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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第05章 新たな力

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第44話

いつもの2.5倍なのです。
(生きたくば我を倒せ。さもなくば我が貴様らを殺そう)


そうゴーレムが言った途端、周囲の空間の雰囲気が変わる。
ぴりぴりと皮膚を刺激するような、そんな張り詰めた空気に。
間違いない、戦闘開始だ。
俺は2人に目配せし、魔力強化を全開にする。
そして走り出そうと足に力を込め、爆音をたてて前に飛び出す。
ファルと2人でゴーレムの死角を突こうとするも、ものすごい勢いで振り回される両腕が俺たちの接近を許さない。
時折リリーの方から光線が飛んでくるが、ゴーレムは身をよじって回避していた。
関節が腰の部分にも存在するようで、俺の想定よりも広く攻撃が飛んでくる。


殴り合っていたのは何分くらいだろうか。
俺とファルは一旦ゴーレムから距離を取り、少し切れた息を整える。


(もう疲れたのか?ひ弱な生き物め)


無機物の固まりでしかないはずのゴーレムから強烈な殺気が放たれ、それと同時に俺めがけて巨大な石の固まりが現れた。
石はドリルのように尖って回転していて、普通に当たれば挽き肉だろうが……。


(吹き飛べっ!)

「させるかクソ野郎っ!」


右腕を魔力で覆い、硬化して石を迎え撃つ。


「……ふっ!」


亜音速で右腕を振り抜き、石の重心を打ち据えると、石は回転しながら周りに飛び散り、俺たちにはひとかけらも当たらない。


(ほう、やるな貴様)


ゴーレムが驚いたように呟く……まあ、聞こえてくるんだし呟いているんだろ。
その隙に後ろに回っていたファルが棒を全力で強化して、腰の部分めがけて打ちつける。


「ええいっ!!」

(ふっ、無駄だ)


バキッ!と音を立てて棒が折れるが、それほどまでにこめられたファルの全力はゴーレムを数センチ動かしただけだった。
ゴーレムは上半身だけぐるりと回転させすぐさまファルの方へ向き直るが、ファルは打ち抜いた姿勢のままで動けず、防御姿勢がとれない。


「ファル、耐えてくれっ!!」


俺はそう叫ぶと全力で地面を殴りつけた。
一気に地割れが進み、ゴーレムの足下を飲み込んだためにゴーレムはバランスを崩し、ファルの体をかすめるに終わる。


(むっ!?)


しかし、たったそれだけでファルはかなりの速度で吹き飛ばされて地面を転がった。
ただ、このチャンスを無にするわけにはいかないっ!
リリーがファルのそばに駆け寄り回復魔法をかけているのを横目で確認し、俺はゴーレムに接近する。


(その思い切りやよしっ!全力で相手するに足ると判断しようっ!)

「……っ!」


ゴーレムは腰を回してこちらを向くと、虹色の光の玉を一つ浮かべる。
ゾッと悪寒が背筋を走る。

……あれに当たるのはマズいっ!!が、ここまで近づいたのに魔力をたたき込めるチャンスは逃したくないっ!どうするっ!?

一瞬躊躇したが、俺は前進を選択する。
色は違うがリリーのビームと似ているのだ、避けられないことはないと思ったのだが……。


(ふっ、甘すぎるな)


そんな声が頭に届いたかと思うと、ジュガッ!という音を立てて虹色の光線が伸びてきた。
リリーの光よりは遅いが、腕くらいの太さがある。
ある程度は予測していたので一本目は余裕を持って回避する。


(ブレスが一本しか出ないと誰が言った?)


続けざまに放たれた二本目は細いものの、俺の心臓の位置めがけて放たれる。


「……くっ!」


避けきれないと判断し、上に飛び上がりながら尚もゴーレムに近づく。
光線は右の腿に直撃し、ジュワッ!と音を立てて穴を開けた。
血すら出ない、完全に蒸発していた。


「……があっ!!」


足から伝わってくる激痛に思わず俺は苦悶の声を上げる。
完全に右足の感覚はなくなり、着地したら転倒するだろう。
それでも視線はゴーレムから逸らさず、うまく動かない足で空中姿勢のバランスを取る。


(見上げた精神力だが、空中でもう一本はどうだ?)


