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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第06章 もう一人

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第47話

「ようこそいらっしゃいました、勇者さまっ!私はシーレイア皇国の教祖、フィオレンティナと申します」


私の目の前で跪く女の人。
妙に違和感を感じるのはどうしてなんだろう?
この人を見ていると何となく形容しがたい違和感をびしびし感じてしまう。


「あの、えっと……」

「あ、いきなりすぎましたね、すみません。ひとまずこちらまで来ていただいて、座ってお話ししませんか?」

「は、はい……」


シーレさんからもらった情報によると、この人が今カルティナとの戦争を主導している人物だと聞いているけど……。
この人の案内に従って教会の礼拝堂の外に出て、隣の部屋に移る。
未だにこの人の顔をしっかりと見れていないのでかなり判断に困ってしまう。
隣の部屋はかなり小さめで、ちょうど六畳くらいの部屋だった。
部屋の真ん中には金色に輝いている剣が飾ってあり、それを取り囲むように机と椅子が並んでいた。


「ひとまず、お座りください」

「ありがとうございます」


女の人……フィオレンティナさんが椅子を引いて勧めてくれたので、私は腰をかけ向かいに座った彼女を見つめる。
ウィンプルって言うんだったかな?
そんな感じのシスターのフードをかぶっているので紙の色は分からないけれど、すごくきれいな人だった。


「勇者さま、私たちシーレイア皇国はこの世界全体の宿敵である『真竜』という種族の復活を予知しました。奴らは世界に絶望と死を振りまきますが、私たちにはそれを防ぐ手だてが有りません。奴らは余りに強力すぎるのです」

「……」


この時点で私はフィオレンティナを信頼できない人間と判断した。
かなり低い確率ではあるけれど、こちらの世界に来た真竜、つまり謙人くんが『邪知暴虐』なことをしている可能性もなくはない。
だけど、それよりもこの女が嘘をついている可能性の方がよほど高いだろう。
その嘘を上手く暴いて、何か交換条件を引き出さないといけない……って、私悪者みたいだよ。


「世界の敵を消すために、力をお貸し願えませんか?」

「えっと……情報を鵜呑みにするのはあまり好きではないの。実情とか見に行けるかな?その後、強力をするかどうか決めたいの」


少し賭だけど、こんな感じに聞いてみれば教えてくれるかな?
などと軽く考えていると、ちらっと彼女の顔にイラつきが浮かんだのが見えた。
普通ならすぐ取り繕える表情だったかもしれないけれど、一回記憶が飛んでいて家族の反応を気にしていた身としてはあまりにわかりやすいよ?


「……国の中央からはかなり離れているんです。外国にこっそりと住んでいるみたいなのですよ」

「えっと……外国なのに私は行くの?ならその国の人に話を聞きたいな」

「……チッ……」


そう言って、私は真っ直ぐ彼女を見つめる。
彼女は俯いていてその表情は伺うことが出来ないけれど、彼女がさっき微かに舌打ちしたのに気づいているのだ。
かなり意地の悪い質問をした自覚はある。
かなり危うい線を攻めているけれど、何もかも唯々諾々と従う人間と思わせるわけにはいかないし、かといって攻めすぎたら殺されるかもしれない。
沈黙が続き少し攻めすぎたかな……と後悔し出した頃になって初めて、彼女が口を開いた。


「……今代の勇者さまはお賢いのですね。おおよそ私の考えていることを想定していらっしゃるのでしょうか?」


出てきたのは、皮肉。
確かに想像……というか、チートな感じでもう知っている。


「……だとしたら、どうしますか?」

「……『魅了チャーム』」


そう彼女が呟いたとたん、バシィッッ!!という音が部屋に響きわたる。
その発した場所は私のこめかみのすぐそばで、私はたまらず椅子からひっくり返った。


「いっったぁ!な、何?」

「『魅了チャーム』すら防ぎますか……この勇者め、面倒なことをっ!」


完全におしとやかな仮面を脱ぎ捨て、嫌悪感と敵意を露わにフィオレンティナは私を睨みつける。
魅了チャーム』を防いだ影響か風が吹き荒れたせいで、彼女のウィンプルが外れる。


「えっ……?」


そこにあったのは緑の髪に、()()
()()()()
人間の国を率いているのが異種族などということが起こりえるのだろうか?


