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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第06章 もう一人

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第49話

お待たせしました!
その後、フィオレンティナさん……何となく彼女もそう名乗っているのがイヤだったのか、フィオと呼ぶように言われたけど……とたくさん話した。
私が異世界から来た勇者らしい、ということを言うと少し驚いているようだった。


『あれ?あの体にくっついていたわけではないの?』

『そうなのです。私はミナが今持っている聖剣の中に封じられているのです。それによって経路パスをつなぎ、ミナの体を操っているので、私は本来出て来られるはずはなかったのです』

『でもフィオさんはここにいるよ?』

『それは聖霊さまのおかげなのです。聖霊さまとミナにだけ、私は話しかけて姿を見せることが出来るようなのです。多分普通はそれが出来るのは魔族だけだと思うのです。魔族の特性魔法の中には、ほとんど幽体離脱なことが出来るものもある、と聞いたことがあるのです』

『えっと……実は私、そうなんですよ』

『!?』


ぱっくり口と目を開いて固まるフィオさん。
ここまでの話でフィオさんはエルフの中でもかなり強かったという話だったのだけれど、やはり幽体離脱は出来なかったらしい。


『……何故、異世界の勇者なのです?』

『えっと……昔来た魔族の人が私の先祖と同化して、私が先祖返りみたいな?それで、向こうの世界には居られなくなって』

『なるほど……実は私の母がその戦いでの指導者なのです。ですが、魔族が戦いに参加したとは聞いたことがないのです』

『うーん、私にも分からないよ。突然言われたことだったし……。それより、どうしてフィオさんは乗っ取られてしまってるの?』


少し無理矢理だったけど、私は話を変える。


『旅をしていたときに、不吉なオーラを持った石に遭遇したのです。これは処分すべきだと思ったのですが、それを叩き割った瞬間に黒い煙みたいなのが出てきて……まず体だけ乗っ取られたのです。意志は私のままだったのです』

『割っちゃったんですか……。海に沈めるとか、火山に投げ込むとか、そういう方法の方がよかったんじゃ……』

『っ!そういう方法があったのです!』


この世界の人はシーレさんに続いてフィオまで、天然な人なんだな……。
おお、と今気づいたかのように頷くフィオさんに、私はやれやれと首を振る。


『体を乗っ取られてからどうしたの?』

『私の体の中で、悪魔と戦ったのです。私はエルフ、精神世界でのやりとりには慣れていたのである程度保っていたのですが……あの鎖の神具のところへ行った私の体はそれを起動させ、私の魂を縛りあげたのです。そして聖剣に神具を融合させ、勇者を操れるようにした……というわけなのです』

『うーん……だったら、聖剣壊したら魂は元に戻るのかな?』

『おそらくそうなのです。ただ、その後に私の体の中であの悪魔と精神的に戦わないといけないのですよ』

『勝てる?』


私が聞くと、フィオさんは顔を曇らせる。


『残念ながら、精神世界での悪魔の攻撃的な力は比べものにならないのです。精神世界での死は魂の死、そして悪魔は魂相手だと驚異的な強さを発揮するのです。エルフの私は、堪えるので精一杯なのです』