ゴーレムは無慈悲に更なる追撃を仕掛けてくる。
三本目となったせいかかなり細かったが、やはり狙いは心臓一本だった。
だが、俺は笑っていた。


(……何?)

「……仲間がいるんでな」


チュンッ!と軽い音とともに白い光が横から飛んできていた。
ゴーレムの光線よりは威力が低いものの、光線には光線である。
白い光は虹色の光に当たったが、そのままあっさり拡散してしまう。
持っていたエネルギーをほぼ失い、ただの光になってしまったがそれが命中した虹色の光も心臓貫通コースから進路を反らし、俺の左肩を貫いた。

またもやジュワッ!と音を立てて左肩に穴が開くが、今度は小さいためにまだ神経はつながっている。


「ぐうっ!!」


その分、痛みは倍増だが。
そして、俺はゴーレムのすぐそばまで肉薄していた。


(おのれっ!)

「遅いわっ!!」


回復していた魔力の八割方を込めて、右腕でゴーレムを殴りつける。
打撃目的ではなく俺の魔力を送り込むことが目的であるため、物理的な衝撃はそこまでないのだろう、ゴーレムには。

魔力を全力で注ぎ込んだために障壁を作り損ね、右腕が骨折した感覚。
指の骨は砕けているし、肩は外れている。
肘の腱にもダメージがあるかもしれない。
一方のゴーレムは、折角浮かべていた虹色の玉が溶けるようにして消え、一瞬動きを止める。
注ぎ込んだ魔力は十分にゴーレムの中に送り込まれたので、一撃を喰らわせられたら『崩壊』させられるっ!と意気込んで右腕を動かそうとするも、指一本動かすことが出来ない。
こんな右腕では『崩壊』させる一撃を十分に与えられない、そのまま空中で唯一動く左足で叩き込もうとしたとき。


(貴様ァッ!!よくもっ!)


ブオンッ!と音を立ててゴーレムが腕を振りかぶる。
援護射撃でリリーがゴーレムの胴体の一部を削ったが、何ら気にすることなく俺に怒りの視線を向けた。

……マズい、死ぬ。

直感に従い全力で障壁を展開する。
そんなこともお構いなしにゴーレムは俺を殴り飛ばす。
ドガァンッ!と猛烈な音を立てて俺は吹き飛び、ファル達の横を飛びすぎると岩壁にバァンッ!と叩きつけられた。

あまりにも大きすぎる衝撃は障壁をあっさり打ち破り、俺の体に直接届く。
叩きつけられながらも目を強化すると、俺の魔力が完全に体全体に浸透している様子が見える。
中の魔力と相克を起こすことなくあっさり入ったことには少し疑問を感じたが、それに思考を向ける前にグシャッと叩きつけられた体が床に落ちた。
それと同時に、俺の意識もぷっつりと途切れた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ケントさんっ!!」


ファルが悲痛な声を上げるが、それをリリーが押しとどめた。
どう見ても大けがだが、一方のゴーレムも謙人の攻撃が通ったのか、追い打ちをかけてこない。


「ファル、リリーが手当するからその間にゴーレムの相手をお願いなの」

「ケントさん、大丈夫ですよね?」

「大丈夫じゃない様子だけど、絶対死なさないの。だからファル、お願いなの!」

「分かりました、任せてください!」


こうして、2人は二手に分かれる。
それぞれが必死で謙人の無事を願いながら。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ファルは折れてしまって半分になってしまっている木の棒を再度手に取る。


「ケントさんは周りに魔力を通して刃にまで昇華していた……。なら、そうすればあのゴーレムにも届くかもっ!」


今までにやったことのない魔力の形状変化。
失敗が即座に死につながる状況だからこそ、成功させ続けなければならない。
……自分には回復魔法は使えない、なら今は全力でリリーを回復魔法に専念させるっ!


「ええいっ!」

(くっ、もう来たかっ!?)


ファルがそれで打ちかかると、ゴーレムも焦りを声に浮かべながら迎撃体制に入る。
しかし、さっきの謙人の一撃はかなりのダメージを与えていたらしく、さっきまでの俊敏な動きとはほど遠い。
ただし、それでもファルの攻撃はゴーレムに届かない。
すべてを右腕が打ち落とし、左腕が一撃を入れようと襲ってくる。


「やあっ!てやあっ!」


ファルの気合いが響き、ゴーレムの腕が欠けて飛び散る。

……私では決定打を与えられませんっ!!今は持ちこたえさせますから、リリー急いでっ!

