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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第06章 もう一人

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第48話

少し短いです。
「な、えっ?」


剣から吹き出したのは真っ黒な鎖。
一応黒いだけでイヤな感じがするわけではないけれど、鎖という時点で触りたくない。
慌てて剣を放して逃げようとしたけれど、私の体は全く動こうとせずその場に立ち尽くしたままだ。
そして、きらきら輝いている剣には全く似合わないような黒い鎖が私の体に勝手に巻き付いた。
そしてそのまま私の体をギリギリと締め上げていく。

(くっ、はめられたっ!!)

今になって分かったが、もともと彼女の目的は私にこの剣を持たせることだったのだろう。
ほとんど運動できない私が、国のトップでもある彼女の攻撃を避けられたのがそもそもおかしかったのだ。
後ちょっとで避けられる、がんばったら逃げられる……そんな線をうまく攻められた私は、あっさりと罠にはまってしまった。
まさか剣にこういう形で仕込みがされているとは思っていなかったけど、今更後悔してももう遅い。
ここは異世界、地球の常識なんて通用しない。
エネルギー保存に質量保存、何もかもがどこかへ行ってしまっているのだ。
甘かった自分に歯噛みしながらも、何の抵抗も出来ずにギチギチに体を締め上げられて、私は立っていられず床に倒れ込む。
その様子を、フィオレンティナは黒いほほえみを浮かべながら見つめていた。


「無様ね、勇者さま。貴女の前の世界はどんな甘い世界だったのかしらね」

「あ……う……」


(えっ!声が、声も出ないっ!!)

慌てて体を動かそうとしても、小指一本動かすことが出来ない。
ただの鎖なのにここまで自由を奪うことは出来ないだろうに、どういうこと?
異世界クオリティはここまで……と焦っているところで、ふと気づく。

たいてい、悪役って勝ったと思うとべらべらと自分の手札晒すよね。

彼女が何か言ってくるのを待とう、そう考えると少し落ち着いた。
すると、やはりフィオレンティナはゆっくり近づいてきて、私のそばに腰を下ろす。


「無駄よ、その鎖からは逃げられないわ。どれだけの同胞がその鎖で命を失ったか……。この世界の管理者だって、流石にこの鎖を使って勇者を奪おうとするとは思わないでしょう」

「あ……」

「あら、まだ声が出ますか。その鎖はその体を司っている魂魄のみを縛り上げ、異世界へと放り出す神具らしいです。私たちがこの世界に来たときも、その鎖によって多数の同胞が殺されましたが……貴女には勇者である肉体がある。その肉体は有効活用させていただきます。そうして、私たちの……」


徐々にだが、視界にもやがかかり始める。
意識ははっきりしているのに、世界が見えなくなる。
まだ彼女は喋っているのに、耳もどんどん聞こえなくなっていく。

(うぅ……。まさか最初から失敗するとは思わなかったよ……。特性魔法は……使えるけどその信号を受け取る体の方がダメだ……)

新しい能力、魔族の特性魔法である感覚魔法を使ってみるけど、その力は今の現状を変えるに至らない。
発動した感覚はあっても、それを受け取るための五感が失われているのだ。


「さようなら、勇者さま」


そういえば、名前すら聞いてなかったわ。

そんな呟きが私の耳に届いたのを最後に、私の意識は完全に暗闇の中に落ちていった。
意識は明確なのに、暗闇で身体感覚もない空間で一人っきり。

寂しい、怖いよ……。

私はいつの間にか、意識も失っていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



ふと目が覚めると、まだ教会の中だった。
辺りを見回すと、すぐそばに『私』が座っている。
微動だにしない、人形のような『私』を見下ろすこの状態は見覚えがある。


間違いない、『幽体離脱』だ。
私が意識を失っているときに発動したらしい。
今の私には何も出来ることがないのだが、空中を漂っていると突然声が聞こえてきた。


『おーい、勇者ミナや!聞こえておるかの?』

(その声は……シーレさんですか?)

『こんなことになってすまんの……』

(え?どうしてシーレさんが謝るんですか?)

『いや……勇者としての身体能力を付与するのを忘れておっての。お主の今の身体能力は地球並なのじゃ。成長速度だけは爆速じゃがの』

(あぁ、それで……)


手も足も出ない私を彼女は蔑んでたのか。
光弘さんの言う、抜けてるところだったのか。


『しかも、お主を今縛っておる神具、作ったのは妾じゃからの……』

(え!?なんですってっ!?)

『いや、その鎖の神具は妾のお手製じゃ。外せるものは妾しかおらんのじゃよ』

(……)

『しかも、妾は今の状況を何ら変えることが出来ん。消える前にきちんと感覚魔法を発動させてやるくらいしかできなかったのじゃ。ここからはがんばって耐えて、としか言いようがないのじゃよ』

(は、はい……。ありがとうございました、助けていただいて……)

『うむ。まあ、元はというと妾のせいじゃからの。謙人には何もいらなかったからの、忘れておった』

(……でも、真竜に戦争を仕掛けるって言ってましたけど……謙人くんのことですよね?)

『うむ。我が甥っ子のことじゃ、きっとお主を助けてくれるじゃろう』

(うう……謙人くんに助けてもらうために来た訳じゃないのに……)

『そろそろ妾は仕事に戻らねばならぬ。すまんが、1人似たような状況の女をつけておくから、話し相手としてのんびり機会を待つとよい』


そう言うと、私の横に光が集まり始める。
あわてて周りを見回すけれど、立っている衛兵たちの様子に何の変化も見られない。


(……見えて、ない?)

『お主らは……うむ、地球の概念で言うなら()()()におるのじゃ。当然、見えるはずがなかろう?』

(なんか……何でもありですね……)

『まあ、気にするでないぞ。それでは、妾は失礼させてもらうの』


その一言を最後に、ふっと気配が消える。
やはり管理者というほどだから、強烈な力を持っているんだろうな。
私の横で光はますます強くなっている。
その光は徐々に人の形を取り始め、突然光の玉がぱっと散る。
そこにいたのは……。


『え?』

『すみません、私の体が……』


私を罠にはめたフィオレンティナその人だった。
緑の髪に整った顔。
でも、そこに浮かぶ表情は彼女とは違い暖かいものだった。


『えっと……フィオレンティナさん、ですよね?』

『はい。エルフ族族長、カランの長女フィオレンティナなのです』

『うーん、多分あなたはあの体を乗っ取られてるとかそういう感じなのよね?だって、持ってる雰囲気が全然違うし』

『はい、数年前に乗っ取られたのです……。エルフとして、大変恥ずかしい限りなのです……』

『いえいえ、私も勇者らしいですが今やお人形さんですから……』


たった1人は辛いけれど、話し相手がいるだけですごく違うものだ。
私の知らない情報をフィオレンティナさんから聞き、私の知る情報を彼女に伝える。
少しでも現状の突破口を探そうと、私たちはたくさん話し合った。


次の更新まで、少し時間をください。
最終話まで書き上げて、毎日投稿で〆たいと思ってます。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


http://ncode.syosetu.com/n4562cu/


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