「あなたは……エルフね?」

「本当に使い勝手が良いので。ただ、勇者というコマがどこか別の国に行かれても面倒ですし、あなた自身は大変使い勝手が悪い。残念ながら、始末させていただきます」

「始末って……さすがに殺されたくないけど」

「来たばかりのひよこ勇者なら、私1人で十分殺せます」


そう言ってどこからともなく彼女は錫杖を取り出した。
軽く振り回すと地面に打ちつけ、シャンッ!と軽い音が鳴る。
私は運動そのものは本当に出来ない子だったので、これはたいそうマズいかもしれない。
私はひっくり返った状態から少し身を起こし、ある程度身動きできるように体制を整えた。


「私、運動苦手なんですけど……」

「この部屋は魔法が使えませんよ?この体の長所は魔法ですしあまりこの部屋は使いたくはありませんでしたが、勇者の能力を防げるなら少しの不自由くらい我慢しましょう」


出口は一つ、向かうには彼女を倒さないといけない。
魔法は使えない……というか使い方も知らないし、運動能力も上がっているわけではない。
これは……ちょっとどころじゃないピンチみたいです。


「それでは、どうぞ死んでくださいな」

「それはむりっ!!」


予想通り彼女が真っ向から錫杖を真っ向から振り下ろしてくる。
私は横っ飛びに転がって避けたけれど、その錫杖の先は石の床に強烈なヒビをいれていた。


「っ!?」


向き直ったときには、彼女は横に錫杖を振り払おうとしていた。

(避けきれないっ!)

私は転がっていた椅子を体の前に掴み、自分から後ろに飛ぶ。
彼女の打撃は構えた椅子の裏に直撃し、私の体を簡単に吹き飛ばした。
私は壁に当たるまで飛ばされたけれど、そのおかげで彼女から少し距離を取ることが出来た。
でも衝撃はかなり通っていて、吐き気が私を襲う。


「うっ……かはっ!」

「ふむ……勇者としても、身体能力は並程度ですね。特別な勇者なら考え直しましたが、なんの特殊能力も無いようですし、本当に平凡です、ゴミです」

「う……」


確かに、私自身はあまり運動が出来ないけど……。
ある程度頭は良かったし、平凡ならまだしも、ゴミって言われると少し腹が立つのよね。

とりあえず、彼女と素手で肉弾戦を挑んだところで勝ち目がない。
謙人くんならきっとあっさりやっつけちゃったんだろうけど、私には無理だ。
何か突破口はないかと周りを見回していると、彼女が嘲るように言った。


「あら、まだやりますか?なら、聖剣でも使ってみますか?初代勇者さまが使ったという素晴らしい剣ですが……貴女には振ることすら出来ないのではなくて?」


そう言うと、彼女は床に転がっていた金色に輝く剣をこちらに放ってよこす。
カランッと軽い音を立てて床に転がされた剣。
体育はダンスで剣道など選択したことがない私には使えない可能性の方が高い。

……それでも。


「やってみないと分からない!」


私はその剣を拾い上げ、鞘から引き抜く。
剣はあまり重くなく、振る分には問題なさそうだ。
教科書の構えを思い出しながらゆっくりと構える私に対し、彼女は笑う。

美しい顔にぞっとするほど黒い笑みを浮かべて、彼女は言った。


「これで、私の勝ちです」


その瞬間、私の持つ剣から真っ黒な鎖が吹き出した。






次回更新は日曜日になると思います。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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