耳を立ててどんな攻撃の予兆も聞き逃すまいと緊張させながら、うなりをあげて飛んでくる拳をやり過ごす。
全力を発揮し今までで一番の速度で動きながら、大切な人の動きを追い越すような気合いで、ファルは必死にゴーレムと打ち合った。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「ケントっ!」


リリーは謙人に駆けより、ひとまず状態を確認する。


「呼吸あり、背骨は魔力強化で破損なし。出血多量、肋骨三本骨折、内一本により肺に損傷。衝撃による臓器の負傷は……軽度。左肩甲骨に向けて貫通。右腕複雑骨折。右腿大腿骨損傷、動脈破裂。神経断裂……これを全部治すには魔力が足りないの。致命傷を優先するの」


三ヶ月の間に謙人から学んだ生物知識を総動員し、致命傷となるものから順に一つ一つ丁寧に治していく。


「やあっ!てやあっ!」


ファルの声が響き、それと同時にゴーレムとぶつかってドオンッ!と重低音が響く。
必死で守ってくれるファルに応えるべく、リリーも全力で治癒魔法を行使する。


「……肋骨修復完了、……肺組織修復完了。……内蔵組織修復完了。続いて右腿部の治癒にはいるの」


独り言で一つずつ確認しながら治療していくリリーは、今までにないような速度で治癒魔法を施していた。


「右腿部の修復完了……。続いて右腕の……」


右腿の大怪我を治療し終えた瞬間、リリーは猛烈なめまいに襲われる。
謙人の右腕に手を伸ばしていたはずなのに、グラッと体が傾いたと思うとリリーの体が横倒しになっていた。


「あう……魔力枯渇なの……。でも、これではケントは戦えないの、せめて右腕は治すの……」


必死で体を起こし、再度謙人の右腕の治療に取りかかる。
治癒を始めた当初はリリーの手のひらは眩く緑に輝いていたが、今では弱々しく明滅している。


「……早く、早くなの……」


気は急くものの、きちんと骨は繋がっていく。
そして、最後の小指の骨まできちんと繋げきる。


「……呼吸安定、出血も少量。左腕は動かせないけど……もうそれを治すだけの魔力がないの……。焼かれてるせいで……出血は少ないから……少しなら大丈夫なの……」


意識はまだもどらないものの、もう危ない容態になることはないだろう。
そして、リリーは最後に謙人の顔に身を寄せる。


「後は、お願いするの……」


そして、謙人の唇に自らの唇を触れさせた。
残っていた魔力がすべて、謙人の中へ流れ込んでいく。
治癒一回分もないようなかすかな力、それでも……。


「ケントなら、何とかしてくれるって信じてるの……」


こんな場合なのに、胸が温かい。
そんなことを考えながら、リリーは意識を手放した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



唇に何か触れた気がして、俺はゆっくり目を開ける。
その途端、ドガァンッ!と轟音が鳴り響き、ゴーレムと戦っていたことを思い出す。


「やばいっ!!」


急いで跳ね起きたところで、足と右腕が動くようになっていることに気づいた。
左肩はまだ動かないものの、複雑骨折もぶち空けられた穴も塞がっていて、中の筋肉もつながっている。


「……っ、リリーッ!」


横に倒れていたリリーを見つけ、抱き起こす。
目を強化して確認すると、完全に魔力がなくなっていた。
手足の末端が痙攣しているし、最後の最後まで振り絞って俺を治療してくれたらしい。


「ありがとう、リリー!」


ゆっくりとリリーを寝かせ、俺はゴーレムと戦うファルの方へと駆けだした。
ファルもかなりぼろぼろで、左腕をぶらりとぶら下げ右腕だけで戦っている。
ゴーレムの方はまだ五体満足のようだが、もうすでに体のあちこちの関節に俺の魔力が集中している。
俺がうまく叩くことさえ出来れば、ゴーレムを無力化することが可能な状況だった。


「てやあぁぁっ!」


猛烈なゴーレムのスイングとファルの拳とが激突し、どちらにも強烈な反動が加わるが、
ゴーレムはその重量で耐え、ファルはしっぽを地面に突き刺して無理やりやり過ごしていたのだが……。


「あぅっ!」


ファルは強化に使う魔力が切れたのか、しっぽだけでなく足から崩れ落ちた。
追撃をゴーレムがする前に、ファルの間に割り込む。


「ゴーレムさんや、さっきはありがとう……なっ!!」

「ケントさんっ!!」

(貴様、回復したのかっ!あのエルフの小娘、治癒師としては超一流かっ!)