『そっか……となると、あの悪魔って何者なの?』

『あれは……遙か昔にこの世界を襲い、真竜たちの必死の努力で追い払った悪魔たちの生き残りなのです。彼女の話だとあと1人生き残りが居て、それも魔王らしいのですよ』

『うわあ……ということは、彼女の目的はきっと……元の世界とゲートをつなぐことだろうね。侵略目的か帰還目的かは分からないけど』

『教国全土の人口をすべてすりつぶせば何とかつなげるかな?というくらい、ゲートの魔法は被害が大きいのです。勇者召還のように聖霊さまの力を借りませんから』

『そこまで被害を出すわけには行かないよね』

『はい。ですが、彼女はまず、脅威である真竜の排除に向かうようなのです。それはおそらく勇者であるミナがさせられるでしょうが、少し時間に余裕はあるのです』


もう一人の悪魔である魔王。
そして、最後の1人である真竜の謙人くん。
彼を殺そうとする私の体。
聖剣に封じられている私とフィオさんの魂。
これらを考えると……。


『フィオさんの体の奪還、私も手伝うわ!私は魔族だし、何かの足しにならない?』

『それは……嬉しいのですが、精神世界で戦えるのですか?そうでなければ、死んでしまうのです!』

『えっと……ここって私の精神世界でしょう?だったら、今から練習したらいいと思うの』

『でも……』


逡巡しているフィオさんに、私はこう言った。


『だって、暇じゃない!色々と力を尽くしてみたいでしょう?』



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



結局、フィオさんも折れて戦い方を教えてくれるようになった。
ちなみに私の肉体も、教国の騎士たち相手に戦闘訓練をさせられている。
今は騎士のみんなに袋叩きにされているようだ。
痛覚は完全にシャットアウトされているが、自分の体がボコボコにされているのを見ても何も楽しくない。
フィオさんの姿をしている悪魔が私に出した命令は、[副団長に勝利すること]。
団長は偵察隊を組織して隣のカルディナ公国を偵察に行っているらしい。


『結構な勢いで殴られてますが……痛くないのです?』

『うん、痛覚は最初つながってたんだけど、さすがに無理だったから消したの。肉体は目の動き一つ私の指示に従わないけど、一応感覚をすべて戻すことは出来たよ?』

『……それは辛そうなのです。それでは、私たちも始めるのです!』


腕をぶんぶん振り回して、フィオさんは気合いを入れたようだ。
私も、新しいことをやるんだ、という気持ちに身が引き締まる。


『まず、精神世界では自らの精神体として自我が形を取るのです。そのとき、どんな姿を取るか自分でイメージする必要があるのですが……もう出来ているので……飛ばしちゃうのです』

『と、飛ばしちゃうんだ……』


早々に気合いを外されてしまうものの、フィオさんは至って真剣だ。
少し緩んでしまった気を引き締め、再度フィオさんと向き合う。


『精神世界ではイメージがものをいうのです。生憎と時間はありますから、早速実践してみるといいのです』


そういうと、フィオさんは少しの間目を閉じる。
私も何が起こるか固唾をのんで見つめていると……。


『えいっ!』


可愛らしいかけ声とともに一本の木が目の前に出現していた。
高さは私の身長くらいで、太さも私が抱え込める程度だろうか。
別に大樹でもないこの木を作り出した意図が分からず、私は首を傾げた。


『これは、なんなの?木……だとは思うのだけど……』

『何でもいいです、何とかしてこの木を折ってみてほしいのです』

『へ??』

『ですから、この木を折るなり砕くなり、壊してくださいということなのです』


いきなりなんだろう??
首を傾げながらも木に手をかけ、折ろうとしたけれど……。


『あれ?ま、曲がりすらしないよ?これって、本当に木なの?』

『もちろん、木なのです。私のイメージによって生み出した木なのです。そう、精神世界ではイメージしたものは何でも出現するのです。しかし、そのイメージは大変強固なものでなくてはならないのです。適当なイメージでは何も作れず、イメージすることだけに精神力を使うことになるのです』

『なるほど……だったら……』


技術の授業で数回使ったことのある両刃ノコギリを目を閉じてイメージする。
イメージを集中すること数秒、私の両手にかすかな重みが生まれ、ゆっくりと目を開けた。


『おぉ……ノコギリが出来たよ!』

『使ってみたらいいのです。使えるなら何でもよいのです』


私はフィオさんの言葉に従い、ノコギリを木に当てる。
そして力を込めて引いた途端、カシャンッと小さな音を立ててノコギリが砕け散った。


『あれ?』

『当然、適当なイメージだと傷一つつかないのです。おそらくミナはあれを形から知らないのです。だから、すぐに砕けてしまったのです』

『そんな……ということは私が馴染んだものしかここではほとんど使えないっていうこと?』

『そういうことなのです。だからこそ、付いてくるには練習が要るのです』

『あう……現代知識は役に立たないのか……』


肩を落としながら私はフィオさんと練習に励んだのだった。








明日の15時にまた更新します!

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


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