち上げられないはずだから。そのための魔法だと思います」

「そうです。あと、エルフの女の子に超回復と全魔法適性ですね。彼女たちエルフは自らの力を把握するのに長けていますから、すぐに気づけるでしょう」

「……俺には、ないですか?」


おずおずと聞いた俺に、母さんは柔らかい笑みを浮かべた(真竜の姿だけど、分かるの!)。


「あなたは彼女たちを守るために、無意識のうちにでしょうがその力を分け与えているのです。優しいあなたに残っているのは、あなたが鍛えたものだけでしょうね。でも、それがあなたの強さの原点なのですから。誰かを守るというのは大変ですから頑張って鍛えなさい、いくらでも成長できるはずです」

「……うん」

「そろそろ時間ですね。最後に、ゴーレムは持って帰るとよいでしょう。魔力と、あなたの知識があれば彼女たち2人によい武器となるはずです。真竜の骨で出来ていますから、うまく魔力を通せば、自在に形を変えられます」

「……うん、ありがとう」

「最後に、悪魔に負けたままというのは許しませんからね。叩き潰してきなさい」

「はいっ!」


俺は胸を張って返事をする。
そして、母さんがにっこり笑ったと思うと、体がゆっくりと上っていく感覚があった。


戻るのだ、2人の元へ……。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ケントっ!」

「ケントさんっ!」


口々に叫ぶ声を聞いて、俺はゆっくりと目を開ける。
体中が鉛のように重いし、少し視界もかすんでいる。

……ああ、左腕ぶったぎられたんだっけ。

目を向けると左肩の血はきちんと止まっており、今もリリーが治癒魔法らしい魔術をかけていた。


「リリー、ファル……。2人とも、大丈夫か?」

「私たちは大丈夫です、リリーが治してくれました……。それより、ケントさんがっ!」

「ああ、血が足りてないわ……。リリー、無茶しなくていいぞ?」


俺がそういうと、リリーは首を横に振った。


「ぜんぜん大丈夫なの。目が覚めてからこっち、魔法を使うよりも魔力が回復する方が早いの。部位欠損は治せないから、血だけ作るの。今、造血してるの」

「ああ、ありがとう。それと、治療してもらいながらで悪いけど、今回のゴーレムを倒した結果なんだが……」


そういって、俺は母さんから聞いたことをファルたちに伝えていく。

「そんなことが……私にはそういう新しい力って分からないのですけれど……」

「何か違和感は感じていたの。でも、まさかそんな力とは思ってなかったの」


驚いている2人を横目に、俺はゆっくりと身を起こす。

「あ、まだ起きない方がいいの!」

「いや、もう大丈夫だから……」


そして、意図的に最後に回した内容を言うために、俺はリリーの治療を止めてもらった。


「俺は、君たちを治すために血を渡した。でもそれは、俺が君たちの人生を変えたとも言えるんだ。俺は君たちをそれぞれの種族から変えさせてしまったらしいんだ。謝ってすむ話じゃないけど、きちんと謝りたい。本当に、ごめんなさい」


こちらにあるのかは分からないが、正座をして俺は頭を下げる。
こうやって頭を下げたのは、ファルの着替えをのぞいたとき以来だろうか……。

最近だな。


「……ネームプレート、オープン」

「あっ、ネームプレート、オープン」


リリーが突然ぽつりと呟き、慌ててファルも唱える。
A4大の個人情報を見ながら、リリーは笑って俺に言う。


「ここを見てほしいの。リリーは逆に、嬉しいの」

「えっ?」


そういって見せてきたネームプレートの、ある一点を見るけれど、俺は何が言いたいのか分からない。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

種族
真竜 辰野謙人の眷族

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「……それって、どういう……」

「ケント、あなたとずっと一緒に居られるということ。大好きなあなたと居られるのなら、リリーにとってこれは祝福なの」

「あ、リリーだけじゃないです!」


そう言って差し出されたファルのネームプレートにも、種族は俺の眷族と書かれている。
ファルは顔を少し赤らめながら、はっきり言ったのだ。


「私だって、ケントさんが大好きです。一緒に居られるなら、私も嬉しいです」

「2人とも……」


俺は泣きそうになるけれど、彼女たちは俺のことをゆっくりと抱きしめた。


「ただ、一つ聞きたいのは……」

「3人目は、誰なの」


微笑みながらも、バシッと追求する姿勢の2人だった。
少し引き気味になりながらも、俺は渡辺のことを説明する。


「もう1人は、今は俺が元いた世界にいると思うんだ。まあ、いろいろあって彼女にも血を渡したんだ。名前は渡辺未菜。俺と同い年だ」

「女の方ですか……。会ってから考えなければいけませんね、リリー」

「そうなの。徹底的に追求するの」


彼女たちの意欲にかなり引きながらも、俺はこれからのことに話を変えた。


「これからだが、どうやらあの教祖の女が俺を狙って勇者という刺客を放ってくるらしい。俺は今、このように満足には戦えない、手伝ってほしいんだ」

「もちろんですよ!」

「水臭いの。手伝うのくらい、当たり前なの。ついでに腕も取り返すの」

「ありがとう、2人とも!」


2人の優しさに甘えてばかりで心苦しいけれど、次は全力で俺が2人を守ろう。
それだけの力を、早くつけなければっ……!!



最終話執筆中。
明日中には投稿できるよう全力を尽くします。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


よろしければ、こちらもどうぞご覧ください。

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