普通は声に出さないが、さっきのはかなり痛かったこともあって言葉が口から出てくる。
言葉と同時に放たれた拳は、ゴーレムの肩の部分に直撃した。


(な……なにっ!!)


そして、俺の魔力は速やかに分子間力を弱め、衝撃を伝えて『崩壊』させる。
ゴーレムの左肩がまるで消滅したかのように消え去り、左腕がドスンっ!と床に落ちる。


(き、貴様!何をしたのだっ!!)

「いや、自分で考えろよ」


俺は吐き捨てるように言うとファルを抱えてひとまず距離をとる。


「ケントさん……すみません、もう参加できそうにないです……」

「ファルのおかげで助かったよ、ありがとう。リリーが魔力枯渇で倒れてるから、とりあえずそのあたりにいといて」


ファルをリリーの隣に寝かせると、再度ゴーレムの元に向かう。
ゴーレムの光線は俺の治癒を上回るらしく、左肩は治る気配がない。
リリーが魔力枯渇で倒れたのはそのあたりに原因がありそうだ。


(残るは貴様1人か?)

「戦えるのはな。ただし、俺1人でけりを付けるさ。真竜の跡継ぎって言うなら、俺1人で十分だろう?」

(ま、まさか!貴様は族長の血筋かっ!!)


驚愕するゴーレムに対し、俺はゴーレムの腕を交いくぐり首に一撃を与え、頭を地面に転がした。
残るは2箇所、右肩と腰部分の関節だ。
人にない部分だったせいか、腰の関節にはかなりの魔力が集中していた。


(くっ、さっきの魔力のせいかっ!)

「まあな……というか、頭落ちても喋れるのね。核辺りが狙い目かね?」

(くっ、我が追い込まれるとは……。貴様、やはり強者かっ……!)

「俺だけじゃない、リリーとファルもだよ」


俺はそう言ってゴーレムの右腕をやり過ごすと、全力で腰部分を殴りつけた。
その勢いのまま上半身だけ吹き飛び、洞窟の床にヒビが入る勢いで落下した。
その勢いのせいか、一緒に右肩も『崩壊』して外れて転がっている。
ただし、その時点で俺の魔力も切れ、その場に崩れ落ちる。
超スレスレ、ぎりぎりセーフの一撃だった。


(ああ……我の負けだ。こんな達磨にされては、我には何も出来ん)

「だろうな。なら、達成でいいのか?」

(構わん。真竜の3つの能力のうち、我に封じられているのは2つ。それを貴様らに託そう)


ゴーレムが負けを完全に認めたのを聞いて、俺は完全に脱力する。
完全に魔力枯渇だ、意識は何とか保っているが、手足の末端が痙攣している。


「そうか、それは謹んで受け取ろう……。だが、あんたは何者だ?ゴーレムみたいなのが真竜なのか?」

(ふ、それはない。我は真竜ジュドスの魂が宿っているだけのゴーレムだ。ただ、ゴーレムの材料は真竜の骨だが)

「竜の体って何か高級素材っぽいよな」

(竜の骨は認めたものの魔力に反応して自在に形を変える。我はもう死ぬからな、あの獣人の娘にでも槍を作ってやれ。女にプレゼントしてやると喜ぶぞ)

「……あ、そう……」

(2人とも貴様に惚れているのか?流石だな)

「……何か、さっきまでとキャラが変わってないか?」

(元々こちらが素だ。真竜は皆お茶目な奴らばかりだったよ……)

「……あんたが、最後の同胞か?」

(ああ、真竜で意識の残っているものは我が最後だ。肉体そのものが残っているものはおらん。すまんな、貴様が最後の1人となるが……)

