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母親の実家は異世界でした!! 作者:歩夢りんご

第05章 新たな力

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第42話

竜の山の小屋まで行くと小屋の中が荒らされていて、広間の真ん中に大きな穴があけられている。
ニシェルとその他5人の反応はここからしているようだが……。


「どうする?俺1人で入ろうか?」

「そうですね……。私はみんなで行った方がいいと思います。何となく感覚ではケントさんは魔力がほとんどないですよね?」

「ああ、修行で少々使いすぎたんだ。新技の練習をしていたんだがな、こんなことになるなんて想像してなかったし。しかも新技は人質相手になんの役にも立たないから」


申し訳ないので少しみっともない声がでる。
一方のリリーにも魔力は無いようだが……。


「リリーも練習してたの。でも、結局あんだけ練習したのに狙い通り撃てないの」


リリーも修行の成果はいまいちだったようだ。
まあ、何でもかんでも一度で身につけられるわけがないからそれは普通なのだが、魔力が残っているのは身体強化しか使えないファルのみ、というのはかなり問題かもしれない。


「……つまり、私たちは今全員接近戦しかできない、ということですね?ならもっとです、全員で行きましょう」

「1人で来いとは書いてなかったの。まあ、人質を取っているから大人数はよくないけど三人くらいなら良いと思うの」

「そうですね。まずは解放優先ですから、それまではあまり相手の神経を逆立てないようにしましょうね、リリー」

「分かったの。取りあえず黙って待機するの」

「了解。じゃ、3人で行こう。中には全部で6人いるみたいだ、気をつけてくれ」


2人がうなずくのを見てから、ゆっくりと穴の中に入っていく。
『感知』を使っているので不意打ちはないだろうが用心深く進んでいると、壁にある苔がうっすらと光っていた。
足元はかなり滑らかで、自然に出来たとは思えないような洞窟だった。
魔物が出ない特殊な竜の山。
もしかしたら、真竜が住んでいたのかもしれないな。
そんなことを思いながらゆっくりと進む途中には、小動物しか出てくることがない。
そして、一番奥の広いスペースにそいつ等はいた。


「……来たな、何だ亜人どもも一緒なのか」


ナイフを気絶しているニシェルの首に当てて地主の男が言う。


「ふっ、来たときからあんたは亜人趣味のようだったからな。毎日こいつらで遊んでいるのか?ははっ、お前の脳味噌を疑うな」

「だから亜人じゃないから。おまえの方が人でなしなこと言ってるって分かってんの?」


俺は吐き捨てるように言う。
実際、亜人という表現は軽蔑的ニュアンスを多分に含んでいるのだ。
獣人とエルフ、きちんと種族名があるのだ。
そうやって怒っていると俺の脇腹をリリーがつねる。
……分かってるよ。

「ほう、そのように反抗的な態度を取っていいのかな?あんたの大好きな獣人の少年の首がとれてしまうぞ?」

「くっ……!何が目的だ、俺になにをさせたい?」


歯噛みをしながらも俺は地主をにらみつける。
後ろではファルとリリーが他の4人の男の様子を牽制してくれているのだ、俺がニシェルを危険にさらしてしまってはいけない。


「ふっ、あんたのせいであの村は新規開拓などを始めてしまった。元の村は正式に廃村決定だ、私の土地は完全に無価値になってしまったのだよ」

「……それで?」

「公都で抗議してもあの女大公は聞き入れもしないのでね。やはり亜じんとともに暮らすなどという国は良くないと私はシーレイア教国に行ったのだ、そうしたら……」


その瞬間に地主の顔に浮かんだ表情は何と呼べばいいのだろう。
喜悦、欲情、敬愛、妄想、献身、恍惚。
そういった感情が入り混じり、狂気と名が付けられそうな顔だった。

……男の狂気とか、イケメンでもキモいのに。

どん引きしている俺を置いて地主は話を進める。


「教祖さまに私はお会いする事が出来たっ!教祖さまは私の考えを肯定なさったのだ!それどころか、その場にいた勇者を紹介すらしてくださったのだ!聖剣のお力で人形のように座っておられたが、教祖さまは勇者のマスター権を私にくださると言ったっ!」

「……ほう」


余りにひどい内容に少々殺気が漏れ出し、後ろにいたファルとリリーがびくっと肩を動かす。


「あの黒髪に黒い瞳が私のものとなる!その条件が、この世界に降りたった真竜の最後の生き残りの力でこの竜の山の中にある()()を持ち帰ること!しかもあの方は真竜があんただと言うことを教えてくださったのだっ!」

「……で?」


殺気の漏れが激しくなり、後ろの2人が体を震わせる……って、2人とも笑ってるし。
何で笑ってるのさ……と思ったら後ろの他の4人は腰を抜かしているらしい気配。
なるほど、修行で打ち合ったりテストの採点とかで吹き出す殺気に比べたらちゃっちいものだからな。
必死で地主に殺気を向けないよう抑え込んで、漏れるのは後ろにしているからなあ。
ただ1人、地主だけはそんな状況を意に介さず続ける。


「さあ、この岩の戸を開けるんだっ!この亜人のガキが殺されたくなければ、さあ早くっ!」


岩の戸、と言われて『感知』を伸ばしたがパチッといってはじかれた。
『感知』の反応では内部をのぞくことが出来ないが、以前リリーの見せてくれた光属性の結界に似たような感じがする。


「で、開けたらいいのか?どうやって?」

「血をたらせ、と仰っていた!さあ早くしろ!」

「はいはい、分かりましたよ」


俺はつぶやくと親指の先を少し噛みきり、岩壁にしっかりと押し当てる。
血というからまた魔力が抜けるかと思ったが、そういうわけではないらしい。
その瞬間、岩壁が一瞬まばゆく光ったと思うと、ゆっくりと左右に開き始めた。


「おお、神々しいっ!!ははっ、あっはっはっはっ!!」


……どこが。

俺は地主に冷たい目を向けるが、それすらスルーしてくる。
もはやこいつは重症だな……と思っていたとき。

『感知』に一つの反応が現れた。
場所は開いたばかりの扉の中、結界のおかげで魔力は漏れ出ていないものの『感知』に反応がある。


「ファルッ、リリーッ!気をつけろっ!」


だって、『感知』に映った魔力は……。


「中の奴の魔力は、俺たち三人をあわせたよりも多いっ!!」


そう叫ぶのが精一杯だった。
その場にいた9人全員が、扉の中へと吸い込まれたのである。
一番遠くにいた地主の仲間が吸い込まれた瞬間、さっきまで輝いていた岩の扉が閉まっていった。

全員、得体の知れない魔力の固まりのもとに閉じこめられたのである。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



吸い込まれた瞬間に体勢を整える。
しかし、今の感覚は何だ?
吸い込まれたというより、空港によくある歩く歩道に乗ったかのようなスムーズな移動だったが……。

辺りの様子を探るとすぐそばにリリーとファルもいたが、ファルのしっぽは逆立っている。


「……あれを見てください」

「なっ……」
「……」


俺もリリーも声がでない。
そこにあったのは、三メートルくらいの白いゴーレムが左手にニシェル、右手に地主を掴んでいる姿であった。


(久しぶりに起きてみれば……我が寝床に何ともまあ低俗な男がやってきたものよ!)


そんな低い声が頭の中に直接響いたと思うと。
ゴーレムは右手を地面に叩きつけた。


血が、あたりに飛び散った。


次回は土曜日15時です。

現在、こちらの作品を連載中です。

妹の代わりに俺は魔王になった。


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