「……俺が引導を渡すことになるとは……皮肉だよ」


洞窟の天井を見上げながらポツリと呟く。
せっかくこちらに来たのに、真竜族は俺が最後の生き残りなんて……。


(……もう、時間だ。最後に、貴様ら三人に真竜の惜しみない加護があらんことを)


ゴーレム……いや、ジュドスからその言葉が放たれたそのとき、三つの光がゴーレムから浮かび上がってきた。
白、茶色、緑色の光だ。
白い光はそのまま上へと上っていき、パチンッ!と微かな音を立ててはじけて消えた。
ジュドスの魂、というやつなのだろう。
茶色と緑色の光はクルクルとその場で回っていたが、突然ぴたりと動きを止める。


「……?」


そして、俺の元を通り過ぎてファルとリリーが倒れているところをクルクルと回っている。
意識のあるものの体が動かないファルは驚いて目を見開いている。
しばらく回っていたかと思うと、緑の光はリリーの中に、茶色の光はファルの中にそれぞれ入っていった。
ファルはゆっくりと目を閉じ、光を受け入れているようだ。
あれが、真竜の力というやつなのだろうか。
俺なんかよりもよっぽど頑張った2人に宿るのなら最高だろう。

そして、首を反対側に巡らせたとき、俺は驚きに息をのむ。


法衣を着た女性が、いつの間にか俺のそばに立っていたのである。


「こんにちは、真竜の跡継ぎさん。残念ながら漁夫の利作戦は失敗でしたね……。しかし、お三方の戦いはきっと素晴らしいものだったのでしょうね!」


シャンッと錫杖を鳴らしながら女は言う。
鈴の音のような、と形容するのが一番当てはまりそうな可憐な声。
絶世の美人と言えそうな容姿を俺に見せつけながら、耳あたりのよい言葉を口にする。


「……お前が、シーレイアの教祖か。そうやってあの地主も手玉に取ったのか?」

「あら?どうしてそうなりますか?」


この場所を知っていること、というのも十分な理由ではあるのだが……。


「そのちらちらする鬱陶しい『魅了』が何よりの証拠だ」


俺を虜にしようとさっきから魔法が発動している。
魔力は枯渇したとはいえ、ここまで露骨な魔術なら分かる。


「あら、ばれていましたか。まあ、一発目で魅了されなかった人に魅了出来ないものですし……。結局、最低ラインしか達成できませんでしたわね……」

「……何を言っている?」


魔力さえ残っていれば、この女を捕まえて問い詰めるというのに……!
今現在は俺の動くのは首から上くらいなのである。
どうがんばっても捕まえようがなかった。


「いえ、元はこれだけをする予定だったんです……よっ!」


そんなことを言って、女は持っていた錫杖を俺めがけて振り下ろし、俺の左腕を付け根から切り落とした。


「ぐっ……があっ!!」

「ケントさんっ!!」


離れたところでファルが声を上げるが、彼女も動くことの出来ない状況である。
普通なら強化であっさりはじき返すくらいの力であっても、今は容易に俺の体を傷つけた。


「まあ、仰る通りですよー。私はシーレイアの教祖、勇者のマスターです。殺しはしませんよ?勇者にあなたは殺される計画でいますから。だから簡単には死なないでくださいね?」


そんなことを微笑みながら言い、俺の左腕を拾い上げる。


「うんうん、真竜の腕を頂いたところで私はお暇しますねー」


そう言って教祖は懐から青い石を取り出し、空に放り出す。


「待ちやがれこの野郎……!!」

「私は女の子なのでー。それでは、さようなら」


カッ!と青い光が周りに広がり、思わず目をつぶる。
再度目を開けたときには女の姿はどこにもなかった。


「くそ、何てことしやが……げっ、出血大サービスしてる」


ふと気づくと左肩からとめどなく血が流れている。
慌てて魔力をかき集め血を止めにかかると、またもや視界のブラックアウトが始まった。

……あー、やばいかも。

血が止まったか確認したかったが、どうしても動くことが出来ず、俺はまたもや意識を失った。




超難産で、本当に疲れました……。

次は未菜側の話で独立した章になります。
予定では最終章ですが……。

更新は水曜日15時です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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